2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ/F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成/2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる/F-15SAが2月20日に初飛行/ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

USAF関連。

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2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ

今年はB-2配備20周年。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123336776

2月19日、ミズーリ州ホワイトマンAFBにおいて、B-2配備20周年を記念する式典が催されている。509th BW指揮官、Thomas Bussiere准将の訓辞によるとB-2は過去4つの武力紛争(後述)に投入されたとのこと。
また、4月1日はIOC獲得から16年の節目にあたり、12月17日はライト兄弟の初飛行の日(1908年)として有名だが、509th BWの前身、509th Composite Wingが1944年にユタ州Wendoverで編成された日でもあり、更にホワイトマンAFB所属の最初のB-2、スピリットオブミズーリが配備された日でもある。

B-2の起源を辿れば1979年スタートのATB計画にまで遡る。言うまでもなく当時は冷戦の最中であり、核戦力三本柱いわゆるトライアッドの一つを担うものとして考えられていた。今では核爆撃というオプションは現実味を失いつつあるものの、最初から高度のステルス性を与えられていることで、今なおB-2は最も厳重に防御された領域への侵攻すら可能で、核戦力としての意義を保持し続けている…と、少なくともUSAFの公式見解はそうなっている。

1980年代に設計、製造が進められ、1988年初公開。75機の製造が計画されていたが旧ソ連崩壊により21機に削減され、1機が事故で失われて20機となり現在に至る。機体名はスピリットオブアメリカとキティホークを除けば州名が付けられた。

戦略爆撃機として配備された後、最初の改修は通常兵器の運用能力の付与となった。そして1999年、コソボでNATOの作戦に参加。このときのソーティ数はNATO軍全体の1%に過ぎなかったが、目標の11%を攻撃したとされている。
2001年9月11日以降は、アフガニスタンで「テロとの戦い」が始まる。
2003年、「イラクの自由」作戦において開戦後最初の爆撃(“shock and awe” campaign)を行う。戦争全体では投下した爆弾の量は、100万ポンド以上に達した。
2012年、NATOの対リビア軍事行動である「オデッセイの夜明け」作戦に3機が参加。25時間かけて欧州へ進出し、航空機のシェルター破壊任務を遂行、2000ポンドJDAMを45発投下した。

 

同じ4月1日にはスピリットオブフロリダが7000飛行時間を記録。

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123343279

この機体は2007年5月に最初に5000飛行時間に達した機体でもあり、6000時間を記録したのは2010年1月で、これも最初だった。

 

最近の改修計画としては、衛星通信に関するものと自己防御システムに関するものがある。

前者は5月15日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10032612

Advanced Extremely High Frequency (AEHF)通信衛星に対応するための改修で、現時点では地上での実証試験が進められている状態。レドンドビーチのノースロップグラマンの施設で4月15日にデモンストレーションを行ったとある。
自社製のAESA型アンテナと海軍のマルチバンド端末により、AEHFの模擬ペイロードを使って行われた。当然ながら、メインはアンテナ。この改修については他にもいろいろなものが含まれてる件は前にも書いたので省略。

現用のMilstarの後継となるAEHF衛星は2001年から開発が始まっているが、まだ6機中2機しか軌道に上がってない。

http://en.wikipedia.org/wiki/Advanced_Extremely_High_Frequency

後者は2月14日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10021861

Defensive management System (DMS)と呼ばれ、現在TDフェーズ2という段階にある。ノースロップグラマンがシステムインテグレータとして受注しており、想定される脅威・環境に対抗可能なシステムを設計、アンテナやアビオニクスといったハード、ソフトをとりまとめてEMDフェーズに備えることになる。新規開発の技術を避けて、実証済みの技術を用いて開発リスクを下げると称している。

 

B-2が20年目を迎えた一方、それよりも更に以前の爆撃機もアップグレード改修が行われてる。

B-1の最新の改修については、

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123334294

337th TESが、Sustainment-Block 16(SB-16)と呼ばれる大規模な改修計画の実証試験を担当する。B-1の改修としては最も大がかりなものとされ、Fully Integrated Data Link(後方操縦席のデジタルアビオニクス部分を変更してLink 16に対応、Joint Range Extension Applications ProtocolによりBLOSでも運用可)とCentral Integrated Test System(後方操縦席のコンピュータ交換とカラーMFDの追加)、Vertical Situation Display Upgrade(前方操縦席(パイロット席とコパイロット席)の2台のモノクロディスプレイを4台のカラーMFDに交換)など。

肝の部分はデータリンクで他はそれを使うためのUIの改善といった感じ。Link 16およびJREAPなどの実証にはUHF無線とLink 16のネットワークが必要なため、その設備を準備するのに50万ドルかかったとある。
337th TESの実証試験は訓練計画にも関連しており、7th BWでの訓練が円滑に行えるよう、機材到着前から整備班含め準備しているとのこと。実証試験は4月からエドワーズAFBで開始予定。

実際にFIDL、VDSUの試験で改修機を飛行させた経験があるパイロットは、全く新しい機体だと思って扱わなければならないぐらい、劇的に変わった、と述べている。

Sniper ATP-SEがダイスAFBのB-1に装備される。

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123345084

4月15日付。ATP-SEはネットワーク関係が強化されたもので、Link 16相当の双方向データリンクに対応するため、地上との交信・情報共有が迅速化され、中継能力も備えるようになる。前世代型は1方向データリンクだったので、その違いは大きい。
またデータリンクの情報を保存できるというのも新しい機能で、訓練や分析に有用なデータが残せる。
ATP-SEは前世代のATPと互換性があり、ATPが搭載可能な機種全て(USAFではB-52、F-15E、A-10、
F-16)に搭載できることになっているが、予め訓練が開始されていたこともあってダイスAFBのB-1が最初に装備することになった。

 

2nd BWのB-52HにはSniper XR、AN/AAQ-33が装備される。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123341194

ATP-SEよりは旧式だが、従来はLGBを投弾するのに5分間程度、30から40のボタン操作を行う必要があったのに対して、わずか2、3秒で済むという。60年物の爆撃機でも金をかければここまでやれる。あと25年飛べるという調査結果もあるので、数は減らしつつもしぶとく飛び続ける公算。

またティンカーAFBでは7月から衛星通信システムCombat Network Communications Technology (CONECT)の装備がスタートする。

http://www.tinker.af.mil/news/story.asp?id=123353771

これまでB-52では飛行前にアップロードされたミッションデータに従って任務を遂行することしかできなかったが、CONECTの装備によって飛行中にミッションデータを入れ替えることが可能となる。よつて、より柔軟な運用ができることになる。試験はここ数年、エドワーズAFBで行われていた。
主体は衛星通信装備だが、乗員向けの装備としては、最新端末への更新、ノイズキャンセル型のヘッドセットやデジタルインタホンなども含まれてる。
ボーイングが主契約で金額は7600万ドル。この中にはメンテナンスほかの支援と、LRIPの製造が含まれる。LRIP 1は3月契約で8機分、LRIP 2は来年3月契約予定で10機分。全率生産は2015年1月契約見込みで10機分。FY2014での予算は30機分。

最初の改修は、ティンカーAFBでのprogrammed depot maintenanceに合わせて行われる。7月から翌年4月までというから約9ヶ月を要する。

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F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成

http://www.edwards.af.mil/news/story.asp?id=123345680

4月24日付。

4月19日、エドワーズAFB所属のF-22 CTFにおいて、1000ソーティが記録された。機体は2001年10月に配備されたテールナンバー4007で、飛行しているF-22としては最も古い。AIM-9Mを初めて発射し、2度目にQF-4を撃墜した機体でもある。
着陸後、末尾の007にちなんでジェームス・ボンドのテーマで出迎えられたそうだ。
この飛行は、最新のソフトウェア改修であるインクリメント3.2Aでの初の試験飛行だったため、パイロットはボーイング社のテストパイロットだった。

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2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123339451

米国航空界のアカデミー賞的なものであるが、MC-12とかえらく地味だなと思ったが、本機はUSAFとしてP-51以来のスピード採用であり、かつアフガニスタンで目覚ましい働き(記事によると710名のタリバン指導者、爆弾製造者、野戦指揮官の殺傷および逮捕に直接関わり、プロジェクトリバティ全体で3000名の反政府勢力の兵員を排除したとある)を見せた、というのがノミネート理由となっている。

ちなみに結果は3月12日に発表、5月9日に授賞式が行われ、

http://naa.aero/html/awards/index.cfm?cmsid=62

JPLの火星科学研究所とキュリオシティのチームが選ばれている。

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F-15SAが2月20日に初飛行

http://www.wpafb.af.mil/news/story.asp?id=123339926

各国に改修が進んだ新造F-15が輸出されるようになって、何かUSAF本国仕様のF-15が相対的に性能低くなりそうな情勢であるが、2月にサウジアラビア向けF-15SAが初飛行している。この機体はF-15シリーズとしては試験機F-15 S/MTD以来のデジタルFBWを備えたものとなり、その他ハードポイント増設やIRST、スナイパーXR、AESAレーダーなど、イスラエル配慮で微妙にダウングレードされていたS型を、E型相当以上にアップグレードする形になる。

当面は3機体制で米国内での試験が続けられ、2015年から2019年にかけてデリバリ予定。

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ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123352839

ドイツ駐留の52nd FWは、F-16とA-10を運用してきて、隷下の81st FW(シュパンダーレム基地)にはA-10が配備されていた。この部隊は71年の歴史がある飛行隊であったが、6月18日をもって解散となり、A-10を運用する部隊は無くなった。これは欧州でのA-10の歴史が終わることも意味する。

欧州のA-10は、最大で6個SQが配備されていた。押し寄せるワルシャワ条約機構軍の戦車軍団をちぎっては投げちぎっては投げ(最後は核でry)いった情景がよくイメージされていたものである。

最後のソーティの様子が公式動画であった。

http://www.youtube.com/watch?v=yNUhA_qffqM

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MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備/バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続/ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告/EADSとBAEシステムズの合併交渉

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-mbda-germany-to-test-defensive-laser-weapon-376474/

MBDAドイツは、ドイツと欧州国防省から一部の資金を受けつつ、対IEDおよび砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃用の、レーザ兵器開発とデモンストレーションを行ってきた。
最初の試験は2008年に行われた。複数の発振器を束ねる設計が特徴で、5kWレーザ発振器を2基使った2011年の初期の試験では、有効射程2.3km以上を達成した。

現在試験されているのは、より実用型に近い10kWレーザを4基束ねたシステムで、2012年初頭に最初の試射を行った。この時の結果は、迫撃砲弾の弾殻と鋼板を2~3秒で貫通しており、レーザ光の性質が良好で、個々のビームの損失の低さを実証できたとされている。
これに続いて10月には、砲弾を模した飛行物体を連続的に迎撃する試験を実施予定。

計画では、IEDを100m程度の距離から破壊するシステムを3年以内に、対砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃システムは24ヶ月で実用化することになっている。後者は20kWレーザ×5基のシステムとなり、有効射程は最大3km。

その後の発達型としては、UAV迎撃および野戦滑走路の防衛システム(航空機の離着陸時を狙うMANPADSに対処する)というのが挙げられている。
基本的に地上設置型のシステムとして考えられており、航空機搭載については研究もされてないとのこと。

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バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-cassidian-plans-further-tests-with-barracuda-uav-376416/

バラクーダUCAVデモンストレータは、そのまま実用型に発達する可能性があんまり無くなっているものの、UAV技術の開発には重宝されてる模様で、今年は6月から7月にかけ、カナダのグースベイにおいて飛行実験を行った。有人機のセンサとなって連携するといった内容が伝えられており、バラクーダの活動はここで一区切りとなった。

Cassidianでは次の2~3年についての議論を行っているところで、より多くの航空機と連携し、複雑な任務へ対応させるための計画に期待しており、それに沿って実際にバラクーダを飛ばすのは、2014年頃と予想される。実現すれば、一連の飛行実験としては4度目。
APARの搭載により、移動目標の探知と追跡が可能になれば、更に多くの実験・実証が可能になる。

欧州のUAV実験機は、1990年代から2000年代にかけて各国で同時多発的に現れたものの、開発リソースが集中せずにその後の開発が滞り、立ち消えとなったものが多い。バラクーダもそうした世代に属する一機種だが、技術開発や装備の評価のために、もうしばらく生き残ることになるのかもしれない。

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ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-air-force-details-success-during-red-flag-exercise-376410/

ILAにてレッドフラッグ演習について報告する講演があり、数字が幾つか出ている。

JG74からの派遣人員は約150名でパイロットは10名(ユーロファイターは8機)。

ドイツ空軍の指揮したある防空任務では、友軍全体として38:1というスコアを挙げた。これはレッドフラッグ演習の成績としては記録的な数字である。

ユーロファイターの模擬ミサイル発射は18回で、命中と判定されたのは16回だった。この中には少なくとも1回のF-22撃墜が含まれる。

ドイツ空軍のソーティ数は、212回計画されたうち、208回が実施された。

2014年のレッドフラッグにも参加予定となっている。

 

やや関連で、ドイツとユーロファイターの関わりについての記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-luftwaffe-advances-eurofighter-experience-376247/

ILAにはJG31所属の2機が参加し、1機はCassidianのテストパイロットによるデモンストレーションフライトを実施したそうだ。
ドイツ国内では、Cassidianにて直接ユーロファイターに関わる人数は約3000名、間接的に関わる人数は、22000名ほどになるという。合計すると25000名で、これは欧州全体でユーロファイターに関わる人数(100000名)の、約1/4に相当。ドイツの税収にも大きく貢献する内容と言える。

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EADSとBAEシステムズの合併交渉

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-systems-eads-in-merger-talks-to-create-100bn-turnover-business-376423/

話がでかすぎて先が読みにくいが、EADSとBAEシステムズの合併交渉が持ち上がっているらしい。9月12日にロンドン証券取引所のプレスリリースで、BAEシステムズ側から明らかにされた。
単純に2011年実績の2社の年間取引高を足すと、958億ドル。うち、航空宇宙分野に限っても740億ドルと、ボーイングのそれ(2011年実績は687億ドル)を凌ぐ。

BAEシステムズは2000年代から米国向けの事業に軸足を移しており、合併相手のEADSとしては、米国進出の強力な基盤を手に入れることになる。

欧州と英国の防衛産業は近付いたり離れたりを繰り返してきた印象があり、BAEシステムズは、ユーロファイターやMBDAとの事業で長期的な協力関係にあって、欧州企業との合併を模索しつつも、EADSが成立した2000年以降は英国内の事業で競合することになったし、2006年にはエアバス株を手放したこともあった。
合併が成立すれば、長年の確執も解消することにはなる。

BAEシステムズが40%、EADSが60%の株式を保有する計画(英仏独の各国家が保有する分は別の処理が必要らしい)で、両社が存続する二元上場会社になるとのこと。見かけ上は比較的緩いグループ企業化といった感じだがよくわからん。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%85%83%E4%B8%8A%E5%A0%B4%E4%BC%9A%E7%A4%BE

英国のM&Aは、テイクオーバー・パネルという民間機関が取り仕切っており、このケースでは10月10日までに当事者の両方または一方が意図を公表するよう求めた。EADS側の結論が出なければ、BAE側から期限延長を申し出るとしている。

野村資本市場研究所による説明。

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2008/2008aut20.html

エアバスがEADSの完全子会社であることなどから、背景はかなり複雑。株主の反応は総じて冷たく、翌13日の株価はEADSは9%、BAEシステムズが8%下げたと報じられている

http://www.flightglobal.com/news/articles/lukewarm-response-from-markets-to-eads-bae-merger-plans-376478/

BAEシステムズ側の問題として挙げられているのが、米国の事業部門を分離しなければM&Aが認められない、となった場合、大きな収益源を手放すことになってしまう上、米国市場への進出どころじゃなくなる、というもの。
米国内に資産が存在する以上は、外国投資委員会CFIUSが審査することになる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-eads-merger-could-face-us-regulatory-hurdles-376431/

この記事では米国で合併したサンダーズとユナイテッド・ディフェンスという2社についてクローズアップしている。
特に前者は、電子戦機器での大きな成功(F-35のALR-94を含む)に繋がっている。合併した2000年当時、欧州の企業はその分野で締め出されていた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/eads-bae-tie-up-unlikely-to-affect-airbus-business-376429/

合併後の従業員数は220000人。BAEシステムズはEADS以前、欧州の企業との合併を模索した時期があった。1998年にDASAとの合併交渉も行っている。
EADSの意図として、エアバスへの依存を減らし、防衛産業の方を強化したい節があるため、エアバスの事業にはあまり影響がないとの見方もある。

そして、もし合併が成立したら、という考察記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/weighing-the-defence-implications-of-bae-eads-consolidation-376455/

BAEシステムズがEADSと一体化するとなれば、英国を含む欧州の防衛産業がいよいよ一つのものになることを意味する。ダッソーの株式も46.32%はEADSが保有してたりするし、全体的には一つ穴の狢といった情勢だからだ。唯一の例外となるのは電子機器系で、イタリアのSELEXガリレオが残る。

合併後、戦闘機に関しては2機種が競合することになるので、企業戦略として難しい選択になるものの、どちらかが選定されれば勝ちという見方も可能だ。
また、JSF計画への関与はBAEシステムズ単独のまま推移すると予想される。ユーロファイターなどに関しても、現状維持のまま事業継続される可能性が高い。

現世代の製品はこのまま行くとして、長期的に利点となり得るのは次世代戦闘機の開発ということになる。
無人機にせよ何にせよ、開発リソースを1機種に集中させることができ、EADSのUAVデモンストレータで得られた技術も使える。取引高がそのまんま技術力に比例するわけじゃないが、ボーイング等に匹敵する可能性は出てくるだろう。

USAFのF-15近代化改修について/LMなどがF-22墜落事故にまつわる訴訟に和解/33FWにおけるF-35の訓練スケジュールが活発に/F-35 BF-3が初めて飛行中の兵装投下を実施/オランダのF-35 AN-1

USAFのF-15近代化改修について

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-plans-f-15-modernization-but-pilots-want-better-displays-375612/

USAFは、今後数年をかけてF-15C/Eの近代化改修を計画している。だんだん詳細が確定しつつあるようだ。
計画は、ジョージア州のロビンスAFBに置かれたF-15システムプログラムオフィス(SPO)が統括。

F-15Eについては、開発途上のAPG-82(v)1レーダー、advanced display core processor II (ADCP II) ミッションコンピュータ、Eagle passive/active warning and survivability system (EPAWSS) EWシステム、デジタルビデオレコーダ、モード5 IFFと、前席パイロット用のJHMCSなどが統合され、ソフトウェアも最新ブロックに更新される。

F-15Cも、E型と近い仕様の改修が計画されているが、レーダーはAPG-63(v)3で、フライトデータレコーダやSATCOM(衛星通信)無線機なども追加される。

ただしパイロットからは、インターフェースの改善が伴わないと性能を発揮しきれないとの声もあるようだ。
E型の(今となっては旧式の)グラスコクピットでも十分ではないとの指摘もあるが、C型に至ってはレーダースクリーンの大きさが4インチ角であり、単純な探知能力の向上はどうにかなったとしても、情報量を増やすのはほぼ無理。
F-15 SPOの方では今の所、コクピットに手をつけることは考えてない。よって輸出型新造機の方が、USAFの改修機よりもずっと高級な装備になる可能性は高い。
予算の都合が大きいと思われるが、このへんはHMDである程度カバーできるかもしれない。

以下、各々の要素についての状況を簡単に。

APG-82は、APG-79の本体にAPG-63(v)3のアンテナを組み合わせたもので、2013年3月からのOTを予定。FY2014の初めに生産型を搭載する計画となっている。

EMPASSはまだ開発計画の段階であり、FY2015Q2にEMD契約を目指す。

ADCP IIは2012年11月にマイルストンBに達する見込みで、インテグレーションする時期は、C型にはFY2017Q4、E型にはFY2016Q4予定。

C型のレーダー換装と同時期に途中まで進んでた(はずの)IRSTについては、C型のみでFY2015より調達再開。USNと同じく空対空戦闘での使用を想定しているため、E型では省かれる。

これらの要素を加えることで、USAFのF-15C/Eは2030年代まで運用が続けられる事になる。
機体構造に関する改修計画は現在は無いが、これまでも多くのパーツについて再設計が行われ、改善されているとのこと。またprogrammed depot maintenance (PDM)プロセスによって構造強度を維持することが可能としている。
なお寿命延長に関しては別の研究が進められているので、その結果と必要性によっては、追加で改修されるかもしれない。

前回のE型のフルスケール疲労試験では、16000飛行時間でも問題が生じなかったとのこと。E型の平均飛行時間は9000時間程度というから、当分は大丈夫という判断であるが、FY2010からの追加の試験が2015年9月までの予定で進行中。これは2035年までの運用を前提とするもの。

C型では18000飛行時間まで検証されており、平均飛行時間は8600時間。こちらもFY2009から2014年9月までの予定で、2030年までの運用を前提とした追加の試験が行われている。

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LMなどがF-22墜落事故にまつわる訴訟に和解

http://www.flightglobal.com/news/articles/Settlement-reached-in-Haney-F-22-crash-lawsuit-375445/

原告は2010年11月16日に墜落したパイロット、ジェフ・ヘイニー空軍大尉の未亡人で、2012年3月5日、イリノイ州クック郡の裁判所に訴え出ていたようだ。容易に想像できる通り、機体の欠陥が墜落原因であったとし、メーカー相手の裁判となっていた。なお、補償を求めていたのは未亡人+娘二人。

8月13日に和解が成立したようだが、メーカーの反応は微妙に別れた。
条件は明かせないが和解した、とプレスリリースを出したのがLMとボーイング(生命維持装置周りの主契約者)。P&W(エンジンとブリードエア周り)はリリースは出していないものの、広報は前2社と同じく和解したと述べている。OBOGSとECSのハネウェルはこの記事の時点で間に合ってないけど、出してないみたい。

公式の調査結果を待って和解した感じなので、ボーイング以外はあんまり関係ないのかもしれん。

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33FWにおけるF-35の訓練スケジュールが活発に

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-35-flight-training-accelerates-at-eglin-afb-375444/

33FWの指揮官クラスの発言によると、F-35の訓練フライトは、3月の週2回のフライトから、5月4週目には12回のフライト(この時は実施11回)となり、8月は週16回、9月には週20回のフライトを計画しているとのこと。週20回が標準的な訓練スケジュールになり、通常は2機一組で飛ぶ。
急激に増加しているのは、飛行資格を有するパイロットが増え、教官の養成がスタートしたためという理由がある。
現在33FWにはUSAFのF-35A×9機、USMCのF-35B×9機とRAFのF-35B×1機で、計19機が在籍している。33FWとしての飛行時間は、A型とB型合わせておよそ160時間とのこと。
USMCの方の部隊はVMFAT-501となるが、ここでは5名のパイロットが飛行資格を持ち、あと2名が資格を取ろうとしている。
USAFの方では3名の教官を養成し、訓練中が2名。訓練中のうち1名は33FW司令のAndrew Toth大佐となっている。

機体のほうの成熟はゆっくりとしたペースであり、現在はBlock1Aから1Bへの最初のソフトウェアアップグレードが進行している。
準備中のBlock2Aでは、兵装のシミュレーションとセンサフュージョンが可能となるので、作戦機としての訓練はそこからが本番と言えるだろう。

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F-35 BF-3が初めて飛行中の兵装投下を実施

http://www.flightglobal.com/news/articles/video-first-in-flight-weapon-release-for-f-35-375380/

8月8日、NASパタクセントリバーに近い大西洋上のテストレンジにおいて、F-35 BF-3が初めて飛行中の兵装投下に成功した。高度4000ft、速度400ktで、ウェポンベイからGBU-32 JDAMを投下したとのこと。

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オランダのF-35 AN-1

http://www.flightglobal.com/news/articles/first-dutch-f-35-flies-around-fort-worth-375582/

8月6日、フォートワース周辺でチェックフライトを実施し、10日と13日にも飛行したとのこと。
オランダへの引渡しが近いことを予想させるが、LMからもオランダ政府からも公式声明は出ていない。オランダの選挙が近く、政局がグダグダなためと考えられている。

航空自衛隊向けF-35Aの最初のバッチについて合意/レッドフラッグ演習に参加した独空軍指揮官のインタビューなど

航空自衛隊向けF-35Aの最初のバッチについて合意

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2012/06/29a.html

FlightGlobalではLMのプレスリリースという形で、今週に入ってから報じられている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/japan-orders-initial-batch-of-four-f-35s-373704/

最初のバッチ4機を2016年度末(H28年度末)に導入するというのは、とりあえず達成されそうだ。
シミュレータは1機分に近い価格なのか。

予算に対しては、FACで6億ほどオーバーしたが、初度部品の調整で600億という枠には収まった。
この枠内に収まったということは、金額的には米軍向けLRIPのFACに近いところになったわけで、条件としてはそんなに悪くない。まあ、残りも同じ値段ならボッタクリだが、FACOを日本に置くなら、そっちを通しても金は回るため、簡単に損得は言えない。
米国というよりLMの立場として、値段も納期も強気に出られない事情がある。
USAF含むJSF参加国向け量産時期の後ろ倒しのため、製造数を早い年度に押し込むには、普通のFMSでの輸出契約を取ってくるしかない。そうなると顧客の条件を外して取り消されるリスクは回避したい、といったところだろう。

LMの韓国向けF-XIIIの提案がどうなってるのか不明だが、秋選定だと2016年度末納入にギリギリアウトなんではというか、日本のは実質2017年3月末期限だしな。

http://japanese.joins.com/article/790/144790.html

ただし韓国の場合はボーイングの影響力が強いので、F-15SEの可能性もそれなりに高そうだ。
F-XIII単体でなくKFXまで視野に入れるなら、タイフーンの方がまだ技術移転などのメリットが大きい。しかしFXIIのときのような方針転換もあるから予想し難い。

つい数ヶ月前も、イスラエルの次期練習機でT-50採用しなかったら取引全部止める!とか言ってたけど、6月24日にはエルビットへC-130Hの近代化改修を発注した。

http://www.flightglobal.com/news/articles/elbit-to-upgrade-south-korean-c-130-transports-373343/

建前はともかく、エルビットとKAIとの繋がりがあるので簡単に切れないのも周知の事実であったりとか。同様に産業界の繋がりならやはりFXIIIはF-15SEになるがどうなるか。
ROKAFのC-130Hは1987年から1990年にかけて導入。機数は12機で、うち4機はストレッチ型のC-130H-30。さらに2014年には、J型を4機受領予定となっている。
主にアビオニクスの改修とグラスコクピット化などで、金額は6200万ドル。

そもそもKFXも複数の異なるコンセプトが伝えられており、最終的な姿はよくわからんのが実状。F/A-50をステルスにしてみた、とかそういう辺りに落ち着きそうな気が。そうなるとLMの方が都合が良いが。

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レッドフラッグ演習に参加した独空軍指揮官のインタビューなど

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-german-eurofighters-impress-during-red-flag-debut-373312/

ドイツ空軍のユーロファイター初参加が報じられた今年6月のレッドフラッグ演習。この記事はJG74の指揮官であるAndreas Pfeiffer大佐など関係者のインタビューを交えて、演習の位置づけや状況、成果についてまとめられている。

長いので適当に拾っておくと、

ドイツ空軍のユーロファイターは、RAFのそれとは異なり、大規模な実戦参加を経験していない。平時の演習でも、近隣国との合同演習程度に留まっており、レッドフラッグほどの規模の作戦行動は未経験だった。レッドフラッグ演習への参加は、同盟国との共同作戦などの経験を通して、今年11月のNATO反応軍(NATO Reaction Force)立ち上げと、2013年3月のNATO軍事力評価に備えるという目的もあった。

ユーロファイターはマルチロール(スウィングロールと自称するが)戦闘機として設計されているが、まだ対地攻撃能力は完全ではなく、ドイツ空軍でも今のところ空対空戦闘専門となっている。
部隊としてマルチロール化するには、ハードウェア的な準備が整ってから、最低2年の人員訓練が必要とされる。

外国軍機としては他に、航空自衛隊のF-15JとポーランドのF-16C/D Block 52も参加。これは既報の通り。演習参加機としては戦闘機以外のタンカーなども含まれる。
USAFからF-16、A-10、ホストを務めた354FWのF-22が青軍として行動。EA-18Gの参加も予定されていたものの、作戦行動の都合でキャンセル。また18FSのAESA装備型F-15Cも調整のため不参加。
仮想敵の赤軍を務めたのは18Aggressor Sqnで、装備機種はF-16C Block 30。Su-27/30とJ-10をシミュレートし、EW環境も再現しているものの、普段の兵器学校レベルではなく、あくまで教育に適した設定となっていた。

ドイツのユーロファイターについては、ソフトウェア改修の検証も実施された。これにより、RAFのタイフーンに近いレベルの能力を発揮できるようになる。
大きなところでは搭載レーダーのCAPTOR関連。詳細は機密事項だが、無線機、ミッションデータ及び対抗手段のソフトウェアが追加されている。この改修は、まだアラスカへ飛んだ8機のみにしか適用されてないとのこと。
が、こうした目に見える成果よりも、長距離の海外展開を経験することで、ドイツ空軍自体のメンタリティが大きく変化したとも書かれている。かつて自衛隊でも似たような話があった…ような気がしないでもない。

あとF-22との有視界格闘戦の演習について。ユーロファイターは外部タンクを落とした状態で臨んだとある。
双方の視点からいろいろ書かれているが、ユーロファイターは加速性能と旋回性能はそこそこ高いものの、高AOA時やTVCで負ける的な。
全体としてはやっぱりF-22が最強っぽい、といった結論。当たり前だけど。ドイツ側のコメントでは、BVRでは話にならん、らしい。米側はノーコメント。

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追記

レッドフラッグ演習を巡っては、FY2013最初のレッドフラッグ13-1において、ロシア空軍が参加するという情報がある。

http://english.ruvr.ru/2012_07_03/80124065/

10月8日~19日の日程で、ネバダ州ネリスAFBを中心に行われる予定だが、実際に参加するかは当日近くならんとわからんかもな。政治状況とも関連するだろうし。

USNがF/A-18E/Fのアップグレード開発に着手/第4世代戦闘機とA2AD環境/USMCがAV-8Bの寿命を2030年まで延長することを希望/F-22が訓練中に損傷

USNがF/A-18E/Fのアップグレード開発に着手

http://www.flightglobal.com/news/articles/usn-developing-new-super-hornet-upgrades-372392/

USNが開発しているF/A-18E/Fの新たなアップグレードはdistributed targeting system (DTS) と呼ばれるもので、直訳すると分散ターゲティングシステムとなる。今のところ、2013年初めまでに艦隊での運用を開始する計画。
機載センサの情報と事前に入力されたデータベースのみを用いて、GPS航法・誘導と同程度の精度をもって任務遂行を可能とする。逆に言えばA2AD環境でGPSなどの支援が阻害された場合でも任務に支障を来さないようにするもののようだ。新技術によりAPG-79、AN/ASQ-228 ATFLIRポッドなどを最大限に活用する。ソフトウェア改修みたいだ。

これと別の計画として、1年前から新型IRSTポッドの開発が進行中。ボーイングとLMが共同で開発に当たっており、システム的にはF-14DのAN/AAS-42 IRSTの発展型となる。輸出型F-15向けのIRSTと同じバックグラウンドであるが、より高度なものになる予定で、2016年後半には配備予定となっている。
以前発表されたF/A-18E/F能力向上型のインターナショナルとは異なり、内装IRSTとはならない。外装ポッドとなった理由についてUSNでは、インテグレーションするために内部配線等をいじらなければならないし、レトロフィットを行えば試験期間も余分にかかる、さらには全ての任務で必要となるわけではない、といったことを挙げている。USNはIRSTを空対空戦闘にのみ用いる事にしており、全機装備を諦めて170セットほどの調達に留める計画とした。予算上の制約が関係していることは言うまでも無し。

また専用のポッドではなく、増槽を改造して正面にIRSTセンサを設置、機体中心線のSta.6に搭載する。設置位置としては上下方向が視野に収まり、ほぼ理想的という。

将来のAPG-79単体の能力向上としては、交戦時の識別能力強化、電子攻撃および防御といったEWへの対応もあるが、より重要なのはmulti-sensor integration (MSI)で、最終的には機載センサの情報とEWシステム、データリンクなどの異なるソースからの戦闘情報を統合することになる。同時に表示情報の整理というのも含まれるようだが、機能面はF-35のセンサフュージョンに近い。
こうなると、インターナショナルの大型タッチパネルも確実に必要になってくると思われる。

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第4世代戦闘機とA2AD環境

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-super-hornet-faces-emerging-anti-access-challenges-372393/

Center for Strategic and Budgetary Assessments (CSBA)のアナリストの見解を中心にした記事で、前半はA2ADに対してlegacy fighter platformがどこまで有効かという議論になっている。上のアップグレード関連の記事ではあるが、同じ事はUSAFのF-15とF-16にもあてはまる。
(仮想敵となる第5世代戦闘機、PAK-FAやJ-20の戦力化や、新型防空システムと対艦兵器を含め)A2ADの強度が極まれば、米側の情勢は厳しくなり、第5世代以前の戦闘機の立場は「1942年にバッファローを飛ばすようなもん」になる。大西洋の西側では既にそれに近い状況と言えるし、イランも2020年までには同様の問題の種になる可能性があるとする。

若干ふかし気味のきらいはあるが、米国防総省もJ-20の戦力化時期予想を早めたりしてるし、脅威論が高まってるのを実感できる論調となっている。

USNに関して言えば、艦載機を別としても、空母を基幹とするタスクフォースが敵地の海岸線にどれだけ近づけるのかといった問題もある。将来敵が運用するであろうASMや対艦弾道ミサイルを想定するとあまり接近できないが、そこをF-35をも上回る長距離ステルス攻撃機で補おうというのがF/A-XX。
しかしF/A-XXが現時点での究極解としても、空母上に姿を現すのは早くて2030年代なので、それまではF/A-18E/Fでがんばるしかない。能力的にF-35Cですら十分とは言い切れないし、戦力化にはまだ時間がかかる。数の上の主力も2020年代を通してF/A-18E/Fのままで推移する。つまりは、できるところまでやってA2ADと対峙していくという結論にしかならない。
個々のハードウェアで劣勢であるなら、ネットワーク化して対抗するよりなさそうではある。

でも結局のところ、エアシーバトルをちゃんと定義するところから始めないと意味ない感じかなあ。

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USMCがAV-8Bの寿命を2030年まで延長することを希望

http://www.flightglobal.com/news/articles/usmc-hopes-new-method-for-tracking-fatigue-life-will-help-extend-harrier-to-2030-372797/

結構無茶な話にも聞こえるがNAVAIRの説明では、構造疲労の算定方式を見直すようだ。現行の総飛行時間を基にして最悪のケースで計算するやり方から、実際の飛行時荷重を細かく記録して計算根拠とするやり方にする。直接安全率を切り下げるとかではなくて、精度を高める方向となるが、計算量が非常に多くなりそうな変更ではある。まあ機械がやるから問題ないと言えばそうだけど。

2030年までと大きく延ばせる見込みが立った理由の一つには、英国のハリアー早期退役がある。全部で72機のGR.9が、関連する設備とともに5ヶ月かけて米国へ輸送された。英国向けに稼働していたサプライチェーンも、そのままUSMC向けに切り替わる。AV-8B向けの部品製造は絶えて久しかったため、これはかなり大きい。

今のところハリアーGR.9は、そのままUSMCが使うことにはなっていない。一部でF/A-18Dを更新するとも報道されたが、これは否定されている。むしろ英国内のハリアーに関連するリソースが散逸するのを防いで米国に集約するのが重要だったとした。

USMCは将来にわたってAV-8Bを運用するため、主にアビオニクスを中心とする近代化改修は継続的に実施する方針をとる。
直近では今後4年で、OFP、Required Navigation Performance/Area Navigation (RNP/RNAV) capability、デジタルコクピットレコーダなどの改修に資金を出す。これによりMarine Air Ground Task Force (MAGTF)とのデジタル化された相互運用性を獲得し、MEU唯一の固定翼作戦機として重要な位置を占め続けることができるとのこと。

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F-22が訓練中に損傷

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-22-raptor-damaged-during-training-flight-372787/

USAFは6月5日夕刻、ティンダルAFBで訓練中のF-22がインシデントにより損傷したと発表。詳細は発表されていないが、クラスA分類とのことで損害額200万ドル以上は確実になっている。パイロットの負傷は無しで全損でもなく、修理は可能だそうだ。

転換訓練中の事故であり、パイロットはシミュレータ訓練と座学を経て飛行訓練に移行、2度目の搭乗であったことは伝えられている。

F-22、F-35とも複座の練習機型は存在しないので、シミュレータの次はいきなり実機の飛行訓練になる。
かといって、複座練習機なら防げた類の事故かどうかとかは、現時点では全く不明。ただそれだと普通に墜落してそうな気もするので、もっと単純なミスかもしれない。例の機上酸素発生装置のトラブルとの関連は無さそうだ。

F-35 LRIP-4契約にJSMのインテグレーションが追加される/F-35のテストパイロット以外で初の飛行資格が与えられる/F-22の低酸素症問題で対g装備原因説が浮上

F-35 LRIP-4契約にJSMのインテグレーションが追加される

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-awarded-198-million-contract-to-study-jsm-integration-onto-f-35-372546/

ノルウェーが求めていたJSMのF-35へのインテグレーションについて認め、LRIP-4契約に増額修正・追加する形となる。増額分の金額は1980万ドル。それほど大きな金額になってないのは、あくまでノルウェー国防省が開発主体であって、LMはリスク低減のための研究に協力する立場をとっているためとされている。

期間としては2014年5月まで、具体的には風洞試験、エンジニアリング面の解析と、インテグレーションのための予備的な設計などを含む。
ノルウェーとしてはJSMを自国で運用するだけでなく、米国など各国のF-35の搭載兵器としても提案したい思惑があるので、その点でも一歩前進となっている。

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F-35のテストパイロット以外で初の飛行資格が与えられる

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-dods-first-non-test-pilot-qualifies-on-f-35-372540/

現在、F-35の乗員訓練を担当するインストラクターの養成が進行しているが、このほど58FSの飛行隊長Lee Kloos中佐にF-35の飛行資格が与えられたとのこと。
テストパイロットとして認定されたパイロットを除けば、F-35の飛行資格を有する最初の一人ということにもなる。

58FSが属する33FW全体では、夏までに4名のイントラクター養成を完了し、Operational Utility Evaluation (OUE)を開始する日程となっている。33FW/58FSのOUEの結果が良好であれば、AETCは正式に訓練部隊として承認することになる。
今のところUSAFには、インストラクターとしての資格を認められているのが、Kloos中佐とその訓練を担当したEric Smith中佐しかいない。Smith中佐の方はテストパイロット。OUEまでには、あと2人が飛行資格を獲得する必要がある。

夏からのOUEでは、各インストラクターが1名の訓練を受け持つ形で4名の「学生」を受け入れ、適切に訓練が実施できるかをチェックされる。
studentとは書かれているものの、彼らはF-35の操縦経験が無いだけのベテランパイロットであり、F-35への転換訓練という方が近い。2人は31TESから、2人は33FWの幹部が選ばれている。

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F-22の低酸素症問題で対g装備原因説が浮上

http://www.flightglobal.com/news/articles/combat-edge-anti-g-ensemble-might-be-causing-raptors-oxygen-woes-372642/

匿名の情報筋が語ったところでは、USAFはCombat Edgeの作動が原因の一つかもしれないと考え始めているとのこと。

Combat Edgeというと現用ヘルメットHGU-55/Pに付随する対g装備で、専用の酸素マスクとの組合せで機能する。元々はF-15やF-16の頃から採用されてるもので、対gスーツと同じように後頭部の血液の逆流を防止しつつ、酸素を供給する機能がついている。

ここで出ている仮説は、大きなgがかかる高機動飛行中に、Combat Edgeからの酸素供給が高圧になり過ぎて呼吸が困難になる、というもの。これに加えて加速度無気肺(acceleration atelectasis)が問題を深刻化している可能性があるとも書かれている。

加速度無気肺という言葉はT-4のOBIGSに関しての研究でも出てくる。

http://airex.tksc.jaxa.jp/pl/dr/AA0004368002/en

上の資料で酸素濃度の高さが指摘されているが、F-22の場合の酸素濃度は93%で、純酸素に近い組成。

Combat Edgeの作動はパイロットの状態に関わらず常に一定なので、加速度無気肺のような肺活量が低下した状態では、過呼吸やもっと深刻な症状を引き起こす可能性がある。これは2000年頃からボーイング製の同種システムにおいて、既知の懸念事項として知られていたものの、USAFでは深刻に捉えないまま現在に至る。
ただしUSAFとしてはこれが原因の全てではなく、原因の一部であろうという見方らしい。

対g装備の問題ということになると、加速度無気肺になったパイロットが回復しないまま飛行させていることが問題ということにも繋がっていくので、話がどんどんめんどくさくなる。かつてU-2のパイロットは数日おきに飛行するだけだったが、F-22のパイロットは時に1日複数回のソーティをこなさなければならない。
また、酸素供給をより確実にしようとする対策も、状況を悪化させるだけという可能性も指摘されている。が、今のところ対策を始めてから3か月、特に問題は起こってないみたい。

新型の対g装備に切り替えるということであれば、F-35向けの新型対gスーツがあるものの、パイロットの飛行に24時間程度のインターバルが必要かもしれない。こうなると飛行計画にも支障を来してしまう。

F-16が登場したあたりから、パイロットの方が限界と言われ続けて40年近く経過したわけであるが、戦闘機パイロットは大変だなあ(小学生並の感想)。

F-22の飛行を制限する追加措置について/USAFはA-10の代替をF-35Bとする構想を断念/米国防長官はF-35BとMV-22を支持する/RRがF-35Bのリフトシステムを受注

F-22の飛行を制限する追加措置について

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-defence-secretary-orders-additional-f-22-safety-measures-371943/

パネッタ米国防長官はUSAFに対し、F-22のパイロットの安全を確保するためとして、緊急着陸が可能な範囲での飛行に制限する措置を指示した。DoDによると、この命令は対策が十分なされるまで無制限に適用されるものであるとのこと。

問題の「低酸素症に似た症状」に関しては何度か報じられている通り、2008年以来14件が報告されたにも拘らず、原因が特定できないという異例の状況が続いている。
ブリードエアの混入による酸欠という推測も公にされたが、内部では排気圧が上昇し過ぎて減圧症となる可能性も取り沙汰されているという。

当局がこうした措置を講じざるを得なかった原因の一つに、飛行を拒否したF-22パイロットのうち2名が、TVに出演した事が挙げられている。TVを通じて、社会的な波紋も大きくなったようだ。

また、この措置による影響であるが、米国内においては、主に平時の防空任務において長距離飛行を行う部隊が影響を受けることになる。具体的にはアラスカ州エレメンドルフ-リチャードソン統合基地に所属の3rd WGと傘下の477th FGが該当。

http://www.477fg.afrc.af.mil/

一方、UAEに展開した7th FSは影響を受けない。

国防長官は、今後の対策についても早めるよう命令を出した。計画されている対策は、機上酸素発生装置の予備系統を増設するというもの。これは異常時に自動的に作動し、バックアップとして機能する。
スケジュールとしては、11月末までに試験を完了し、12月から1か月に10機のペースで改修を施すよう求められている。
また、毎月の進捗を報告するように指示しているそうだ。

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USAFはA-10の代替をF-35Bとする構想を断念

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-f-35b-cannot-generate-enough-sorties-to-replace-a-10-371985/

USAFはA-10後継機として、F-35Bの配備を検討していたが、CASなどで十分に任務を達成できないと結論した。
そのあと、先月ぐらいからいきなり出てきたAirSea balttleについてのとってつけたような言及がある。しかし、この関係は実体がまだ無いようなもんなので、わりとどうでもいいというかよくわかりません。
空海軍に属する各プラットフォーム間での、次世代データリンクを軸にした情報共有とかが謳われているものの、現場レベルで不要な情報が溢れるといった懸念も既にある。リソース配分の最適化だとか、実際やるとなったら難しそうだ。

とりあえずF-35関連記事としては、USAFのシュワルツ参謀長がBは役立たずと発言したらUSMCの元航空指揮官が反論したといった文脈で押さえておく。

具体的な反論の一つが、B型の方が1日当たりのソーティ数(key performance parameters (KPP))が多く要求されているというもので、B型が1日4ソーティに対してA、C型が1日3ソーティとされた。実際にSDDフェーズにおいても、B型が約6、A型が約3.5、C型が弱といった実績になっているらしい。CAS機としての要求が入っているのはB型だけなので、まあこれは順当なところ。A-10と比べてどうかというのは、A-10と同じような運用ができるかと言ったらそりゃ無理だろう、というのはなんとなくわかる。

ともあれUSAFがB型を導入する可能性はこれで消滅したようで、全機A型となるのが確実となった。

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米国防長官はF-35BとMV-22を支持する

http://www.flightglobal.com/news/articles/panetta-reiterates-support-for-f-35b-and-mv-22-371994/

5月17日、USMC航空部隊が創設100周年を迎え、記念式典が行われた。パネッタ国防長官も出席し、演説を行っている。
その中で、F-35BとMV-22への強い賞賛を(改めて)表明したという話。

これがすぐ何かに繋がるということでもなかろうが、予算が削られたり復活したりとごちゃごちゃになってる現状では、まあいろいろ大変ですよねという感じ。

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RRがF-35Bのリフトシステムを受注

http://www.flightglobal.com/news/articles/rolls-royce-awarded-propulsion-system-order-for-f-35b-371306/

前の記事と前後するが5月1日、LRIP-4が確定するのと時を同じくして、RRはP&Wから、LRIP-4のF-35B、17機分のリフトシステムを受注した。金額は3億1500万ドル。リフトシステムはLiftSystemと表記される。製品名と考えていいのかなこれは。同社では、生産量が増えればコスト低減効果も大きくなると見ている。
これまでに納入した数は試験機などの32機分で、今年後半にはLRIP-5での受注を見込んでるとのこと。

少数のF-22パイロットが飛行を拒否する/LASの改訂版RfPが発出される/A2ADと第5世代戦闘機、nano-UAV/台湾向けF-16に関する新たな動き

少数のF-22パイロットが飛行を拒否する

http://www.flightglobal.com/news/articles/some-f-22-pilots-decline-to-fly-371339/

ACCの長であるMike Hostage大将は4月30日、ラングレーAFBでの共同会見において、ごく少数のF-22パイロットが飛行を拒否している事について述べた。まだ進行中の事象らしく、センシティブな問題であるとしたが、F-22における酸素発生装置関係のトラブル(11例あった)が完全に解決されないまま、任務に復帰させた事が理由になっている。この件は何度も報じられた通り、5ヶ月の飛行停止と調査が行われ、その後も累計12000時間ほど飛行しているが、未だ原因は明らかとなっていない。このため、不安を抱くパイロットがいるのも全く不思議ではないと言える。

彼らの処遇については、搭乗するよう強制することも、簡単に他の任務に就けることも難しいようだ。結局のところは再発リスクを可能な限り抑えたから大丈夫、と説得するしかないみたい。

会見の中でもう一つ、UAEへの展開についても触れられている。昨年と同じくAl  Dhafra基地へ展開したと見られるが、公式にはコメントが出ていない。ある情報源によると、UAEへの展開は航空遠征軍のルーチンに組み込まれ、ホロマンAFBの49FW / 7FSから派遣されたとのこと。

で、ここの記事に出てる写真の最後のF-22は5月2日、ジョージアのマリエッタ工場でUSAFに引き渡されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-usaf-receives-last-f-22-raptor-371401/

式典が催され、USAFからは参謀長のノートン・シュワルツ大将なども出席した。テイルナンバーは10-4195。
5月4日には4193とともにエレメンドルフ統合基地へ移動したはず。

以下、沿革と改修予定について書かれてる。改修に関する部分を要約しておくと、

2014年内にインクリメント3.2A、これはソフトウェア改修で、電子的保護技術と戦闘情報識別の強化、Link 16と機載センサ情報の統合などが含まれる。

そのフォローアップにあたるのが3.2Bで、3.2Aのソフトウェア改修にAIM-120DとAIM-9Xのインテグレーションが加えられる。改修キットの調達に関するマイルストンBが2012年12月予定。これが通るとFY2016から調達開始、FY2017Q3から引き渡し、FY2018Q1に改修を実施となる。
3.2Bはさらに細かくアップデートが分かれており、兵装関連は2017年以前に搭載可能となる計画。2013年のアップデート4でAIM-120D、2015年のアップデート5でAIM-9Xを、一応運用できるようにする。
一方、GAOの勧告で削られた要素もある。SDBの独立8目標誘導と対地衝突防止システムAuto-GCASがそれで、後者は機上酸素発生装置のトラブル対策としても謳われていたものだ。これさえあれば安心というものではないが、最後の安全装置としては重視されていた。

その先はまだLM社内の研究段階ながら、搭載コンピュータのオープンシステムアーキテクチャ化というのがあって、うまく実現すれば、第5世代の枠を拡げるような、大きな可能性が開けるかもしれない。

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LASの改訂版RfPが発出される

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-issues-new-rfp-for-afghan-las-programme-371483/

5月4日夕刻、USAFはLASのRfPを改めて発出した。入札締切は6月4日。以降のスケジュールは、2013年早々に機種選定、2014年Q3に最初の機体をアフガニスタンへ引き渡す、となっている。

前のLASに関しては、シエラネバダ/エムブラエルのA-29スーパーツカノ、ホーカー・ビーチクラフトのテキサンIIの2機種が選定を争う形となっていたが、今度も入札者は同じと見られる。機数は20機で金額は3億5500万ドル。
前回よりも条件は若干緩められているようだ。デモンストレーション無し。中小企業の参加に関する部分も削られた。

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A2ADと第5世代戦闘機、nano-UAV

http://www.flightglobal.com/news/articles/future-nano-uavs-could-collect-isr-in-heavily-defended-airspace-alongside-raptors-and-f-35s-371189/

A2AD環境に対する偵察、ISR能力を、F-22とF-35、2機種の第5世代戦闘機に与えるという研究が始まっている。その先にはnano-UAV群による同様の能力が提供されることになるだろう、という話だが、実現にはまだ時間がかかる。

F-22とF-35、いずれも高度なセンサを備えており、潜在的な情報収集能力に関して不足はないが、収集したデータをどのように送出するかが課題になっているとのこと。ACCとUSAFの科学諮問委員会が共同で研究に当たっている。

この手の話は、機体規模に限界のあるnano-UAVの方がさらに難しそうな気もするが。

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台湾向けF-16に関する新たな動き

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-to-re-visit-f-16-cd-sales-to-taiwan-371349/

テキサス州選出のJohn Cornyn上院議員が、ウェブサイト上で台湾へのF-16売却に関して触れている。大統領副補佐官兼 director of the office of legislative affairs (OLA、立法問題室長?)からの書簡というもので、台湾へのF-16を含む軍事援助は、次期国防副長官にとり高いプライオリティを持つとかなんとか。言うまでもないがテキサス州にはLMの本拠、フォートワースがある。

もし実現すれば例のF-16V (Block60相当)が提供されることになる可能性が高い。

F-22、インクリメント3.1改修機が配備される/CH-53KがNAVAIRへ正式に提案される/米国の軍用ヘリコプター市場は今後縮小するとの見通し/豪Quickstep社がF-35の製造分担分を初めて納入

F-22、インクリメント3.1改修機が配備される

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-fields-first-upgraded-f-22-raptors-369886/

最新のF-22はインクリメント3.1改修が施された機体となる。インクリメント3.1では主に対地攻撃および索敵についての機能強化が施された。
インクリメント2までは1000ポンドJDAM×2による2目標同時攻撃が限界だったが、3.1ではSDB×8による4目標同時攻撃が可能となる。
これに大きく寄与しているのがAPG-73の機能強化で、SAR能力、EW攻撃能力が付与され、敵レーダーの高精度な逆探知や地形マッピングも可能となった。APG-73の能力向上については、かなり以前から謳われていたものではあるが、ここにきてF-117を大きく超える能力を備えるに至った。F-35の配備前に間に合って良かったですね。

次の改修はインクリメント3.2と呼ばれるもので、その中でさらにA、B、Cの3つのパッケージに分かれる。改修・配備スケジュールとしてはそれぞれ2014年、2017年、未定となっており、内容は、AIM-9XとAIM-120Dのインテグレーション、SDB×8による8目標同時攻撃および独立した再ターゲティング能力、墜落防止装置と自衛用EW装備など。

USAFではソフト、ハードともオープンアーキテクチャ化を進める方針としている。F-35などと共通の部分も増えてくるだろう。

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CH-53KがNAVAIRへ正式に提案される

http://www.flightglobal.com/news/articles/sikorsky-tables-new-ch-53k-proposal-369923/

NAVAIRは3月初め、シコルスキーからCH-53Kの正式なプロポーザルが提出されたことを認めた。
提案が通れば、CH-53Kは2019年から配備される計画。これは以前の発表の1年遅れとなっているものの、USMCでは200機程度の導入を希望している。
評価プロセスがいつまで続くかはまだ明らかにされていない。

K型は、USMCが装備するCH-53のうち、3発のCH-53Eの後継機となる予定で、当初は156機発注、2015年後半にIOC獲得とされていた。3年後の2007年8月には発注機数が227機まで増やされ、それからちょっと減らされて、現在は発注機数200機ということになっている。

CH-53EはCH-53K配備まで現役に留まるが、双発のCH-53Dの方は今年2012年末で全て退役する予定。かつてMV-22がCH-53系の後継機と位置付けられていた時期もあったが、そうはなっていない。
ただしCH-53をアップデートする余地は、かなりある。CH-53Dは1960年代、CH-53Eは1980年代の設計で、今日の技術で複合材料のローター、駆動系、FBWなどを適用するだけで、ほぼ別物が出来上がるはずだ。

現在、フロリダ州ウェストパームビーチのシコルスキー工場において地上試験機と飛行試験機2機が製作中。新規設計部分を含む一通りのシステム統合が試みられた後、2013年に飛行試験機の初飛行が予定されている。
サブシステム単位での地上試験は既に進行中であり、特にGE38-1Bターボシャフトエンジンは、試運転時間が1100時間以上に達したという。その最大出力7500shpは、E型の搭載するT64の7割増し、V-22のT406をも上回るという恐ろしいパワーアップ具合になっている。
同時進行で静強度試験用のエアフレームも製造された。こちらはコネチカットの工場が担当。
飛行試験機の方は開発試験機という位置付けで、開発段階を終えると前生産型4機にスイッチし、最終段階のIOC獲得プロセスに進む。
USMC側で試験を担当するのはVMX-22。

CH-53Kの要求性能は、セ氏35℃の日中に12.3ton積載して高度6000ftを110nm飛行する事などが含まれるが、これはCH-53Eのほぼ3倍の能力ということになる。
エンジン1基分以上パワーがあるとは言え、速度以外ではMV-22に見劣りしないものになる…はず。

IOC獲得後はLRIPに進むことになるが、その時期は2015年になる見通し。

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米国の軍用ヘリコプター市場は今後縮小するとの見通し

http://www.flightglobal.com/news/articles/analysts-predict-military-helicopter-market-downturn-369725/

フォーキャスト・インターナショナルの分析によると、今後10年間で製造される中~重量級の米軍向けヘリコプターは、金額にして1040億ドル、機数にして4384機程度と予測。
具体的には、2017年には399機となって、2012年の512機から大きく下落。2018年に若干持ち直すもそれ以降は下落傾向が続き、2021年は376機とされている。

こうした低落傾向は、アフガニスタンおよびイラク方面での展開が一段落するので、その反動という見方ができる。装甲トラックなどのケースとだいたい同じ構図であり、戦後の防衛予算縮小のあおりも受けることを想定される。

短期的な需要では、HH-60Gの後継となるCSAR-Xと大統領専用機VXXがあるが、更に遅延するか、中止される可能性も高いと見られている。

米国内のUH-1Nを更新するCVLSPというのがあったけど、これはFY2013で予算が付かず、実質的に終了。USAF当局は同型の再生機か、USMCで余剰となったUH-1Nを使うことになると述べた。

長期計画では、joint multi-role(JMR)がまだ生きており、技術開発の意味でも重要かつ不可欠とするも、次の10年では具体化せず、研究開発レベルでの資金供給が続けられるという見方。
ただしJMRを中止して既存機の改修で済ます方向になった場合、技術面で後れをとるリスクも指摘している。

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豪Quickstep社がF-35の製造分担分を初めて納入

http://www.flightglobal.com/news/articles/australias-quickstep-completes-first-f-35-parts-369918/

オーストラリアのQuickstep社は、ノースロップグラマンの下請という形で参画しており、複合材料製のアクセスパネルを供給する。今回の分は2011年7月に発注されたもので、グループ1パーツと呼ばれるもの。最近ではグループ1の次期発注に加え、グループ2と3の長期にわたって供給する協定にも調印したとのこと。

この企業はC-130Jのフラップ製造についても、競争入札を経てLMと契約を交わしたばかり。オーストラリアのメーカーの中でも、かなり国際競争力が高いようだ。

http://www.flightglobal.com/news/articles/australias-quickstep-to-make-c-130j-composite-flaps-369128/

こちらの記事ではF-35のアクセスパネルのほか、ウェポンベイのドア、機体外皮、燃料タンクのカバーなどと関係していると書かれている。

空自F-X選定まとめ

プレスリリースだけ貼っておこう。

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2011/12/20a.html

国内メーカー関連

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2011/12/20b.html

選定の経緯など

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2011/12/20a.pdf

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順を追っていくと、F-35が主要な候補に挙がったのは、ゲイツ国防長官(当時)がF-22輸出と追加発注にとどめを刺したついでに日本に持ってきた時で、2009年だった。この時の提案の時点で既に2個sqという話で、えっ3個sqじゃないの、とか、全数ノックダウンに近い展開なんでは、とかのツッコミが一部から入り、某国の手のメディアが大騒ぎした。
結果としては、この提案をベースに話が進んだという認識でいいのかな。

2009年当時の、JSF計画不参加で国内メーカー絡むの無理だろ的ムードから一転、国内製造分担(おそらく米国分から)4割を引き出し、さらにエンジンのライセンス生産まで取り付けたのは大きな収穫と言えるだろう。どの程度かは不明ながら、そもそも第5世代戦闘機のエンジンで量産化に成功したものは数えるほどしかない。というか、F135以外にはF119しかない。PAK-FAやJ20はまだ暫定エンジンで飛んでる。
これはF-2後継機の件が具体化する際にも効いてくると思う。

何にせよ、F-35の能力についてはステルス性単体よりもセンサフュージョンとか情報処理能力の高さとか、その辺は第6世代にも繋がる道筋でもあるし、導入の意義は大きいはずだ。
似たようなことを陸でやろうとして失敗したのがアパッチ導入という話もあるが。乱暴過ぎか。

不具合の件も微妙に論点ずらして報じられてるけど、そこまで致命的とは思えない。若干の飛行制限掛かるとかその程度じゃないかという。ただIOC獲得スケジュールの方がどうなるもんやらさっぱりだ。どうせ訓練は米国内だし、いっそ空自の人員を参加させてみてはどうかという気もするが、流石に無理ぽいな。

判らないといえば、パートナー国入りしないで情報提供料10億でカタが付くのかどうかという点が判らない。
この辺りは来年度の概算要求、8月までにLMと交渉を詰めるということになっている。最初の4機は間違いなくFMSだ。

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ただ10年で40機であれば、1個sq編成するだけで2020年代に突入するペースと予想され、どう見てもF-4EJ退役後の戦力の空白を容認する決定と思える。だが、それでいいということになったんだろう。たぶん。
F-22が前方展開すれば済むという面もある。

こうなったら凄いMLUで既存機を能力向上して貰いたいところだが、あんまり熱心じゃなさそうだな。
でもF-2なんかは既にJ/AAQ-2も装備し始めてるし、かつてのスーパー改まであと一歩じゃよね。あ、CFTは無くていいです。

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評価の詳細に関しては、一部報道にあった配点と一緒にまとめておくと。

F-35が決定的に優位に立てたのは、100点中50点が「性能」に振られていたからで、ここで最高評価を取っている。

またその次に地味に効いてるのが経費評価(22.5点)。取得費用でF/A-18E/F、燃費でタイフーンが高評価だったにも関わらず、両機ともそのままでは、プローブ&ドローグ式の空中給油にしか対応してなかった。対して、F-35Aは米空軍機であるため普通にフライングブーム式。これはKC-767Jをそのまま使えるかどうかという話に直結した。
これについては、イタリアのKC-767Aの方は初めから両方に対応しているので、改修すれば何とかなるのはわかっている。が、ポッドを追加するとかしないと無理で、そのコストを入れるとF-35が僅差のトップ評価となったとある。ただ、一時は空自のJ型にもプローブ&ドローグ対応させる検討が行われた、という話もあったような気はする。

その一方、明確に劣ったのは国内企業参画(22.5点)。事前の情報通りならタイフーンが9~10割+ブラックボックス無し(?)、F/A-18E/Fが7~7.5割、F-35Aが4割という比較になったはずだ。4割というのはF-2の6割よりも更に低く、かなりギリギリの線と言える。ボーイングも、技術開示はやっぱり渋かったんだなあ、という感想。
後方支援は大差なしだが、元々の配点5点だったので大勢に影響しなかった。

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最後に米国防総省が出したプレスリリースを貼っておこう。

http://www.defense.gov//news/newsarticle.aspx?id=66555

eye-wateringというのは目を見張るようなとかそんな感じ?