2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ/F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成/2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる/F-15SAが2月20日に初飛行/ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

USAF関連。

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2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ

今年はB-2配備20周年。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123336776

2月19日、ミズーリ州ホワイトマンAFBにおいて、B-2配備20周年を記念する式典が催されている。509th BW指揮官、Thomas Bussiere准将の訓辞によるとB-2は過去4つの武力紛争(後述)に投入されたとのこと。
また、4月1日はIOC獲得から16年の節目にあたり、12月17日はライト兄弟の初飛行の日(1908年)として有名だが、509th BWの前身、509th Composite Wingが1944年にユタ州Wendoverで編成された日でもあり、更にホワイトマンAFB所属の最初のB-2、スピリットオブミズーリが配備された日でもある。

B-2の起源を辿れば1979年スタートのATB計画にまで遡る。言うまでもなく当時は冷戦の最中であり、核戦力三本柱いわゆるトライアッドの一つを担うものとして考えられていた。今では核爆撃というオプションは現実味を失いつつあるものの、最初から高度のステルス性を与えられていることで、今なおB-2は最も厳重に防御された領域への侵攻すら可能で、核戦力としての意義を保持し続けている…と、少なくともUSAFの公式見解はそうなっている。

1980年代に設計、製造が進められ、1988年初公開。75機の製造が計画されていたが旧ソ連崩壊により21機に削減され、1機が事故で失われて20機となり現在に至る。機体名はスピリットオブアメリカとキティホークを除けば州名が付けられた。

戦略爆撃機として配備された後、最初の改修は通常兵器の運用能力の付与となった。そして1999年、コソボでNATOの作戦に参加。このときのソーティ数はNATO軍全体の1%に過ぎなかったが、目標の11%を攻撃したとされている。
2001年9月11日以降は、アフガニスタンで「テロとの戦い」が始まる。
2003年、「イラクの自由」作戦において開戦後最初の爆撃(“shock and awe” campaign)を行う。戦争全体では投下した爆弾の量は、100万ポンド以上に達した。
2012年、NATOの対リビア軍事行動である「オデッセイの夜明け」作戦に3機が参加。25時間かけて欧州へ進出し、航空機のシェルター破壊任務を遂行、2000ポンドJDAMを45発投下した。

 

同じ4月1日にはスピリットオブフロリダが7000飛行時間を記録。

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123343279

この機体は2007年5月に最初に5000飛行時間に達した機体でもあり、6000時間を記録したのは2010年1月で、これも最初だった。

 

最近の改修計画としては、衛星通信に関するものと自己防御システムに関するものがある。

前者は5月15日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10032612

Advanced Extremely High Frequency (AEHF)通信衛星に対応するための改修で、現時点では地上での実証試験が進められている状態。レドンドビーチのノースロップグラマンの施設で4月15日にデモンストレーションを行ったとある。
自社製のAESA型アンテナと海軍のマルチバンド端末により、AEHFの模擬ペイロードを使って行われた。当然ながら、メインはアンテナ。この改修については他にもいろいろなものが含まれてる件は前にも書いたので省略。

現用のMilstarの後継となるAEHF衛星は2001年から開発が始まっているが、まだ6機中2機しか軌道に上がってない。

http://en.wikipedia.org/wiki/Advanced_Extremely_High_Frequency

後者は2月14日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10021861

Defensive management System (DMS)と呼ばれ、現在TDフェーズ2という段階にある。ノースロップグラマンがシステムインテグレータとして受注しており、想定される脅威・環境に対抗可能なシステムを設計、アンテナやアビオニクスといったハード、ソフトをとりまとめてEMDフェーズに備えることになる。新規開発の技術を避けて、実証済みの技術を用いて開発リスクを下げると称している。

 

B-2が20年目を迎えた一方、それよりも更に以前の爆撃機もアップグレード改修が行われてる。

B-1の最新の改修については、

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123334294

337th TESが、Sustainment-Block 16(SB-16)と呼ばれる大規模な改修計画の実証試験を担当する。B-1の改修としては最も大がかりなものとされ、Fully Integrated Data Link(後方操縦席のデジタルアビオニクス部分を変更してLink 16に対応、Joint Range Extension Applications ProtocolによりBLOSでも運用可)とCentral Integrated Test System(後方操縦席のコンピュータ交換とカラーMFDの追加)、Vertical Situation Display Upgrade(前方操縦席(パイロット席とコパイロット席)の2台のモノクロディスプレイを4台のカラーMFDに交換)など。

肝の部分はデータリンクで他はそれを使うためのUIの改善といった感じ。Link 16およびJREAPなどの実証にはUHF無線とLink 16のネットワークが必要なため、その設備を準備するのに50万ドルかかったとある。
337th TESの実証試験は訓練計画にも関連しており、7th BWでの訓練が円滑に行えるよう、機材到着前から整備班含め準備しているとのこと。実証試験は4月からエドワーズAFBで開始予定。

実際にFIDL、VDSUの試験で改修機を飛行させた経験があるパイロットは、全く新しい機体だと思って扱わなければならないぐらい、劇的に変わった、と述べている。

Sniper ATP-SEがダイスAFBのB-1に装備される。

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123345084

4月15日付。ATP-SEはネットワーク関係が強化されたもので、Link 16相当の双方向データリンクに対応するため、地上との交信・情報共有が迅速化され、中継能力も備えるようになる。前世代型は1方向データリンクだったので、その違いは大きい。
またデータリンクの情報を保存できるというのも新しい機能で、訓練や分析に有用なデータが残せる。
ATP-SEは前世代のATPと互換性があり、ATPが搭載可能な機種全て(USAFではB-52、F-15E、A-10、
F-16)に搭載できることになっているが、予め訓練が開始されていたこともあってダイスAFBのB-1が最初に装備することになった。

 

2nd BWのB-52HにはSniper XR、AN/AAQ-33が装備される。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123341194

ATP-SEよりは旧式だが、従来はLGBを投弾するのに5分間程度、30から40のボタン操作を行う必要があったのに対して、わずか2、3秒で済むという。60年物の爆撃機でも金をかければここまでやれる。あと25年飛べるという調査結果もあるので、数は減らしつつもしぶとく飛び続ける公算。

またティンカーAFBでは7月から衛星通信システムCombat Network Communications Technology (CONECT)の装備がスタートする。

http://www.tinker.af.mil/news/story.asp?id=123353771

これまでB-52では飛行前にアップロードされたミッションデータに従って任務を遂行することしかできなかったが、CONECTの装備によって飛行中にミッションデータを入れ替えることが可能となる。よつて、より柔軟な運用ができることになる。試験はここ数年、エドワーズAFBで行われていた。
主体は衛星通信装備だが、乗員向けの装備としては、最新端末への更新、ノイズキャンセル型のヘッドセットやデジタルインタホンなども含まれてる。
ボーイングが主契約で金額は7600万ドル。この中にはメンテナンスほかの支援と、LRIPの製造が含まれる。LRIP 1は3月契約で8機分、LRIP 2は来年3月契約予定で10機分。全率生産は2015年1月契約見込みで10機分。FY2014での予算は30機分。

最初の改修は、ティンカーAFBでのprogrammed depot maintenanceに合わせて行われる。7月から翌年4月までというから約9ヶ月を要する。

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F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成

http://www.edwards.af.mil/news/story.asp?id=123345680

4月24日付。

4月19日、エドワーズAFB所属のF-22 CTFにおいて、1000ソーティが記録された。機体は2001年10月に配備されたテールナンバー4007で、飛行しているF-22としては最も古い。AIM-9Mを初めて発射し、2度目にQF-4を撃墜した機体でもある。
着陸後、末尾の007にちなんでジェームス・ボンドのテーマで出迎えられたそうだ。
この飛行は、最新のソフトウェア改修であるインクリメント3.2Aでの初の試験飛行だったため、パイロットはボーイング社のテストパイロットだった。

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2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123339451

米国航空界のアカデミー賞的なものであるが、MC-12とかえらく地味だなと思ったが、本機はUSAFとしてP-51以来のスピード採用であり、かつアフガニスタンで目覚ましい働き(記事によると710名のタリバン指導者、爆弾製造者、野戦指揮官の殺傷および逮捕に直接関わり、プロジェクトリバティ全体で3000名の反政府勢力の兵員を排除したとある)を見せた、というのがノミネート理由となっている。

ちなみに結果は3月12日に発表、5月9日に授賞式が行われ、

http://naa.aero/html/awards/index.cfm?cmsid=62

JPLの火星科学研究所とキュリオシティのチームが選ばれている。

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F-15SAが2月20日に初飛行

http://www.wpafb.af.mil/news/story.asp?id=123339926

各国に改修が進んだ新造F-15が輸出されるようになって、何かUSAF本国仕様のF-15が相対的に性能低くなりそうな情勢であるが、2月にサウジアラビア向けF-15SAが初飛行している。この機体はF-15シリーズとしては試験機F-15 S/MTD以来のデジタルFBWを備えたものとなり、その他ハードポイント増設やIRST、スナイパーXR、AESAレーダーなど、イスラエル配慮で微妙にダウングレードされていたS型を、E型相当以上にアップグレードする形になる。

当面は3機体制で米国内での試験が続けられ、2015年から2019年にかけてデリバリ予定。

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ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123352839

ドイツ駐留の52nd FWは、F-16とA-10を運用してきて、隷下の81st FW(シュパンダーレム基地)にはA-10が配備されていた。この部隊は71年の歴史がある飛行隊であったが、6月18日をもって解散となり、A-10を運用する部隊は無くなった。これは欧州でのA-10の歴史が終わることも意味する。

欧州のA-10は、最大で6個SQが配備されていた。押し寄せるワルシャワ条約機構軍の戦車軍団をちぎっては投げちぎっては投げ(最後は核でry)いった情景がよくイメージされていたものである。

最後のソーティの様子が公式動画であった。

http://www.youtube.com/watch?v=yNUhA_qffqM

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F-35のIOCについて/F-35プログラムコスト下方修正/USAF参謀長がF-35Aの運用コストに言及/F-35製造計画は2015年度以降は安泰か?

F-35のIOCについて

http://www.flightglobal.com/news/articles/pentagon-reveals-dates-for-f-35-initial-operational-capability-386552/

5月31日の国防総省の議会向け報告書(F-35 IMS Version 7)によると、USAF向けF-35AのIOC獲得は2016年8月~12月の間となる模様。
ここで言うIOCは、USAFの標準的な1個飛行隊を編成(定数12~24機)し、実戦環境下で「基本的な(basic)CAS」「限定的な(limited)SEAD/DEAD」任務を達成するのに十分な能力を有することを指す。

しかし2016年の段階では、一応の完成形であるソフトウェア、Block 3Fが間に合わない公算が強い。これは、最新の情報ではBlock 3Fが2017年後半まで開発完了しないと見られているためで、ペンタゴンがまた一歩譲歩した格好。
Block 2BまたはBlock 3iとされるが、明示はされていない。USAF向けの2Bと3Fの間の暫定ソフトウェアといった感じもする。interimのiかな。
今年2月頃の、日本向けF-35のソフトウェアがBlock 3Fでなく3iになるとの報道とも関連する。別に日本向けだけじゃなくて、もう全部遅れてるという。

一方USMCのF-35Bについては、2015年7月から12月にかけてのIOC獲得を目指しており、こちらはBlock 2Bで行く方針を固めている。こちらのIOCは、1個飛行隊10~16機でCAS、対空戦闘、航空阻止攻撃、assault support escort(USMCの用語で、MAGTFの空挺作戦の護衛を指す)、および武装偵察を含む。またAutonomic Logistic Information System V2ソフトウェアまでは入る。将来Block 3Fにアップデート予定というのはUSAFと同じだ。
Block 2Bでは短射程AAMは使えないが、AMRAAMは使える。

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-35a-launches-first-amraam-386882/

F-35 AF-1からの最初のAIM-120C5 AMRAAM空中発射試験が6月に行われてる。

Block 3FでIOCを獲得するスケジュールをとるのはUSNのF-35Cで、2018年8月から2019年2月にかけてのIOC獲得とされている。

現在の最新版はBlock 2Aで、5月6日に最初の機体、AF-25がエグリンに到着した。

http://www.flightglobal.com/news/articles/eglin-afb-receives-its-first-block-2a-f-35-385643/

2Bも年内予定。

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F-35プログラムコスト下方修正

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-35-programme-costs-down-49bn-says-pentagon-report-386339/

こちらも国防総省の報告書からの話題で、2012年度SARの要約によるとF-35のプログラムコストは、全体で3310億ドルから3260億ドルに減少したとのこと。実際のコストダウンは49億ドルほどになる模様。

内訳は、まず減少分が人件費の削減、78億5000万ドル。初期製造コストの圧縮、11億2000万ドル。2011年SARで指摘された分は、機体およびエンジンの下位のプログラムについてのコスト配分見直しで9億8100万ドル。予備部品と支援コストの見積修正で6億9800万ドル。基地施設の10億3000万ドル。

ここまでなら凄い頑張ってコスト削減できました、で終わる話なのだが、それで済まないのが恐ろしいところで、F135エンジンなどの開発コストの増加分で70億ドル以上が相殺されているそうだ。
大枠ではそういう勘定になるが、製造の遅れに伴うコストアップを、エンジンの方のスペアパーツ削減や初期のエンジン単価が見積より下がった事などである程度相殺してるらしい。

F135の開発費用については、新たにSDDにおける修正契約が結ばれた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/pw-awarded-649m-contract-extension-for-f135-development-387034/

金額としては6億4900万ドルの追加。飛行試験とエンジニアリング支援にかかる費用のほか、2基の予備エンジンとスペアパーツが含まれる。この契約により、F135のSDDフェーズ期間は、2013年9月30日から2016年12月31日まで延長されることとなる。

SDD契約によってP&Wから提供されたF135エンジンの数は、CTOL型の17基、V/STOL型の14基。生産型としてはCTOL型100基とV/STOL型40基を納入したとのこと。

コスト削減に励んでも開発費用がかさむ一方…という現状が、改めてよくわかる。

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USAF参謀長がF-35Aの運用コストに言及

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-estimates-f-35-will-cost-32000-per-hour-to-operate-386430/

まだ運用が始まってない状況ではあるが、1飛行時間あたりのコストは32000ドル程度という数字が挙がっている。2012年度のSARで示された数字と大体同じで、現在のF-16C/Dのそれは1飛行時間あたり25000ドル。ただし長距離の遠征などについてはデータが足りない状態なので、根拠は弱い。とりあえず最大値はこの辺になると言いたいみたいだが、オランダにはF-16の1割増程度と説明した、という話もあったらしい。

http://www.aviationweek.com/Blogs.aspx?plckBlogId=Blog:27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7&plckPostId=Blog%3A27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7Post%3Af5843809-1a12-42de-8d48-e4d13eac94d5

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F-35製造計画は2015年度以降は安泰か?

http://www.flightglobal.com/news/articles/pentagon-procurement-chief-cautiously-optimistic-about-f-35-production-ramp-up-387071/

これまでのF-35開発・製造の歴史は延期とそれに伴うコスト増大の繰り返しだった感がある(http://nation.time.com/2012/07/09/f-35-nearly-doubles-in-cost-but-you-dont-know-thanks-to-its-rubber-baseline/)が、国防総省で装備調達のトップを務めるフランク・ケンダル次官は、新しい問題が発生しない限り(2、3の軽微な計画遅延はあるものの)、と前置きしつつ、FY2015以降の製造見通しは楽観的であると述べている。計画では、米軍向けはFY2015に42機、FY2016に62機、FY2017に76機、FY2018に100機…となる。

また、こちらでもライフサイクルコストに絡んで運用コストにも言及されている。今出ている数字は過去の試算に基づいたものであって、更新が必要と発言。数字としては下がりつつあると述べた。

楽観的とは言うものの、飛行試験計画はまだ40%ほどしか終わってないという現実もあるので、勝利宣言にはまだ早い。つまり、2年間で相応の進歩を遂げたのも事実であるが、まだ計画に潜むリスクの全てが解消されたわけではないとしている。

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もう一つ、F-35Bの運用コストにまつわる記事があった。

http://www.flightglobal.com/news/articles/paris-usmc-works-to-reduce-f-35b-operating-costs-387410/

パリショーでのUSMC当局者(航空部隊の副司令にあたるロバート・シュミーデル中将)の発言から。

USMCでは、F-35Bの運用コスト低減に熱心に取り組んでおり、状況によってはA型と同等レベルまで抑制できるかもしれないという。MV-22の運用コストについて、20%ほども低減した実績がある。これには修理や特定の整備を、機体を送り返さずに飛行隊または中間レベルの施設で実施するという手法を用いたとのことで、同様のアプローチをF-35Bにも適用することを検討しているようだ。

現場と少し離れたところでは、机上でのコスト見積条件を、より現実に即したものに修正していくという事も考えられている。例えばSTOVL飛行の割合が現実とかけ離れた数字になっていたりするらしい。

最後の一点はシミュレータの活用というところで、部隊の活動のおよそ半分をシミュレータで行い得る可能性を示唆している。ネットワーク化されたシミュレータによって再現度はかなり高まっており、さらに実機の訓練では実施できないような厳しい環境を作り出すこともできるため、訓練飛行の大部分をシミュレータで代替するのみならず、それ以上の事も可能になるから、というのがその根拠となっている。

USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出/TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表/ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく/ACTUVの活躍(イメージCG)/GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出

http://www.gizmag.com/us-special-forces-subsonic-ammunition/25172/

SOCOMが用いている制式ライフル弾の初速は、弾種によって異なるがおおよそ音速の2~3倍とされている。
これを大きく下げて静粛性を高め、市街戦(殊に隠密作戦、個人あるいは少人数グループへの襲撃など)に使用したい、というのが主な動機となっている。が、大口径の亜音速弾には精度や信頼性の問題がつきまとうので、簡単な話ではない。

SOCOMは本格開発の前段として、SBIRに基づくRfPを発出した。
この手の計画は過去にも存在したが、開発は言うまでもなくうまくいってない。が、材料技術、製造技術の進歩によって実現できれば大成功、みたいな。

確実に機能する亜音速弾は、現在知られている限り小口径のピストル弾が存在するのみで、ライフル弾としては例がない。初速を遅くしつつ、精度を保ち、信頼性の高いライフル弾となると、技術的なハードルは高い。
装薬を減らすことになるから、有効射程距離が著しく縮むのは仕方ないとして、比較的大きなカートリッジに少量の装薬という組合せでは、燃焼が不安定となり、薬室内のガス圧を低下させ、不発や停弾を招く危険性が高くなる。薬室からのガス漏れが起これば、現代的なライフルのガス圧作動式の機構が満足に動かない可能性もある。

これらを解決する具体的な手法としては、新しい形式のカートリッジが必要になる見通しで、高分子系の材料で抜弾抗力を下げたり、ガス漏れ防止用のサボを入れるなどの案が示されてる。

実現の見通しが立てば原型試作、デモンストレーションと進むことになり、最終的には法執行機関向けにも(どっちにしても特殊部隊だろうけど)供給されるそうだ。

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TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表

http://www.gizmag.com/trackingpoint-precision-guided-firearms-scopes-digital/25264/

TrackingPointの社長は、特殊作戦の経験豊富な元海兵隊大尉(イラクでの作戦行動を通してブロンズスター、シルバースターを受勲している)で、除隊後レミントンの副社長を勤めた後、現在に至る。

で、ここに紹介されているのはTriggerPointという精密狙撃システムであり、.338ラプアマグナム弾を使うXS1と、.300ウィンチェスタマグナムのXS2およびXS3という製品を準備している。

拡大映像で目標点をマーキングした後、空気抵抗、風向きなどの補正を加えて正確な弾着ができる方向を指示、その方向に向くまで引き金が引けないよう抑止する、といった動作をするようだが、移動目標に使えるのかとか詳細はよくわからず。
具体的には映像の方を参照。

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ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく

http://www.rheinmetall-defence.com/en/rheinmetall_defence/public_relations/news/latest_news/details_2368.php

http://www.gizmag.com/rheinmetall-laser-test/25504/pictures

2011年に実施した5kW×2門の10kWタイプによるデモンストレーションに続くもので、レーザの出力を向上し30kW×1門+20kW×1門の50kWタイプの試射を実施している。場所は前回同様、同社保有のスイスのOchsenboden試験場。

11月には、3種類の目標への試射が試みられた。
1つ目は1000m先の15mm厚の鋼板、2つ目は3000m先から毎秒50m程度の速度で飛行するターゲットドローン、3つ目は迫撃砲弾をシミュレートした毎秒50mで移動する直径82mmの鋼球で、それぞれ悪天候下でも十分迅速に破壊できたと発表されている。

なお、同社は複数のレーザを束ねて使用する技術はBeam Superimposing Technology
(BST) と呼んでいる。つまり32bitプロセッサ2つで64bit級みたいな(違う)。
写真のうち、2門の方が今回の50kWタイプかな。

実用型では合計100kWを目指すが、2013年は60kWのレーザを試験するとのこと。
これはレーザ出力を(30kWの)2倍にすると書いてあるので、つまり実用型は60+20+20=100という解釈でよいのだろうか。

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ACTUVの活躍(イメージCG)

http://www.gizmag.com/darpa-saic-actuv-drone/25607/

SAICが受注したACTUVのイメージCG映像が公開されている。ACTUVはASW作戦を主要任務とするが、モジュール変更によってISRから小規模な補給まで可能ということだから、多目的USVとした方が適切な気がする。

形態は受注の時のイメージと大体同じで、長期間のディーゼル潜水艦追尾の例を説明している。映像では非武装で、長期間にわたって目標を追尾し、情報を収集して終わる。SAICは60~90日間の作戦行動が可能としているが、あくまで最大ということか、そこまでは長くない。というか相手がディーゼル潜の例だしな。
興味深いのは、搭載した人工知能で目標の欺瞞行動に対応可能というくだりで、民間船舶を利用して追尾を混乱させるといった潜水艦の戦術機動にも対処できるという。つまり目標の位置を推定し、民間船舶などを避けつつ追尾を続けられることになっている。オペレータによる訂正ももちろん可能だが、勝手に動いてくれた方が労力が少なくて済むのは言うまでもなし。
水中の長距離センサは磁気(total field magnetometer array)、短距離センサは高周波アクティブソナー×2基。目標を識別するのはソナーの方になる。

total field magnetometer arrayというのはよくわからんが、ここにはMADのローコスト版みたいな事が書いてある。

http://www.psicorp.com/news_events/display_news.html?id=1217

こんなにうまくいくのかなあというのはおいといて、通して見た感じ、P-8と連携するだけでなく、CVNに積んでたASW機の役割も一部担うように見えるな。でP-8を水上はBAMS、水中はACTUVが補うと。

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GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

http://www.gizmag.com/gps-radio-telescope-underground-nuclear-test-detection/25434/

米オハイオ州立大の研究チームは、GPSの信号記録または電波望遠鏡VLAの観測記録によって、秘密の地下核実験(記事中ではunderground
nuclear explosions、UNEと称している)を検出できることを発見した。

従来、地下核実験を検出する最も確実な方法とされているのは地震計のデータ解析であるが、核分裂反応の規模が小さいと通常爆薬などとの区別が難しくなる。例えば北朝鮮の2006年、2009年の核実験のうち、2006年の時は1キロトン未満と推定されたため、おそらくは失敗と見られたものの地震計のデータだけ判断するのは困難だったという。

オハイオ州立大でGPSを専門に扱うグループは、2009年の核実験の直後、朝鮮半島上空にあったGPS衛星の信号が、訂正によりごく短時間だけ遅延し、その程度がGPS衛星の位置によって異なることに気がついた。核実験に伴う電離層の乱れ(traveling ionospheric disturbance (TID))が、GPS信号に影響を与えることは以前から知られていたが、GPS衛星の位置と訂正の関係についての研究はされていなかった。
核爆発の爆心地から単純にTIDの状態が波のように一定速度で拡がっていったと仮定すると、2009年のデータでは高度300kmあたりを870km/hで移動した計算になる。
その後、2006年のケースと、1992年のネバダ州での核実験のケース、2011年の東日本大震災におけるTIDをGPS信号の記録から確認したところ、核実験と地震によるTIDの発生パターンが異なることや、核爆発の規模でTIDの伝搬速度が異なることがわかった。後者については、1992年の20キロトンの核爆発が、2009年のUNEで起こったTIDの3倍の速度だった、とある。

VLAの方だが、こちらもGPSと同じくTIDに対する訂正を連続的に行うため、基本的には同じ考え方でデータを分析すればよく、VLAの技術者と連携して実際に同様のデータが残っているのを確認できたとのこと。

うまく捉えられるかはGPS衛星の位置関係にもよるし、核拡散の問題をどうこうする技術というわけではもちろんないが、新しい手段を得たのは悪い話ではない。
情報提供者を危険に晒す必要も少なくなるし。

アルジェリア向けMiG-29受領拒否にまつわる刑事裁判が終了/インド向けMiG-29UPGが引き渡される/ロシア空軍がSu-30SMを正式に受領する/PAK-FA/T-50の4号機が初飛行する/ロシア空軍兵員(パイロット含む)の訓練不足について

アルジェリア向けMiG-29受領拒否にまつわる刑事裁判が終了

http://en.rian.ru/military_news/20121204/177916582.html

アルジェリア向けMiG-29×34機の輸出契約が結ばれたのは2006年で、翌年になり15機が輸出された時点で、同国から仕様を満たしていないとして受領拒否され、正式キャンセル、Su-30へ振り替え導入と続いた。

意図的に仕様を満たさない低品質な製品を引き渡したのであれば、それは詐欺罪にあたるわけであるが、この12月4日、契約時点から6年が経過したことで、時効成立ということになったらしい。

この裁判で捜査の対象になったのは当時の副社長Sergei Tsivilev氏とその補佐役だったOleg Fadeyev氏の2名。であるが、この件にはポーランド向けのパーツにも波及しており、問題のコンポーネントを納めたAviaremsnabという企業の社長と副社長が既に有罪判決を受けている。

http://en.rian.ru/military_news/20090918/156171853.html

2005~2006年の契約で前払いで170万ドル受け取ったのに、新造ではなく1982年から1996年にかけて製造された部品を納めたとある。出荷や検査の証明を偽造したようなので、これはわかりやすすぎる不正だ。

こういうケースでは、元請の方の責任はやっぱり微妙な感じになるのだろう。政治的決着という奴だな。

訴えられたMiGの元副社長は辞めてるみたいだけど。

アルジェリアの受領拒否は当時もかなり話題になったが、ロシア国内ではミサイル作ってる工場がROSBORONEXPORTを訴えたりと、相当揉めている。

http://en.rian.ru/russia/20090914/156118433.html

こっちはどうなったのかよくわからん。

陰謀説まで飛び出したが、ダメだったという事実はかわらん模様。

http://en.rian.ru/analysis/20080530/108905942.html

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インド向けMiG-29UPGが引き渡される

http://www.flightglobal.com/news/articles/russia-delivers-indias-first-upgraded-mig-29s-380053/

http://en.rian.ru/military_news/20121211/178064533.html

インド空軍のMiG-29は、69機が近代化改修されることになっている(金額にして9億ドル程度)が、12月10日、RAC MiGは最初の3機をインドへ引き渡したと発表している。機体はAn-124に搭載されて運ばれたとのこと。

MiG-29UPGの概要については以前から公表されている通りであるが、レーダーとアビオニクスの換装、新型兵装のインテグレーションと40年までの寿命延長となっている。

MiGでの改修は6機の予定で、残り63機はHALにて改修を実施する計画。これらのエンジン、RD-33シリーズ3×120基は、2007年にロシア国内で製造許可が出ている。

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ロシア空軍がSu-30SMを正式に受領する

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-russian-air-force-receives-first-su-30sm-fighters-380051/

12月5日、ロシア国防省はアフトゥビンスク空軍基地にて受入検査を行っていたSu-30SM×2機を、正式に受領したと発表。

11月22日に同基地に到着したこれらの機体は、2012年3月に発注した同型機30機のうち最初の2機にあたり、2015年までに全機が引き渡される予定。

9月21日初飛行だから、2ヶ月半ぐらい経過している。

機体には、赤い星以外のマーキングはほとんど見当たらない。

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PAK-FA/T-50の4号機が初飛行する

http://en.rian.ru/military_news/20121212/178100717.html

12月12日、スホーイは開発中のPAK-FA、T-50の4号機が、コムソモルスク・ナ・アモーレのガガーリン記念工場にて40分間の初飛行を実施したと発表している。なお、1号機が初飛行したのは2010年1月29日だった。当初2007年の予定だったと言われているので、計画は遅れ気味で進行している。遅延の大きな理由の一つに、エンジン開発の難航があった。

現在の計画では2015年からロシア空軍の評価用の機材として10機、続いて最初のバッチの60機が発注見込み。最初の10機がLRIPに相当するのか、試作原型の延長になるのかとか、位置付けはよくわからない。少なくともここまでの4機については、外見上の大きな変化はないように見える。

また記事中、ノボシビルスクの方(NAPO)ではSu-34の製造が進行中であり、近日中に10機をロシア空軍へ引き渡す予定と書いてある。

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ロシア空軍兵員(パイロット含む)の訓練不足について

http://en.rian.ru/military_news/20121207/177979621.html

ロシア国防相は、ロシア空軍のパイロットとその他の専門的な技術者について、訓練が不足していると述べた。その対策として訓練大系の改善と最適化を進めるとしている。

装備の更新は進み始めたが、人員の面では甚だ心許ない状況という話だが、これはロシアが直面している急激な高齢化にも関連している。作戦機数の減少もあるが、冷戦終結からこっちの20年で退役したパイロットは数千人というから話がでかい。

http://en.ria.ru/analysis/20121128/177792414.html

記事中のリンク先は、11月28日付の論評記事になってる。ジューコフスキーの空軍工学アカデミーで、ここ3年、1人の生徒も受け入れてない事や、史上初の宇宙飛行士公募でも300人しか応募がなかった事に触れられている。ここから選抜された人数は8人だった。
同様のリクルートを行ったNASAには、応募者6000人が集まったということからも、ロシア国内での不人気が半端でないことが判る。

長らく続いた賃金・待遇の問題は改善の方向に向かっているものの、宇宙飛行士に関して言えば、長期的なビジョンの欠如が不人気に繋がっているとの見方がある。軌道輸送系と有人宇宙計画では大きな実績を残しているものの、一般国民には何が成果なのかよくわかんないというのが大きいようだ。

以下、セルジュコフ前国防相の空軍の機構改革が失敗して毛嫌いされた話に続く。興味深いがやたらと長いので略。

デンマークはリンクス後継にMH-60Rを選定/AW169原型3号機、AW149開発状況/バングラディシュ陸軍向けのAS365 N3+ ドーファン/最初の民間向けMi-171がインドネシアに納入される/ユーロコプターX3の今後の展開など

デンマークはリンクス後継にMH-60Rを選定

http://www.flightglobal.com/news/articles/denmark-confirms-mh-60r-selection-to-replace-lynx-helicopters-379331/

11月21日、デンマーク国防省は、現用のリンクスを更新する海上輸送ヘリコプターとしてMH-60Rを選定、金融省の承認を得たと発表。リンクス後継には、ウェストランド系の直接の後継機種であるAW159リンクス・ワイルドキャットも提案されていたが、これは選定されなかった。

今回選定されたMH-60Rは、2016年から2018年にかけてKarup空軍基地にて9機が引き渡され、2017年から現用のリンクス90B(7機が現役)と交代し始める事になっている。

この機種はオーストラリア海軍でも24機が採用され、元々のUSN向けと合わせて170機ほどが配備されている。こちらはS-70Bからの更新という形だったが、リンクスの後継に収まったのはデンマークが多分初。

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AW169原型3号機、AW149開発状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-third-aw169-prototype-takes-to-the-skies-379452/

11月23日、AW169の原型3号機がイタリアのCascina Costaにて初飛行に成功した。飛行時間は35分程度。
メーカーのアグスタウェストランドからは、原型4号機は2013年初めの初飛行を予定し、2014年の型式証明取得と納入というスケジュールに変化はないとの公式発表が出ている。

2010年7月にロンチされたこの機種は、6tonのAW139と10tonのAW189の下の、4.5ton級10人乗りで、ユーロコプターのドーファンまたはEC145に対抗する。エンジンはPW210の双発。

原型1号機は5月、2号機は7月初飛行で、累計飛行時間は100時間超。この原型3号機は折りたたみ式の降着装置を有しており、主に人工気象室での試験に供される。具体的には寒冷地及び高温・高地試験、カテゴリーA性能試験、その他オプションの型式証明などを予定している。

AW149の方は、軍用のAW189の原型機4機のうち、2機が民間向けのAW149に近付けた仕様で製作されており、これらの累計飛行時間は800時間を超えた。2013年中頃の型式証明を目指す。

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バングラディシュ陸軍向けのAS365 N3+ ドーファン

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-bangladesh-army-inducts-two-eurocopter-dauphins-379585/

写真の提供元はユーロコプター南西アジアとなっている。シンガポールに拠点を置き、フルモーションシミュレータを含む地上での訓練は、ここで行われるとのこと。

蛙っぽいカラーリングだな。

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最初の民間向けMi-171がインドネシアに納入される

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-russian-helicopters-delivers-first-civilian-mi-171-to-indonesia-379483/

ロシアンヘリコプターは、Mi-171の民間型をインドネシアの鉱業会社に納入したと発表した。顧客名は明らかにされていない。

写真では機体にAIRFASTという文字が見えるが、これはチャーター会社のエアファスト・インドネシアの塗装とのことで、機体の運用と整備を行う契約を結んでいると考えられる。
鼻先がMi-8から引き継がれたガラス張りで、外見はかなり伝統的なイメージだ。キャビンも丸窓だし。

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ユーロコプターX3の今後の展開など

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurocopter-test-pilots-praise-x3-handling-376412/

9月のILAの記事だが、計画のまとめになっているので遡ってメモ。

X3のテストパイロットを務めたHervé Jammayra氏は、同機がほぼ事前のシミュレータ通りの挙動を示したことと、固定翼機並の加速性能を賞賛している。

7月から8月にかけての北米デモンストレーションツアーを終え、飛行時間は2年間で120時間に達したとのこと。

また飛行中の動力の配分に関して幾つかの情報が出てる。
設計上の目標速度は220kt、時速400kmだったが、これは最大出力の80%ほどで232ktを達成できた。
メインローターとプロペラの動力配分は速度域によって変化する。小翼の発生する揚力は最大で40%を占め、つまりメインローターの揚力は減少するわけだが、今度はプロペラの方で対気速度を維持して揚力を保つためのパワーが増大する。
一方、巡航時のメインローターは出力25%程度で済み、ピッチを減らせるので、振動がかなり抑えられるという。

こうして見ていくとわかる通り、小翼の面積は設計上、かなり重要な要素と考えられた。また小翼の追加はオートローテーション特性の変化(減少)にも繋がるとされている。
これについて、試験を担当したエンジニアのDominique Fournier氏によると、X3のオートローテーション特性は、ドーファンとほぼ同様であることが飛行試験で確認されたとのこと。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurocopter-plans-x3-type-helicopter-during-next-seven-years-376405/

ユーロコプターのCEOは、次の6~7年で実用機に発展させる事を示唆したものの、型式証明に時間を要する可能性があるとも発言している。

どんな機体になるか、という点については、はっきりした回答を出さなかったが、X3のような中型機だけでなく、小型から50人乗りといった大型まで対応できるとする。

とは言えガス・油田向けが最初の目標であることには変わりないようで、原油価格が1バレル80ドル以上といった水準であれば、調査目的での長距離進出に対するニーズが高まると考えている模様。
この他には、高速性能がVIP輸送やSARといったミッションにも適応するとも述べている。

RAFのプーマHC2引き渡しと訓練について/チヌークHC4がアフガニスタン向けの運用訓練を開始/英陸軍のアパッチAH1改修について

RAFのプーマHC2引き渡しと訓練について

http://www.flightglobal.com/news/articles/raf-to-launch-puma-hc2-training-in-mid-2013-379134/

英MoDは、ユーロコプターで改修された3機のプーマHc2を9月に受領した。これは2009年の契約の最初の分に当たる。ユーロコプターの社内検査が7月6日に完了したあと2ヶ月経っている。
RAFはQinetiQ運営下のボスコムダウンにてこれを受領し、飛行試験を実施中。

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-mod-receives-first-upgraded-puma-hc2-376448/

HC1からHC2へのアップグレード改修は全部で24機、金額3億ポンドで、エンジン、アビオニクスとコクピットの変更と2025年までの運用寿命延長が含まれる。
あと21機の改修が残っているが、4機をフランス、残りをルーマニアの子会社ブラショフにて実施する。

MoDの発表では、HC2の訓練は2013年中頃からスタートする予定で、2年かけて運用を拡大する計画。ただしスケジュールは若干遅れ気味だそうだ。

プーマHC2は、チヌークHC4/HC6とともにRAFの次世代輸送ヘリコプターとして位置付けられる。AW101もあったが、これは海軍へ移管される事となった。

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チヌークHC4がアフガニスタン向けの運用訓練を開始

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-readies-upgraded-chinooks-for-afghanistan-debut-379136/

英MoD(DE&S)によると、RAFのチヌークHC4が、アフガニスタン向けの運用訓練を米国で開始したとのこと。現状のHC4は、6月にIOCを獲得した後、7機が引き渡され、12機が改修中とされている。

これらRAFのHC4は、HC2/2Aの46機からアップグレード改修される予定で、新造のHC6も14機を発注した。改修計画はジュリアスと呼ばれている。改修内容はエンジンの強化、アビオニクスとコクピット改修など。

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英陸軍のアパッチAH1改修について

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-weighing-options-for-apache-attack-helicopter-upgrade-379558/

英陸軍航空隊AACはアパッチAH1を67機導入し、2004年10月にIOC獲得を宣言したが、AH1の仕様は米陸軍のAH-64D Block I相当だった。米陸軍のAH-64Dは今後Block III(ディジグネーションはAH-64Eに変わるみたい)仕様に切り替えられ、Block Iは2017年で第一線から離れる事が決まっている。つまりBlock I仕様のままでは運用・維持が困難になっていくことが予想される。
同様の話はイスラエルのAH-64にもあった。

これに対し、AACとしてはcapability sustainment programme (AH CSP)によって2040年までの運用を目指すとしており、アップグレード改修内容の技術的詳細は詰めの段階に入っている。最小限の改修に留めたい意向で、2014年初頭に仕様を確定、予算も同年中に判断する予定とされる。
一応、代替の攻撃ヘリコプターを導入する選択肢も残されているようだが、予算的に可能なのかはよくわからない。E型の導入を指してるのかも。直近でチヌークの時、改修+新造機発注という形になった前例はある。

アパッチの実働部隊は、SDSRの結果、5個SQから4個SQ(2個連隊に分割)への削減が決まり、2014年末のアフガニスタンからの撤退後は減勢とする姿勢がはっきりしている。アフガニスタンにおけるAH1の戦歴は、2006年5月のヘリック作戦以来で、飛行時間は累計10万時間に上る。2011年にはHMSオーシャンからリビアでの作戦にも参加した。

CSPには、次期ARHのリンクス・ワイルドキャットとの連携による、アフガニスタン戦以降の戦術コンセプト開発も含まれており、AHの役割は更に広範なものになるとも言われている。

なお公式なアパッチAH1の現有機数は、2008年に着陸失敗した機体が退役したため、1機減って66機。

米陸軍がUAVからの迫撃砲弾発射をテスト/米海軍はUCLASSのRfP(草案)を2012年内に発出する見込み/トルコがAerostar UAV運用を打ち切り?/イラン空軍機が米国のUAVを攻撃

米陸軍がUAVからの迫撃砲弾発射をテスト

http://www.generaldynamics.com/news/press-releases/detail.cfm?customel_dataPageID_1811=18078

米陸軍ARDECは、ゼネラルダイナミクスと協力してUAVから迫撃砲弾を発射するテストを行った。小型UAVが搭載可能なPGMのデモンストレーションとされている。

使用されたUAVは、L-3のタイガーシャークUAVで、オクラホマ州フォートシルに近いレンジにて、高度7000ftから3発の迫撃砲弾を発射した。これらは標準的な81mm迫撃砲弾であり、GPSとINSを利用して目標に指向される誘導キットと組合せ、目標地点の7m以内に着弾したとのこと。
メーカーではAir Drop Mortar (ADM)と呼んでおり、この実験では10ポンドクラス誘導弾の例を示した形となった。なおタイガーシャークUAVのペイロードは30ポンド。
また誘導キットはゼネラルダイナミクスが特許を取得したもので、Roll Controlled Fixed Canard (RDFC)と名付けられている。
詳細は陸軍の資料にて。

http://www.dtic.mil/ndia/2012armaments/Wednesday13995habash.pdf

これの空中発射型がADM。普通のM821砲弾と信管で9.1ポンドのところ、RDFCを追加した重量は10.8ポンド。また120mm迫撃砲弾にも適用可能。

http://www.defenseindustrydaily.com/Mortars-from-Aircraft-The-Shadow-Knows-05226/

このクラスでは、レイセオンのSTMが12ポンド(製品名がPyroとなっている)でGPS/INS誘導またはSAL誘導の小型PGM。またLMがシャドウホークという11ポンドのSAL誘導の小型PGMのデモンストレーションを実施している。こちらはRQ-7を使ったデモンストレーションだった。

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-unveils-gravity-bomb-for-uav-371344/

コストでは81mm迫撃砲弾+誘導キットのADMが有利っぽいが、GPS/INS誘導のみなので精度はSALなどに比べて劣ると思われる。
このクラスになると大抵の小型UAVに搭載可能で、自衛隊が導入するRQ-21みたいのでも積めるはずだ。

 

これらに先行して、米海軍NAWCなどで開発されていたのがスパイクというやつで、重量は更に軽く5.3ポンド(試作原型時)、全長25インチだった。歩兵携行型の無誘導ロケットとATGMの中間にあたるもので、SAL誘導。小型UAVへの搭載も考慮されていた。

http://www.designation-systems.net/dusrm/app4/spike.html

http://defense-update.com/products/s/spike_laser.htm

推進システムを有するため、弾頭は1ポンドと小さい。射程距離は2200m程度。
主に低価値目標に対して用いられる安価な誘導兵器として開発が進められた。2003年末からSDD、2007年に実射が行われたようだが、その後の進展は不明。

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米海軍はUCLASSのRfP(草案)を2012年内に発出する見込み

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-navy-to-issue-draft-rfp-for-new-unmanned-strike-aircraft-before-years-end-378562/

UCLASSについては8月に一部の要求仕様(の草案)が開示されたという話が出ていたが、2012年末までにRfP草案が出る見込みとのことで、ここで全体像がはっきりする事になる。
2020年のIOC獲得に間に合うのか微妙な気もするが、その段階では艦上機として完成させる事は必須でない上、最初から発展性なりアップグレード余地を求められているので、当初の能力は、相当限定されたものに留まるのかもしれない。

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トルコがAerostar UAV運用を打ち切り?

http://www.flightglobal.com/news/articles/turkey-set-to-axe-aerostar-uav-deal-378532/

トルコは2005年、イスラエルのIAIからヘロンUAV(地上管制ステーションはエルビット)を調達する契約を締結したが、その後、計画の遅れによってAerostar UAVを繋ぎとして導入している。
ヘロンUAVの方は、二国間の関係悪化とは関係なく運用されている模様であるが、Aerostar UAVの方はここ数ヶ月間、運用に問題があるという情報が出ていたようだ。今回の報道もトルコ側から出ているもので、運用打ち切りと機体(3機)の返還を検討、となっている。メーカーのAeronautics Defense Systemはこれを否定した。

Aerostar UAVについては、10月にポーランド軍が2機の調達(約3500万ドル)をキャンセルしたばかりか、補償金の支払いまで求めている。
こちらも運用上の問題とされていたので、如何に二国間関係が悪化してるとはいえ、政治的にどうこうというよりは、何かしら問題がある装備なのか、セールスがよほど巧みだったのか。いずれにしてもいただけない話ではある。

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イラン空軍機が米国のUAVを攻撃

http://www.spacedaily.com/reports/Iranian_jets_fired_on_US_drone_in_Gulf_Pentagon_999.html

米国防総省は、ペルシャ湾の公海上空でイラン空軍の戦闘機が米軍のUAV、MQ-1を攻撃したと発表している。インシデントは11月1日に起こったが、大統領選挙の後で公式発表された。
位置はイランの海岸線から16海里のあたりで、攻撃を仕掛けたのはSu-25、警告ではなく撃墜を意図した発砲だったとされている。MQ-1に命中弾はなく、そのまま帰投した。以後、攻撃を受けるケースは発生していない。ミッション自体は、ルーチンとなっているイラン側の監視であり、今後も継続するとのこと。

米国はペルシャ湾方面に対して、2個CVBGの配備や、UAEへのF-22の展開といった形で軍事的プレゼンスを強めている。
またこれと別に米国務省は、国際衛星放送の妨害とインターネット接続における検閲を止めるよう要求しており、後者については検閲を外部から強制的に停止させるような言い回しをしているみたいだ。

Sunseeker Duo/C-17によるvortex surfingの飛行実験が行われる/AeroVeloの人力ヘリコプターAtlus/北アメリカ類人猿あるいは原人の探索に無人飛行船/JA2012のレポート記事

Sunseeker Duo

http://www.gizmag.com/sunseeker-duo-solar-airplane/24700/

Kickstarterで資金集めを試みようとしているもので、太陽電池を主動力源とする二人乗りモーターグライダー。
Sunseeker I、IIに続く機体らしい。

http://solar-flight.com/sunseeker/index.html

http://de.wikipedia.org/wiki/Musculair

Eric Scott Raymond氏(エリックレイモンドだがオープンソースの人ではない)の構想は80年代まで遡る。人力飛行機Musclair IIのパイロットに呼ばれたのが縁で具体化した。ということで、このサイトにも同機の設計者であるGünther Rochelt博士への謝辞が述べられてる。

Sunseeker I、IIはMusclair IIの機体レイアウトを踏襲したものだったが、Sunseeker Duoは、ドイツで1980年代に開発されたStemme S10という機種が原型となっている。この機種はノーズコーンに引き込み式のプロペラを収納するのが特徴だったのだけども、プロペラ位置は垂直尾翼上端に移されたのであんまり関係なかった。尾翼周辺は、T尾翼は踏襲するもプロペラの基部が取り付けられるなどしたため、形状が大きく変更されている。

http://www.kickstarter.com/projects/sunseeker/sunseeker-duo?ref=category

軽量化により、空虚重量は原型の645kgから270kgとなる。スパン23mの主翼はそのままで、尾翼とともに太陽電池パネルを敷き詰め、モータ出力は20kW。リチウムポリマー電池72セルの満充電状態で20分間の全力運転で高度をとれる。雲上であれば、太陽電池と直結で数時間の巡航が可能という触れ込み。

現在は開発の途上にあり、資金が集まれば米大陸一周を皮切りに世界周回飛行を計画しているとの事。これは撮影クルーを連れて実施し、書籍化も考えてるらしい。

一人乗りのソーラーインパルスよりも機体規模が小さく、相当チャレンジングな印象を受けるが、この原型となったStemme S10は、アコンカグア峰を飛び越すのも含めた長距離飛行記録を幾つか持っており、高高度・長距離飛行に関するそれなりの実績を持つ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Stemme_S10

プロペラのみならず、サイドバイサイドの複座、引込脚などの特徴を持つユニークな機体。現行機種のS10 VTはプロペラが可変ピッチになった。

しかし、軽量化すると強度も不安になるし、そもそもパワーがかなり落ちているから、如何に揚抗比が高いといえども動力飛行に制約が生じるのは不可避だろう。
実現するとしても、かなりギリギリの飛行になるのでは。レイモンド氏の操縦技量は相当高いようだけど。

ちなみに同機種はAETCが2機導入したことがあり、TG-11Aというディジグネーションが与えられている。

http://www.aetc.af.mil/library/factsheets/factsheet.asp?id=7220

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C-17によるvortex surfingの飛行実験が行われる

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123321609

最近、飛行を効率化する試みとして、編隊飛行の効果が言われるようになっているが、USAFではAMCとAFRLの共同研究として取り扱っており、9月6日と10月2日の2回、412th TWのC-17を実際に編隊飛行させる実験を行った。
単純に言うと、後方を飛ぶ機体が、前方を飛ぶ機体の後流の渦に入ると抗力が減少して燃料消費量が減る。渡り鳥の飛行からヒントを得たもので、この概念はSurfing Aircraft Vortices for Energyもしくは$AVEと呼ばれている。2011年のEnergy Horizon研究から出てきた言葉だ。

AMCのチーフサイエンティストによると、初期の分析において燃料消費率の改善効果は最大10%との試算を得たという。これを現在のAMCの運用状況(燃料消費量はUSAF全体の20%を占め、年間約80000フライトを実施する)に当てはめると、年間数百万ドル規模の経費節減に繋がる。
AMCの活動は大量の燃料を消費するだけに、搭載燃料を減らしたり、飛行ルーチンを最適化したり、細かな効率化の試みはずいぶん行われているようだ。

C-17が使われたのは、AMCの燃料消費削減が重要視されているからというだけでなく、大型機の後流は規模が大きくなるから、緊密な編隊を組まなくてもその恩恵を受けることができる、という利点もある。

実験飛行においては、基本的にプログラムを変更したオートパイロットによって、編隊飛行を維持させており、実現可能性の高い設定になっていた。

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AeroVeloの人力ヘリコプターAtlus

http://www.gizmag.com/aerovelos-atlas-joins-sikorsky-race-for-human-powered-helicopter-flight/24561/

メリーランド大のGamera IIが65秒間のホバリング飛行を達成した日に、AeroVeroは同様の構成の人力ヘリコプター、Atlusを初めて飛行させた。時間は4秒程度。
注意しておきたいのは、ここではいずれも飛行としているけども、実際は地面効果の及ぶ高度の範囲でしか上昇できてない点。シコルスキー賞では、高度を3m以上としている。

AeroVeloは、トロント大の人力乗り物研究チームを中心に構成されたグループで、2006年から活動しており、自転車の公認速度記録(大学の)を2011年に打ち立てたり、人力オーニソプターを作ろうとしたり、他も色々やっている。

http://www.aerovelo.com/

どっちもシコルスキー賞にはあんまり近くない感じなのだが(3m浮かすだけで死にそう…)、Gamera IIにライバルが出現したというのは確かなようだ。

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北アメリカ類人猿あるいは原人の探索に無人飛行船

http://www.gizmag.com/falcon-project-bigfoot-airship/24537/

http://the-falconproject.com/main_site/?p=492

今から15年前、ユタ州に住むウィリアム・A・バーンズさんはカリフォルニア北部の荒野にて砂金を掘っていた。ある晩、バーンズさんが宿営地のテントで休んでいると、峡谷の上の方で岩のぶつかる音が聞こえてきた。不審に思ったバーンズさんが外の様子を伺うと、何かが重い足取りで下ってくるではないか。
そして、それがテントから3フィートほどのところまで近付いてきたところで、ちょうど月明かりに照らされて見えたその姿はまさにビッグフット…いやサスカッチ…いや北アメリカ類人猿あるいは原人(*)に相違ないのであった。

(*)真面目な研究者の呼称に従ってみた。

その日を境にバーンズさんの人生は変わった。動物の研究にうちこみビッグ…じゃなくて北アメリカ類人猿の探求に取り憑かれていったのである。

というわけで、バーンズさんの最新の試みが、このファルコンプロジェクトと呼ばれるものになる。カナダの遠隔操作飛行船メーカー、RATS Incに特注した、捜索用の無人飛行船を使おうというわけだ。

オーロラと名付けられたこの飛行船は、2つに分かれたヘリウム気嚢を有する双胴型で、全長は45ft。気嚢に挟まれる形で、中央に推進システムとセンサを搭載する。
双胴にすることで、安定を増し、全体がロールするのを防ぐことができる。カメラはジャイロで安定させており、ケーシングはカーボンファイバ製。
特徴は推進システムで、4基のダクテッドファンを任意の方向へ指向することにより操作される。普通のプロペラよりも操作性が良くなり、垂直方向の移動も簡単なので、地上でのハンドリングが容易になる。
近年のトレンドに従って、固定翼航空機と軽航空機の利点を併せ持つタイプの飛行船となっている。

最大速度は45mph程度、3~4時間の飛行が可能とあるが、推進システム全開の持続時間かなこれは。カメラは熱映像、IR、可視光のHD映像を取得できる。この他に大型哺乳類の呼気を捉えるCO2センサと、超低周波音の録音装置が載る。最後のは何のことかというと、彼らが超低周波音を発してコミュニケーションを図るという説があるためだそうだ。

このセンサプラットフォームを、地上管制(改造したモーターホーム)から半径5マイル程度の範囲で活動させる計画。飛行させるのに必要な準備時間は1時間未満とのこと。メーカーによると、来年の早春にも納入予定とされている。
また、捜索は自動操縦で行える。捜索範囲内を升目を切って順番に探索していく方式だが、grid searchをグリッド捜索とか言っちゃっていいのだろうか。

映像はインターネット中継で世界にお届けするが、それが映ったら中継は停止される予定。

この計画には、まともな研究者?も関与している。記事中で紹介されているアイダホ州立大のジェフ・メルドラム博士は、17年にわたって知られざる北米の霊長類についての研究を続けてきた人物だ。
計画についての権威付けの上でも意味を持つが、実は科学的プロジェクトに認定されると飛行高度制限が大幅に緩和されるという事情もある。一般の飛行高度が400ft止まりのところ、7500ftまで許されるというから、実利的な面でも劣らず重要と言えるだろう。

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JA2012の記事があった。CAR Watchなのに、と思ったが車も関係ないわけではない。

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121029_569330.html

F-35Aの公式模型展示。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/88.jpg.html

ネ20からXF5-1まで。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/74.jpg.html

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/70.jpg.html

ホンダジェット関係これだけ?

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/11.jpg.html

当日は747-400LCFが2機いたらしい。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/plane14.jpg.html

メディアの黙殺っぷりに反して来場者は16万人と、目標の9万人を大きく上回ったそうだ。
MRJのキャビン実大模型は見たかったな。

記事の最後で展示会場と飛行場が離れてる問題が指摘されているが、トヨタあたりがまともに航空機に参入してればあるいは、というレベルでしか解決の見込みは無さそう。
セントレアまで1時間以上か。ちょっと遠いかもなあ。

http://www.nipc.city.nagoya.jp/pmn/access/public.html

S-97レイダーの試作原型機製作が始まる/EADS北米がAAS選定についてコメント/AFRLがReusable Booster Systemのキャンセルを発表

S-97レイダーの試作原型機製作が始まる

http://www.flightglobal.com/news/articles/sikorsky-starts-construction-of-s-97-raider-prototypes-377868/

http://raider.sikorsky.com/

シコルスキーは、2010年までX-2デモンストレータにより実験を行ったコンパウンド形式の実用機、S-97の試作原型機製作を開始したと発表。現在は詳細設計段階にあるが、ラピッドプロトタイピングの手法により、既に一部の部品は製作済みとのこと。
年内に設計完了するのが目標で、2013年中頃から最終組立に移行し、2014年初飛行を予定。スケジュール的にはなかなかのペースだが、AAS選定には全く間に合わない。
この形式は、特に速度性能において優位性があり、従来型のヘリコプターが180kt程度の最大速度にとどまるのに対して、S-97は外部搭載して220kt、クリーン状態で235kt、ダッシュ時245~250ktを目標としている。

またシコルスキーは、X-2およびS-97の開発資金のうち、75%は自社が、残り25%はサプライヤーによって拠出されていると述べており、AASとは関係なく取り組んでいることを強調した。

http://raider.sikorsky.com/ui/documents/RAIDER_Brochure.pdf

当初の概念図では、機首周りは風防が段になってない流線型だったのに対し、やや普通の形状になった。主ローターブレードは、X-2から1枚ずつ増えて4枚ブレード×2となるが、この部分は少なくとも2011年には変更されている。
最終頁をよく見ると、スポンサーには直接の商売敵じゃないLMやらノースロップグラマンが混ざっていたりした。なにげにBAEシステムズも。どの程度拠出しているのだろうか。

S-97は小型機の範疇であるが、技術的に確立されれば、将来は中型以上の機体にも発展可能と考えられており、陸軍のUH-60後継、JMR/FVLへの布石ともなる。さらにC-130に匹敵する大型機までも、構想としてはある(推進プロペラが2基1組となる)。

去年公開されたコンセプトはこんなの。主ローターブレードは、既に4枚×2になっている。

 

(訂正追記)こっちだった。

http://www.aviationweek.com/Blogs.aspx?plckBlogId=Blog:27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7&plckController=Blog&plckScript=blogScript&plckElementId=blogDest&plckBlogPage=BlogViewPost&plckPostId=Blog%253A27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7Post%253A96f9d127-b650-48ca-ac85-d69a93bb592f

こっちはAVX。

http://www.aviationweek.com/Blogs.aspx?plckBlogId=Blog:27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7&plckPostId=Blog:27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7Post:6e334c9f-0810-4874-a0be-d7e023b58135

 

ついでにJMRのコンセプトいろいろ。

http://www.aviationweek.com/Blogs.aspx?plckBlogId=Blog%3a27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7&plckPostId=Blog%3a27ec4a53-dcc8-42d0-bd3a-01329aef79a7Post%3aedc366bc-344f-432d-a03c-0dbaeaf2cd57

また、民間型を望む声もあるものの、当面は軍用機としての開発に専念することが明らかにされた。これはユーロコプターX3とは対照的。V-22の時と同様とも言える。
X-2はちっちゃかわいいが実用機には無理。S-97は強面だがローターヘッド周りは異様にかっこいい。機体規模的には民間型もいけそうだけども、SARや原油・ガス採掘関係となると小さすぎる。

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EADS北米がAAS選定についてコメント

http://www.flightglobal.com/news/articles/eads-urges-us-army-to-buy-new-scout-helicopter-377827/

米陸軍の武装偵察ヘリコプターAASに関しては、ARH-70キャンセルに続く紆余曲折の末、そもそも新型機の導入をするかどうかというところまで後退してしまった。年内に決定が下ることになっているものの、これに提案しているメーカーが新型機採用を強く訴えるのは、ごく自然な成り行きと言える。

EADS北米では、EC145ベースのUH-72、をベースにしたAAS-72Xを提案しており、9月24日から10月3日にかけて、コロラド州アラモサにて自主的なデモンストレーション飛行を行った。高地・山岳地での運用についての実証が目的で、UH-72を改修したデモンストレータとともに、エンジン強化型を想定したEC145T2も参加している。EC145T2ベースの方は、AAS-72X+として提案されているが、実機はまだ存在しない。

同社のヘリコプター担当副社長が会見を行ったようだが、その際にS-97レイダーを牽制するコメントを出した。新しい概念などはこの際必要とされていない、といった内容。それでなくてもAASには間に合わないのだけども、今度の競合他社では唯一の新設計機とあって、やはり気になる存在ではあるのだろう。X3も否定しちゃってるような気がしないでもないが。

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AFRLがReusable Booster Systemのキャンセルを発表

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-air-force-cancels-reusable-booster-system-377869/

Reusable Booster Systemは、2020年代に現用EELVのデルタIV、アトラスV後継となるはずだった軍用の打ち上げシステムで、垂直打ち上げ、水平着陸するタイプの完全再利用型軌道輸送機として構想された。が、フェーズI契約の期限となる今年いっぱいで、予算打ち切りが決定。本来は、2011年末にボーイング、LM、アンドリュー(SpaceX)の3社が選定されてから、2012年末からフェーズIIとして、1社がサブスケール実験機製作に進む計画となっていた。
AFRLにおいてRBSは、パスファインダーと呼ばれていた。関連人員の再配置はまだ計画中とのことで、発表されていない。

EELVの更新ということなので、何らかの形で研究は継続するようだが、各メーカーはコメント出してないので不明。NRCの最新の報告では、周辺研究のコストを圧縮するよう薦められていた。
CCDevが結果を出しつつあるのと無関係ではなさそうだが、詳細は不明。

軍事目的の打ち上げを寡占状態で請け負うULAとEELV自体にも、風当たりは強まっていた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-future-of-eelvs-hangs-in-the-balance-372917/

ナン・マッカーディ法に引っかかり、高価に過ぎるとしてSpaceXにも突き上げられる。
ULAの打ち上げ実績は、アトラスが2002年以来100%成功、デルタIVが1回失敗しただけと飛び抜けてはいるが、RL-10のような旧世代の材料を使ったエンジンはコストが高い。これについては上段だけでも低コストにする、という提案もなされており、これについては今後3年程度で現実になる可能性がある。ロケットダイン、エアロジェットといった従来のメーカーに加え、XCORやOrbitecなどの比較的新しいメーカーの技術も調査されているようだ。

後半はRBSについての記述は割愛。ただし使い捨てのシステムから完全再使用型に移行することの意義については、疑問符も付く。

どういうものだったかについては、このへんで。かつての貨物専用無人スペースシャトル案に近いものだった。

https://www.fbo.gov/index?s=opportunity&mode=form&id=cfa4ef29350c55aafabbb6ac5d1f6aff&tab=core&_cview=0

http://www.aviationweek.com/Article.aspx?id=/article-xml/AW_12_12_2011_p32-403128.xml

LM案。

http://www.lockheedmartin.com/content/dam/lockheed/data/space/photo/rbs-reusable-booster.jpg

米国T-XのKPP(草案)が公表される/P-8A、LRIP-3の発注/KC-46の給油ブーム組立が始まる/F-35 AF-1が初の兵装空中投下を実施/ノルウェー議会がF-35導入予算を可決の見通しもNH90導入は暗礁に

米国T-XのKPP(草案)が公表される

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-releases-draft-t-x-kpps-377693/

USAFは長らく懸案となっていたT-38後継機、T-Xのkey performance parameters (KPP)草案を公表した。

可動率64.7%以上とし、最大旋回g、旋回率といった運動性能の具体的な数字の他、有視界での格闘戦訓練に十分な燃料を搭載すること、空中給油訓練ができること(ドライコンタクトでも可)、F-22やF-35に準じたセンサ及びアビオニクスをシミュレートできる完全なグラスコクピット、および各種搭載兵装(SDB、AIM-120などを含む)のシミュレータを機上装備することなどが挙げられている。

訓練パッケージとしては、ネットワーク化されたweapon system trainers (WST)、 operational flight trainers (OFT)と、unit training devices (UTD)が含まれ、これらは全てF-22のパイロットを養成するためのシステムとなる。WSTとOFTにより、Combat Edgeなど対g装備が作動する環境をシミュレートするそうだ。

またアビオニクスについては、オープンアーキテクチャのモジュラー構造で、拡張余地を残す必要がある。
ライフサイクルコストは353億ドル。

RfPの時期については、業界筋では約1年後、来秋という予想が出ている。

これに続けてLMの反応が記事になっている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-says-t-50-well-suited-for-usafs-next-generation-trainer-needs-377784/

LMが提案するのはT-50で、KPPの要件を満たすことができると確信している、と発表した。LMの予想ではRfPが2013年後半から2014年前半となっている。ここが予算次第というのは重々承知の事柄だ。
機数については、最大350機との見込みが広く信じられているが、アグレッサーなどの本来の訓練任務以外で使われているT-38も含めると、もう少し多くなる。

T-50をT-Xの要件に適合させるには、まずパフォーマンスは問題ないとして、コクピット周りの大改修が必要。ビルトイン式のシミュレータなどの機器を搭載する必要がある。それと空中給油訓練の装備は、今後の検討課題として残るとのこと。

T-Xでは、実戦機とのギャップを少しでも埋めるために、従来の飛行訓練とシミュレータ訓練を同時に行えるような能力が求められる。うまく訓練プログラムに落とし込むのは簡単ではないかもしれない。

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P-8A、LRIP-3の発注

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-navy-signs-19bn-order-for-11-p-8as-376879/

http://boeing.mediaroom.com/index.php?s=43&item=2425

9月24日付。
USNは9月21日、ボーイングに対してP-8A×11機を発注した。これはLRIP-3の残りに該当する契約で、金額は19億ドル。先のLRIP-3は去年の2機だったので、合計すると13機。これまでに引き渡された生産型の機数は3機で、LRIPでの発注機数全体では24機に達した。
なお、2004年からのSDDでは飛行試験機6機と地上試験機2機が製作されている。

USNでは117機の導入を予定している。全規模生産にまた一歩近付いたと書いてあるが、いつからだったっけ。

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KC-46の給油ブーム組立が始まる

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-to-begin-assembly-of-first-kc-46-refueling-boom-this-week-377731/

ボーイングが、シアトルの新設組立工場において、KC-46の給油ブーム組立を開始したと発表している。これは設計から製造段階へ移行したことを示す。
この給油ブームは、2013年Q3にシステムインテグレーションラボにて試験を行う予定。構造的にはKC-10のブームを基礎としており、FBWで制御される。

KC-46のCDRは2013年夏に予定され、ここまでは予定通りの進捗とのこと。今のところ2017年までに18機を納入する計画となっており、USAFでは179機の導入を予定している。

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F-35 AF-1が初の兵装空中投下を実施

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-f-35a-releases-first-air-launched-weapon-377754/

10月16日、F-35 AF-1がチャイナレイク試験場において、左側のウェポンベイに搭載されたGBU-31、2000ポンドJDAM1発の投下試験を実施した。
ということで、写真が公開されている。

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ノルウェー議会がF-35導入予算を可決の見通しもNH90導入は暗礁に

http://www.flightglobal.com/news/articles/norway-hopes-for-arrival-of-first-f-35-in-2015-377481/

ノルウェー国防省はF-35導入にあたり、FY2013で17億8000万ノルウェークローネ(NKr)、米ドルにして3億ドルほどの予算を要求している。これについて10月8日、国防省当局は12月に予算案が可決の見通しと発表しており、そのまま通れば1号機が2015年までに引渡しということになる。
ノルウェー空軍全体での導入機数は52機を予定しており、総額は600億NKrに達する。

F-35に関しては順調なのだが、問題があるのはリンクスの後継機として選定したNH90の方。空軍6機、海軍8機の合計14機を発注済みで、2機目の引渡しが11月1日に設定されている。しかし多くのトラブルがあったことから、信頼性についての議論が続いており、場合によっては別機種への変更も、というところまで話がこじれてしまったようだ。なお、オランダやオーストラリアで問題になっていたのは、駆動系などのメカニカルなトラブルに加え、スペアパーツが来ないだとかのサポート体制だった。

NH90が正式キャンセルとなった場合の代替機種として、SH-60の名前が挙がり、シコルスキーと予備的な交渉が行われたとの情報もあるが、国防省はこれを公式に否定している。ただしシコルスキーに絞ったわけではない、という反論なので、NHインダストリーの立場が危ういことに違いは無い。