英国内でニムロッド早期退役の余震が続く/英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集/RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする/RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

英国内でニムロッド早期退役の余震が続く

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-uk-left-exposed-by-nimrod-cancellation-report-says-376998/

SDSRの結果、ニムロッドMR.2は2010年3月に退役。MRA.4のキャンセルとともに、RAFの長距離海洋哨戒能力は、事実上消滅した。ことにMRA.4に関しては、開発が長期に及び、40億英ポンドという巨費を投じて、翌年には戦力化というところまで進んだ状態からのキャンセルだったため、様々な論議を呼んだ。
後に、あるMoDの官僚は、哨戒機に関する部分は、SDSRの判断の中でも最も難しい決定だったと述べたそうだが、この決定を巡っては今も議論が続いている。

9月19日、英国の下院軍事委員会は、長距離哨戒能力の欠如したままでやっていけるかどうかを評価し、Future Maritime Surveillance reportという文書にまとめた。この中には哨戒能力を再整備する選択肢の一つとして、MR.2の現役復帰に関する2011年の研究評価も織り込まれていたという。

英政府の公式見解としては、短~中期的にはASWおよびMPAの不在によるリスクは、許容できる範囲であり、それらが必要とされるような(軍事的な)圧力も受けていないというものだった。
下院軍事委員会は、MoDの主張を引用する形で、この結論に対して疑問を呈した。リスクが突発的に増大した場合の対応や、哨戒能力の欠如あるいは不足によって、中期的に状況が悪化する可能性を取り上げている。英国が横腹を晒すことにならないよう、より注意深く継続的にレビューを続けるべきであるとした。

2011年の研究においては、UAV、監視衛星、C295 MPAもしくはP-8Aのような有人機による代替手段を検討していたが、これらはSDSRに含まれず、次の10年における調達計画に入っていない。ということで、2015年の次のSDSRまで棚上げ、ということになっているのが現状。
最終的には哨戒機は不要としながら、それらの欠如に対するリスクも認めているのは具合が悪いというのが結論で、SDSRを進めた連立政権にとっては、あまりうれしくない内容となっている。

この他に出てるのが、ニムロッドの搭乗員の技量維持に関するコストとその後の代替手段の話。
技量維持の計画は、Speedcornと呼ばれており、2012年にはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国へ、合計33名の人員を派遣した。これにかかるコストは年間320万英ポンドで、同計画では2019年まで実施することが定められている。しかしこれが役に立つ(ニムロッドを現役復帰させる)可能性があるのは、現実的にはあと5年程度のため、委員会とエアバスミリタリーは、その間に次のMPAを導入すべきであるとの勧告を出している。

一口に代替手段と言ってもニムロッドに匹敵するような多目的プラットフォームと、単なるMPAとでは意味合いが異なり、前者であれば簡単には準備できない(事実上、替えが効かないと言いたいっぽい)が、後者であれば出来合の機体で間に合わせることができる、と述べたのは、統合/航空作戦能力/トランスフォーメーション担当の空軍少将。

有人のMPAとしては、まずP-8Aが挙げられるが、これは1機1億7000万ドルほどで非常に高価である。この金額はC295 MPA、4機分に相当する(もちろん能力は劣るが現実的)。
これ以外には、センチネルR.1Aの転用、RAFの保有するA400Mもしくはボイジャーにセンサを追加する案、またサーブ2000MPAソードフィッシュなど。いずれにせよ、次のSDSRでは検討する必要がある。

最後に登場しているのはスコットランド国民党のアンガス・ロバートソン議員。ニムロッドが長らく活動拠点としてきたRAFキンロスに関わりの深い人物で、MRA.4の退役について強く批判。アドミラル・クズネツォフが領海付近を航行した一件を取り上げ、英国政府がこの(哨戒機不在の)状況を放置するなら、海洋国家として横腹を晒し続けるのは認められぬ故スコットランド政府が防衛政策としてやるべきだとまで言っている。
実際に可能かどうかは知らないが、制度上は一応アリみたい?
ロシアでいくつかの市が原潜のスポンサーになった話を思い出した。

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英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-mod-seeks-casevac-service-provider-for-kenyan-exercises-377310/

10月4日、英国MoDはケニア国内でのcasualty evacuation (Casevac)活動を支援する民間企業の募集について説明を行った。これはNanyuki基地に駐留する英陸軍訓練部隊、British Army Training Unit in Kenya (BATUK)を支援するための航空機と人員を投入するためのもので、予算は25ヶ月間で900万英ポンドを上限としている。

Casevacは読んで字のごとく、負傷者を迅速に搬送するための活動を指しており、緊急事態に際しては、10分から4時間で対応することが求められる。機体の要求としては、少なくともストレッチャー1名分と医療担当1名を乗せて、300kmほど輸送でき、活動する地域は標高8200ft以下、天候と時刻を問わず、飛行場のない不整地でも離着陸できることとある。また2つの分離した演習地域を同時にカバーできることも求められる。

Nanyuki基地では、1年間に6回程度、英陸軍の大規模な演習が行われており、駐留する人員は300~1700名と変動がある。1回の演習は概ね6週間続く。これらの演習は、アフガニスタンへの派遣に備えた内容となっている。写真はケニアでのプーマHC.1。

Casevac以外の副次的な任務としては、実弾演習後の後始末や写真撮影、演習そのものの支援といったものが含まれ、また、すべての活動はケニアの民間航空当局の定めた枠内で行われることになっている

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RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-reveals-pilot-levels-on-reaper-uav-unit-377263/

英国議会においてMQ-9の配備状況に関する質問が出て、これに回答する形で人員数などが明らかにされている。これによるとRAFでは31名がMQ-9の操縦資格を有しており、2012年10月から2012年9月までに16名が訓練を受けるという。

RAFのMQ-9は39Aqnに所属し、カンダハルに展開中。これらは2007年10月以来、米国のネバダ州クリーチAFBからRAFからの派遣人員によって遠隔操作されている。1機の操作には、パイロット、センサオペレータ、ミッションコーディネータ兼映像解析要員の3名がつく。この他に機体を取り扱うごく少数が現地のカンダハルに展開している。

今後は、リンカンシャーのRAFウォディントンに新たな地上管制局を設置し、機体を10機まで増強する計画がある。

活動状況については、6月19日までの3年間で176回の攻撃を実施した。標準的な装備は500ポンドのぺイヴウェイII×2とAGM-114×4。
偵察任務では、1週間あたり平均250時間ほどの映像を伝送してくるとのこと。

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RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/uks-first-airseeker-on-track-for-2013-delivery-says-mod-376813/

微妙にニムロッド退役と関連。
RAFではSIGINT機として、51SqnがニムロッドR.1を運用していたが、これは2011年をもって退役となった。その後継機として選ばれたのが、USAFで余剰となったKC-135を改修、RC-135Wリベットジョイント相当仕様にするという案で、L-3コミュニケーションズが受注して3機の改修作業が進行中となっている。
改修作業はUSAF側でも支援し、テキサス州グリーンヴィルにて2011年1月からスタートした。

耐用年数を延ばすために機体外皮を交換したほか、給油ブームを撤去し、逆に空中給油を受けられるようにするためのリセクタプルを追加する。またグラスコクピット化と、後部客席部に機器ラック追加、電線の全交換などが実施される。
2013年早々から地上試験、飛行試験が開始予定で、引き渡しは同年内を目指す。

L-3コミュニケーションズってNZ向けのP-3でやらかしてたが大丈夫か。

RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか/タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ/オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み/RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

基本的に遡らないようにしてるのだけども、メモだけして貼ってなかった記事が出てきたので。

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RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-tornado-fleet-to-retire-in-2019-says-bae-375014/

8月2日付。

BAEシステムズの上半期中間発表において、RAFのトーネードGR.4が2019年3月に退役するとの記述があった。これはMoDの決定事項として確認済みのようだ。

現用のトーネードGR.4は、124機が存在する(FlightGlobal調べ)。これらの機体はRAFロシーマスとRAFマーハムにそれぞれ配置されており、アフガニスタンのカンダハルにも分遣隊が送られている。

F-35Bの配備について、最終的な決定には至っていないものの、現在の予定では2018年からRAFマーハムで運用がスタートすることになっている。これによってハリアー以来のS/VTOL攻撃機部隊が復活し、GR.4の一部と交代できるようになる見込み。

これとは別にサウジアラビア向けトーネードIDSのアップグレード、Tornado Sustainment Programmeにおける73機の改修が、2012年前半の12機の引渡しをもって一応完了している。今後はインテグレーションされた新兵器の引渡しが活発になるとのこと。

2007年の改修試作の時期の記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/saudi-arabia-reveals-progress-of-tornado-upgrade-216775/

ストームシャドウやブリムストン、ダモクレス・ターゲティングポッドなどが使用可能になる。

一方、ドイツではトーネードIDSを2025年まで運用する計画としている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-tornado-upgrade-on-track-as-laser-jdam-tests-near-376386/

F-4Fなどもそうだったが、ドイツは物持ちが良い。ドイツ軍は1990年代後半に至るまで海外展開しなかったから、エアフレームも長持ちしている、というのも理由の一つだろう。
RAFの機体などは、多国籍軍の中核として長年酷使されてきた。ハリアー退役後を支えたのもトーネードだったわけだし。

ASSTA 3.0仕様の近代化改修機は、6月下旬に3機が引渡し済み。Büchel空軍基地のJBG33に配備されている。写真の機体はそのうちの1機ということらしい。
ASSTAでの改修計画は、2018年までに85機予定となっており、1ヶ月に1機のペースで進行している。
ASSTA 3.1仕様は2015年以降で、MIDSの完全なインテグレーションのほかに、後席の表示装置を交換、チャフ/フレアディスペンサの一新するなどの予定がある。

GBU-54 レーザJDAM(LJDAM、500ポンド)のインテグレーションはOT&Eの段階にあり、10月からスウェーデンの射爆場で試験を実施予定。これには4機が使用され、実弾5発を用いることになっている。

以前書いたのと重複するが、ASSTAの内容ではMIDS/Link 16データリンクへの対応が最も大きなもので、その他に機体前部へ追加したサーブ製のRWRや、デジタルデータ/ビデオレコーダ、通信機と、タイフーンに採用されたのと同系のデジタルムービングマップ等が追加・更新される。

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タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-first-tranche-3-eurofighter-takes-shape-375776/

8月24日付。

トランシェ3A仕様の1機目はRAF向けの、機体番号BS116となる。8月下旬にSamlesbury工場で機体構造が作られ、ウォートン工場での最終組立に移行する。
BAEシステムズによると、トランシェ3Aの胴体部品には、350以上の設計変更が加えられているとのこと。AESA搭載に伴って電力供給量を増加し、冷却システムを強化したのが大きく影響した。

2009年に発注されたトランシェ3Aは、RAFの導入予定数が40機で、独31機、伊21機、西20機まで合計すると、112機となる。

また、9月下旬にはアレニアが製造する左主翼と後部胴体が出荷されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-alenia-delivers-sections-for-first-tranche-3-eurofighter-376899/

この機体、BS116の初飛行は2013年に予定されている。

次の段階はトランシェ3Bとなるが、こちらはまだ未確定という状態。2013年12月までに関係各国が合意してゴーサインが出なければ、2017年後半で生産完了となる。これについては、製造ペースを落として期限を先送りにした経緯がある。

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オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-edges-towards-eurofighter-contract-with-oman-375018/

これもBAEシステムズの上半期の中間報告から。

オマーンでは2012年1月に戦闘機入札のRfQ(request for quotation、要するに見積依頼)を発出、BAEシステムズはタイフーン×12機の提案で応じており、今年後半にかけての契約を目指し、交渉を行っているという。BAEシステムズとしては、2008年中頃に初めてオマーンを潜在顧客として挙げていた。

UAE向けには、タイフーンはラファール選定の当て馬扱い風で、あまり情報が出ていない。F-16E/Fの追加発注という線も似たような扱いか?
インドMMRCA向けもまだ諦めてない模様だが、これ以上の逆転はさすがに…あるのかなあ?でもインドだし。

このほか、タイフーンの製造状況についても触れられている。2012年前半に、EADSとBAEシステムズから各国に引き渡された機体は21機で、トランシェ2仕様としては合わせて144機に達した。発注数236機の半分は超している勘定。

ILAの時のユーロファイター首脳へのインタビューもついでに。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurofighter-chief-casolini-outlines-priorities-376246/

ここではMMRCAについて、まだフランスとインドの間で何の契約も交わされてないことを強調しており、2月のエアロインディアに出展する予定も明らかにした。

現在進行中の商談は、上で挙がったオマーンのほか、ブルガリア、クウェート、マレーシア、カタール、ルーマニア、韓国、UAEといった国々が挙げられている。

最後の方では、今後20年間の次世代戦闘機市場予測についても触れられている。ワールドワイドでは800機規模の市場と予想しており、ユーロファイターとしてのシェアは25%程度を狙っていく。

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RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

http://www.flightglobal.com/news/articles/rafs-1-sqn-reforms-with-eurofighter-typhoon-376556/

RAFで最も長い歴史を持つ実戦部隊、1Sqnは1912年に編成された。その後、2010年にハリアーGR.9の早期退役に伴って一時解隊となるも、今年9月15日、タイフーン装備の第4の前線部隊として再編成を終えた。RAFルーカーズにて、6Sqnとともに配備されることになる。

RAFルーカーズの2個Sqnは、いずれも北方空域のQRA任務を主体とするが、マルチロール任務を発達させる役割も持つ。

なお、残りの2個Sqnは、RAFコニングスビーの3Sqnと11Sqnで、ここではタイフーンに機種転換中の29Sqn、評価部隊の17Sqnも所属しており、タイフーンの大所帯となっている。

29Sqnが機種転換を完了した時点で、タイフーン装備の前線部隊は5個Sqn体制となり、編成が完結する。

南アフリカ向け提案のベル407AH/RUAGが南アフリカにDo228NGを提案/南アフリカ空軍にグリペン最後の4機が正式引き渡し/スイスとスウェーデンはグリペン調達計画を進める

もうちょっとAADの記事を。

ベル407AH

http://wwwflightglobal.com/news/articles/aad-bell-pitches-armed-407ah-to-african-market-376803/

ベルがAADに持ち込んだ主力商品は2つで、一つはUH-1Hの近代化改修プラン、ヒューイII、もう一つはベル407の武装型、407AHとなっている。
前者についてはエンジン換装が目玉で、ハネウェルT53-L-703に変更、機体はリビルドというもの。
後者は軽武装偵察ヘリコプターとしての提案になっており、南アフリカの企業と協力して、南アフリカ軍のニーズに合わせて設計されているという。写真の407AHでは、M260無誘導2.75インチロケット弾ポッドと、M134ミニガンが搭載され、各種の自己防御装置とセンサを備える。

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RUAGが南アフリカにDo228NGを提案

http://www.flightglobal.com/news/articles/aad-ruag-offers-south-africa-do-228ng-deal-376796/

南アフリカ空軍(SAAF)では現在、洋上哨戒機としてC-47/DC-3を運用している。言うまでもなく恐ろしく古い機体を使ってるので、RUAGはこれの代替としてDo228NGを提案している。その中にはリース契約というオプションも含まれているようだ。

具体的な話はあまり出ていないものの、初期の訓練や部品供給が一通り済んだら、南アフリカ地元企業との緊密なパートナーシップによって運用を支える体制とすることを謳う。
南アフリカの業界にとっては悪い話ではないだろう。

基本的な条件は、年間1000飛行時間で10年間の取引としている。

http://www.dc-3.co.za/saaf-daks.html

USAFで余剰になってRAFで余剰になった機体なのか。

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南アフリカ空軍にグリペン最後の4機が正式引き渡し

http://www.flightglobal.com/news/articles/aad-south-africa-receives-last-four-gripens-376804/

サーブの南アフリカ現地法人の社長が発表している。
南アフリカ向けのグリペンC/D、合計26機のうち、最後の4機が正式に引き渡されたとのこと。これらの機体は、今年の初めに北欧諸国の合同軍事演習Lion Effortに、南アフリカ空軍(SAAF)パイロットが搭乗して参加していたもの。

SAAF向けのグリペンの中でも、これらは最後になっただけに、最も新しい装備を有するタイプとなっている。主要なものは、南アフリカ/ブラジル共同開発のA-Darter AAM、タレスのデジタル統合偵察ポッドおよびHMDといったもののインテグレーションで、HMDについてはグリペンとしては初とされる。
次の標準仕様はウエポンシステム20と呼ばれるもので、順次アップデート予定。

記事中の写真は、AAD会期中にデモフライトを実施したグリペンD。

またC/D型の完納を受けて、更なる発達型の導入、またはアップグレードについても言及された。グリペンE/Fと呼ばれるタイプになるが、こちらはスイスが8月末に開発参加することでスウェーデンと合意している。南アフリカとして計画に加わる可能性も含め、今後の検討事項となるらしい。

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スイスの方の記事はこっち。

スイスとスウェーデンはグリペン調達計画を進める

http://www.flightglobal.com/news/articles/sweden-switzerland-cement-gripen-pact-375879/

スイスでは、F-5後継機としてグリペンの導入を巡る議論が政治問題化しており、下手をすると国民投票(で否決される可能性もある)までこじれる可能性を残しているものの、8月28日、両国はグリペンE/Fに関する枠組み合意に署名して、早々と手を打った形になっている。
スイス国防省は、2014年にも最初の22機分の取引に漕ぎ着ける見通しを示した。

この場合の引き渡しは2018年Q2からとなり、2019年までにE/F型合わせて11機となる予定。
一方、F-5の退役に間に合わない期間は、ストップギャップとしてC型×8機、D型×3機をスウェーデンからリースする契約も提案中で、これは2016年から2020年まで、年間4400万スイスフランという金額が提示されてる。

次のバッチからの機数についてはまだはっきりしてないが、スイス政府は2013年度予算に計上する意向であり、順調なら9月20日以降のどこかで決定される。この分が40~60機とされているので、調達機数は62機から最大で82機という計算が成り立つ。

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A-Darterは、V3E Agile Darterとも呼ばれる第5世代SRAAMで、AIM-9のステーションにそのまま搭載できる。
IRIS-T同様のTVC付きIR画像誘導方式であるが、もっと経済的であるということになっている。
1995年からデネルが中心となって計画していたが、資金不足で開発は滞った。2006年にブラジルが計画に加わって、今年の初めにグリペンからの試射を成功させており、2013年から製造を開始する計画。
派生型として、SAAF向けにレーダー誘導のBVRAAM型、B-Darterと、ブラジル向けに地上発射型のA-Darterが考えられている。後者はランチャーを新規開発する他、ブースタを追加する必要あり。

http://www.airforce-technology.com/projects/a-darter-air-to-air-missile/

南アフリカではホークにも搭載する予定で、ブラジルでは現用のF-5A/B/E/F、将来のF-X2でも採用予定。

リンクスワイルドキャットがファーンボロエアショー期間中に1号機引渡し/AW169が登場し、アグスタウェストランドのラインナップ出揃う/RAFにおけるVC-10退役のスケジュール/RAF向けのA400Mフライトシミュレータの契約/A400Mのエンジン問題未解明で飛行展示見送り/ユーロファイターの能力向上について4カ国が合意/トレント152,455とRRの次期トレント関係

ファーンボロ、英国関係。無人機関係は別項で。

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リンクスワイルドキャットがファーンボロエアショー期間中に1号機引渡し

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-to-take-delivery-of-first-lynx-wildcat-at-farnborough-air-show-373762/

リンクスワイルドキャットの、メーカーの型式番号はAW159。英陸軍と海軍のリンクスを更新する機体であり、当面は陸海合同でRNASヨービルトンにて編成と訓練が行われる事になっている。機数は62機。去年の段階では、陸軍向けを4月に引き渡すことになっていた。海軍型は2013年配備予定。

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AW169が登場し、アグスタウェストランドのラインナップ出揃う

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-aw169-debuts-at-air-show-373965/

今年のファーンボロではAW169の実機が初めて展示され、AW139、AW189とともにアグスタウェストランドの新世代機ファミリーが出揃った形となった。これらの設計はある程度共通性があり、運用や訓練にかかるコストを低減できるというのも重要なコンセプトの一つ。

ただし開発完了までまだ先は長く、最初の試作原型機が5月、2号機がイタリアで7月6日に初飛行したところで、型式証明取得は2年後の2014年とされている。
今年後半には3号機が飛行試験計画に加わり、2014年には4号機まで製作予定。

AW139の受注状況は、カナダのCHCヘリコプターが次の3年間で10機(ガス・原油採掘向け)、ロシア政府機関のパラパブリック用途が2013年に3機、日本の三井物産エアロスペースが2013年に2機(消防と横浜市向け)、イタリアの警察が2013年に2機(オプション6機)といった感じ。
AW169については上記の様な段階で、本格的な販売にはたどり着いてないものの、南アフリカから1機の受注があるとのこと。民間のVIP/企業向けとある。

もう一つ書かれてるのはGrandNewの話題で、EASAが定めた航法衛星による着陸誘導系、satellite-based precision approaches with vertical guidance (SBAS/LPV)の、ヘリコプターの認可第1号となったそうだ。SBAS/LPVは、悪天候などILSを使えない状況でも安全な着陸を可能とする(衛星も常時使えるとは限らないが)。

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seisan/juntenchoueisei/004_05_00.pdf

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RAFにおけるVC-10退役のスケジュール

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-raf-squadron-commander-details-vc10-retirement-plans-373990/

現在RAFのVC-10(C1K/K3/K4)は、ブライズノートンの101Sqnに8機が在籍している。同機種は6月29日に初飛行50周年を迎えたが、これを花道とするかのように退役スケジュールを進め、2013年3月31日をもって全機が現役を退くことになる。
C1Kの1機は7月2日をもって退役したので、残りはC1Kが3機、K3が4機とK4が1機。日常的に飛行しているのは4機で、K4はフォークランドに展開してタイフーンのQRAを支援する任に就き、
他に各1機がRAFカニングスビーとRAFルーカーズのQRAにつけられ(RAFではQ態勢(“Q State”)と呼ぶ)、オマーンに1機が派遣されている(アフガニスタンのへリック作戦に従事)。
またタイフーンはロンドンオリンピックの防空(警備)のため7月と8月にRAFノーソルトに展開するので、101SqnのVC10はブライズノートンから支援にあたる。現在稼動してる空軍基地としては、ノーソルトがロンドンに一番近いようだ。

各型のうち、C1Kは輸送型の改造タンカー。翼下のパイロンに給油ポッドを搭載したもので、燃料搭載量は70tonと少ない。
K3とK4はともに民間旅客機のスーパーVC10を改修した機体で、K3はメインデッキに燃料タンクを増設して燃料搭載量を82tonに引き上げている。K4は燃料タンクの増設が行われていないが、大型のポッドと中心線の長大なホースを有するので、大型機への空中給油が可能となっている。
タンカーとしての能力ではK3が最も優れているので、最後に残すのはこれらの機体とされる。9月以降はK3のみの4機態勢とするようだ。ただし退役スケジュールは若干変動しながら進行していて、今後も変更の可能性はあるという。去年の予定だと既に6機態勢になってるはずだったとか。

前述の通り、RAFでの経歴が最も長いのは輸送型からキャリアが始まっているC1Kで、中でもテイルナンバーXR808は、1966年7月引渡しの最古参となる。6月中旬現在の累計飛行時間は43655時間、12255回の着陸を記録しており、退役後はRAFコスフォードの博物館に移動、保存される予定が決まっている。

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RAF向けのA400Mフライトシミュレータの契約

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-uk-places-order-for-a400m-simulator-374025/

エアバスミリタリーが受注、タレスが英国内で製造する契約となっており、サポートなど含む金額は5000万ポンド。2014年春に引き渡し予定。英仏共同で製造される形になり、エアバスミリタリーと傘下企業、英国の訓練・シミュレータ部門とは2007年から協力関係にあった。
RAFではA400Mを22機導入予定。

これでシミュレータの設置場所は、セビリアにあるエアバスミリタリーの訓練センターと、ドイツ、フランス、それと英国の4ヶ所となる。

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A400Mのエンジン問題未解明で飛行展示見送り

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-fresh-engine-issue-restricts-a400m-atlas-to-static-display-373954/

問題のエンジンはまだ点検中で結論は出ていない。以下、RIATの時に出た情報とあまり違いは無いので省略。
命名式典のときは土砂降りだったらしい。
なお、飛行展示の見送りは去年のパリショーでもあった。

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ユーロファイターの能力向上について4カ国が合意

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-eurofighter-confirms-enhancement-programme-374072/

ユーロファイターコンソーシアムのメディアブリーフィングで発表予定だったのが、初日にキャメロン首相がパビリオン訪問した後、発表したとか。

発表によると、独伊西英のユーロファイターのパートナー4カ国は、以前から話し合いを進めていたユーロファイターの能力向上について合意したとのこと。これでフェーズ1エンハンスメントの正式なスタートが決まったことになり、トランシェ2の後期生産型から適用される。この型はP1EAと呼ばれ、輸出型のP1EBとは区別される。P1EBは今のところサウジアラビア向けと同義で、P1EAと類似した仕様になると予想される。タレスのダモクレス・ターゲティングポッドも提案されている。
BAEシステムズでは試験機のIPA6を使用し、7月20日からP1EB向けの装備の試験を始めることにしている。

P1EAでは、AESA、進歩した自己防御装置が搭載され、MeteorとペイヴウェイIVのインテグレーションまでが含まれる。
搭載機材の目処がついてきたから話がまとまったという感じか。

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トレント152,455とRRの次期トレント関係

http://www.rolls-royce.com/civil/news/2012/120709_lego_jet_engine.jsp

レゴで再現された1/1スケールのトレント1000。RRのブースに展示されている。152455という数字はブロックの数を表しており、製作には1280時間かかったとのこと。
作動はしないが可動部分は忠実再現されており、その機構を学ぶことができる優れもの。全長2m以上、重量は300kgを超えており、レゴで作った構造物としては最も複雑なものの一つと称している。

レゴのエキスパートとして、Bright Bricksというところのエド・ダイメント氏が協力したそうだが、ジェットエンジンだけに直線部分というのがほとんど無く、物凄く苦労したみたいだ。機構部分もだいたい回転運動だし、ファンブレード1枚再現するだけでも簡単ではない。というかもはや正気の沙汰じゃない感じに。

http://www.bright-bricks.com/index.php

一応、教育目的で制作されており、金曜のFutures Dayでは10000人以上の児童が来場する予定になっている。

本業の方の展示では、トレント1000の787向け高出力タイプと、

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-rolls-royce-prepares-to-power-growth-variants-of-787-373576/

777X向けの社内呼称RB3025などが出てる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/rolls-royce-reveals-more-details-of-trent-proposal-for-777x-373609/

トレント1000の、787-9に対応するタイプはパッケージCと呼ばれ、2014年前半にNZ航空向けの機体に搭載される予定で開発中。このタイプは2014年後半以降、-8の新造機にも搭載することになっている。現在、パッケージCの試験運転は76時間ほど行っており、747テストベッドを使った飛行試験は今年後半から開始予定。計画通りなら型式証明は2013年6月となり、製造も合わせて787-8と-9の飛行試験開始に間に合う。
パッケージCの推力は、試験では最大80000ポンドまで達しているが、型式証明では74000ポンドに留まる予定。-10Xの就航は2016年となるから、その時点では推力は更に高められると思われる。中圧圧縮機(IPC)がパッケージBとの最大の違いで、これはKHIが納入している。はず。

http://www.khi.co.jp/news/detail/20110323_1.html

デモフライトを実施したカタール航空の787はGEnXを搭載していたが、RRの公式見解としては、短距離の路線、3000nm程度であればこちらが有利と主張している。またライフサイクルコストでも、15年で100万ドル安上がりとか何とか。

RB3025については、トレントXWBとの違いなどについて発表されている。
ファン径は、300cmちょうどから337cmに拡大し、ファンブレードがチタニウムの22枚から複合材の18枚(数が減った分、1枚あたりの面積は増加する)になる。これは機体のグラウンドクリアランスの違いによる変更だが、RRのエンジンとしては最大の直径であり、最適なファン径に近いとする。推力は100000ポンド級でバイパス比12:1、圧縮比は62:1に達し、現用777のGE90-115Bよりも1割ほど燃料消費率が改善される見込み。

FN MAGの銃床がポリマー製に/スイス陸軍が新型自転車を導入/サウジアラビアがレオパルトMBTの導入数を増やすことを検討

FN MAGの銃床がポリマー製に

http://www.spacewar.com/reports/Famous_FN_MAG_Machine_Gun_Goes_Polymer_999.html

FN MAGは、7.62mm NATO弾を使用する多目的機関銃の草分け的存在で、1950年代に登場した。世界90カ国以上で採用実績があり、製造数は20万丁を超える。
主要国だけでもMAG58、GPMG、M240、L7A2…と様々な制式記号番号が与えられ、その用途も、戦闘車両からヘリコプター、小型艇への搭載と多岐にわたり、FN社純正のRWS、deFNder Light/Mediumも提供されている。

メカニカルな部分は、ほぼそのまま製造されているが、従来、銃床は木製だった。現在の生産型では、これがポリマー製に改められているという。当然ながら、既存の銃床を交換することも可能。
変更された理由は、木製ストックは放射能や生物化学汚染を除去するのが困難であり、現在の市場トレンドに合わなくなっている、というもの。重量の問題とかじゃないのね。
下請けの木工場が心配だ。

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スイス陸軍が新型自転車を導入

http://www.spacewar.com/reports/Swiss_army_to_buy_new_bicycles_with_gears_999.html

5月の記事。
スイス陸軍の自転車部隊は、公式には2003年解散となっているが、その装備品である自転車はまだ相当数が残存していたようで、今も基地内の移動や運動のために使われている。

この部隊が装備した軍用自転車はスイス製で、メーカー名のままCondorと呼ばれ、1905年制式化のMO-05、1993年のMO-93がある。これらは基本的なフレームがほぼ同一で、外装変速機の有無、現代的なバーハンドルと前輪キャリア追加などの変更がある。三角フレームの内側にぴったり納まる物入れは、特徴の一つとして受け継がれた。
恐ろしく頑丈そうな見た目のまんま、重量は重かった。ウィキペの記述を信用するなら、初期のMO-05が23.6kg、1946年以降21.8kgと書いてあるから、おそらくMO-93も20kgは超えていると思われる。完全装備の重量は30kg。
ブレーキ、タイヤなどの足回りは、時代に合わせて更新してきたようだが、見た目はあんまり変わっておらず、愛好者もいるらしい。
スイスは国民皆兵の国でもあるし、この自転車はやはり特別な存在のようだ。

地元のNZZ Am Sonntag紙が報じたところでは、スイス陸軍はこの自転車の後継として、アルミフレームの新車を調達する計画とのこと。変速機は8速で、ディスクブレーキを備える。重量は15kgまで軽量化。山岳歩兵が乗り回すわけじゃないから、耐久性は多少犠牲になってそう。
調達数は約2800台で、値段は2500スイスフランだそうだ。日本円にして20万ちょい。安くはないが、官庁価格であるし、こと自転車の値段に関しては日本の安物売りが酷過ぎるという話もあるので、一概には言えない。

幾つか資料を。

http://velosolo.co.uk/swiss-army.html

http://objectbook.com/militaervelo.html

ここには、MO-93が制式化された際にMO-05が大量に民間へ放出され、市場価格1000ドル程度から100~200ドルまで下落したと書いてある。これらの多くはスイス国外のディーラーが買い付けたので、スイスの外で買おうと思ったら結構高くなるみたい。日本でもヤフオクとかで手に入る…のだろうか。
また製造年は1950~1970年と比較的新しく、もっと古いのは別格になる。オリジナルのタイヤなどはもう入手不可能(中国製はあるみたいだが)。

新車導入でMO-93も大量放出されることになりそうなので、欲しい人は今から考えといた方がいいかも。
1世紀前に設計されたフレームこそMO-05と大差ないが、パーツの入手性などはずっとましだろう。

http://www.benvanhelden.nl/Condorclub/Fiets/Switserland/MO93/model93.html

http://www.flickr.com/photos/25831992@N03/2642778614/

 

スイス国防相が試乗したとあるけど、新型ってこれか?

http://gruppe-giardino.ch/?p=4890

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サウジアラビアがレオパルトMBTの導入数を増やすことを検討

http://www.spacewar.com/reports/Saudis_boost_German_tank_buy_to_600-800_999.html

2011年、サウジアラビアはドイツのレオパルト2A7+を270輌導入する意向を示したが、ドイツには武力紛争当事国への兵器輸出を控えるという基本政策があり、サウジアラビアがこれに抵触すると主張する野党と与党の対立を招く結果となる。国内の雇用にも大きく影響する規模だったために、話が大きくなった。最終的にはメルケル首相の決断で輸出が承認されている。ちょうど1年前のことだった。

今回の報道では、サウジアラビアの意向は126億ドル、600~800輌の導入という、ドイツでも前例のない金額に膨れ上がっている。
Bild am Sontag紙は、最初のバッチ300輌分の契約について合意間近と報じた。サウジアラビア側はラマダン前、つまり7月20日までに調印することを望んでいるという。
サウジアラビアの最新MBTはM1A2で、315輌全てのM1A2S規格へのアップグレードが進行中。これは既に115輌が配備された。

http://www.defenseindustrydaily.com/the-2006-saudi-shopping-spree-29b-to-upgrade-m1-abrams-tank-fleet-02481/#saudi-arabia-armor

その他のMBTとしてはAMX-30とM60A1/A3が現役で、両方足したら800輌近くなる…と思う。これらの更新で数を維持するという仮定なら納得のいく数字。金額は色々あほらしくなるような数字だけど。

サウジアラビアなどのGCC諸国は、2011年、ムバラク政権が米国にあっさり見捨てられた事を重視し、装備の欧州シフトを進めているとも言われている。

昨年のもう一つの大きな兵器輸出案件として、イスラエル向けのドルフィン級通常潜3隻がある。この決定も物議を醸したが、ユダヤ人国家への賠償というのが効いた面もあり、今回のサウジアラビアとの取引に影響を及ぼしたかどうかは定かでない。

シュピーゲル誌の論評によれば、現政権の立場は、「近い将来にイランが核武装するなら、それと周辺諸国の軍事力がバランスするのが望ましい」ということになっている。
メルケル首相の判断は別としても、米国が不干渉を貫くなら、域内の軍事力で片をつけなければならない、というのは確かだ。そして欧州は火の粉がかかってくる場所なので以下略と。

ノルウェーがC-130J×2機の追加発注を要請/RAF仕様に改修されたBAe 146-2000QC/A400Mの回転翼機積載の画像が公表される/英軍のヘリコプター機種集約、SARの民間移行について

ノルウェーがC-130J×2機の追加発注を要請

http://www.flightglobal.com/news/articles/norway-requests-two-c-130js-to-replace-crashed-transport-373244/

ノルウェー空軍はC-130Jを4機保有していたが、3月15日に1機が墜落し、残りは3機になってしまっていた。
損失を補充する為、ノルウェーはDSCAに対してC-130J×2機の追加発注を要請している。金額は3億ドル程度で、スペアパーツと各種装備、サポート一式を含む。結果として1機増やすことになるが、実は以前の輸送機部隊はC-130H×6機で構成されていた。それを踏まえてやっぱり数が足りんよね、ということになったのか、1機使えなくなっても最低4機使えないとまずい、という結論になったのかは定かでない。
DSCAの発表では、補充分はアフガニスタンへ展開見込みと言っているし、海外展開に自前で輸送機出せないNATO諸国との連携も考えると、4機でギリギリなのかもしれん。

また、事故調査はまだ継続中のようだ。墜落現場が冬山の絶壁みたいなところだったので、雪解けまで調査は困難と伝えられていた。
事故機は2010年6月納入の機体だった為、墜落原因がハードウェアの致命的なトラブルといった可能性は高くない。

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RAF仕様に改修されたBAe 146-2000QC

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-ex-tnt-bae-146s-enter-conversion-for-royal-air-force-373116/

RAFはurgent operational requirement (UOR)により、アフガニスタンで使用する輸送機の新規調達を決定。ベルギー拠点のTNT航空から退役したBAe 146-2000QC×2機を入手して、軍用貨物/人員輸送機への改修を行っている。この作業はBAEシステムズリージョナルエアクラフト部門が主契約でホーカー・ビーチクラフトが請負い、見た目はRAFの現用機の色になっただけだが、改修費用は1550万英ポンドをかけている。
アフガニスタンの高温・高標高に適応するための装備の変更などが含まれ、兵員輸送仕様としたため定員は96名から若干減っているとのこと。大型のカーゴドアはそのままで、元の機体では貨物デッキの積載量10600kg。

このUORにおいてBAe146は、C-130K退役後(2012年12月に最後の1機が退役予定)の戦術輸送以外の能力を補うという位置付けになっており、A400Mまでのストップギャップという一面もある。

TNTでの現役時は、こんな感じのオレンジ頭に塗装されていた。

http://www.flickr.com/photos/airlinerart/5386910829/

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A400Mの回転翼機積載の画像が公表される

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-a400m-clears-loading-trials-with-european-helicopters-373106/

エアバスミリタリーは、A400MがEC725とNH90を積載している様子を公表した。6月初めに、EC725はトゥールーズ、NH90はホルツドルフ空軍基地にて撮影されたもので、A400Mの機体は同一でグリズリー4。IOC獲得に向けた活動の一つで、今後も各種機材の積載試験が続けられることになっている。

フランス空軍向け1号機、MSN7の初飛行は8月23日予定。あと2ヵ月後に迫っている。

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英軍のヘリコプター機種集約、SARの民間移行について

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-review-confirms-sar-helicopter-transition-merlin-shift-373005/

英国政府は、2016年4月までにRAFのマーリンHC3/3AをRNに移管することを決めた。これにより、長きにわたってRNで活躍したシーキングは退役することになる。
英軍における将来の軍用ヘリコプターは、リンクスワイルドキャット、マーリン、チヌークとアパッチAH.1に集約される方針だが、アップグレード済みのプーマHC2は2025年まで使用される計画。

RAFはマーリンHC3/3Aを手放した代わりに、チヌークHC6を装備することになる。これは新造機14機を発注予定で、英国仕様の最新型となり、議会向けには5年間の開発及び製造期間で、約10億英ポンドという試算を提出している。機種を増やすことなしにチヌークが増勢する、という形になるわけだが、既存機も改修済みで長く使われるし、運用の上でも大きなメリットがあるだろう。
マーリンHC3/3Aは、シーキングの後継として強襲ヘリコプター部隊に編入される予定。
この他にシーキングは、英国本土とフォークランド諸島をカバーするSAR任務も帯びていたが、これはシーキングのRN退役と共に終了、以後は民間の事業者が請け負うことになっている。

PAK-DAの任務と用途はなお不透明?/パキスタンが核搭載可能な空中発射型巡航ミサイルの試射に成功/イタリア空軍のF-16ADF全機がリース期間を終えて米国へ帰還/韓国がCBU-105D/B SFWの売却を要請

PAK-DAの任務と用途はなお不透明?

http://www.flightglobal.com/news/articles/russian-pak-da-bomber-in-doubt-says-minister-372687/

ロシアのドミトリ・ロゴージン副首相がイズベスチヤ紙のインタビューに答えたところでは、PAK-DAは伝統的な長距離核戦力を復活させるわけではないと述べた。防空システムやMDの発達に対して優位に立てないといった話をしている。
PAK-DAの開発はツポレフ設計局が担当し、Tu-160を大幅に改設計する案(VG翼を最後退位置にするとデルタ翼になるアレ)も公になっているものの、実際のところはわからんことが多い。2020年に原型機、2025年に配備というスケジュールもかなり大雑把な感じだ。

世界的には戦略爆撃機の時代は終焉を迎えて久しく、2030年代に戦略核積んでパトロールというのも想像しただけで時代錯誤の感は凄まじいものがある。

ただし目的がはっきりせずに迷走の気配なのは、米国のB-52およびB-1B後継も同様で、目的と手段が入れ替わってるというか空軍組織内部の縄張り争いというか、その辺も含めて似たり寄ったりだ。
違うのはロシアが伝統的に巨人機好きという点ぐらいか。

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パキスタンが核搭載可能な空中発射型巡航ミサイルの試射に成功

http://www.flightglobal.com/news/articles/pakistan-tests-nuclear-capable-raad-air-launched-cruise-missile-372647/

この巡航ミサイルは、パキスタンが自国で開発したもので、Hatf-VIII (Ra’ad)と名付けられている。初めて試射成功が伝えられたのは2011年4月。ミラージュIIIから発射される映像が流れた。

地形追従飛行が可能な、機動性の高い巡航ミサイルで、射程350km以上。
USAFのALCMを縮小した感じだが、搭載する機体がミラージュIIIまたはJF-17というから、ギリギリ1発搭載できるかどうかというレベルと考えられる。F-16の方がまだマシっぽいものの、政治的に差し支えがあるのだろう。

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イタリア空軍のF-16ADF全機がリース期間を終えて米国へ帰還

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-italys-last-f-16s-returned-to-usa-372691/

Peace Caesar計画の中でイタリア空軍へリースされたF-16ADFは、ユーロファイターの配備と入れ替わりでその役目を終えた。
段階的に返却のためのフェリーフライトが実施され、6月1日、最後の6機(単座型5機と複座型1機)がアリゾナ州ツーソンへ着陸したとのこと。イタリア空軍のパイロットが操縦し、SAR機としてC-130Jが1機随伴、USAFのタンカーが支援した。5月28日、Trapani-Birgi空軍基地を離陸、途中、アゾレス諸島で悪天候のため足止めされたが、最終的には無事にフライトを終えている。

FMS契約によりF-16ADFのリースが決まったのは2001年3月。防空戦闘機F-104ASAの退役とユーロファイター就役のギャップを埋めることを目的とし、当初は2003~2010年、累計飛行時間45000時間、単座型30機と複座型4機といった内容だった。
ホームベースとしたのはTrapani-BirgiとCerviaの両空軍基地。
2009年、ユーロファイター就役の遅れに合わせて契約期間延長が決まる。契約金額はそのまま、2012年中頃、47800時間までの延長となっていた。戻されても別に使い道は無いからサービスしたようだ。

これらのF-16は2003年12月から防空任務に就き、その一部はリビアでのユニファイド・プロテクター作戦にも参加している。

そういえばイタリアのF-16のドキュメンタリー見たなあ。確かパイロット養成が盛んに行われてた頃のイタリアのTV番組かなんかで、レポーターの女性が突撃取材してゲロゲロ吐いてたのは覚えている。

それはそれとしてTrapani-Birgi空軍基地で5月末に撮影されたF-16。

http://www.youtube.com/watch?v=1U7CkACJ8d0

と、F-104ASAの現役当時の映像。

http://www.youtube.com/watch?v=gX0NXVdGKGk

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韓国がCBU-105D/B SFWの売却を要請

http://www.flightglobal.com/news/articles/seoul-requests-325m-sensor-fused-weapon-deal-372652/

CBU-105D/B Sensor Fused Weaponは、テキストロンが開発したクラスター爆弾代替兵器の類で、重量は1000ポンド級。CBU-97にWCMDと呼ばれるPGM化キットを適用したもので、子弾のBLU-108を10発内蔵する。受動IRセンサアレイと能動レーザセンサで目標を識別し、命中しなければ高度15m程度の空中で自爆するか、着弾後に弾頭を不活性化する機能を有する。メーカーの試験を根拠とした信頼性は99%以上とされ、米国の他にインド、オマーン、トルコ、UAEなどが採用した。
DSCAでは同志討ちやコラテラルダメージを減らし、全体の攻撃効率を高めると称している。

韓国は2010年4月、SFWの導入を決めている。実弾367発の他、訓練用のキャプティブ弾が28発と模擬弾7発などを含む金額は、総額で3億2500万ドル。

先ごろF-5代替として採用が決まった、FA-50へのインテグレーションが計画されているようだ。
FA-50については、1月の最初の契約は20機で6億ドルと発表された。現用のF-5は150機が就役しているので、60機から、最大150機の採用が見込まれるところとなる。

中央日報にもちょっと書いてた。

http://japanese.joins.com/article/286/153286.html

オーストラリアの防衛予算削減とRAAFの関係など

RAAFがC-27J×10機を調達で合意

http://www.flightglobal.com/news/articles/australia-confirms-a14-billion-deal-for-10-c-27js-371648/

現用のDHC-4 カリブーを代替する機種として、Air 8000 Phase 2において要求されていた。
米国のFMS経由での取引となり、金額は14億ドル。競合していたのはC-295だが、公式声明では航続距離と速度などの飛行性能、輸送能力、短距離離着陸性能などでC-27Jが勝り、要求性能を満たしたとしている。

DHC-4の弱点とされたのは自己防御装置の欠如で、戦場に展開するには脆弱だったというものが挙げられる。C-27Jは自己防御EW機器、ミサイル警報装置、装甲を備え、MANPADSや小火器からの防御が可能となっている。また速度、運動性もDHC-4より高いので、生残性は向上すると見られる。

また、メーカーのアレニアによると、C-130Jとの共通性もメリットとされている。エンジンが同じRR AE2100で、アビオニクスや貨物ハンドリング装置も類似しているという。

なお、14億ドルという金額は、2011年12月23日にDSCAが議会に通知した金額9億5000万ドルよりもずいぶん高い。交渉の結果と考えられるが、ここには詳細は書かれてない。

幾分興味深いのは、RAAFがC-130H×8機を早期退役させてC-27Jを導入する形になったこと。当局はオーストラリア国内でC-130が利用可能な飛行場500カ所に対し、C-27Jは1900カ所、国境地帯では同じく200カ所、400カ所と、C-130(現用はJ型12機となる)に比べて柔軟な運用ができるとした。

これに対してUSAFでは、C-27Jでは輸送能力が不足するし、C-130JでもC-27Jが離着陸可能な飛行場の大部分にアクセス可能である、として、C-27Jの減勢を進めようとしている。島嶼部への進出なども重視されるRAAFと、海外展開なども視野に入れなければならないUSAFでは運用イメージが全然違うが、全く逆の結論となった(LMの政治力とかもアレだけども)。

C-27Jの主契約はL-3コミュニケーションズ。RAAFリッチモンドに配備される予定で、2015年引き渡し、2016年末のIOC獲得を目指す。

エアバスは、C-295×10機の発注に対してA330MRTT/KC-30の転換作業をオーストラリア国内で実施するというオプションを提示していた

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関連して防衛予算削減に絡むC-130Hの早期退役と、F-35調達先送りの話など。

http://www.flightglobal.com/news/articles/australia-axes-c-130h-fleet-in-sweeping-defence-cuts-371592/

RAAFのC-130Hは、2009年から既に4機が任務から外れていた。2011年11月になって、これらの機体を、改修と維持費を譲渡先に持たせる条件で、インドネシアに譲渡する提案が行われる。これに関してはまだ公式発表はないものの、ほぼ確定だろうと見られる。

現時点で残ったC-130Hは8機あったが、これらの早期退役は、今後4年間で2億5300万ドル程度の経費節減になるとのこと。
任務を引き継ぐのはC-130JとC-17となる。

しかしオーストラリア政府が目標とする国防費の削減額は、今後4年間で55億オーストラリアドル(うち2012年から2013年にかけて9億7100万オーストラリアドル)。
先にF-35Aの調達計画(Air 6000 Phase 2A)先送りが発表され、2013年の2機の後、続く12機の調達を2年遅らせ2014~2015年としたが、これでも13億ドル。5月9日の声明では、Phase Bの58機の一部を延期して7億ドル節減という可能性も示唆された。最大100機という調達計画は、だんだん怪しくなっている。
その他、軍組織全体では間接費用削減、1000人規模の民間人員縮小、正面装備では陸軍の装甲車輌削減などが計画中。

RAAFに関しては、DHC-4後継機以外にもAP-3Cの近代化、F/A-18Fの一部をEA-18G相当にコンバートすることなどが計画されている。

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RAAFのWedgetail AEW&CのEW装備についてボーイングが契約

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-wins-ew-support-contract-for-raaf-wedgetails-371489/

公式を見ても内容があんまりよくわからんのだが、ISR能力を向上するためのソフトウェア改修っぽい。金額は5500万オーストラリアドル。ソフトウェア開発・試験と修理まで含む。

http://www.airforce.gov.au/aircraft/wedgetail.aspx

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RAAFがF/A-18A/Bの整備についてRFT発出

http://www.flightglobal.com/news/articles/australia-issues-tender-for-fa-18-hornet-maintenance-371450/

RAAFの保有するF/A-18A/Bのうち、A型55機とB型16機、計71機の整備について入札が行われる事になり、RFTが出ている。
飛行訓練、地上訓練や整備訓練に関係するシステム一式を含んだパッケージとなっており、入札締め切りは2012年7月、契約は2013年4月の見込み。

これらのF/A-18A/Bは、HUGと呼ばれるアップグレードを経ているが、この契約によりF-35が就役する2020年まで現役に留まる。レガシーホーネットとして最も高性能なのは確実。JASSMの搭載まで計画してるし。

トライスターの40年

トライスターの40年

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-the-tristar-heritage-40-years-on-369902/

英国記事として読むと興味深いので、適当に訳。

今から40年前の1972年4月、イースタン航空がL-1011トライスターを就航させた。以後、1983年に製造終了するまで、249機が作られている。現在現役に残るトライスターは11機で、うち7機はRAFが保有。
トライスターと言えば、ロッキード(当時)最後の民間旅客機で、日本では「ロッキード事件」の主役として胡散臭さが付きまとったが、機体設計の素性が悪かったわけではない。製造機数が少ないことを差し引いても、設計に起因する大事故を1件も起こしていないことはDC-10と対照的で、特筆に値する。
ロッキードの手段を選ばない売り込みはこの機種に限った話ではなかったが、航空機の輸出はつまるところ、国対国の取引でもある。

1960年代を通じて成熟化を進めたタービンエンジン技術は、大型レシプロエンジンに対して運航速度、機体規模、座席マイルあたりコストの全てで優位に立ち、それを過去のものとした。
1960年代後半になると、ボーイングはUSAF向けの重量物輸送機としては不採用に終わった設計をモデル747「ジャンボジェット」として旅客機に転換、ワイドボディ旅客機時代に移っていく。最終的には成功を収めるものの、当時、707の倍の規模の747は、最適なサイズとは言い難い面もあった。また大西洋の向こうではコンコルドの次の共同開発計画としてA300も姿を見せ始める。

トライスターとDC-10が計画されたのは1965年と1966年で、米国内路線向けの旅客機市場は、空前の成長が予想されていた。

この時すでに、ナローボディ旅客機市場は737とDC-9が押さえていたため、ロッキードはより大型の市場に狙いを定めた。
トライスターが目標としたのはアメリカン航空向けだったが、これはマクダネルダグラスのDC-10と正面から競合する結果となる。トライスター開発初期、ロッキードは低コストと大輸送能力を両立する案として、双発ワイドボディを検討していたものの、エアライン側と話し合いを進める過程で、西海岸からのロッキー山脈越えと、大陸横断を含む長距離航路では3発必要との結論に至った。
1960年代、ETOPSといったものが規定される以前で、双発機は長距離航路や洋上飛行を行うのに信頼性が足りないとされていた事情も大きく影響している。

アメリカン航空向け商戦は結局、DC-10の採用で終わるが、これはニューヨークとフィラデルフィアを結ぶ陸上を飛ぶ路線であったので、ロッキードは長距離路線向けの売り込みを強めた。その目論見通り、ロンチカスタマーとなったイースタン航空は大陸横断する路線にトライスターを就航させる。ただし航続距離に関しては、ライバルの長距離型、DC-10-30が早い段階で投入されたため、以後1979年のL1011-500まで優位には立てなかった。

トライスターに関してはRB211の開発難航、RRの破綻・国有化と絡めて、開発遅れについて言及される事が多いものの、型式証明取得時期で見ると、実は計画から5か月しか遅れていない。試験計画自体はスムーズに進行したとも言える。
前年1971年が、第1次オイルショックの嵐が吹き荒れた年であることも勘案すると、この遅れはエアラインの判断にはさほど影響しなかったのでは?という見方もある。
最近の旅客機開発は複雑さの度合いが桁違いであるが、年単位で遅延するのは日常茶飯事。隔世の感はある。

RB211は1967年開発開始。それまでの研究を基礎とした、当時唯一の3軸型ターボファンで、炭素系複合材のHyfil(製品名)をファンに使用する事で高性能を達成する計画だった。
ロッキードはRB211を高く評価し、トライスターの高性能を支えるエンジンとして選定した。
この時期の米国メーカーが提供可能だったエンジンは、GEがCF6系で、実際にトライスター向けとしても提案されている。TF39の民間型からスタートした、高バイパス比ターボファンの嚆矢とされるものだ。コア部分は舶用ガスタービンのLM2500などにも繋がっている。
もう一方のP&Wは、747向けのJT9D製造が忙しかった。これをトライスターに搭載するには、ファン径を小さくし、推力を下げる必要があり、実際にトライスターに搭載されることはなかった。

RB211の開発が難航した理由は、Hyfil製のファンがうまくいかなかったことが大きい。通常の環境では大きな問題にならないもの、砂塵によるエロージョンが深刻で、水が浸透して層間剥離を起こす危険性があった。これを断念するきっかけになったのは、バードストライク試験がクリアできなかったことだ。代案はチタン製に変更する事だったが、こちらも加工に難があった時代のことだけに、単にファンだけすげ変えて終わりとは行かず、開発費の高騰を招く結果となる。重量増も不可避で、300ポンドほど重くなり、性能上の利点は薄れてしまった。最終的にHyfil製のファンは、生産型のエンジンには一切使われずに終わる。
L-1011-1の1号機は1969年3月に最終組立をスタートするが、この時点で試作のRB211が達成した推力は40600ポンド止まり。翌年の初飛行時も、このエンジンが搭載されていた。

しかし1971年、RRは破綻してしまい、国有企業となる。ロッキードもC-5Aの開発費高騰などで経営が悪化しており、トライスター計画自体が危うい状況に陥りかけた。が、ここでもロッキードが政治力を発揮して米政府の債務保障を取り付け、比較的すんなりと新RRとの再契約に至った。
なおRB211の試験に用いられたフライングテストベッドは、RAFのVC-10。左翼のRRコンウェイ×2基をRB211×1基に換装して試験されている。
RB211は当初計画ほどの燃費率は達成できなかったものの、前世代よりは大きく改善。低騒音化も果たしてウィスパージェットと称された。

その後も改修キットとして-50/150/250、エンジンをRB211-22とした-100、RB211-524とした-200、長距離型で短胴化などの改設計を含む-500へと派生している。BA向けの-500は、垂直および水平方向のフライトマネジメントシステムを備え、地上のVOR/DME等からの入力と三重化されたINSによるエリアナビゲーション系を有していた。
また、DC-10や747に先駆けてカテゴリー3a対応のALSを装備したことは、悪天候への対応という点でアドバンテージとなっている。
このあたりは競合機種に対し、技術的に先行していたと評される所以だが、過当競争となった旅客機市場で勝ち残る事はできなかった。
RB211はその後、トレントエンジンに発達する。一度は会社を傾けた(というか潰した)経緯があるが、その後は見事に屋台骨へと成長したわけだ。

3件の重大事故について簡単に書いておくと、
1972年12月、イースタン航空機が、着陸脚の点検中に高度を失ってマイアミ空港付近に墜落(パイロットエラーなどが重なった)。
1980年8月、サウジ航空機が、リヤドからの離陸後に貨物室で発生した火災が原因で全焼(緊急着陸に至るパイロットの判断が遅く、避難指示も出なかった)。
1985年8月、デルタ航空機が、ダラス空港への着陸進入中、ダウンバーストにより墜落(その後のウインドシア対策のきっかけともなった)。

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トライスターを軍用機として活用したのはRAFで、その任務達成率は驚異的な高さだった。
その軍用機としてのキャリアは、1980年代初めにヴィクター空中給油機が寿命を迎え、その後継機として導入された時から始まる。
ガルフ航空とBAE(もと東アフリカ航空の機体)から9機のVC.10が購入され、それぞれ3つの給油装置を有する空中給油機に改修されることになった。改修は1982年から開始され、ヴィクターの退役に合わせて順次就役する計画だったが、折しもフォークランド紛争が勃発。酷使によってヴィクターの寿命が縮まる結果となった。
戦後の1982年12月、RAFはBAから6機のトライスターを購入。これらは全て-500型で、当初は改修されず、そのままトライスターC.Mk.1戦略輸送機として就役する。

1983年8月、RAFプライズノートンで搭乗員訓練開始。最初のクルーが1984年2月までに飛行資格を得ると、同年11月には216Sqnは正式にトライスター装備部隊として改編された。1985年12月からは週3回のペースでフォークランドへの空輸作戦が始まる。

1984年、パンナムから3機(-500型)を購入。2機がC.Mk.2、1機が軍用無線機とアビオニクスのアップグレードを受けたC.Mk.2Aとして就役した。これらの輸送能力は、人員260名と最大で貨物16tonといったものだった。

元BAのトライスターは、後にマーシャルグループ傘下のマーシャル・エアロスペースの手で空中給油機へ改修された。この際、-500の特徴でもあるアクティブ・エルロンと柔軟な外翼部構造の為、翼下の空中給油装備は見送られている。
モニタ用のCCTV装置と、床下燃料タンクが追加され、機内燃料は43.9ton増加して139.7tonとなった。
K.Mk.1となった2機は、後部に187席、前部に手荷物スペースの構成。KC.Mk.1となった4機は胴体の貨物ドアと強化されたフロア、搬入出用のローラーコンベアを備えて、貨物パレットに最大31ton、人員最大160名という輸送能力が与えられた。
これらは1986年から任務に就き、ポスト冷戦期に活躍している。1991年の湾岸戦争では2機のK.Mk.1が急遽デザートピンクの迷彩をまとってリヤド国際空港へ展開、現地の将兵からPinkyとかPerkyといったニックネームを賜った。この時、90回以上のミッションを通して310万tonの燃料を給油し、累計430時間以上の飛行を記録している。

ボスニア・ヘルツェゴビナとコソボの各紛争においては、216Sqnのトライスター×5機はイタリアのアンコーナ基地へ展開し、飛行禁止空域を哨戒するNATO軍機への空中給油任務に就いている。230回以上のミッション達成率は100%で、7ヶ国ののべ1580機に対し、燃料1350万ポンドを給油した。

216Sqnはイラク南部でも同様の任務に就いた。2001年8月から2003年3月までバーレーンへ展開、2003年からはアフガニスタンで米海軍機への給油を担当している。アフガニスタンへ展開した空中給油機としては、一番乗りであった。

RAFのトライスターは2010年代半ばまで現役に留まり、その後はA330MRTT/ボイジャーが引き継ぐことになっている。

イスラエルはF-35に国産AAMをインテグレーションする意向/ボーイングがイスラエルのCH-53後継機としてCH-47系を提案/サウジアラビアのF-15Sアップグレード/ポーランドが軍用ヘリコプター×26機の入札/シンガポールのG550 AEWがFOC獲得/RAFのセンチネルR.1についてレイセオンUKが有用性を主張

イスラエルはF-35に国産AAMをインテグレーションする意向

http://www.flightglobal.com/news/articles/israeli-f-35s-to-carry-indigenous-missiles-370819/

匿名の情報源によると4月17日、イスラエルの装備するF-35Aは、少なくとも1つの主要な兵器システムが自国製であると述べた。イスラエル空軍は、以前から次世代AAMをF-35に搭載する意向を表明しており、それを指すものと考えられている。
詳細は不明ながら、有力なメーカーはラファエルと見られる。ラファエルはレイセオンとDavid’s Slingの迎撃体、Stunnerを共同開発しており、これは空対空兵装としての派生型もある、とされている。

イスラエル国産AAM、DerbyもPythonもラファエル製なので、主契約はほぼラファエルで確定だろう。
DerbyはPythonから発達してできたBVRAAMだが、この後継みたいな感じか?もしくはAIM-120の派生みたいなやつか。

http://www.rafael.co.il/Marketing/331-887-en/Marketing.aspx

今のところ、イスラエル空軍向けのF-35Aは、2017年前半から20機の最初のバッチが引き渡される見通しで、これに続く調達、20~25機の交渉は2013年から開始される予定。
次のバッチでは、イスラエルで開発されたEWシステムによる能力向上も計画されている。

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ボーイングがイスラエルのCH-53後継機としてCH-47系を提案

http://www.flightglobal.com/news/articles/israel-offered-chinooks-as-service-eyes-v-22-deal-370904/

イスラエルはV-22への強い関心を示しており、昨年は特殊作戦向けの評価を実施するため、パイロット他の人員を米国に派遣、徹底的な調査を行ったとされている。が、イスラエルの財政上の問題から簡単に入手可能となりそうにはないのが現状。
空軍としては、V-22を多年度契約で導入したい意向であるようだが、どうなるかまだわからない。

ここで問題となってくるのはCH-53の老朽化で、3~4年以内に何らかの決定を下す必要が生じるだろうとの見方もある。

CH-53にはK型というUSMC向けの次世代型も存在するが、ボーイングとしては座して見てるつもりは無く、CH-47Gというのを提案した模様。CH-47Gは、コクピット等が大改修されたCH-47Fの次の型という事になるが、USAFのF型とは違って新造機となり、特殊戦向けのMH-47Gの仕様も採り入れられるとされる。

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サウジアラビアのF-15Sアップグレード

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-bae-awarded-contracts-to-support-saudi-f-15sa-upgrades-370494/

サウジアラビアは、新造機のF-15SAを発注する一方で、既存のF-15S×70機のアップグレード改修を実施する。APG-63(v)3搭載でFBW化されたF-15SAと同等、とまではいかないが、能力は大きく向上し、イスラエルのF-15Iの優位性はかなり薄れる。これは同国がF-35A導入に拘る理由の一つになっている。

契約は、兵装とFCS関連がLM、電子戦関連がBAEシステムズという形で分担される。
前者はスナイパーATP×95セット、小型マルチバンドデータリンク×35セット、IRSTシステム×70セット、同バイロン×75セット、およびスペアパーツで固定額4億1060万ドル。
後者はDEWS/CMWS×70セットと、その試験ステーション×3セット、およびスペアパーツで固定額3億6650万ドル。
付随して兵站や修理などに関連する契約が、地元のAl Rahaグループと結ばれている。9500万ドル。

F-15関連では4月2日、韓国空軍のFX-II契約で最後となるF-15K(2機)が引き渡されたとのニュースがあった。

http://www.flightglobal.com/news/articles/south-korea-receives-final-two-f-15k-fighters-370365/

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ポーランドが軍用ヘリコプター×26機の入札

http://www.flightglobal.com/news/articles/poland-launches-military-helicopter-tender-370379/

3月29日、ポーランドは軍用ヘリコプターの入札を開始した。陸軍の兵員輸送型×16機、空軍と海軍のSAR型×4機、海軍のASW型×3機で、合計すると26機になる。契約には5台のシミュレータと兵站支援と訓練を含み、入札締切は5月7日予定。
導入スケジュールは、2015年11月までに19機、次の1年で6機、最後はASW型×1機といった流れ。ポーランドとしては、現地生産を前提としている。

この条件であれば、シコルスキー傘下のPZL Mielec、アグスタウェストランド傘下のPZL Swidnikの2社による一騎打ち状態と見られる。それぞれS-70i系とAW149系が主力商品であり、AW149のASW型にはリンクスの装備を流用可能とのこと。

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シンガポールのG550 AEWがFOC獲得

http://www.flightglobal.com/news/articles/singapore-declares-g550-aew-fully-operational-370768/

シンガポール空軍のG550 AEWを運用する部隊は111Sqnで、TEngah航空基地に配備されている。機数は4機で、2009年から納入されたもの。1980年代に調達したE-2Cを代替することになる。

シンガポール空軍仕様のG550 AEWはイスラエル空軍向けとほぼ同等で、Eltaによれば高度41000ft、進出距離100nmで9時間滞空可能、前後のSバンドレーダーと両側面のLバンドレーダーにより、監視範囲は360度とされる。イスラエル空軍型では、オペレータは6人乗れる。

機体にはESM機器を収容したポッドや衛星通信、LOSデータリンクも追加されているが、飛行性能はほとんど損なわれていないということになっている。

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RAFのセンチネルR.1についてレイセオンUKが有用性を主張

http://www.flightglobal.com/news/articles/raytheon-touts-future-roles-for-rafs-at-risk-sentinel-r1-370715/

英国ではSDSRの結果、アフガニスタン方面の活動が終わった時点で、RAFのセンチネルR.1とシャドーR.1は早期退役となる方針が決まっているものの、メーカー側のレイセオンUKでは、本来の戦場監視と異なる任務に対しても有用であるとの主張を展開している。

現役のセンチネルR.1は5機。全てボンバルディア・グローバルエクスプレスを改造した機体であり、SAR/GMTIセンサを積んで、映像分析要員2名が搭乗。Airborne Stand-off Rader(ASTOR)システムの根幹となるISTAR能力を提供する。
RAFの5Sqnが運用しており、アフガニスタンへは2008年11月から展開、2011年3月には地中海(リビア)方面へと展開した。特にリビアでは個々のフライトが12時間以上に及ぶ事もあり、飛行時間は2000時間以上に達したという。この作戦での活動は、スカッドミサイルの発射機を捜索したり、いわゆるpattern-of-lifeのデータ収集(情報戦の領分だ)、攻撃後の評価、戦闘領域の最先端の特定など多岐にわたり、極めて効果的であったとされている。任務達成率は95%以上と良好だった。

レイセオンはこれらの実績を踏まえた上で、ASTORに新しい2つの役割を提案している。具体的には、RQ-4を柱としているNATO AGSへ英国としてセンチネルR.1を出すという案と、海洋監視機への転換という案。前者としてはほぼそのまま使えるはずだし、後者はソフトウェア改修によって十全の能力を発揮する予定となっている。搭載するデュアルモードレーダーは、それだけの能力があるという主張。
このレーダーは、U-2が搭載した側視レーダーの系譜にあたる。
AGSとしても、有人機があった方が便利かもしれん。

レイセオンは兵站支援について2016年9月までの契約があり、最近ウェールズ北部のブロウトン工場で1機(ZJ690)の改修を実施した。RAFに戻された後、1月からアフガニスタン方面へ展開し、2週間後にへリック作戦に投入されている。改修内容は明らかでないものの、ISTAR能力は強化された模様。

RAFのもう1機種のISR機、シャドーR.1については、長期的には海洋監視レーダーの搭載などで海洋監視機に転換可能としている。

http://www.airforce-technology.com/projects/astor/