ファーンボロ、英国関係。無人機関係は別項で。
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リンクスワイルドキャットがファーンボロエアショー期間中に1号機引渡し
http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-to-take-delivery-of-first-lynx-wildcat-at-farnborough-air-show-373762/
リンクスワイルドキャットの、メーカーの型式番号はAW159。英陸軍と海軍のリンクスを更新する機体であり、当面は陸海合同でRNASヨービルトンにて編成と訓練が行われる事になっている。機数は62機。去年の段階では、陸軍向けを4月に引き渡すことになっていた。海軍型は2013年配備予定。
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AW169が登場し、アグスタウェストランドのラインナップ出揃う
http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-aw169-debuts-at-air-show-373965/
今年のファーンボロではAW169の実機が初めて展示され、AW139、AW189とともにアグスタウェストランドの新世代機ファミリーが出揃った形となった。これらの設計はある程度共通性があり、運用や訓練にかかるコストを低減できるというのも重要なコンセプトの一つ。
ただし開発完了までまだ先は長く、最初の試作原型機が5月、2号機がイタリアで7月6日に初飛行したところで、型式証明取得は2年後の2014年とされている。
今年後半には3号機が飛行試験計画に加わり、2014年には4号機まで製作予定。
AW139の受注状況は、カナダのCHCヘリコプターが次の3年間で10機(ガス・原油採掘向け)、ロシア政府機関のパラパブリック用途が2013年に3機、日本の三井物産エアロスペースが2013年に2機(消防と横浜市向け)、イタリアの警察が2013年に2機(オプション6機)といった感じ。
AW169については上記の様な段階で、本格的な販売にはたどり着いてないものの、南アフリカから1機の受注があるとのこと。民間のVIP/企業向けとある。
もう一つ書かれてるのはGrandNewの話題で、EASAが定めた航法衛星による着陸誘導系、satellite-based precision approaches with vertical guidance (SBAS/LPV)の、ヘリコプターの認可第1号となったそうだ。SBAS/LPVは、悪天候などILSを使えない状況でも安全な着陸を可能とする(衛星も常時使えるとは限らないが)。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seisan/juntenchoueisei/004_05_00.pdf
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RAFにおけるVC-10退役のスケジュール
http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-raf-squadron-commander-details-vc10-retirement-plans-373990/
現在RAFのVC-10(C1K/K3/K4)は、ブライズノートンの101Sqnに8機が在籍している。同機種は6月29日に初飛行50周年を迎えたが、これを花道とするかのように退役スケジュールを進め、2013年3月31日をもって全機が現役を退くことになる。
C1Kの1機は7月2日をもって退役したので、残りはC1Kが3機、K3が4機とK4が1機。日常的に飛行しているのは4機で、K4はフォークランドに展開してタイフーンのQRAを支援する任に就き、
他に各1機がRAFカニングスビーとRAFルーカーズのQRAにつけられ(RAFではQ態勢(“Q State”)と呼ぶ)、オマーンに1機が派遣されている(アフガニスタンのへリック作戦に従事)。
またタイフーンはロンドンオリンピックの防空(警備)のため7月と8月にRAFノーソルトに展開するので、101SqnのVC10はブライズノートンから支援にあたる。現在稼動してる空軍基地としては、ノーソルトがロンドンに一番近いようだ。
各型のうち、C1Kは輸送型の改造タンカー。翼下のパイロンに給油ポッドを搭載したもので、燃料搭載量は70tonと少ない。
K3とK4はともに民間旅客機のスーパーVC10を改修した機体で、K3はメインデッキに燃料タンクを増設して燃料搭載量を82tonに引き上げている。K4は燃料タンクの増設が行われていないが、大型のポッドと中心線の長大なホースを有するので、大型機への空中給油が可能となっている。
タンカーとしての能力ではK3が最も優れているので、最後に残すのはこれらの機体とされる。9月以降はK3のみの4機態勢とするようだ。ただし退役スケジュールは若干変動しながら進行していて、今後も変更の可能性はあるという。去年の予定だと既に6機態勢になってるはずだったとか。
前述の通り、RAFでの経歴が最も長いのは輸送型からキャリアが始まっているC1Kで、中でもテイルナンバーXR808は、1966年7月引渡しの最古参となる。6月中旬現在の累計飛行時間は43655時間、12255回の着陸を記録しており、退役後はRAFコスフォードの博物館に移動、保存される予定が決まっている。
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RAF向けのA400Mフライトシミュレータの契約
http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-uk-places-order-for-a400m-simulator-374025/
エアバスミリタリーが受注、タレスが英国内で製造する契約となっており、サポートなど含む金額は5000万ポンド。2014年春に引き渡し予定。英仏共同で製造される形になり、エアバスミリタリーと傘下企業、英国の訓練・シミュレータ部門とは2007年から協力関係にあった。
RAFではA400Mを22機導入予定。
これでシミュレータの設置場所は、セビリアにあるエアバスミリタリーの訓練センターと、ドイツ、フランス、それと英国の4ヶ所となる。
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A400Mのエンジン問題未解明で飛行展示見送り
http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-fresh-engine-issue-restricts-a400m-atlas-to-static-display-373954/
問題のエンジンはまだ点検中で結論は出ていない。以下、RIATの時に出た情報とあまり違いは無いので省略。
命名式典のときは土砂降りだったらしい。
なお、飛行展示の見送りは去年のパリショーでもあった。
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ユーロファイターの能力向上について4カ国が合意
http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-eurofighter-confirms-enhancement-programme-374072/
ユーロファイターコンソーシアムのメディアブリーフィングで発表予定だったのが、初日にキャメロン首相がパビリオン訪問した後、発表したとか。
発表によると、独伊西英のユーロファイターのパートナー4カ国は、以前から話し合いを進めていたユーロファイターの能力向上について合意したとのこと。これでフェーズ1エンハンスメントの正式なスタートが決まったことになり、トランシェ2の後期生産型から適用される。この型はP1EAと呼ばれ、輸出型のP1EBとは区別される。P1EBは今のところサウジアラビア向けと同義で、P1EAと類似した仕様になると予想される。タレスのダモクレス・ターゲティングポッドも提案されている。
BAEシステムズでは試験機のIPA6を使用し、7月20日からP1EB向けの装備の試験を始めることにしている。
P1EAでは、AESA、進歩した自己防御装置が搭載され、MeteorとペイヴウェイIVのインテグレーションまでが含まれる。
搭載機材の目処がついてきたから話がまとまったという感じか。
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トレント152,455とRRの次期トレント関係
http://www.rolls-royce.com/civil/news/2012/120709_lego_jet_engine.jsp
レゴで再現された1/1スケールのトレント1000。RRのブースに展示されている。152455という数字はブロックの数を表しており、製作には1280時間かかったとのこと。
作動はしないが可動部分は忠実再現されており、その機構を学ぶことができる優れもの。全長2m以上、重量は300kgを超えており、レゴで作った構造物としては最も複雑なものの一つと称している。
レゴのエキスパートとして、Bright Bricksというところのエド・ダイメント氏が協力したそうだが、ジェットエンジンだけに直線部分というのがほとんど無く、物凄く苦労したみたいだ。機構部分もだいたい回転運動だし、ファンブレード1枚再現するだけでも簡単ではない。というかもはや正気の沙汰じゃない感じに。
http://www.bright-bricks.com/index.php
一応、教育目的で制作されており、金曜のFutures Dayでは10000人以上の児童が来場する予定になっている。
本業の方の展示では、トレント1000の787向け高出力タイプと、
http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-rolls-royce-prepares-to-power-growth-variants-of-787-373576/
777X向けの社内呼称RB3025などが出てる。
http://www.flightglobal.com/news/articles/rolls-royce-reveals-more-details-of-trent-proposal-for-777x-373609/
トレント1000の、787-9に対応するタイプはパッケージCと呼ばれ、2014年前半にNZ航空向けの機体に搭載される予定で開発中。このタイプは2014年後半以降、-8の新造機にも搭載することになっている。現在、パッケージCの試験運転は76時間ほど行っており、747テストベッドを使った飛行試験は今年後半から開始予定。計画通りなら型式証明は2013年6月となり、製造も合わせて787-8と-9の飛行試験開始に間に合う。
パッケージCの推力は、試験では最大80000ポンドまで達しているが、型式証明では74000ポンドに留まる予定。-10Xの就航は2016年となるから、その時点では推力は更に高められると思われる。中圧圧縮機(IPC)がパッケージBとの最大の違いで、これはKHIが納入している。はず。
http://www.khi.co.jp/news/detail/20110323_1.html
デモフライトを実施したカタール航空の787はGEnXを搭載していたが、RRの公式見解としては、短距離の路線、3000nm程度であればこちらが有利と主張している。またライフサイクルコストでも、15年で100万ドル安上がりとか何とか。
RB3025については、トレントXWBとの違いなどについて発表されている。
ファン径は、300cmちょうどから337cmに拡大し、ファンブレードがチタニウムの22枚から複合材の18枚(数が減った分、1枚あたりの面積は増加する)になる。これは機体のグラウンドクリアランスの違いによる変更だが、RRのエンジンとしては最大の直径であり、最適なファン径に近いとする。推力は100000ポンド級でバイパス比12:1、圧縮比は62:1に達し、現用777のGE90-115Bよりも1割ほど燃料消費率が改善される見込み。