ホンダジェットHA-420とその後の展開について/Unusual Attitude Training/Aerionが超音速自然層流翼のフェーズ2試験を開始/ガルフストリームがソニックブーム低減技術の実現に「極めて近付いている」と発表

ホンダジェットHA-420とその後の展開について

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-honda-aircraft-describes-plans-for-ha-420-follow-on-378253/

NBAA2012においてホンダエアクラフトの藤野社長から、いわゆるホンダジェット、HA-420の型式証明完了を待って、新型機の開発に着手する旨の発言が出ている。
現時点では、HA-420のFAAの型式証明取得は来年後半予定なので、本格的に開発が始まるのは2014年以降になりそう。

詳細についてはコメントを避けているが、Phenom 100/300に近いクラスであるということは認めた。HA-420は5座のVLJであり、クラス的にはPhenom 100に相当するので、仮に大型化する方向性なら、もう少し大きい7座のPhenom 300をターゲットにして開発することになるだろう。
性能で言うと、HA-420は、Phenom 100に対しては最大巡航速度で30ktas速く、300に対しては43ktas遅い。なお100はHA-420同様の直線翼だが、300は後退翼を採用している。

ホンダエアクラフトの基本的な方針としては、パフォーマンス重視で進めたいとしている。つまり単純にストレッチ型を作るといった話ではなく、パフォーマンス面での得失によっては、別の設計を選択することもあり得る。
もし新規設計となれば金も時間もかかるけど、この事業を将来にわたって継続するつもりなら、もっとノウハウを蓄積したいというのはありそうだ。実績はまだ1機種だけだし、後退翼だったりしたら、全く新しいチャレンジとなる。

若干興味深いのは、ホンダが長年自動車メーカーでやってきた経験から、デザインアイコンの重要性について触れてる下り。一目見てホンダの飛行機と認識してもらえるよう、一部のデザイン、主翼上面のエンジンや膨らんだ曲面構成の風防ガラスなどは、HA-420から引き継がれるだろうとしている。

かつて航空機のデザインでは、実験や設計者の経験からうまくいった形を踏襲するなど、メーカー毎のカラーが出るケースもあった。しかし現在は、設計レベルではCAD/CAMと数値解析の普及、製品レベルではエンジンメーカーの淘汰と寡占化によって、一つの正解(今は「効率」がキーワードだが)に近付けようとする傾向が強い。このため、デザインも同クラスなら似たような感じになるパターンが増えた。
もっと言えば、材料技術の進歩などでデザインの自由度そのものは上がってるはずだけど、定石を外したデザインでは売れるもんも売れない、と見られてる節も、業界内にはあるように思える。ホンダは異業種からの参入で、そこに一石を投じた形。

型式証明プロセスの状況については、HF120の認証待ち状態だそうで、2013年5月まで続く見通し。ただし飛行試験自体はそれより早く開始することになっていて、型式証明取得までの累計飛行時間は、試験機5機で1500時間程度を見込んでいる。

記事の最後では、新型機のエンジンについても軽く触れられている。GEとのJV、GEホンダエアロエンジン社は、HF120のコアを拡大、高出力化したタイプを検討しているものの、これが使われるかどうかは不明。もし採用されなければ、必然的に他社から調達することになるだろうが、ここも明言は避けられた模様。まだまだそういう段階ではなさそうな感じだ。
無理矢理HF120の3発とかになったら面白いが、エンジン数は増やさないだろうなあ。

なお、HA-420と同じくHF120を搭載予定の機種としては、Spectrum Aeronautical社のフリーダムS40というのがある。

http://www.spectrum.aero/the-freedom-s-40

独自技術によるCFRP製(エポキシ系)の機体が売りで、アルミ合金に比べて重量は2/3程度、同級で最も大きなキャビンを持つ。このため予定性能は、HA-420を含めた競合機すべてを大きく上回る。ことになっている。HA-420と同エンジンながら、性能が1クラス上になる予定。

S40の前段階として開発されているのがインデペンデンスS33で、S40よりもちょっと小振りな機体にエンジンはFJ33の双発。性能はVLJとしてはやっぱり高い。ことになっている。

http://www.spectrum.aero/images/stories/downloads/brochures/Independence_S33_Competitive_Advantages.pdf

S40の開発状況は不明。

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Unusual Attitude Training

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-stallion-51-introduces-unusual-attitude-training-378254/

STALLION 51というフロリダ州に拠点を置く企業が、Unusual Attitude Trainingと称する訓練プログラムを立ち上げようとしている。
同社は民間向けの、特にビジネス機クラスのパイロット訓練を、練習機とセットで提供するサービスをメインの業務とする。記事中、有視界飛行訓練にTF-51、計器飛行及び有視界飛行訓練にL-39を運用するとあり、公式の方を見てみると、このほかにもT-6(IIじゃなく元祖の方)も訓練機として保有しているみたい。

http://www.stallion51.com/

Unusual Attitude Trainingというのは、文字通り、飛行中の異常姿勢から回復する訓練を行う目的で考えられている。同社CEOによれば、従来こうした訓練は、軍用機(一部の法執行機関とかも含む?)のパイロット向けに限られていたため、民間航空の世界では浸透せず、パイロットが経験することも少なかった。

訓練は特殊な電子機器を搭載したL-39で行い、高高度からスタートして回復操作をシミュレートできる。また自社の医学部門であるAVMED51が航空生理学の座学を担当し、空間識失調、バーディゴなどについて学べるそうだ。

ちなみに、P-51の整備や売買を行う部門もある。何この趣味と実益を兼ねて最強に見える会社。

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Aerionが超音速自然層流翼のフェーズ2試験を開始

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-aerion-details-second-phase-of-supersonic-wing-tests-378159/

AerionはSSBJの開発でNASA(DFRC)と協力しており、フェーズ2としてF-15Bを使った超音速自然層流翼の試験を実施することになっている。試験用の構造物は大きさ80インチ×40インチ。元々は2011年後半に計画されたが、機材手配の関係で遅れた。
2年前のフェーズ1では、比較対照としてただの板をF-15に取り付けて飛ばすところまでやった。それからCFDで検討を重ねて形状を変更したりといった過程があった模様。

試験では、高度40000ft、Mach 2での飛行を行い、IRカメラでもって亜音速、遷音速、超音速それぞれの遷移時の気流の状態を調べ、計画通りの効果が発揮されるかどうか、また製造上の問題点を洗い出すためのデータ取りも兼ねる。超音速自然層流翼は、Aerionの独自技術の核心部分と言っていいものであり、かなり重要だ。

試験期間は1ヶ月から2ヶ月。6~10回の飛行が見込まれており、1回の超音速飛行は30~40分程度とされる。まあこんなんじゃ、機材繰りが無理だからって別をあたるわけにもいかんわな。

とは言うものの、2008年からこっちはSSBJを取り巻く状況が劇的に改善することがなかった上、予定したエンジン、JT8D-200シリーズの-219が早期に終了する可能性も出てきた。これはJSTARSなどのリエンジンがお蔵入りしそうな流れになったためで、防衛予算削減のあおりを受けた格好になる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-aerion-talks-up-transonic-options-as-f-15-tests-resume-378162/

メーカーの状況は回復しつつあるとは言うものの、すぐにどうこうという話にもなってないのが実情。
そんなこんなで、民間の潜在顧客の要望に応えるべく、自社の技術を用いて遷音速程度での性能改善を提案することも考えてるみたいだ。自社の技術はスケーラビリティに富んでいるから、どんな機体にも適用できる、というのが同社の主張。
Aerionが挙げたのは、ビジネスジェット機のうちサイテーションXとガルフストリームG650で、これらの最大速度をMach 0.99まで引き上げる事が可能としている。

本命のSSBJ(Aerionの呼び方ではSBJ、Sがひとつ少ない)の方は、JT8Dの双発でMach 1.6、乗客8~12席といった仕様だった。製造はメーカーに委託するので、いわばファブレス。テクノロジー・プロバイダーと称している。

JT8D-219が無理なら、当然別のエンジンが必要となる。同社は代替案を検討中というが、どのみち低バイパス比で使うのだし、内容的には戦闘機用のエンジンをそのまま使うのが簡単っぽい。JT8Dと同級というだけならCFM56系あるけど。

http://www.as.northropgrumman.com/products/e8cjointstars/assets/PW_me_jt8d-219_product_card.pdf

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ガルフストリームがソニックブーム低減技術の実現に「極めて近付いている」と発表

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-gulfstream-very-close-to-supersonic-business-jet-design-378243/

SSBJだけに限った話ではないが、超音速飛行時に発生するソニックブームは航空機の高速化にとって、大きな障害となっていた。

ガルフストリームのソニックブーム研究は、2000年代に入ってからNASAとの協力関係に発展、2008年のNBAAではX-54というディジグネーションを与えられた実験機の存在も明らかにされた。が、X-54の姿は一向に明らかにならぬまま。しかしここに来て、quiet boom技術を適用した機体設計がほぼ完了したとの発表に至る。X-54が公表されてちょうど4年になった。

でもやっぱり具体的な形はわからずじまい。F-104似とも言われるが…

ヒントというか、エンジンが在来のガルフストリーム機に用いられたもので足りる、ということには言及されている。つまりG450のRRテイ、G650のRR B725のいずれか。ただし超音速巡航時に燃焼温度が高くなることは避けられないので、通常運転時の燃焼温度自体を引き上げる何らかの対策は必要であろう、とのこと。

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約/ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定/ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約/ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約

http://www.space-travel.com/reports/ATK_Awarded_50_Million_Contract_for_NASAs_Advanced_Concept_Booster_Development_for_SLS_999.html

ATKの発表によると、SLS能力向上に関わるAdvanced Concept Booster Developmentの一部にあたる、エンジニアリング開発とリスク低減試験についてNASAと契約を結んだとのこと。金額は5000万ドル。

この計画では、TVCノズルの電動化(リチウムイオン電池を利用する)、高性能推進剤、軽量複合材製のケース、新型ノズルが開発され、試験用エンジンを製作、静止運転試験までが含まれる。
全体としてはコストを下げつつ、性能と信頼性の向上につなげるものとなっている。

宇宙機では枯れた技術が使われる、とはよく言われる話であるが、材料や電池の分野は今でも日進月歩で発達し、かなりの速度でコモディティ化が進んでいる。様々な形で民生部品を使うのも一般的になりつつあるし、新しめの複合材やリチウムイオン電池もそろそろいいだろう、という感じではある。

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ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定

http://www.spacedaily.com/reports/Key_flight_for_Europes_GPS_is_cleared_for_launch_999.html

10月5日、ESAはガリレオ航法衛星2機打ち上げが承認されたと発表した。
打ち上げ場所はクールー。使用されるロケットはソユーズST-B(上段がFregat-MT)で、既に組立棟に搬入済みとのこと。打ち上げ予定日は10月12日、1815GMTとなっている。
これらは2011年10月21日の1、2号機に続くもので、軌道投入に成功すれば稼動衛星の数は4基となり、測位システム(緯・経度、高度、時間の情報を取得し、地球上の航法を支援する)の最小単位を構成できるようになる。

計画では2015年までに18機を運用、商業利用が可能となり、2020年には全衛星30機体制となって、システムが完結する。これは米国のGPS衛星より6機多く、より高精度な(GPSの誤差3~8mに対して誤差1m程度の)測位が可能。
また、5月の欧州委員会への報告では、2015年までにかかる費用が50億ユーロとされている。

なお、クールーでのソユーズ打ち上げは3回目。アリアン5とヴェガの間を埋める打ち上げシステムとして活躍し始めている。

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ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約

http://www.gizmag.com/pulsar-navigation/24498/

恒星間航法において、パルサー観測を用いるというアイディアはSFでよくあったような気がするが(終わりなき戦いとか)、パイオニア10号の有名な図版でも地球の位置情報(と地球を出発した時期)を示す図形として描かれたこともある。ESAはそれを真面目に実用に耐えるものにできるか研究しましょうという趣旨で、英国立物理研究所NRL及びレスター大学と契約した。

宇宙船が地球から遠ざかるほど、航法支援は困難になる。電波の速度による時間差も生じるし、光の速度で数週間、数ヶ月の距離ともなれば、送信設備の出力も膨大なものとしなければならない。
理屈では人工的なビーコンを設置することも可能だが、同じ理由で現実的ではない。そこで天然のビーコンと言えるパルサーの観測で何とかしようという話。
科学的にその辺の利点を述べると、パルサーはそれぞれが固有の周期で電磁波を発するので、非常に見つけやすい。そしてパルサーのX線を観測することができれば、地球上でGPS衛星を利用するのと同じように扱うことができる。
レスター大学のチームは、この目的のためのX線観測装置の可能性を、NPLは観測データから測位情報を得るためのアルゴリズム開発などをそれぞれ担当する。

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ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

http://www.gizmag.com/boeing-ballistic-gas/24403/

使用されなくなった人工衛星など、いわゆるスペースデブリの問題は年々深刻さを増している。代表的な事例としては、2009年2月10日に起こったイリジウム33とコスモス2251の、高度789kmでの衝突があった。

ボーイングで特許申請の形で提案しているのは、デブリの進行方向にガスを撒くことで、その軌道周回速度を第一宇宙速度以下まで減速させるという方法。わずかでも第一宇宙速度を割りさえすれば、後は地球の重力井戸に真っ逆さまというわけだ。これまでに幾つか提案されたような、ソーラーセール等を用いて物理的に回収したり、つついたりする方法に比べても、最小のエネルギーで対処可能なアイディアと言えるだろう。更に言えば、回収のための衛星が何かと衝突することすら有り得る。

発案者はMichael Dunnという人で、ガス発生器を搭載した小型衛星を使用する。このガスについては、低温のキセノンまたはクリプトンのタンク、あるいは重金属を気化する装置か、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられている。原理的には何でもよく、デブリの進路上、逆向きのベクトルを与えてガスを撒き、運動量を削げばよい。

この方法の利点としては、システムがかなり単純で済むだけでなく、デブリに余計なダメージを与えて更に細かい破片が分離するといった可能性がほとんどないこと、精密に狙いを定める必要がないこと等がある。大型の衛星や軌道高度が高い場合は、単に数回に分けてやれば良い。
また1個の衛星で、異なる複数の軌道を周回するデブリに対して使えるのも利点とされる。
大気圏で燃え尽きそうにないとか有害物質入りとか原子炉搭載とかだとちょっと困るが、基本的には何にでも使える。

言うなれば宇宙フマキラー的な?
米国でスプレー式殺虫剤の代表的なものとはなんだろうか。

NASAがL2点に宇宙ステーション設置を検討/SLSの補助固体ブースタ製造が進む/SpaceXがVTVLの実験機を初飛行させる/ドラゴン宇宙機が初のISS補給ミッション、CRS-1を実施中/2012年の100YSSにおけるFTL航法のまとめ

NASAがL2点に宇宙ステーション設置を検討

http://www.gizmag.com/nasa-space-station-beyond-moon/24265/

米国の地方紙オーランド・センチネルが報じたところでは、NASAがオリオンMPCVを使う深宇宙探査の拠点として、L2点(EML-2 = Earth-Moon Lagrange 2)への宇宙ステーション設置を検討、9月初めにNASA長官からホワイトハウスへ文書として提出されたとのこと。
L2は大雑把に言って月(裏側)から61000km、地球からだと446000kmぐらい離れた位置にある。

建造にあたっては、ISSを構成するモジュールの流用が検討されており、記事中では、ロシア及びイタリアのモジュールを含む可能性にも触れられている。
この構想では、2017年、SLSにより各モジュールを打ち上げ、オリオンMPCVで人員と物資を輸送、2019年にL2へ配置するといったスケジュールとなるらしい。

この宇宙ステーションは2022年まで、無人探査機による月面サンプルリターン及び小惑星探査、有人火星探査の拠点となる。また深宇宙探査のための経験を積み、リスクを低減するという意味でも重要な役割を果たすとされている。

金額などの詳細は不明。NASAも記事の時点ではコメントを出していない。

GizmagではInternational Space Exploration Coordination Group (ISECG)の将来構想、2011 Global Exploration Roadmapとの関連を指摘している。このロードマップでは2020年以降までISSの耐用年数を延長し、次の25年に可能となるであろうミッションについて記述していた。

http://www.nasa.gov/pdf/591067main_GER_2011_small_single.pdf

L2点へステーションを設置する際の技術的なポイントとしては、ステーション本体に地球の低軌道よりも強固な放射線防護が必要である点(ヴァン・アレン帯の外なので)、オリオンMPCVは惑星間空間からの再突入に近い条件(NASAとしてはアポロ以来)で運用される点などが挙げられている。
このほか、ステーションへの補給もISSほど簡単ではなくなるから、低温流体の保管・管理のための技術が求められるし、常駐する人員がいないか、少数である前提なら、より高度な自動化が必要となる。いずれも人類が惑星間空間に出て行く上で、欠かせない技術であるのは確かだろう。

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SLSの補助固体ブースタ製造が進む

http://www.gizmag.com/sls-largest-solid-rocket/24408/

SLSの補助固体ブースタは、計画では固体ロケットとして史上最大級の推力を発生することになっている。
ATKスペースシステムズが開発を担当し、スペースシャトルのSRBを元に5セグメント化、推力は12000kNから16000kNと33%増しになる予定。

写真に出ているのはQualification Motor-1と呼ばれる実証用のエンジンで、実際には飛行せず、設計と製造についての評価を行うためのものとなる。2013年に運転試験を実施予定。
製造面では、組立工程を合理化して、ノズルの超音波検査をX線検査に変更する(別の検査室に送らず、組立工場内でできるようになったのが大きいみたい)などの改善が試みられ、コストを46%も削減したとのこと。
ある組立工程では47の作業があったのを、7まで減らした、という例が挙げられている。作業手順を単純化することが、品質的にも有利となるのは言うまでもない。ましてSRBはチャレンジャーの事故の主因ともなっているため、このあたりには特に慎重になるところだろう。

が、それ以前にスペースシャトルで何十年も合理化してなかったんか、という気はしないでもない。SRBは半端に再利用とか変なことになってたとはいえ、とても公共事業っぽくはある。
コメント欄にSpaceX信奉者が散見されるのもわからんでもないが、その辺はもう少し実績が増えないと何とも言えないかな。
今回のCRS-1打ち上げでも、1段目のエンジン1基がフェイルしたという話も出てるし。

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SpaceXがVTVLの実験機を初飛行させる

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-first-commercial-launch/24413/

実験機はGrasshopperと名付けられている。マーリン1Dエンジンに4本脚を付けた格好のもので、9月21日に初の飛行実験を成功させた。6ftほどジャンプした程度に留まったので、飛行と言えるかは微妙か。
実験は数ヶ月続く予定で、最終的には100ft上空でホバリングして降下するのを目指している。

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ドラゴン宇宙機が初のISS補給ミッション、CRS-1を実施中

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-first-commercial-launch/24413/

5月のISSドッキング実験に続いて、Commercial Resupply Services (CRS)契約に含まれる。12回の補給ミッションのうち、最初のミッションORS-1が行われている。CRS契約の金額は16億ドル。
ロンチコンプレックス40から東部時間10月8日、午後8時35分に打ち上げられた。ISSとのドッキングから3週間ほど経過した後、再突入して海上にて回収される見込み(有人では動力着陸が予定されている)。ペイロードとして積載した物資は905kgほどで、同量の実験サンプルなどを積載して戻ることになっている。
現在ISSにはエクスペディション33のクルーとして、星出宇宙飛行士が滞在しており、ドッキング用のアーム制御を担当する。

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2012年の100YSSにおけるFTL航法のまとめ

http://www.gizmag.com/warp-drive-bubble-nasa-interstellar/24392/

原文がなかなか良い記事なのでそっち読むのがオススメ。

光の速度を超えることに関しては、最近の研究でも宇宙開闢からインフレーションの間に少なくとも光速の3京倍の速度で膨張した、というのが既定の事実になりかけている程度で、基本的な概念のレベルでは、Miguel Alcubierreが1994年、時空の歪みを利用してFTL航法を実現可能という研究結果を発表した時とあんまり変わってない。つまり、平坦な時空の内部で光速を超えることはできなくても、時空そのものが変形したり膨張するのであれば、その限りではないという理屈だ。以下、時空の歪みをワープ効果と呼ぶ。

FTL航法を考えると、宇宙船の前方に時空間を歪めるワープ効果を発生させ、宇宙船の存在する時空では拡張(復元)して平坦にする必要がある。この状況を時空の歪みに囲まれた泡に例えてワープ・バブルと呼ぶ。この手の研究では、移動速度を光速の10倍と想定していることが多いらしいが、理論上の限界は今のところ無い。
時空間を海、時空間の歪みを波に置き換えた説明では、波の進行速度は海水の進行速度よりもずっと速い。というわけで、FTL航法はサーフィンのようなものとも表現されている。

問題はワープ・バブルをどうやって形成するかというところで、ワープ・バブル形成のためには膨大な負のエネルギーを投入する必要があり、古典物理学は役に立たないし、量子力学で論じられるようなものとも桁が違う。しかし、最近の研究では、当初Miguel Alcubierreが計算したような、小型宇宙船を包み込む程度のワープ・バブルを形成するのに宇宙全体の質量でもまだ足りない、といったレベルではなくなってきたらしい。現在のモデルでは、数百kg程度の質量で済むそうだ。

SFだと最終的に、エキゾチック物質とかダークエネルギーとかに頼るわけであるが、ここではわけのわからなさが多少少ない?後者のダークエネルギーについて述べている。
宇宙全体に広がったダークエネルギーの密度は極めて小さく、地球磁場の5万分の1程度の強さしかないとされるものの、磁力の場合は希土類磁石が恒星間空間の磁場の1億倍の強度を発してたりするから、決め付けるのはまだ早い。

とまあそんな感じで、どうにかしてワープ・バブル形成に成功したとすると、どうやって制御するか、止めるときはどうするかという問題が出てくる。ここら辺はモデルが複雑になりすぎて手がつけられない、というのが実情みたいだ。
で、分析が不足していることも棚上げして話を進めると、対称なバブルが形成されたら向きはどうやって決めるのかとか、バブル内部から外部の状況がわかるのかとか、ワープ効果が現れた時点でホーキング輻射が起こってバブル内外の物質が蒸発するんじゃないのかとか、まあわからんことだらけなので、単なる思考実験の域を出ない感じになっていく。

さてこれだけだと単なるおもしろいおはなしで終わるところだが、そこはさすがにNASAなので、ワープ効果を実証するための実験装置を提案している。White-Juday Warp Field Interferometer (WFI)と呼ばれるこの装置は、要は極めて高精度な干渉計であり、1nm単位の経路長の変化を検出可能となる。これで微細な時空の歪みを観測しようという試み。

小さいことからコツコツと。

独DLRが可変式の前縁フラップを開発/ガルフストリームG650がFAA型式証明取得/SBiDir-FWコンセプト

独DLRが可変式の前縁フラップを開発

http://www.dlr.de/dlr/en/desktopdefault.aspx/tabid-10081/151_read-2107/year-all/

http://www.gizmag.com/morphing-leading-edge/24068/

ドイツ政府の航空宇宙開発期間であるDLRが、翼の前縁断面形状を変化させるタイプのフラップ、smart droop noseを開発した。
通常の前縁フラップ、特にスラットの様な隙間ができるやつは、揚力を高めるが抵抗を増し、騒音源ともなる。smart droop noseでは、前縁部分の断面形状そのものを変化させることで、欠点を無くして同様の効果だけを得られるように開発されている。

開発にあたっては、表面を平滑に仕上げつつ、弾力性と強度を両立するのが困難だった(着陸時には機体重量の1/3を支えなければならない)とのことだが、最終的にはGFRPを積層して解決したそうだ。その外皮の内側にアクチュエータが仕込んであって、形を変える仕組み。

風洞実験は、ジューコフスキーにあるTsAGIの大型風洞を利用した。その結果、前縁20度下げ状態までは、全く抵抗の増加が見られなかったとのことで、空力面の検証はひとまず成功している。
次の段階では実機への適用を目指し、バードストライクや落雷に耐え、あるいは凍結防止装置の装備などへ発達させることになっている。

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ガルフストリームG650がFAA型式証明取得

http://www.gulfstream.com/news/releases/2012/gulfstream-g650-receives-type-certificate.htm

ガルフストリームの9月7日付のプレスリリースによると、同社は2008年より開発を続けてきた新機種、G650の型式証明を取得したとのこと。
既に200機ほどのオーダーが入っており、顧客への引渡しは年内にスタートする予定となっている。
ガルフストリームで最大・最速の機体であるだけでなく、価格は6000万ドルからとなっており、名実ともに同社のフラッグシップと言えるだろう。

初飛行は2009年で、それから35ヶ月間に.1181回のフライトで3889飛行時間を記録。以下、セールスポイント等が列記されているが、試験飛行のハイライトについての部分を抜粋。

2010年5月2日のフライトでは初めて最大運航速度Mach 0.95に達し、2010年10月の高速巡航飛行試験では、大西洋上にて5000nmを9時間45分、平均速度Mach0.9で飛んだ。
2011年2月にはカリフォルニア州バーバンクからサバンナまでの1900nmを3時間26分、巡航速度Mach 0.91~0.92で飛び、最高速度Mach 0.925を記録。
2012年5月12日に最初の大西洋横断飛行が実施された。ワシントンDC-ジュネーブ間の3780nmで、飛行時間は6時間55分だった。

2011年4月の悲劇的な墜落事故は記憶に新しいが、再開後は大きなトラブルを出さずに現在に至る。

巡航速度がMach 0.9に達するビジネスジェット機は少ない。G650の他にはサイテーションXぐらいか。

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SBiDir-FWコンセプト

http://www.gizmag.com/rotating-bi-directional-flying-wing-design/23982/

今月初めに、手裏剣みたいな想像図で話題になったアレ。まあ一応。
エンジンマウントした胴体部分に対して翼のある下半分が回転する感じなんかしら。その辺の機構がよくわからぬ。
こんなのに10万ドルぽんと出しちゃうNASAにある意味安心した。最近は景気の悪い話しかなかったので。
でも斜め翼と同じ匂いがしますおわり。

コメント欄でガミラス艦に言及している人を見つけて驚愕(しかもちゃんとSpace Battleship YAMATO (2010年のじゃなくて1974年の)って書いてある)。メリケンオタ侮れじ。

Liberty Space Launch Vehiucle/ペガサスXLによりNuSTARが打ち上げられる/ボイジャー1号が恒星間空間へ脱出中?

Liberty Space Launch Vehiucle

http://www.libertyspace.us/

Liberty Space Launch Vehiucle(以下LV)は、ATKエアロスペースとEAD傘下の北米アストリウムが共同で提案しているスペースシャトル後継の有人ロケット。2011年2月にSpace Act Agreementに提案するも却下、しかし同年9月、CCDev-2に無資金ながら採択という逆転劇を演じる。

LVは、Ares-1の2段目をJ-2XからアリアンVの1段目で使われるヴァルカン2に変更したもので、一歩引いてみると欧州からの支援を得る形で再出発した、と言える。NASAとしては、一度没にしたコンステレーション計画に、また税金で支援するのは無理だが、自主開発で実用機まで完成させる分には使ってやらんこともない的な立場か。
LMもオリオン繋がりで深く関与してる。

1段目はAres-1とまんま同じで、スペースシャトルのRSRMを5セグメント化し、燃焼時間を180秒あるいは150秒に延長したものと言われている。スペースシャトルでは120秒間作動して高度約45kmで切り離すというものだった。
5セグメント化による強化は、スペースシャトル時代にも検討されたプランだが、推力などの詳細は伝わってきていない。

J-2Xと同じくヴァルカン2も液酸液水であり、2段目は1段目のRSRMより太い。つまりトップヘビーで、Ares-1の時に指摘されたの同様、進行方向に対して空力中心と重心の関係が逆になっている。この辺は実験打ち上げで払拭されたんかしら。
ヴァルカン2に関しては、アリアンVの9年間48連続打ち上げ成功(継続中)という実績があり、信頼性は世界で最も高いレベルにある。低コストと言われるがまだ燃焼試験とかやってるJ-2Xよりは、余程堅い。

有人部分については、各社の有人カプセルなどどれでも搭載可能なのが売りとしていたが、自前でもオリオンの有人カプセルを元に開発を進めることになった(後述)。

試験機は、2014年に無人試験打ち上げ、2015年に有人試験打ち上げ、それぞれ2機ずつ。2016年から実運用予定とされていたが、新しいところでは初打ち上げが2015年になるとも書かれてる。

・ヴァルカン2の極低温試験が完了

http://atk.mediaroom.com/2012-06-28-Liberty-second-stage-one-step-closer-to-production

2段目に関するプレスリリース。試験機用の構造試験に加え、極低温試験が完了して、製造準備が整いつつある。

LVの2段目はアリアンVの1段目と基本的に同様だが、タンクの外殻が厚肉化(数倍とある)されているとのこと。ギリギリで設計されるロケットとしては大きな設計変更となり、機械加工にしろ溶接にしろ製造上の難易度が高くなるのは言うまでもないが、製造技術的に問題は生じなかったとしている。

・有人カプセルの開発と詳細

http://www.flightglobal.com/news/articles/atk-announces-capsule-for-liberty-launch-vehicle-371644/

http://atk.mediaroom.com/2012-07-03-ATK-Unveils-Unique-Liberty-Capability

2009年にNASAへテストベッドが引き渡されていたもの。commercial crew integrated capability (CCiCap)を狙う開発のスタートは、5月に決まった。
外殻をATKが、中身のシステム設計とインテグレーションはLMが担当する。ミッションアボートシステムなども含め、オリオンMPCVの派生型に近い。同じサービスモジュール使えたりするのかは不明。

LVの専用有人カプセルは、最大7名が搭乗可能なcomposite crew moduleとLiberty Logistics Module (LLM)からなる。前者はLMが手がけたオリオンの有人カプセルの技術が投入され、後者は他にない貨物輸送能力を特徴としている。

LLMの直径は15ftで、NASAのMulti-Purpose Logistic Module設計規格に準拠する。つまりISSの科学ラックなどをそのまま収める事が可能で、最大4基が積載できる。またこれを与圧区画とした場合は最大ペイロード5100ポンドとなる。
有人カプセルに加えて、これだけのペイロードを同時に輸送可能なものは他に例がない。他社だと2回の打ち上げを要するケースでも1回の打ち上げで済む‥というのがATKの主張。再使用回数は10回。
カプセルの下、エンジンと挟まれた円筒形の空間に貨物区画が収まり、だるま落とし的な造りになってるのがわかる。

打ち上げ機の規模としてはデルタIVヘビー相当(LEOへ22ton、Ares-1より若干小さい)なので、これぐらいできて当然と言われればそれまでであるが、再使用できる点は違う。

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ペガサスXLによりNuSTARが打ち上げられる

http://www.orbital.com/NewsInfo/release.asp?prid=815

http://www.space-travel.com/reports/Orbital_Launches_Company_Built_NuSTAR_Satellite_Aboard_Pegasus_Rocket_for_NASA_999.html

6月13日にNuSTARが打ち上げられた。打ち上げに使用されたのはペガサスXLで、NASAからオービタル所有のトライスター(Stargazer)に搭載されて準備中の写真が公開されている。

http://www.nasa.gov/mission_pages/nustar/multimedia/pia15633.html

NuSTARは、NASAのSmall Explorer (SMEX)シリーズに属する衛星の一つで、X線望遠鏡を積んでいる。小型低コストで効率の良いミッションをこなせるように考えられており、管制はゴダード宇宙センター。NuSTARについてはカリフォルニア工科大などが主体で開発している。

http://www.astroarts.co.jp/news/2012/06/14nustar/index-j.shtml

1990年以来のペガサスの打ち上げ実績にはNASAの科学ミッションが数多く含まれ、小型の打ち上げ機としては唯一、Payload Risk Category 3(最も低リスクという分類)に認定されている。
打ち上げにStargazerが使われるようになったのは1994年から。この頃はX-34の試験にも使う予定だった。

http://www.orbital.com/NewsInfo/Publications/L1011.pdf

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空中発射型の打ち上げシステムは、ペガサス以外に継続して使われてるものは存在しないと思うが、近年は小型衛星や超小型衛星クラスでもできることが増えたことを背景として、ペガサスよりも小規模なシステムの開発を目指す動きがある。

DARPAのAirborne Launch Assist Space Access (ALASA)は、2011年11月に公表され、ボーイングの受注が決まった。

http://www.space-travel.com/reports/Boeing_Receives_DARPA_Airborne_Satellite_Launch_Study_Contract_999.html

https://www.fbo.gov/index?s=opportunity&mode=form&id=0ad6397acb2e17d4666acfe227d1b82b&tab=core&_cview=1

要求はされている打ち上げ能力は、重量100ポンドクラスとマイクロサット級。

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ボイジャー1号が恒星間空間へ脱出中?

http://www.nasa.gov/mission_pages/voyager/voyager20120614.html

続報ないのでとりあえずメモ。

6月14日、ボイジャー1号周辺の銀河系からの荷電粒子(宇宙線)の量が、これまでに比べて急激に増加しているとの発表。
2009年1月から2012年1月までの増加率は25%に留まっていたが、5月7日からの1週間で5%増加し、1ヶ月では若干緩やかになって9%の増加が確認されている。
太陽系最外縁部の直接観測データなどは前例がないため、全て予想にしかならないが、この傾向が続くならヘリオスフィアの外に出つつあることを示していると考えられる。

荷電粒子以外に大きな指標となり得るのは、磁力線の方向(黄道面を基準にすると「東西」から「南北」に変わる)であるが、こちらはデータの分析に数ヶ月単位の時間を要するため、結論はまだ先のことになる。

http://www.nasa.gov/multimedia/videogallery/index.html?collection_id=57911&media_id=146960051

NROが余剰の偵察衛星2基をNASAに移管する/Kinectを人工衛星に搭載する試み/X-37B OTV-2の着陸予定が発表される

NROが余剰の偵察衛星2基をNASAに移管する

http://www.gizmag.com/spysatellite/22813/

NROは、余剰となった偵察衛星2基をNASAに移管した。これはニューヨーク州ロチェスターにて保管されているもので、宇宙に向ければ光学観測に用いることができ、HSTよりも新しく、高性能な機材を搭載可能となる。ただしNASAではHSTの代替として使うわけではなく、超新星観測、太陽系外惑星の探査や、ダークエネルギー関連の研究といった用途での運用を考えている。HST後継は依然としてJWST計画が進行中だが、計画はHSTと同じく難航、遅延を重ねて現在に至る。

2つの衛星は、機密指定が解かれたとは言え、国防総省とNROが軍事を含む情報収集用途で製造・保管していたものである為、偵察衛星としての能力や運用はもちろん、元々搭載されていた機材や、その材料についての情報も明らかにされていない。公式情報に基づく推測として、KH-11(1975年運用開始)かその派生型、おそらくは1990年代かもう少し新しい時期に製造された可能性が挙げられている。

宇宙望遠鏡としての衛星の外見は、NASA広報の説明を引用すると「短くて太いHST」といったもので、本体重量は1700kg。主鏡直径94インチはHSTと同じだが、焦点距離は短く、その分全長も短い。これはHSTよりもずっと広い画角を有することを意味する。また、HSTにはない補助鏡によって焦点操作が容易になっていたり、後部の機器設置スペースが広くとられている等の特徴がある。
その他の仕様はスライドの内容を参照。

http://www.gizmag.com/spysatellite/22813/pictures#2

NASAに移管された当初は、望遠鏡部分以外の部分、太陽電池パネルから姿勢制御システムに至る人工衛星として必須の部品の大半が取外された状態。おまけに移管は文書による通知のみ、輸送費用も移管後の保管費用(2基で年間100万ドル)もNASA持ちで、取扱いに苦慮した時期があったようだ。

改修案を強く後押ししているのは、ゴダード宇宙センター主導のWFIRST(Wide Field Infrared Survey Telescope)計画の宇宙望遠鏡に流用するというアイディアだった。WFIRSTでは、観測機材の目玉として新造の宇宙望遠鏡(主に近赤外線観測用)を計画していたものの、打ち上げ時期は早くとも2024年(当初2020年から変更。L2点に投入する都合でランチウィンドウの制約もある)、コストは15億ドルまで膨れ上がり、計画自体が危ぶまれる状況になっていた。NASA内部では航空機搭載の望遠鏡で代替できないかという検討もなされたが、能力不足との結論に至る。
この状況に対して偵察衛星改修案では、2億5000万ドルの経費節減が可能となる。打ち上げ時期も2020年まで前倒しできるということで、一石二鳥の妙案になった。これには静止軌道での運用に変更されることも関係しているが、予備機も手に入るし悪い話ではない。
WFIRSTより不細工だけど。

http://wfirst.gsfc.nasa.gov/

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Kinectを人工衛星に搭載する試み

http://www.sstl.co.uk/news-and-events?story=2025

http://www.flightglobal.com/news/articles/surrey-satellite-turns-to-xbox-for-latest-technology-372661/

http://www.gizmag.com/strand2/22752/

Surrey Satellite Technology Limited (SSTL)は英国のサリー大学との産学協同研究を行っている民間企業で、Kinectを搭載した小型の人工衛星2機の打ち上げと試験を計画している。Kinectを衛星同士のドッキング制御などに応用する目的なので、2機は一対で打ち上げる必要がある。

大型衛星のドッキング技術はある程度確立しているが、能力の限られる小型衛星同士が自律的に結合できるようになると、各々の人工衛星という独立した装置から、より大きなシステムを構成することが容易になり、メンテナンスの面でも大きなメリットがある、というのが研究の題目。実用化されれば、例えば故障部分を分離して入れ替えたり、能力を向上するといったイメージであって、マイクロサット以下の規模の衛星からなるモジュール化衛星のようなものに発展する可能性にも期待している。また人工衛星とデブリとの衝突・損傷の危険性は日々増大しているが、小型衛星の集合体の方が、単体の大型衛星よりも損傷などのトラブルへ対処しやすい。

SSTLではSTRaNdという一連のナノサットを開発。中身にスマートフォンを流用したSTRaNd-1は、10cm×10cm×30cmの直方体で、10cm×30cmの4面に太陽電池セルが貼り付けられている。制御系などには、スマートフォンのカメラ、通信装置、モーションセンサが利用され、積極的に使い道が無いのはタッチスクリーンぐらいであるが、これも宇宙放射線の検出に使えるかもしれないというから恐れ入る。打ち上げ時期はピギーバックペイロードの空席次第となり、うまくいけば今年後半とされている。

STRaNd-2は-1と同様の外装を持ち、Kinectの中身のカメラとIRセンサを組み込む。前述のように2機一組が製作される予定で、このセンサを利用して自律的なドッキング操作を行わせる計画。
Kinectの空間認識を自律飛行などに応用する試みは、既にMITがクワッドローターのマイクロUAVで行っており、それがヒントになったとの事。こうした機械では、ハードウェアと同等以上に画像解析アルゴリズムも重要であるが、その開発費用も全部込みでのあの価格、産業機械や航空宇宙向けとは桁の違う量産体制だからこそできたというのが実感できる。

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X-37B OTV-2の着陸予定が発表される

http://www.flightglobal.com/news/articles/vandenberg-afb-readies-for-x-37b-landing-372490/

現在軌道周回中のX-37B OTV-2は、2011年3月に打ち上げられている。今回の発表では、6月中旬までに(天候その他の条件がクリアされれば)ヴァンデンバーグAFBへ着陸するとのことなので、軌道を周回した期間は15ヶ月ちょっとということになる。OTV-1による1回目が2010年4月から10月までだったが、今回は設計当初の仕様と言われた270日間を大きく上回った。
3回目の打ち上げとなる次回は、X-37B OTV-1が再度使用される計画で、時期は今のところ秋頃と言われている。ミッション内容が機密指定になってるのは変わらず、はっきりしたことは当事者以外判らない。なおOTV-1は1回目のフライトを終えた後、ヴァンデンバーグAFBに留まっていた。再使用のためのリファービッシュ作業のほか、搭載機材のチェックなどが行われたと推測されている。

100 Year Starship Initiative/Dragon打ち上げ成功、ISSとドッキングを果たす/Dream Chaserの飛行試験が始まる

100 Year Starship Initiative

http://100yss.org/

http://www.gizmag.com/darpa-funds-100-year-starship/22662/

100YSSと略称される、DARPAの新しい無駄金プロジェクト。来る22世紀、恒星間航行を実現すべく動き始めた。
50万ドルの資金はドロシー・ジェミスン財団というところに提供されることが決まっている。この財団で100YSSへの提案を作成した中心人物は元NASAの宇宙飛行士、メイ・ジェミスン博士で、恒星間航行に関する民間レベルでのイニシアティブを構築する事になる。
初年度の主要な目標は、まず投資を募り、メンバーを揃え、関連する一般の研究プロジェクトに対する助成を通じて、恒星間探査の構想を発展させる。一般の研究と簡単に書いたが、これは理数系と工学系に留まらず、恒星間航行を実現する上で検討対象となるであろう哲学、社会文化、経済など広範囲にわたる。そのあたりは公開のシンポジウムを開催して取りまとめる計画となっており、今年は9月13日から16日まで、ヒューストンで催される。

また100YSSの中では長期的な理論研究、技術開発を担う研究所も設立する予定。

DARPAの無駄予算獲得能力が半端なさすぎて最早笑えない。いやむしろNASAの政治力が衰弱しすぎてヤバイという感じか。

この手の計画としてはレーザ核融合のダイダロス計画、原子力ロケットのオリオン計画が有名だったが、もはや若い人は知らないのではないかというレベルの古さになってしまった。
オリオン計画の方では、ダイソン博士が恒星間航行までを想定した有人宇宙船を検討している。40年以上前のことだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Project_Orion_(nuclear_propulsion)

初期の検討では船体は直径20kmの半球状で、最大0.00003g加速を100年間持続し、巡航速度は光速の0.33%、1330年かけてアルファケンタウリまで到達するといったものだったが、後には直径100mで最大1g加速を10日間持続し、巡航速度は光速の3.3%、アルファケンタウリまで133年と効率を100倍ぐらい改善したプランになった。
現存する技術で実現可能ということになっている。

ダイダロス計画の方は、今でもやや微妙かなあ。レーザ核融合の進歩がないわけではないが。

世代型恒星間宇宙船にせよ、冷凍睡眠にせよ、有人だといろいろ厄介なことも多い。
投資を集めるっつーのも、相当無茶と言えば無茶だよな。観測データを売り買いするにも、100年200年の契約になるだろうし。SFではさらっと流されたりルール変更で対応されがちな経済的な側面は興味深いが、現実は厳しい。まして世界恐慌一歩手前が延々続きそうな現状では、どんなもんなのか。

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http://www.gizmag.com/engineer-proposes-uss-enterprise/22532/

ついでだからぶっちゃけネタとしか思えんエンタープライズ建造構想も。

匿名の技術者BTE-Danは、1兆ドル以下の予算と20年の建造期間でスタートレックに出てきたUSSエンタープライズみたいな惑星間宇宙船を造れると主張している。BTE-Dan氏がGen1 Enterpriseと呼ぶこの宇宙船は、主推進機が1.5GWのイオンエンジンで、地球から月まで3日、火星まで90日で到達可能という。

円盤状のブロック人工重力区画とし、トラクタービームは無理なんで艀みたいな着陸機を積む。

http://www.buildtheenterprise.org/

公開したら鯖がパンクして増強したとか何とか。
確かに労作ではある。一見の価値はあるがしかし、現状に痺れを切らしたトレッキーがマジギレしてやっちゃった感が凄い。火星有人探査ですらあと最低でも四半世紀は無理っぽいからな。

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Dragon打ち上げ成功、ISSとドッキングを果たす

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-reaches-iss/22685/

最後の最後でちょっと延期が入ったものの、5月22日の東部時間3時44分、Dragonは無事に打ち上げられた。3日後の5月25日、東部時間9時56分、エクスペディション31のクルーが操るISSのロボットアームにより捕捉され、ドッキングに成功している。何度も報じられている通り、民間開発の宇宙船としては初の快挙となった。

 

Falcon 9 Heavyを使った打ち上げで、最初の顧客としてIntelsatとの契約が締結されたり、Space Xの勢いは凄い。

http://www.flightglobal.com/news/articles/spacex-signs-intelsat-as-first-falcon-9-heavy-customer-372429/

Space Xに関しては既存技術の活用でコスト削減で云々~という報道があちこちで見られたが、その既存技術がどこから来たか、技術基盤が固まるまでの膨大な投資を支えたのが何なのかは、あまり触れられてなかった。公開論文だけで現物作れれば世話ねーよみたいな。

今更であるがFalcon 9 Heavyは、1段目のFalcon 9の1段目と同様の増設ブースタを2基追加した形態となる。今のところ専用の射点はヴァンデンバーグAFBに建設中で2013年半ばに完成予定。将来はFalcon 9と同様にKSCでも打ち上げたいとしている。ヴァンデンバーグは極軌道投入に適した射点となる。

打ち上げ時期と射点は未定。インテルサットの発表ではヴァンデンバーグは使わないとされているので、そこから推測すると打ち上げ時期は2013年よりも後で、SpaceXが建設中のブラウンズヴィルの新打ち上げ施設かKSCということになる可能性が大。

まだ詳細は交渉中のようだ。

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Dream Chaserの飛行試験が始まる

http://www.flightglobal.com/news/articles/corrected-sierra-nevadas-dream-chaser-begins-flight-testing-372483/

シエラネバダ・コーポレーションが開発中のリフティングボディ型宇宙機Dream Chaserは、先頃飛行試験を開始、CCDevの4つのマイルストーンを通過したと発表。これには落下試験による着陸脚の確認、分離装置の試験が含まれる。
飛行試験はごく初期の段階で、コロラド州デンバー近郊のブルームフィールド飛行場から、S-64に吊り下げられてのキャプティブ・キャリー試験を実施した模様。次の段階ではエドワーズAFBに移動し、今年後半にも滑空・着陸試験が行われる予定。approach and landing test (ALT)と書いてある。

http://www.flightglobal.com/news/articles/sierra-nevada-completes-dream-chaser-preliminary-design-review-372702/

PDRも着々と進んでいるようだ。

 

SpaceXのDragon宇宙機が4月30日の打ち上げを準備/MT AerospaceがIXV再突入体の製造で下請契約/サウスウエスト研究所(SwRI)がXCORと契約/嫦娥3号以降の嫦娥計画について/ROSCOSMOSが2030年までの宇宙計画の草案提出

SpaceXのDragon宇宙機が4月30日の打ち上げを準備

http://www.space-travel.com/reports/SpaceX_NASA_readies_for_April_30_launch_to_ISS_999.html

3月20日、NASAのISSマネージャであるMike Suffredini氏は、Dragonの打ち上げ準備が、4月30日を目標として進行中と述べた。当初は2月の打ち上げで計画していたが、技術的問題の為に延期された経緯がある。

もう一方の当事者、SpaceXの広報は正式な打ち上げ日について、最終承認が4月16日のFlight Readiness Reviewの後になると言っている。

このフライトの目的は、ISSへのフライバイ(距離2マイル程度)を含む軌道周回と、ISSのロボットアームを使用した係留など。試験や検証のスケジュールを消化して再突入した後はフロリダに着水、回収される段取りとなる。
NASAが推進する民間開発の有人宇宙機としては、これが最先端を走ってる状況に変わりは無い。

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MT AerospaceがIXV再突入体の製造で下請契約

http://www.space-travel.com/reports/MT_Aerospace_to_manufacture_flight_hardware_for_IXV_reentry_vehicle_999.html

IXVはESAの計画の一つで、大気圏再突入の実験を含んでいる。主契約はタレス・アレニア・スペース・イタリアで、今回ドイツのアウグスブルクにあるMT Aerospaceが下請で実験機の製造を行うことで契約締結された。

IXYの再突入体はセラミック製の全長0.8m、重量37kgと小型軽量な機体で、リフティングボディの後端にフラップが付いている。
MT Aerospaceの技術は熱防護システムの方で、特許取得済みの耐熱性繊維強化セラミックが使用される予定。

飛行計画としては、ヴェガで打ち上げられた後、高度450km付近から再突入して最大速度は7.5km/s程度、最高温度1900℃になり、最大gは5.7と計算されている。
今のところ2013年後半までに製作され、2014年に実験がおこなわれる見込み。

静止軌道付近まで上がるので、かつて日本で計画されたDASH(H-IIの打ち上げ失敗で終了)に近い感じだ。

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サウスウエスト研究所(SwRI)がXCORと契約

http://www.space-travel.com/reports/SwRI_and_XCOR_agree_to_pioneering_research_test_flight_missions_999.html

2011年、SwRIとXCORは、6回のLynxを使用した弾道飛行ミッション(オプション契約で3回追加)を行う協定に合意した。明けて2012年、1または2回のミッションについて正式契約が締結されたとのこと。
これにより、通常の商業ミッションよりもSwRIの科学ミッションが先に実施される公算となった。

SwRIからはアラン・スターン博士をリーダーとして3名が参加する。2010年から0g飛行や遠心分離機タイプの高g訓練、F-104への搭乗といった準備を続けてきたそうだ。
弾道飛行による微小重力実験は、これまで全く不可能だったというわけではないものの、コストの割に微小重力状態の継続時間が長いというのも大きなメリット。
加えて、研究者が直に操作できるというのは大きいみたい。単に実験装置を航空機に積んで飛んでもらうよりも、大きな成果が期待できる。

この発表は2月末のNext Generation Suborbital Researchers Conference (NSRC) 2012というので行われたみたいで、XCOR関係ではペイロードインテグレーターの新規参入も報じられている。

http://www.space-travel.com/reports/XCOR_Announces_New_Lynx_Vehicle_Payload_Integrators_999.html

ペイロードインテグレーターは、Lynx用の実験装置などを開発・標準化して、切り売りする担当。新たにスペインのEMXYS、テキサスA&Mの宇宙工学研究センター、惑星科学協会といった名前が挙がる。これまでSwRIなど学術系を中心に7つほどの組織が関わるものになっており、地道に営業活動を結実させつつあるようだ。

XCORはペイロードインテグレーターを統括して、会議を通じて情報を共有したり、各種の調整、とりまとめを行う。

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嫦娥3号以降の嫦娥計画について

http://www.spacedaily.com/reports/Chinas_Lunar_Docking_999.html

中国の月探査関連は嫦娥計画と名付けられており、嫦娥2号までの周回探査機は一応の成功に終わっている。
これに続くのは表面探査ということで、嫦娥3号の準備が進行中。

嫦娥3号は2013年に打ち上げ、月面探査車の投入を含む月面着陸を目指す。その2年後、2015年には嫦娥4号。これは3号と同様のミッションが計画されており、事が計画通りに進むなら、さらに2年後、2017年の嫦娥5号で、サンプルリターン計画を遂行することとなっている。

着陸機に関しては発表当初、旧ソ連が1960年代と1970年代を通じて月面探査に投入した、ルナー探査機の影響が指摘された。月面車ルノホートが投入可能である点や、ルノホートの代わりにサンプルリターン用の機材と小型ロケットが搭載可能である点も同じであったりした。

が、嫦娥5号のサンプルリターン計画は、後に変更されたようで、現在は月軌道を周回する宇宙機(輸送機)と、サンプルリターンのための着陸機を別々にする形をとる、小規模なアポロ計画のような方針になっているという。

どのようなハードウェアになるのかはまだはっきりしていないが、想像図を見た感じでは、輸送機と着陸機を別々に打ち上げ、地球軌道上でドッキングして月に向かうような感じではある。

変更されたとすれば、単により大きな成果を求めたというよりも、嫦娥5号を将来の月面有人探査へのステップとして位置付けた、という可能性が高い。神舟8号などのランデブー実験を、その前段階と捉えることもできるだろう。

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ROSCOSMOSが2030年までの宇宙計画の草案提出

http://www.space-travel.com/reports/Russia_Drafts_New_Space_Exploration_Strategy_999.html

3月13日のコメルサント・ビジネス紙が報じたところによると、ロシア宇宙機関ROSCOSMOSは、2030年までの宇宙関連戦略についての草案を、政府へ提出したという。

この草案によると、目標とするのはロシアの宇宙産業が、将来にわたって世界トップ3のレベルを維持し、それを確実なものとすること。
また、2011年の宇宙市場におけるロシアのシェア(?)が0.5%に留まったのを受け、2030年までは10%まで引き上げる方針を示した。衛星含めた金額ベースの事かしら。

衛星関連の具体的な目標としては、2020年までに人工衛星の完全国産化(特に電子機器を指す)を達成し、2030年までには軍民合わせたロシア国内需要の95%を満たすとする。

探査関連では、月への有人飛行、金星探査と木星探査を挙げ、火星への恒久観測ステーション建設計画は、国際共同で行う予定としている。

その他、軌道上のゴミ掃除とか、いわゆるNEO対策にも注力するとのこと。

とりあえず思いついたこと全部書きましたという感じではあるが、同紙は大統領直下に調整のための独立機関が設けられる可能性を指摘している。

この10年は前進するどころか失敗が続いちゃってるからなあ。辛うじてGLONASSは面目を保ったが、Kliperはどっかいっちゃったし…

NASA主導の次世代大型旅客機研究の中間報告

NASA主導の次世代大型旅客機研究の中間報告

ここでも1年前に取り上げていた。研究結果の一部と今後の展開について。

http://jaxonz.pv.land.to/wolfpack/archives/998

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オープンローターエンジンの課題は依然として騒音

http://www.flightglobal.com/news/articles/nasa-concludes-noise-remains-a-challenge-for-open-rotor-366802/

NASAのグレン飛行研究センターでは、2011年10月までに2年間のオープンローターエンジン初期研究計画を完了。調査結果の最終的なまとめは今年後半となるが、50回目となるAIAAの科学ミーティングで概要が発表されている。

発表内容は大きく2点。1点目は省燃費性で、現存のGTFよりも9%ほど省燃費であること。もう1点は騒音で、同じGTFとの比較では12dBほど騒音が大きいこと。
この研究において使用された機材はMD-90(巡航速度Mach 0.78で航続距離3250nm、162席)で、2機が使われた。1機にはGEが試作したオープンローターエンジンを推進式に搭載したとのこと。かつてMDが提案してたMD-94Xだかを懐かしく思い出す人も少なくないだろう。

詳細なデータは未公表であるものの、近年のトレンドである「環境対応」には低騒音も外せないファクターであるため、ここが何とかならないと、厳しいかもしれない。ターボファンに対してなら3割とか4割の燃費改善と言われてたけど、GTF比ではその差は縮まってしまう。

オープンローターエンジンは、プロップファンとして1980年代に盛んに研究されていた。高バイパス比ターボファンの最終形態みたいな感じで出てきたが、実際にやってみると、今回も指摘されてる騒音に加え、振動などの問題が発生し、うまくいかなかった。現在までプログレスD-27以外、実用機への採用例はない。

http://www.ivchenko-progress.com/welcome.do?id=46

ついでなのでA400MのエンジンTP400-D6の公式データも。

http://www.europrop-int.com/pages/tp400/technical_details.htm

西側ではGEとP&Wが取り組み、後者はアリソン部門買収を通じてRRが引き継ぐ、という形で現在も開発継続中。

GEが改めて新型オープンローターエンジンを提案したのは2007年。原油価格高騰と関連している。NASAはこれを、亜音速固定翼機の研究計画の一部として選定した。この計画は、2025年までに更なる静粛性と低燃費を実現する前提で、技術的ブレークスルーを達成しようというもの。

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この計画については別記事あり。

http://www.flightglobal.com/news/articles/nasa-study-shows-aircraft-technologies-that-increase-energy-efficiency-nearly-50-366811/

昨年からボーイング、ノースロップグラマン、LMの3社に概念研究を委託しており、機体規模はB.767程度で、騒音は30~40dB低減、燃費率は40~50%改善というもの。次の段階では1社を選定し、B.737程度の規模のデモンストレータを2016年に飛行させるということになっている。

3社とも既存の形態から大きく外れたものを研究しているが、それぞれは今まで露出していた概念図の延長上にある。つまりボーイングはBWB、ノースロップグラマンは全翼、LMはボックスウイングといった具合だ。いずれも複合材を多用したものになる。
これらとコンベンショナルな形態(tube-and-wingと呼ばれる)の機体に、同じ技術を適用した場合どうなるかというのも発表されており、2025年までに利用可能となるはずの技術(層流制御、重量低減、超高バイパス比ターボファンと、低エミッションを達成する燃焼室などのエンジン技術および搭載方法といったもの)を取り入れると、全体で43%ほど効率が改善するとしている。うち、1/3程度はエンジンの改良によるものだそうだ。

結果、燃費率改善はNASAの当初掲げた目標である50%に達せず、騒音低減についても12dBほど目標に足りないそうだ。
この数字は、B.707あたりに始まる現行旅客機の設計の古さを思えば、意外と良好?という印象も受ける。騒音は仕方ないとして。

http://www.flightglobal.com/news/articles/funding-cuts-put-nasa-commercial-x-plane-on-hold-366840/

というような話であるが、予算の都合がやっぱり厳しいらしく。AIAAの発表では同時に、2016年初飛行予定のデモンストレータ、subscale test vehicle (STV)のロンチは遅れる見込みとされている。
なんとか予算が付くように働きかけていくしかないが、財政を鑑みるに復活は簡単なことではなさそうだ。

CST-100の組立について/X-37Bは何をやっているのか/ロシア関連

CST-100の組立について

http://www.gizmag.com/boeing-to-construct-cst-100-at-kennedy/20418/

ボーイングは、NASAおよびスペース・フロリダと、KSC内のOrbiter Processing Facility-3(OPF-3)でCST-100の組立と試験を行うことで合意、協定に調印したとのこと。施設の利用期間については15年契約で、オプション5年。
CST-100は7人乗りの有人カプセルで、2015年に最初の試験飛行を行う事になっている。試験ではアトラスVを使うが、その他の大型ロケットにも適合可能となるように開発中。
ISSへの人員輸送のほか、実現すればBigelowの民間宇宙ステーションなどにも使うことになるかもしれない。

スペースシャトルのために建設された専用の施設はKSC内に幾つかあるが、スペースシャトル退役後にそれらをどう利用するかはまだあまり決まっておらず、今回のOPF-3に関する協定が最初に具体化した再利用プランとなる。この協定は1年前から交渉が行われていたようだ。2015年までに創出される雇用は500人ほどとなる。
スペース・フロリダというのはあまり聞き慣れないが、この施設をNASAから引き継いだ国家機関らしい。an aerospace economic development agency of the stateって書いてある。

http://www.spaceflorida.gov/

具体的な手順としては、まずOPF-3のスペースシャトル専用の設備を、約1年かけて全て撤去する。すると総床面積にして2694平方メートルのフロアが丸々使えることになり、CST-100を数機同時に組み立てるのに十分な広さとなる予定。

アトラスVの最先端にCST-100が乗っかった打ち上げ想像図は初めて見た気がするなあ。

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X-37Bは何をやっているのか

http://www.space-travel.com/reports/Come_Home_X_37B_999.html

2度目に打ち上げられたのが今年3月はじめなので、11月末までいくとそろそろ270日になる。270日というのは公称の軌道上での活動期間なため、そろそろ任務を終えて帰還するはずだが、半ば機密扱いのため情報が流れてきてないのが現状。

情報がないのをいいことに様々な憶測が語られているわけだが、はっきりしたことは非公表のままだ。この記事では、それらの憶測の信憑性を論じたりしている。ことにペイロードが何なのか、という点についてはいろんな事が言われてる。
代表的なものとして、①対地または対軌道上物体の監視カメラ、②軌道上で衛星に燃料補給や整備を行い得るロボット、③ASATや対地攻撃用兵器、を挙げているが、もっともらしいのはカメラぐらいで、それにしても証明はできないのが実情。

で、この記事を書いた人の予想は、もっと普通の、プチ宇宙実験室的な使い方ではないかとする説。つまり試験機材や、衛星用の機器などをペイロードに積んで、動作を検証したりしてるというもので、それだけ最近の偵察衛星とかの失敗を研究する必要性が高まってるのではないかという説。
つまり、衛星の大型化・複雑化が進んだ結果、軌道上で所期の性能を発揮できなくなっている。だからコンポーネント単位ででもきちんと軌道上の環境に曝して持ち帰って分析・検証し、信頼性を回復することが欠かせないであろう…という見解になる。

また、記事を書いた人は、この分だと270日を超えて運用される可能性も高いとみている。

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宇宙ついでに今月初めのロシア関係ニュースを少し拾っておく。

MARS 500プロジェクトが成功裏に終わる

http://www.marsdaily.com/reports/Moscows_Mars_pioneers_hail_success_gripe_at_space_rations_999.html

11月4日、MARS500プロジェクトは、520日間の全日程を終了した。

微妙に関連して、米国では火星探査のメンバーに女性を入れるかどうかという議論が。

http://www.marsdaily.com/reports/Mars_explorers_will_include_women_experts_say_999.html

まあ結論ありきの議論という感じだが。

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ロシアのフォボス探査機が打ち上げ失敗、来月大気圏突入か

http://www.marsdaily.com/reports/Russia_Mars_probe_considered_lost_report_999.html

ロシアにとっては、今年はガガーリンによる人類初の軌道周回飛行から50周年という記念すべき年だったのだが、プロトンが失敗し、ソユーズが失敗し、火星探査機も、という大変な年になってしまった。
現場の作業者や技術者の世代交代に失敗し、それが表面化し始めたとすれば、事態は相当深刻だ。

ロシアの火星探査機って、直近でも失敗してるんだよな。15年前だけど。

http://www.marsdaily.com/reports/Russia_aims_for_first_conquest_of_Mars_999.html