米国がAHWの試験飛行に成功/米空軍が3万ポンド級貫通爆弾GBU-57 MOPを配備/WiPakによるPGM運用の無線化/SDB IIの弾頭試験が好成績

米国がAHWの試験飛行に成功

http://www.space-travel.com/reports/Pentagon_successfully_tests_hypersonic_flying_bomb_999.html

11月17日早朝、米国防総省はAdvanced Hypersonic Weapon (AHW)の飛行試験を実施、試験機は上層大気圏を極超音速で飛行してハワイからマーシャル諸島、クウェゼリン環礁まで達したと発表している。

ハワイからはロケットで打ち上げられ、およそ2500マイル南西まで達したことになる。速度に関しては発表されていないものの、極超音速の定義からすればMach 5以上。空気力学、航法と誘導、熱防護のデータ収集が主要な目的だったとされる。
極超音速巡航ミサイルなどを含むPrompt Global Strikeの1プランということらしいが、これまで情報があまり出ていなかった。HTV-2で想定された動力飛行するタイプよりも射程距離は短いという。

http://www.defense.gov/releases/release.aspx?releaseid=14920

陸軍管轄のプランで、3段式のブースタにより打ち上げられて上層大気圏内で分離、滑空して目標に達する、といったもの。リフティングボディ型爆弾とでも呼ぶべきか。
3段式のブースタというのは、この手の用途ならオービタルのミノタウロスIかIIだろう。たぶん。

globalsecurityでは、

http://www.globalsecurity.org/military/systems/munitions/ahw.htm

35分以内に6000km滑空して精度10m以下と書いてあるが、最新の情報なのかは不明。2006年か2007年の計画値か?

しかしこの程度の射程距離じゃ、リフティングボディ型の亜軌道ヴィークルから投下するような形とかでないと、地球全域はカバーできなさそうな気もするがどうなんだろか。

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米空軍が3万ポンド級貫通爆弾GBU-57を配備

http://www.spacewar.com/reports/Weighing_in_at_30000_pounds_a_new_bomb_for_US_999.html

米空軍は9月から新型爆弾、GBU-57 Massive Ordinance penetrator (MOP)の配備を開始したと発表。8月2日、米空軍はボーイングと3200万ドル相当の契約を締結し、MOPを8発製造し配備することになっているという。
米空軍に引き渡された数は未公表だが、発表のタイミング的にも仮想目標は北朝鮮のあのへんとか、イランのそこらへんであろうし、軍事的に牽制する意図があるのは明らか。

2002年からBig BLUとしてLMとノースロップグラマンにより開発がスタートするが、2003年イラク侵攻時の戦訓、BLU-109の貫徹能力不足から変更が加えられ、現在のMOPのコンセプトに繋がってる。AFRLが開発を主導し、設計と試験をボーイングが担当した。2007年にB-2への搭載改修が伝えられている。

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123080622

なんつーか拡大コピーしたコラみたいで、現実感が希薄だ。形状そのもの(直径と全長の比率とか)はあくまでも普通の誘導爆弾っぽいからだろう。ロシア風の格子状の安定翼だけは目新しい。

MOPの攻撃目標は大量破壊兵器を秘匿した地下施設で、B-52とB-2のウェポンベイに収まるサイズ…とは言っても全長は20ftあり、弾頭重量5000ポンド以上で、GPS誘導。
貫徹能力は、34MPaの強化鉄筋コンクリート換算で最大200ft。この数値はBLU-109、2000ポンドのバンカーバスターの10倍に相当する。GBU-28ディープスロートでも6mとかだから、桁が違う。
また総重量3万ポンドとなると、ベトナムやアフガニスタンでの戦闘初期に投入されたBLU-82デイジーカッターの倍で、GBU-43 MOABあるいはWW2でRAFが使ったグランドスラムと比べても更に重い。弾頭重量自体はMOABより少ないが、こちらはペネトレータに重量が割かれてるし、そもそもの役割も違う。短かく小径のわりに重量があるので、密度は非常に高い。

http://www.youtube.com/watch?v=UuzdNtrVCgQ

ついでにCNN報道も。

http://www.youtube.com/watch?v=kRBHiHhFjjY

なお、2010年には次世代の貫通爆弾についての計画も報じられた。これはもっと小型の作戦機でも運用可能になるというから、BLU-109の直接の後継というべきものになるかもしれない。Next Generation Penetratorと呼ばれてる。

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WiPakによるPGM運用の無線化

http://www.spacedaily.com/reports/Raytheon_Develops_Wireless_Integration_For_Combat_Proven_Enhanced_Paveway_999.html

WiPakはレイセオンが開発中で、機体とPGMの間のデータのやりとり(投下指令なども含む)を無線化するもの。スーパーツカノとエンハンストペイヴウェイで試験を行い、その他の機体でも試験を実施する計画。テキサンIIなどの軽攻撃機はもちろんのこと、ゆくゆくは戦闘用じゃない有人あるいは無人の機体にも、比較的容易にインテグレーション可能になるかもしらん。現に、モーターグライダーみたいなのに武装を施すのは一つのトレンドだ。

メリットとしては機体へのインテグレーションの際、小型の送信機と制御パネルを追加するだけでよく、配線をいじったりする必要がなくなる。民生用の無線LANに類似した技術が使われてるという。

無線LANの混線っぷり、帯域の狭さが身にしみていると不安を感じさせられるが、ひとたび空中に上がれば、普通は電波届く距離の編隊なんて組まんし、まあ大丈夫か。

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SDB IIの弾頭試験が好成績

http://www.spacewar.com/reports/Raytheon_SDB_II_Warhead_Exceeds_Test_Requirements_999.html

量産ラインで製造された弾頭としては初の試験となった。20年保管、500時間飛行後を想定した試験でも正常に作動したとのこと。

こうしてみるとレイセオンの一人勝ちっぷりが凄い。

AH-64D Block IIIの米陸軍への納入が始まる/JAGMの無煙ロケットモータ試験/SDB IIの3モードシーカの製造時間が大幅短縮/米空軍向け暗号化ユニットの近代化/サイバー戦の軍備とは

AH-64D Block IIIの米陸軍への納入が始まる

http://www.spacewar.com/reports/Boeing_US_Army_Mark_Delivery_of_First_AH_64D_Apache_Block_III_Combat_Helicopter_999.html

米陸軍では、ボーイングに対してまずLRIPで51機を発注しており、最終的には690機を計画。
ボーイングによると、Block IIIにおいては26の新技術が投入されたとのこと。大きいところはエンジンと駆動系で、T700-GE-701Dの最大出力3400shpに耐えるトランスミッションが搭載され、ローターも複合材製の新型となった。これらの変更により飛行性能の向上とともにペイロードも増大、さらに華氏95度といった、高温環境下におけるホバリング性能も改善されている。

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JAGMの無煙ロケットモータ試験

http://www.spacewar.com/reports/Lockheed_Martin_Demonstrates_JAGM_Fixed_Wing_Rocket_Motor_Maturity_999.html

ヴァーモント州オレンジの試験施設において、TDフェーズの一環として実施され、計画通りの燃焼時間と推力の発生(と減少)を確認したとのこと。

文字通りなら無煙というか減煙だが、LM傘下のAerojetが、AIM-120 AMRAAMで使用したのと基本的には同じ推進剤を使っているそうだ。またオリオンMPCVのミッションアボートシステムでも使われてるとか。
当初は高速・高高度での使用を想定していたものではあるが、技術的にはかなり成熟していると言える。

JAGMは今のところ、2017年と2018年にIOC獲得予定。搭載プラットフォームによって時期が1年ずれている。

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SDB IIの3モードシーカの製造時間が大幅短縮

http://www.spacedaily.com/reports/Raytheon_Reduces_Time_Required_to_Build_SDB_II_Seeker_999.html

レイセオンによると、従来のSDB IIのシーカ製造は、全工程で75時間かかっていたが、それが40時間になるという夢のようなカイゼンに成功したとのこと。
顕著な例の一つがシーカ内のハーネスの最適化で、ケーブル束も大きく減少、所要時間7時間が30分未満になったとか。

SDB IIの3モードシーカは、もはや三種の神器とでも言った方がいいかもしれないが、非冷却IRイメージング、ミリ波、SALの3つを統合している。

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米空軍向け暗号化ユニットの近代化

http://www.spacedaily.com/reports/Raytheon_to_Modernize_USAF_Cryptographic_Units_999.html

レイセオンが受注したもので、VINSON/ANDVT Crypt Modernization (VACM)と呼称される。金額は3110万ドル。
VACMは米空軍の暗号システム関連では最大の計画の一つ。

これにより、20年以上使われてきた秘話通信回線のハードウェアを一新することになるが、コネクタとフォームファクタは変えず、既存プラットフォームとの互換性は保つことになっており、レイセオンとしては入念なテストが必要となる。

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サイバー戦の軍備とは

http://www.spacedaily.com/reports/Pentagon_looks_for_weapons_to_wage_cyber_warfare_999.html

広義で言っちゃうとネットに繋がるデバイス全部、みたいなことになるわけだが、米政府はとりあえず、DARPAに研究資金を回すことにしている。2012年予算案では1億2000万~2億800万ドル、また国防総省は今後5年間のサイバー・セキュリティ保全のために、5億ドルの予算をも要求しているとのこと。

この20年で、攻撃手段は進化の一途、脅威も増大し続けている(から何とか先手を)、というのは、国家保安の立場からするとそれなりに説得力はある。

最近DARPAは、Cyber colloquium(直訳するとサイバー討論会)というのをアーリントンで催した。参加したのは産業界人、政治家、学者とホワイトハット(いわゆる善玉ハッカー)など。この中で、NSA長官で米軍サイバーコマンドを束ねるキース・アレキサンダー将軍はクラウドコンピューティング化を進める方向性を提案したとかなんとか。

コスト削減とネットワークの保護および監視を容易にするのが利点、という感じの話だが、分散型からサーバクライアント型に戻っちゃったらネットワーク自体の抗堪性はどう考えても低下するような気がするのだが、全体をクラウド化って話じゃないのかも。監視だけクラウドとか。それもそれで重くなりそうだが。

JSOW C-1/GBU-58/SDB II/IAIが小型LGBのMLGBを公開

微妙にパリショー関連。

レイセオンがJSOW C-1のキャプティブ飛行試験を完了

http://www.spacewar.com/reports/Raytheon_Joint_Standoff_Weapon_C_1_Completes_Captive_Flight_Test_Series_999.html

試験は2010年から、主に米海軍のF/A-18を使用して行われていた。
AGM-154 JSOW C-1はBlock IIIとも呼ばれたタイプで、従来のINS/GPS誘導(終末IR)に加えてLink-16と接続でき、水平線越しでの移動目標に対する攻撃を可能とする。IOC獲得は2013年予定。

http://www.raytheon.com/capabilities/products/jsow/

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250ポンドのペイヴウェイ

http://www.spacewar.com/reports/Raytheon_Re_Introduces_250_Pound_Paveway_Precision_Guided_Munition_999.html

GBU-58というディジグネーションが振られている。AT-6などターボプロップ単発機での運用試験を行っており、このクラスでも運用できる250ポンド向けのPGMキットとなる予定。今度の2011パリショーに出展された。

ここにはミラージュIIIとシュペルエタンダールに搭載され、リビア攻撃にも使われたと書いてある。

http://www.deagel.com/Bombs-and-Guidance-Kits/GBU-58-Paveway_a001151014.aspx

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SDB IIが最初の対照試験を完了

http://www.spacewar.com/reports/Raytheons_Small_Diameter_Bomb_II_Completes_Control_Test_Vehicle_Flight_999.html

試験は全ての目的を達したとのこと。
IR/SALH/ミリ波の非冷却型3モードシーカを持ち、ライフサイクルコストと信頼性を改善する。

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IAIが新型LGBを公開

http://www.spacewar.com/reports/IAI_to_Unveil_its_new_advanced_Medium_weight_Laser_Guided_Bomb_999.html

IAIは2011パリショーにおいて、中型レーザ誘導爆弾MLGBという新型LGBを公開した。全長1.7m、重量115kgとされ、レイセオンの250ポンドペイヴウェイGBU-58と似た規模となる。前後4枚ずつの十字型の固定翼を有し、スパン82cmとある。固定・移動目標に対応可能。信管はマルチモードで、浸撤弾頭などと組み合わせて遅発も選択できる。SALHでのCEPは1m以下。もしくはGPS誘導が使える。

F-35の試験部隊に2機追加/SDB IIが最終設計審査通過/ユーロホークEMI試験

F-35の試験計画に艦載型2機が加わる

http://www.flightglobal.com/articles/2011/03/31/354987/two-new-f-35s-set-to-join-flight-test-fleet.html

いずれも艦載型のCF-2とCF-3の2機で、前者は4月前半、後者は6月までに初飛行する見込み。これで試験用の機体は全て揃うこととなる。

3月9日のAF-4のフライト中にら発生した電源ダウンについては、2基のジェネレータ両方の内部に残ったオイルが原因で、オーバーヒートを発生したと書いてある。メンテナンスで使ったオイルが残留したものらしい。
同型式のジェネレータシステム(エンジンスタータを兼ねる)はLRIPで製作された全機に搭載されている。つまり現在の試験用の機体ではAF-4、BF-5、CF-1が該当するので、大きく影響を受けたのはこれら3機となる。
飛行停止処置は、これに該当しない7機が16日解除、LRIPの3機が26日解除となっている。

当局は、飛行停止による大きな影響は今のところ無いとしているが、予備日程を削ってるのは確か。

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レイセオンのSDB IIが最終設計審査を通過

http://www.spacewar.com/reports/Small_Diameter_Bomb_II_Program_Completes_CDR_999.html

SDB IIの特徴は、ミリ波、IR、セミアクティブレーザの3モードのシーカを有する点。メーカーでは非冷却型シーカなどの採用により、信頼性は一段向上するとしている。
CDR通過により、年内にキャプティブフライト試験の実施が可能となった。

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ユーロホークがエドワーズAFBでEMI試験を実施

http://www.spacedaily.com/reports/Euro_Hawk_Undergoes_Testing_At_Edwards_AFB_999.html

EMI試験は3月10日と11日に行われている。
試験を担当するのは772nd Test Squadronで、ノースロップグラマンの技術者ととドイツの当局者が加わって実施した。EMI試験はグローバルホーク開発時にも実施しているが、欧州の電波環境はまた別ということもあるので、ユーロホークにおいては異なる環境を想定した試験が必要だった。

試験施設はBenefield Anechoic Facility (BAF)という施設で、様々な異なった電波環境をシミュレートできる。

エドワーズAFBにおけるユーロホークの試験は昨年から続けられているが、夏には終了の見込み。

なお、BAFのBenefieldという名前は、殉職したテストパイロットから来てるそうだ。ロックウェルのテストパイロット、Tommie Douglas “Doug” Benefield。1984年8月29日、B-1A(s/n 74-0159、2号機)のB-1B開発と関連する低速飛行試験中、墜落事故で亡くなったとの由。例の脱出システムは作動したが、カプセルのパラシュートが開かなかったという不幸な事故だった。

http://www.nationalmuseum.af.mil/factsheets/factsheet.asp?id=2755