USAFのF-16近代化改修計画の変更について
USAFのF-16近代化改修計画は、F-16 Combat Avionics Programmed Extension Suite (CAPES)と呼ばれるもので、レーダーの関する部分はF-16 Radar Modernization Programとされ、CAPESに含まれている。改修を施す機数は、最終的には300機程度が考えられている。
従来計画だと、F-16 Radar Modernization ProgramにおいてはCAPESの主契約(prime integrator)のLMに対し、発注側がレーダーを支給しLMが機体に組み込む、という形式になっていたのだが、このレーダーはCFE (Contractor Furnished Equipment)として取り扱われることになった。つまりは主契約のLMがレーダー選定、調達から組み込みまでを行うことになるらしい。
何度か出ているが、F-16向けAESAはノースロップグラマンのSABRとレイセオンのRACRの2機種が存在する。前者はF-22のAPG-77、F-16E/FのAPG-80、F-35のAPG-81と関連しており、後者は同様にF-15CのAPG-63(v)3、F/A-18E/FのAPG-79、F-15EのAPB-82と関連する。今のところF-15系の改修でレイセオンの方に実績がある。
LMでは、既に両方のレーダーを自社のシステムインテグレーションラボにおいて試験したとのことで、実際に飛行試験まで行われているようだ。しかし自分のところに決定権が回ってくるとは考えてなかったため、どちらがどうという判断はしていない。ただ、どちらもUSAFの要求性能を満たしているのは確認済とのこと。
とは言え、2018年Q4までに24機の引き渡しというCAPESのスケジュール、実際のインテグレーションと標準化に2~3年かかることから逆算すると、時間はあまりない。レーダーだけでなくアビオニクス統合、コクピットの中央表示装置の交換、EW能力の強化、データリンクなどのインテグレーションがあるため、レーダーは最重要ではあるものの、要素としては一部分に過ぎない。
なお、このあたりの開発は台湾向けと共通で進められるようだ。LMとしては、世界で使われているF-16の新たな標準仕様とすることを望んでいる(例外となるのはBAEシステムズと契約した韓国のF-16アップグレード)。
このアップグレード改修キットは、台湾向けとUSAF向け合わせて550セットが確定。
これと別に輸出向け新造機は100機程度が契約見込みとなっている。
AESA以外で進行中の案件としては、機体寿命延長に関する研究。試験機はジグ上に設置済みで、10月11日に事前チェックを終えた。本試験は年内に開始予定となっている。
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台湾向けF-16アップグレードの契約が締結される
7月の政府間合意(総額38億ドル)の一部となるもので、金額は18億5000万ドル。ROCAFのF-16A/B×145機について改修を実施する。
内容は概ねUSAFのCAPESに準じるが、この時の発表では、レーダーに関して未定とされていた。
上の記事はこの直後に出てきたので、USAF向けと同様の経過を辿ると考えられる。輸出と共通化するから、LMの方に主導権を移したような感じなのかな。
一方、韓国の方はLMから離れたのでどうなるか全くわからん。同国の調達官庁DAPAによると2013年に選定予定ということにはなっている。こちらはC/D型で機数は134機。
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B-2向けEHF通信機アップグレード
http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-begins-production-of-b-2-satcom-upgrade-377584/
ノースロップグラマンはB-2のEHF通信機アップグレード、インクリメント1の生産を開始した。9月28日に契約したもので、金額は1億800万ドル。このインクリメント1では、単に無線機を交換するだけでなく、プロセッサの交換、ネットワークケーブルの光ファイバ化やディスクドライブの大容量化といった内容が含まれており、メーカーでは全体的な情報処理能力が大きく拡大されるとしている。
EHFインクリメント1のOTは、ソフト、ハードとも7月末に完了。ノースロップグラマンによると、SDD段階で少数の機体に新しいサブシステムを搭載しはじめているとのこと。
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定期整備中のJSTARSにサボタージュの痕跡が発見される
ルイジアナ州レイク・チャールズ(ノースロップグラマンが保有・運営する施設)にて定期整備中のE-8の1機で、ワイヤが切断されているのが発見された。
同施設内の他の機体を点検したところ、もう1機でも同様の状況が確認され、USAFは何者かによる意図的なサボタージュの疑いありとして、調査を開始している。
現在E-8の整備と保管は、ノースロップグラマンがこの施設で一手に引き受けている状態となっているようだ。
ノースロップグラマンからのコメントは記事の時点では無し。
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F-35の低率生産分のアップグレード改修について
F-35 JPOではLMに対し、標準仕様のBlock 3未満に該当する低率生産分の機体について、アップグレード改修を発注予定。具体的にはLRIP-2からLRIP-5までの93機がこれにあたる。3iとか3Fというのはよくわからんが、LRIP-5ではBlock 2Bにとどまった。
参考:Acrobat起動注意。
www.f-16.net/f-16_forum_download-id-16260.html
http://s3.documentcloud.org/documents/274217/dod-quick-look-ahern-report.pdf
現状、JPOは競争入札を想定していない(=LMへの指名発注)が、競争入札を求めるメーカーなどが出てくる可能性には触れている。
LMではこれに対し、経費見積のデータを出すなどの対応を行う。
ただしLRIPの初期の機体をアップグレードするには多大な経費がかかるとの指摘もある。そうした見解を提示している一人がレキシントン研究所のダン・グール氏。
製造スケジュールを先送りしたのは、Block 3で本格的な量産を開始して、事後の改修にかかるコストを下げるためであり(その分Block 3未満の機数は減ってるのだから)、あえて遡って手を加えるのは本末転倒、という結論となる。
加えて、Block 3未満の機体でも現用のF-16などよりも優れている部分はあるのだから、そのまま使ってもいいのではないか?というような意見も出されている。
F-16というか、Block 2まではイメージ的にはF-117みたいな感じなのだが。レーダーとかは強いけどガンもないし。
せめて機外搭載ぐらいはできるようにした方がいいのでは。