ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約/ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定/ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約/ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約

http://www.space-travel.com/reports/ATK_Awarded_50_Million_Contract_for_NASAs_Advanced_Concept_Booster_Development_for_SLS_999.html

ATKの発表によると、SLS能力向上に関わるAdvanced Concept Booster Developmentの一部にあたる、エンジニアリング開発とリスク低減試験についてNASAと契約を結んだとのこと。金額は5000万ドル。

この計画では、TVCノズルの電動化(リチウムイオン電池を利用する)、高性能推進剤、軽量複合材製のケース、新型ノズルが開発され、試験用エンジンを製作、静止運転試験までが含まれる。
全体としてはコストを下げつつ、性能と信頼性の向上につなげるものとなっている。

宇宙機では枯れた技術が使われる、とはよく言われる話であるが、材料や電池の分野は今でも日進月歩で発達し、かなりの速度でコモディティ化が進んでいる。様々な形で民生部品を使うのも一般的になりつつあるし、新しめの複合材やリチウムイオン電池もそろそろいいだろう、という感じではある。

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ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定

http://www.spacedaily.com/reports/Key_flight_for_Europes_GPS_is_cleared_for_launch_999.html

10月5日、ESAはガリレオ航法衛星2機打ち上げが承認されたと発表した。
打ち上げ場所はクールー。使用されるロケットはソユーズST-B(上段がFregat-MT)で、既に組立棟に搬入済みとのこと。打ち上げ予定日は10月12日、1815GMTとなっている。
これらは2011年10月21日の1、2号機に続くもので、軌道投入に成功すれば稼動衛星の数は4基となり、測位システム(緯・経度、高度、時間の情報を取得し、地球上の航法を支援する)の最小単位を構成できるようになる。

計画では2015年までに18機を運用、商業利用が可能となり、2020年には全衛星30機体制となって、システムが完結する。これは米国のGPS衛星より6機多く、より高精度な(GPSの誤差3~8mに対して誤差1m程度の)測位が可能。
また、5月の欧州委員会への報告では、2015年までにかかる費用が50億ユーロとされている。

なお、クールーでのソユーズ打ち上げは3回目。アリアン5とヴェガの間を埋める打ち上げシステムとして活躍し始めている。

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ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約

http://www.gizmag.com/pulsar-navigation/24498/

恒星間航法において、パルサー観測を用いるというアイディアはSFでよくあったような気がするが(終わりなき戦いとか)、パイオニア10号の有名な図版でも地球の位置情報(と地球を出発した時期)を示す図形として描かれたこともある。ESAはそれを真面目に実用に耐えるものにできるか研究しましょうという趣旨で、英国立物理研究所NRL及びレスター大学と契約した。

宇宙船が地球から遠ざかるほど、航法支援は困難になる。電波の速度による時間差も生じるし、光の速度で数週間、数ヶ月の距離ともなれば、送信設備の出力も膨大なものとしなければならない。
理屈では人工的なビーコンを設置することも可能だが、同じ理由で現実的ではない。そこで天然のビーコンと言えるパルサーの観測で何とかしようという話。
科学的にその辺の利点を述べると、パルサーはそれぞれが固有の周期で電磁波を発するので、非常に見つけやすい。そしてパルサーのX線を観測することができれば、地球上でGPS衛星を利用するのと同じように扱うことができる。
レスター大学のチームは、この目的のためのX線観測装置の可能性を、NPLは観測データから測位情報を得るためのアルゴリズム開発などをそれぞれ担当する。

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ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

http://www.gizmag.com/boeing-ballistic-gas/24403/

使用されなくなった人工衛星など、いわゆるスペースデブリの問題は年々深刻さを増している。代表的な事例としては、2009年2月10日に起こったイリジウム33とコスモス2251の、高度789kmでの衝突があった。

ボーイングで特許申請の形で提案しているのは、デブリの進行方向にガスを撒くことで、その軌道周回速度を第一宇宙速度以下まで減速させるという方法。わずかでも第一宇宙速度を割りさえすれば、後は地球の重力井戸に真っ逆さまというわけだ。これまでに幾つか提案されたような、ソーラーセール等を用いて物理的に回収したり、つついたりする方法に比べても、最小のエネルギーで対処可能なアイディアと言えるだろう。更に言えば、回収のための衛星が何かと衝突することすら有り得る。

発案者はMichael Dunnという人で、ガス発生器を搭載した小型衛星を使用する。このガスについては、低温のキセノンまたはクリプトンのタンク、あるいは重金属を気化する装置か、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられている。原理的には何でもよく、デブリの進路上、逆向きのベクトルを与えてガスを撒き、運動量を削げばよい。

この方法の利点としては、システムがかなり単純で済むだけでなく、デブリに余計なダメージを与えて更に細かい破片が分離するといった可能性がほとんどないこと、精密に狙いを定める必要がないこと等がある。大型の衛星や軌道高度が高い場合は、単に数回に分けてやれば良い。
また1個の衛星で、異なる複数の軌道を周回するデブリに対して使えるのも利点とされる。
大気圏で燃え尽きそうにないとか有害物質入りとか原子炉搭載とかだとちょっと困るが、基本的には何にでも使える。

言うなれば宇宙フマキラー的な?
米国でスプレー式殺虫剤の代表的なものとはなんだろうか。

BLOODHOUND SSCの推進システムが試験される/メルセデスベンツがエアロダイナミック・トレーラー/トラックを公開

BLOODHOUND SSCの推進システムが試験される

http://www.bloodhoundssc.com/

http://www.gizmag.com/bloodhound-engine-test/24347/

http://www.gizmag.com/bloodhound-test-successful/24398/

BLOODHOUND SSCは最新の地上速度記録挑戦車で、目標速度を1000mph、1600km/h、Mach 1.4としている。
利用する推進システムはEJ200ターボジェットエンジンとロケットモータの組合せとなるが、ここで話題になっているのはロケットモータの試験。

このロケットモータはFalcon(まぎらわしい)と名付けられた独自開発のもので、分類としてはハイブリッドロケット。独学で学んだという28歳の技術者が設計している。

英MoDが公式サポートし、REMEから5名のロケット技術者が派遣されることも決まった。

本体の諸元は、全長4m、直径45.7cm、重量450kgで、最大推力122kNを発生し、噴射炎は8mに達する。軸馬力換算すると60000kWで、大雑把にF1マシン95台分。
固体ロケットを車(ほかにもいろいろやったが)に使った草分けといえば、1920年代のフリッツ・フォン・オペルだが、スロットル調整ができない以外は、この種の目的には理想的な推進システムと言えた。

Falconの燃料はHTPB(末端水酸基ポリブタジエン)、酸化剤は高濃度の過酸化水素水で、燃焼温度はセ氏3000度。
酸化剤の調節によってスロットル制御が可能となる理屈であるが、酸化剤の投入量は20秒未満で963kgといったレベルであり、ロケットエンジンのターボポンプが流用された。これはアヴロ・ブルースティール(スタンドオフ型の核ミサイルで、エンジンはアームストロング・シドレー製の液体ロケットだった)から取ってきたもので、

http://www.youtube.com/watch?v=FwMnEoC0gVg

さらにこのポンプを動かすのはコスワースのわりと新しいF1用V8エンジン、CA2010となっている。

これにEJ200を加え、動力源は3系統となる。補機が800bhpという。
計画では、EJ200で350mphまで加速(最大2.5g)する。写真の軍人さんはRAFのアンディ・グリーン空軍中佐で、BLOODHOUND SSCの搭乗者となることが決まっている。

挑戦を行う場所は南アフリカのHakskeen Pan。

http://www.bloodhoundssc.com/project/adventure/desert-race-track/hakskeen-pan

2009年に選定。当初は、マルコム・キャンベル卿が1929年に速度記録挑戦のためのコースを設営したこともあるVerneuk Panを調査した。ここは平坦ではあるが頁岩が散らばる地形となっており、幅120ftのコースを整備するのに3ヶ月を要したとされている。BLOODHOUNDを走らせるためには、全長18km×幅1500mのコースを設営しなければならない。
調査の結果、表土の下にばらばらの頁岩の地層があって無理ということになり断念。

Hakskeen Panは、幹線道路があるために候補から外されていたが、1年前、新たに別ルートを通る舗装道路が開通したため、候補として再浮上した。現在は未舗装の旧道が残る形なので、これを利用してコースの設営を実施する。
既にノーザンケープ州政府からの支援を取り付けていたため、ロケーションの変更は簡単だった模様。

10月3日のロケットモータ試験では、ベンチ上にて出力22370kW(30000bhp)で、10秒間の運転が行われた。
今後、14回の運転試験が予定されており、安全性が確認されれば車両への搭載、低速走行試験と続く見通し。

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メルセデスベンツがエアロダイナミック・トレーラー/トラックを公開

http://www.gizmag.com/mercedes-benz-aerodynamic-truck-trailer/24262/

コンセプト公開から約1年、国際商用車ショーにて実車両の登場となった。
外観からも判る通り、空力面の改良を突き詰めたトレーラーで、トレーラーとトラクターの隙間をいい感じに埋め、13.6m長の標準的なサイズでありつつ、車輪が完全にカバーされるなどの変更箇所が目に付く。
側面だけでなく下面もパネルで覆われ、気流はボートテール状となった後端のディフューザから抜けるようになっている。これらの変更により、通常のトレーラーとしての日常の取り扱いには影響なしに、抵抗を18%低減する事に成功した。
具体的には年間2000リットルの燃料(金額にして約3000ユーロ、CO2排出量にして5ton)を節約できるとされる。

なお組み合わせられているトラクターは既に販売されているモデルで、メルセデスベンツ曰く、公道上で最も高効率な大型トラクターだそうだ。
側面の延長パネルはオプションらしい。

エアロダイナミック・トラックの方は、同様の手法に基づいて設計されており、抵抗を12%低減している。具体的には、年間350リットルの燃料(金額にして約500ユーロ、CO2排出量にして1ton)を節約できるとされる。

これらは国際商用車ショーに展示された後も試験が続けられる見込みであるが、EUにおいてはボートテールとしての500mmの延長部分が法的に引っかかる。この問題については、メルセデスベンツでは来春にも解決すると見ている。

Gizmagで取り上げられた、その他のトラックの燃費改善の試みとしては、

GPSと連動し、起伏に沿ってスロットル制御するといったスマートなクルーズコントロールシステムをVWグループのスカニアが開発。
燃料消費低減効果は3%程度という。熟練ドライバーとかだとあんまり効果ない気もするが、個人の技量に左右されないメリットはあるだろう。

http://www.gizmag.com/scania-active-prediction-system/20870/

同種のシステムは、トラック業界ではダイムラー、その他にも一部の鉄道でも採用されている模様。

さらに発想を自由にしすぎた感じの例がInnotruck。

http://www.gizmag.com/innotruck-diesel-reloaded-ev/22206/

ミュンヘン工科大が製作したデモンストレータというかコンセプトカーというか。ルイジ・コラーニ教授のわけもなくかっこいいデザイン炸裂だ。
だが見た目に反し、情報化とかそっち系の技術が主になってるみたい。太陽電池、風力タービン、回生ブレーキで発生した電力をスマートグリッドに流すとか夢一杯な感じだ。

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ついでにSLS AMGクーペのEVが発表されてるのでこれも。

http://www.gizmag.com/mercedes-benz-sls-amg-coupe-electric-drive/24320/

4モータで、だいたいコンセプト発表時のまんま出てくるようだ。エンジン音も出せる。音だけ。

英国内でニムロッド早期退役の余震が続く/英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集/RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする/RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

英国内でニムロッド早期退役の余震が続く

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-uk-left-exposed-by-nimrod-cancellation-report-says-376998/

SDSRの結果、ニムロッドMR.2は2010年3月に退役。MRA.4のキャンセルとともに、RAFの長距離海洋哨戒能力は、事実上消滅した。ことにMRA.4に関しては、開発が長期に及び、40億英ポンドという巨費を投じて、翌年には戦力化というところまで進んだ状態からのキャンセルだったため、様々な論議を呼んだ。
後に、あるMoDの官僚は、哨戒機に関する部分は、SDSRの判断の中でも最も難しい決定だったと述べたそうだが、この決定を巡っては今も議論が続いている。

9月19日、英国の下院軍事委員会は、長距離哨戒能力の欠如したままでやっていけるかどうかを評価し、Future Maritime Surveillance reportという文書にまとめた。この中には哨戒能力を再整備する選択肢の一つとして、MR.2の現役復帰に関する2011年の研究評価も織り込まれていたという。

英政府の公式見解としては、短~中期的にはASWおよびMPAの不在によるリスクは、許容できる範囲であり、それらが必要とされるような(軍事的な)圧力も受けていないというものだった。
下院軍事委員会は、MoDの主張を引用する形で、この結論に対して疑問を呈した。リスクが突発的に増大した場合の対応や、哨戒能力の欠如あるいは不足によって、中期的に状況が悪化する可能性を取り上げている。英国が横腹を晒すことにならないよう、より注意深く継続的にレビューを続けるべきであるとした。

2011年の研究においては、UAV、監視衛星、C295 MPAもしくはP-8Aのような有人機による代替手段を検討していたが、これらはSDSRに含まれず、次の10年における調達計画に入っていない。ということで、2015年の次のSDSRまで棚上げ、ということになっているのが現状。
最終的には哨戒機は不要としながら、それらの欠如に対するリスクも認めているのは具合が悪いというのが結論で、SDSRを進めた連立政権にとっては、あまりうれしくない内容となっている。

この他に出てるのが、ニムロッドの搭乗員の技量維持に関するコストとその後の代替手段の話。
技量維持の計画は、Speedcornと呼ばれており、2012年にはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国へ、合計33名の人員を派遣した。これにかかるコストは年間320万英ポンドで、同計画では2019年まで実施することが定められている。しかしこれが役に立つ(ニムロッドを現役復帰させる)可能性があるのは、現実的にはあと5年程度のため、委員会とエアバスミリタリーは、その間に次のMPAを導入すべきであるとの勧告を出している。

一口に代替手段と言ってもニムロッドに匹敵するような多目的プラットフォームと、単なるMPAとでは意味合いが異なり、前者であれば簡単には準備できない(事実上、替えが効かないと言いたいっぽい)が、後者であれば出来合の機体で間に合わせることができる、と述べたのは、統合/航空作戦能力/トランスフォーメーション担当の空軍少将。

有人のMPAとしては、まずP-8Aが挙げられるが、これは1機1億7000万ドルほどで非常に高価である。この金額はC295 MPA、4機分に相当する(もちろん能力は劣るが現実的)。
これ以外には、センチネルR.1Aの転用、RAFの保有するA400Mもしくはボイジャーにセンサを追加する案、またサーブ2000MPAソードフィッシュなど。いずれにせよ、次のSDSRでは検討する必要がある。

最後に登場しているのはスコットランド国民党のアンガス・ロバートソン議員。ニムロッドが長らく活動拠点としてきたRAFキンロスに関わりの深い人物で、MRA.4の退役について強く批判。アドミラル・クズネツォフが領海付近を航行した一件を取り上げ、英国政府がこの(哨戒機不在の)状況を放置するなら、海洋国家として横腹を晒し続けるのは認められぬ故スコットランド政府が防衛政策としてやるべきだとまで言っている。
実際に可能かどうかは知らないが、制度上は一応アリみたい?
ロシアでいくつかの市が原潜のスポンサーになった話を思い出した。

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英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-mod-seeks-casevac-service-provider-for-kenyan-exercises-377310/

10月4日、英国MoDはケニア国内でのcasualty evacuation (Casevac)活動を支援する民間企業の募集について説明を行った。これはNanyuki基地に駐留する英陸軍訓練部隊、British Army Training Unit in Kenya (BATUK)を支援するための航空機と人員を投入するためのもので、予算は25ヶ月間で900万英ポンドを上限としている。

Casevacは読んで字のごとく、負傷者を迅速に搬送するための活動を指しており、緊急事態に際しては、10分から4時間で対応することが求められる。機体の要求としては、少なくともストレッチャー1名分と医療担当1名を乗せて、300kmほど輸送でき、活動する地域は標高8200ft以下、天候と時刻を問わず、飛行場のない不整地でも離着陸できることとある。また2つの分離した演習地域を同時にカバーできることも求められる。

Nanyuki基地では、1年間に6回程度、英陸軍の大規模な演習が行われており、駐留する人員は300~1700名と変動がある。1回の演習は概ね6週間続く。これらの演習は、アフガニスタンへの派遣に備えた内容となっている。写真はケニアでのプーマHC.1。

Casevac以外の副次的な任務としては、実弾演習後の後始末や写真撮影、演習そのものの支援といったものが含まれ、また、すべての活動はケニアの民間航空当局の定めた枠内で行われることになっている

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RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-reveals-pilot-levels-on-reaper-uav-unit-377263/

英国議会においてMQ-9の配備状況に関する質問が出て、これに回答する形で人員数などが明らかにされている。これによるとRAFでは31名がMQ-9の操縦資格を有しており、2012年10月から2012年9月までに16名が訓練を受けるという。

RAFのMQ-9は39Aqnに所属し、カンダハルに展開中。これらは2007年10月以来、米国のネバダ州クリーチAFBからRAFからの派遣人員によって遠隔操作されている。1機の操作には、パイロット、センサオペレータ、ミッションコーディネータ兼映像解析要員の3名がつく。この他に機体を取り扱うごく少数が現地のカンダハルに展開している。

今後は、リンカンシャーのRAFウォディントンに新たな地上管制局を設置し、機体を10機まで増強する計画がある。

活動状況については、6月19日までの3年間で176回の攻撃を実施した。標準的な装備は500ポンドのぺイヴウェイII×2とAGM-114×4。
偵察任務では、1週間あたり平均250時間ほどの映像を伝送してくるとのこと。

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RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/uks-first-airseeker-on-track-for-2013-delivery-says-mod-376813/

微妙にニムロッド退役と関連。
RAFではSIGINT機として、51SqnがニムロッドR.1を運用していたが、これは2011年をもって退役となった。その後継機として選ばれたのが、USAFで余剰となったKC-135を改修、RC-135Wリベットジョイント相当仕様にするという案で、L-3コミュニケーションズが受注して3機の改修作業が進行中となっている。
改修作業はUSAF側でも支援し、テキサス州グリーンヴィルにて2011年1月からスタートした。

耐用年数を延ばすために機体外皮を交換したほか、給油ブームを撤去し、逆に空中給油を受けられるようにするためのリセクタプルを追加する。またグラスコクピット化と、後部客席部に機器ラック追加、電線の全交換などが実施される。
2013年早々から地上試験、飛行試験が開始予定で、引き渡しは同年内を目指す。

L-3コミュニケーションズってNZ向けのP-3でやらかしてたが大丈夫か。

RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか/タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ/オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み/RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

基本的に遡らないようにしてるのだけども、メモだけして貼ってなかった記事が出てきたので。

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RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-tornado-fleet-to-retire-in-2019-says-bae-375014/

8月2日付。

BAEシステムズの上半期中間発表において、RAFのトーネードGR.4が2019年3月に退役するとの記述があった。これはMoDの決定事項として確認済みのようだ。

現用のトーネードGR.4は、124機が存在する(FlightGlobal調べ)。これらの機体はRAFロシーマスとRAFマーハムにそれぞれ配置されており、アフガニスタンのカンダハルにも分遣隊が送られている。

F-35Bの配備について、最終的な決定には至っていないものの、現在の予定では2018年からRAFマーハムで運用がスタートすることになっている。これによってハリアー以来のS/VTOL攻撃機部隊が復活し、GR.4の一部と交代できるようになる見込み。

これとは別にサウジアラビア向けトーネードIDSのアップグレード、Tornado Sustainment Programmeにおける73機の改修が、2012年前半の12機の引渡しをもって一応完了している。今後はインテグレーションされた新兵器の引渡しが活発になるとのこと。

2007年の改修試作の時期の記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/saudi-arabia-reveals-progress-of-tornado-upgrade-216775/

ストームシャドウやブリムストン、ダモクレス・ターゲティングポッドなどが使用可能になる。

一方、ドイツではトーネードIDSを2025年まで運用する計画としている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-tornado-upgrade-on-track-as-laser-jdam-tests-near-376386/

F-4Fなどもそうだったが、ドイツは物持ちが良い。ドイツ軍は1990年代後半に至るまで海外展開しなかったから、エアフレームも長持ちしている、というのも理由の一つだろう。
RAFの機体などは、多国籍軍の中核として長年酷使されてきた。ハリアー退役後を支えたのもトーネードだったわけだし。

ASSTA 3.0仕様の近代化改修機は、6月下旬に3機が引渡し済み。Büchel空軍基地のJBG33に配備されている。写真の機体はそのうちの1機ということらしい。
ASSTAでの改修計画は、2018年までに85機予定となっており、1ヶ月に1機のペースで進行している。
ASSTA 3.1仕様は2015年以降で、MIDSの完全なインテグレーションのほかに、後席の表示装置を交換、チャフ/フレアディスペンサの一新するなどの予定がある。

GBU-54 レーザJDAM(LJDAM、500ポンド)のインテグレーションはOT&Eの段階にあり、10月からスウェーデンの射爆場で試験を実施予定。これには4機が使用され、実弾5発を用いることになっている。

以前書いたのと重複するが、ASSTAの内容ではMIDS/Link 16データリンクへの対応が最も大きなもので、その他に機体前部へ追加したサーブ製のRWRや、デジタルデータ/ビデオレコーダ、通信機と、タイフーンに採用されたのと同系のデジタルムービングマップ等が追加・更新される。

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タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-first-tranche-3-eurofighter-takes-shape-375776/

8月24日付。

トランシェ3A仕様の1機目はRAF向けの、機体番号BS116となる。8月下旬にSamlesbury工場で機体構造が作られ、ウォートン工場での最終組立に移行する。
BAEシステムズによると、トランシェ3Aの胴体部品には、350以上の設計変更が加えられているとのこと。AESA搭載に伴って電力供給量を増加し、冷却システムを強化したのが大きく影響した。

2009年に発注されたトランシェ3Aは、RAFの導入予定数が40機で、独31機、伊21機、西20機まで合計すると、112機となる。

また、9月下旬にはアレニアが製造する左主翼と後部胴体が出荷されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-alenia-delivers-sections-for-first-tranche-3-eurofighter-376899/

この機体、BS116の初飛行は2013年に予定されている。

次の段階はトランシェ3Bとなるが、こちらはまだ未確定という状態。2013年12月までに関係各国が合意してゴーサインが出なければ、2017年後半で生産完了となる。これについては、製造ペースを落として期限を先送りにした経緯がある。

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オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-edges-towards-eurofighter-contract-with-oman-375018/

これもBAEシステムズの上半期の中間報告から。

オマーンでは2012年1月に戦闘機入札のRfQ(request for quotation、要するに見積依頼)を発出、BAEシステムズはタイフーン×12機の提案で応じており、今年後半にかけての契約を目指し、交渉を行っているという。BAEシステムズとしては、2008年中頃に初めてオマーンを潜在顧客として挙げていた。

UAE向けには、タイフーンはラファール選定の当て馬扱い風で、あまり情報が出ていない。F-16E/Fの追加発注という線も似たような扱いか?
インドMMRCA向けもまだ諦めてない模様だが、これ以上の逆転はさすがに…あるのかなあ?でもインドだし。

このほか、タイフーンの製造状況についても触れられている。2012年前半に、EADSとBAEシステムズから各国に引き渡された機体は21機で、トランシェ2仕様としては合わせて144機に達した。発注数236機の半分は超している勘定。

ILAの時のユーロファイター首脳へのインタビューもついでに。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurofighter-chief-casolini-outlines-priorities-376246/

ここではMMRCAについて、まだフランスとインドの間で何の契約も交わされてないことを強調しており、2月のエアロインディアに出展する予定も明らかにした。

現在進行中の商談は、上で挙がったオマーンのほか、ブルガリア、クウェート、マレーシア、カタール、ルーマニア、韓国、UAEといった国々が挙げられている。

最後の方では、今後20年間の次世代戦闘機市場予測についても触れられている。ワールドワイドでは800機規模の市場と予想しており、ユーロファイターとしてのシェアは25%程度を狙っていく。

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RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

http://www.flightglobal.com/news/articles/rafs-1-sqn-reforms-with-eurofighter-typhoon-376556/

RAFで最も長い歴史を持つ実戦部隊、1Sqnは1912年に編成された。その後、2010年にハリアーGR.9の早期退役に伴って一時解隊となるも、今年9月15日、タイフーン装備の第4の前線部隊として再編成を終えた。RAFルーカーズにて、6Sqnとともに配備されることになる。

RAFルーカーズの2個Sqnは、いずれも北方空域のQRA任務を主体とするが、マルチロール任務を発達させる役割も持つ。

なお、残りの2個Sqnは、RAFコニングスビーの3Sqnと11Sqnで、ここではタイフーンに機種転換中の29Sqn、評価部隊の17Sqnも所属しており、タイフーンの大所帯となっている。

29Sqnが機種転換を完了した時点で、タイフーン装備の前線部隊は5個Sqn体制となり、編成が完結する。

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備/バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続/ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告/EADSとBAEシステムズの合併交渉

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-mbda-germany-to-test-defensive-laser-weapon-376474/

MBDAドイツは、ドイツと欧州国防省から一部の資金を受けつつ、対IEDおよび砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃用の、レーザ兵器開発とデモンストレーションを行ってきた。
最初の試験は2008年に行われた。複数の発振器を束ねる設計が特徴で、5kWレーザ発振器を2基使った2011年の初期の試験では、有効射程2.3km以上を達成した。

現在試験されているのは、より実用型に近い10kWレーザを4基束ねたシステムで、2012年初頭に最初の試射を行った。この時の結果は、迫撃砲弾の弾殻と鋼板を2~3秒で貫通しており、レーザ光の性質が良好で、個々のビームの損失の低さを実証できたとされている。
これに続いて10月には、砲弾を模した飛行物体を連続的に迎撃する試験を実施予定。

計画では、IEDを100m程度の距離から破壊するシステムを3年以内に、対砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃システムは24ヶ月で実用化することになっている。後者は20kWレーザ×5基のシステムとなり、有効射程は最大3km。

その後の発達型としては、UAV迎撃および野戦滑走路の防衛システム(航空機の離着陸時を狙うMANPADSに対処する)というのが挙げられている。
基本的に地上設置型のシステムとして考えられており、航空機搭載については研究もされてないとのこと。

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バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-cassidian-plans-further-tests-with-barracuda-uav-376416/

バラクーダUCAVデモンストレータは、そのまま実用型に発達する可能性があんまり無くなっているものの、UAV技術の開発には重宝されてる模様で、今年は6月から7月にかけ、カナダのグースベイにおいて飛行実験を行った。有人機のセンサとなって連携するといった内容が伝えられており、バラクーダの活動はここで一区切りとなった。

Cassidianでは次の2~3年についての議論を行っているところで、より多くの航空機と連携し、複雑な任務へ対応させるための計画に期待しており、それに沿って実際にバラクーダを飛ばすのは、2014年頃と予想される。実現すれば、一連の飛行実験としては4度目。
APARの搭載により、移動目標の探知と追跡が可能になれば、更に多くの実験・実証が可能になる。

欧州のUAV実験機は、1990年代から2000年代にかけて各国で同時多発的に現れたものの、開発リソースが集中せずにその後の開発が滞り、立ち消えとなったものが多い。バラクーダもそうした世代に属する一機種だが、技術開発や装備の評価のために、もうしばらく生き残ることになるのかもしれない。

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ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-air-force-details-success-during-red-flag-exercise-376410/

ILAにてレッドフラッグ演習について報告する講演があり、数字が幾つか出ている。

JG74からの派遣人員は約150名でパイロットは10名(ユーロファイターは8機)。

ドイツ空軍の指揮したある防空任務では、友軍全体として38:1というスコアを挙げた。これはレッドフラッグ演習の成績としては記録的な数字である。

ユーロファイターの模擬ミサイル発射は18回で、命中と判定されたのは16回だった。この中には少なくとも1回のF-22撃墜が含まれる。

ドイツ空軍のソーティ数は、212回計画されたうち、208回が実施された。

2014年のレッドフラッグにも参加予定となっている。

 

やや関連で、ドイツとユーロファイターの関わりについての記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-luftwaffe-advances-eurofighter-experience-376247/

ILAにはJG31所属の2機が参加し、1機はCassidianのテストパイロットによるデモンストレーションフライトを実施したそうだ。
ドイツ国内では、Cassidianにて直接ユーロファイターに関わる人数は約3000名、間接的に関わる人数は、22000名ほどになるという。合計すると25000名で、これは欧州全体でユーロファイターに関わる人数(100000名)の、約1/4に相当。ドイツの税収にも大きく貢献する内容と言える。

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EADSとBAEシステムズの合併交渉

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-systems-eads-in-merger-talks-to-create-100bn-turnover-business-376423/

話がでかすぎて先が読みにくいが、EADSとBAEシステムズの合併交渉が持ち上がっているらしい。9月12日にロンドン証券取引所のプレスリリースで、BAEシステムズ側から明らかにされた。
単純に2011年実績の2社の年間取引高を足すと、958億ドル。うち、航空宇宙分野に限っても740億ドルと、ボーイングのそれ(2011年実績は687億ドル)を凌ぐ。

BAEシステムズは2000年代から米国向けの事業に軸足を移しており、合併相手のEADSとしては、米国進出の強力な基盤を手に入れることになる。

欧州と英国の防衛産業は近付いたり離れたりを繰り返してきた印象があり、BAEシステムズは、ユーロファイターやMBDAとの事業で長期的な協力関係にあって、欧州企業との合併を模索しつつも、EADSが成立した2000年以降は英国内の事業で競合することになったし、2006年にはエアバス株を手放したこともあった。
合併が成立すれば、長年の確執も解消することにはなる。

BAEシステムズが40%、EADSが60%の株式を保有する計画(英仏独の各国家が保有する分は別の処理が必要らしい)で、両社が存続する二元上場会社になるとのこと。見かけ上は比較的緩いグループ企業化といった感じだがよくわからん。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%85%83%E4%B8%8A%E5%A0%B4%E4%BC%9A%E7%A4%BE

英国のM&Aは、テイクオーバー・パネルという民間機関が取り仕切っており、このケースでは10月10日までに当事者の両方または一方が意図を公表するよう求めた。EADS側の結論が出なければ、BAE側から期限延長を申し出るとしている。

野村資本市場研究所による説明。

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2008/2008aut20.html

エアバスがEADSの完全子会社であることなどから、背景はかなり複雑。株主の反応は総じて冷たく、翌13日の株価はEADSは9%、BAEシステムズが8%下げたと報じられている

http://www.flightglobal.com/news/articles/lukewarm-response-from-markets-to-eads-bae-merger-plans-376478/

BAEシステムズ側の問題として挙げられているのが、米国の事業部門を分離しなければM&Aが認められない、となった場合、大きな収益源を手放すことになってしまう上、米国市場への進出どころじゃなくなる、というもの。
米国内に資産が存在する以上は、外国投資委員会CFIUSが審査することになる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-eads-merger-could-face-us-regulatory-hurdles-376431/

この記事では米国で合併したサンダーズとユナイテッド・ディフェンスという2社についてクローズアップしている。
特に前者は、電子戦機器での大きな成功(F-35のALR-94を含む)に繋がっている。合併した2000年当時、欧州の企業はその分野で締め出されていた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/eads-bae-tie-up-unlikely-to-affect-airbus-business-376429/

合併後の従業員数は220000人。BAEシステムズはEADS以前、欧州の企業との合併を模索した時期があった。1998年にDASAとの合併交渉も行っている。
EADSの意図として、エアバスへの依存を減らし、防衛産業の方を強化したい節があるため、エアバスの事業にはあまり影響がないとの見方もある。

そして、もし合併が成立したら、という考察記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/weighing-the-defence-implications-of-bae-eads-consolidation-376455/

BAEシステムズがEADSと一体化するとなれば、英国を含む欧州の防衛産業がいよいよ一つのものになることを意味する。ダッソーの株式も46.32%はEADSが保有してたりするし、全体的には一つ穴の狢といった情勢だからだ。唯一の例外となるのは電子機器系で、イタリアのSELEXガリレオが残る。

合併後、戦闘機に関しては2機種が競合することになるので、企業戦略として難しい選択になるものの、どちらかが選定されれば勝ちという見方も可能だ。
また、JSF計画への関与はBAEシステムズ単独のまま推移すると予想される。ユーロファイターなどに関しても、現状維持のまま事業継続される可能性が高い。

現世代の製品はこのまま行くとして、長期的に利点となり得るのは次世代戦闘機の開発ということになる。
無人機にせよ何にせよ、開発リソースを1機種に集中させることができ、EADSのUAVデモンストレータで得られた技術も使える。取引高がそのまんま技術力に比例するわけじゃないが、ボーイング等に匹敵する可能性は出てくるだろう。

KC-46の開発進捗についてUSAFがコメント/E-8 JSTARSの近代化改修の試験が進む/アグスタウェストランドとノースロップグラマンがAW101の米軍採用に向けて協力/RRがT56エンジンの最新タイプを初飛行させる/ノースロップグラマンがSABRの開発状況などを公表/NATO AGSの見通しについて

KC-46の開発進捗についてUSAFがコメント

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-kc-46-tanker-programme-on-track-says-us-air-force-376640/

USAFのKC-46プログラムマネージャによると、KC-46空中給油機の開発は現在までのところ、スケジュールの21%まで進んでいるとのこと。部品の製造は、テールブームの外皮が作られたところで、まだまだ先は長い。

現在のところ最優先となっているのは、来年に予定されるCDRの準備であるが、2013年7月の予定は前倒しされる可能性もあるという。CDR通過から製造が本格化しするので、需要度は高い。

原型試作機の初飛行は2015年予定で、そのまた原型となる767-2Cの初飛行は、一年先行の2014年に予定。

問題は議会を通さずに強制的に予算縮小(Sequestration)される可能性があることで、当局は2013年1月に予定通り実施されれば影響は甚大なものになるだろう、との強い懸念を表明している。

http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/h23/pdf/chapter3.pdf

債務上限引き上げ法BCAに関連するもので、予算を強制的に一律削減という、役人にとっては世にも恐ろしい措置が発動する可能性あり、という話。賃金切り下げみたいなことを国家予算でやっちゃうのか。

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E-8 JSTARSの近代化改修の試験が進む

http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-progresses-e-8-joint-stars-modifications-376693/

8月に、レーダーの探知精度を大幅に向上させるというenhanced land and maritime (ELM)改修機が実戦展開している。

これに続く更に本格的な改修は、prime mission equipment diminishing manufacturing sources (PME DMS)改修と、JSTARS radar modernization (JSRM)と呼ばれるもので、前者は機載コンピュータとコンソール(ワークステーションと呼ばれる)の刷新(Linuxへの変更、ディスプレイの置き換え含む)によって情報処理能力を向上する改修、後者はレーダーのアップグレードを含む。メーカーでは、2014年前半には展開可能となる見通しを示した。
なお、JSRMは議会命令による予算措置で行われているから、そっち方面から横槍が入る心配はないそうだ。

3月のハンスコムAFBのプレスリリースから。
PME DMS改修後は27インチモニタになるみたい。

http://www.hanscom.af.mil/news/story.asp?id=123295363

JSTARS radar modernizationの方は、メーカーのPR動画があった。

http://www.youtube.com/watch?v=9LkJQbjfdtE

側視レーダー片面につき、戦闘機用AESAのアレイアンテナ20個分を並べるということしかわからんが。

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アグスタウェストランドとノースロップグラマンがAW101の米軍採用に向けて協力

http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-grumman-agustawestland-make-new-us-bids-with-aw101-376639/

アグスタウェストランドは、AW101を2つの入札に提案することで、ノースロップグラマンと協力することを明らかにした。一つは大統領含む要人輸送で、一度はVH-71として採用されたが、金がかかりすぎてキャンセルされた経緯がある。米軍側からかなり無茶な要求が出たために、開発が滞り予算もオーバーした、という話もあった。
しかし今回は、VH-71のときのチーム、LMとベルは一切関与していない。AWが直接開発するような感じかも。
当時はまだEH-101と呼ばれていた。

もう一つはCSAR。前身のCSAR-Xが2010年に正式キャンセルされ、USAFが目論んだUH-60系の指名発注も失敗したので、遅かれ早かれ再選定せざるを得ない状況にある。

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RRがT56エンジンの最新タイプを初飛行させる

http://www.flightglobal.com/news/articles/modified-rolls-royce-t56-makes-first-flight-376638/

旧アリソンのT56と言えば、P-3とC-130だけとっても数限りなく使用されてるようなイメージであるが、RRではシリーズ3.5と呼ばれる最新タイプを開発、C-130に搭載して初めて飛行試験を行ったとのこと。
このタイプは、圧縮機、タービンブレードと翼断面、圧縮機インレット部のハウジングとシールなどが変更されており、全体としては古い設計(1954年製造開始)のエンジンに新技術を適用した形の製品となって、燃料消費率などが改善される。

USAFではエンジン換装を決めていないものの、3年以内に燃料消費量を10%削減するという目標を掲げている。USAFが試算したところでは、既存のエンジンをシリーズ3.5に改修すると、長期的には20億ドルほどの経費節減になるとのこと。

RRは、世界で稼働しているT56エンジンの数を約6000基としている。USAFで使われているC-130Hは約220機。USNのP-3もまだ現役に残ってる。1割以上は米国で動いてる勘定か。

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ノースロップグラマンがSABRの開発状況などを公表

http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-grumman-to-pitch-new-aesa-radar-to-export-customers-376369/

ノースロップグラマンのF-16用AESAはSABR REPと呼ばれている。これはF-35のレーダー(APG-81)のアンテナアレイと、新開発のバックエンド部(レシーバ、エキサイタと情報処理系)を組み合わせたもので、安価ながらレーダーそのものの能力はAPG-81に近いとされる。またAPG-81から流用する利点としては、既に輸出承認を受けた部品として扱われる、というのがある。つまり輸出向け商品としては手続きが楽。

APG-81では情報処理を機体のコンピュータに投げるので、同様のバックエンド部は持たない。従って、SABRをF-35にレトロフィットするのは不可能。

これまでノースロップグラマンは、F-16用AESAの提案としては、レイセオンと対等の条件で競合関係にあるとの立場を貫いてきたものの、ここに来て自国内USAF向けは諦め気味というか、やや弱気な感じになっている。F-15とF/A-18E/FのAESAがレイセオンの独占状態になってるからというが、それはまあ前からなんで、外部からはわからん情報が入ってるのかもしれない。

5月9日、BAC-111をテストベッドとして空中試験を実施したとのこと。写真はAPG-81の試験の時のだと思う。

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NATO AGSの見通しについて

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-nato-ags-on-course-for-2015-flight-debut-376335/

ILAでのノースロップグラマン側の発表から。
NATO AGSは1996年からスタートしているが、調印は2012年5月。16年かかった。
しかしその後の進展は、まずまずといったところらしい。

2017年までに引き渡される5機のRQ-4のうち、最初の機体が到着するのは2015年9月が目標。Block 40に該当する仕様で、MP-RTIPレーダーを搭載。シシリーのNAS Sigoneraを拠点とする。
調達計画は、6月1日スタートで60ヶ月とされており、NATOが運用を開始するのはその後ということになる。

AGSに協力する欧州の企業は、13カ国から10社であり、ノースロップグラマンの主要パートナーとしてはEADSとSELEXガリレオが挙げられる

AGSへの資金拠出については、NATO加盟28カ国のうち26カ国となった。これに含まれない2カ国は英国とフランスで、いずれも独自の手段でAGSに相当する能力を整備する意向(最終的には英仏共同開発になると思われる)。

なお、AGSに署名した13カ国には、まだデンマークが含まれていない。まだ交渉中とのことで、もしデンマークも加わるとなれば、6機目の追加もあり得るとか。

時速100mphを目指す自転車Beastie/スケートボードのダウンヒル速度記録/ワールド・ウイングスーツ・リーグ第一戦

時速100mphを目指す自転車Beastie

http://www.gizmag.com/graeme-obree-100mph-bicycle/24073/

1990年代、英国のトラック競技を席巻しつつも不遇の日々を送ったサイクリストが再び記録に挑むという話。

グレアム・オブリー氏は1993年、1時間に32.06マイルという記録(いわゆるアワーレコード)を樹立した。記録走行に用いたのは自作の自転車オールド・フェイスフルで、子供用の自転車のフレームを使ったり、ベアリングを洗濯機から流用したなどの逸話が残る。特徴として、ハンドル位置がサドルに近く、そこに体重を預ける極端な姿勢で漕ぐものになっていた。このスタイルは通常のライディングポジションに比べて前面投影面積を減らすことに成功し、これを武器に1993年からトラック競技で多数のタイトルを獲得、フライング・スコッツマンという二つ名でも呼ばれるようになった。
一個人が風洞実験だの数値計算だのを抜きで成し遂げた成果としては、尋常ならざるものがある。

しかしその革新性は、保守的な競技主催者の不興を買うことになってしまい、オブリー氏の考案したライディングポジションは2度禁止され、1997年、競技生活には終止符が打たれた。このあたりの事情には、チームとドーピングがらみで揉めた話も出てくるが、精神的に相当参ってしまい、引退後は躁鬱に悩まされる事となる。その後はトレーニングについての書籍を執筆したりもしているようだ。

そして2012年、オブリー氏は47歳となり、100mphの速度記録を目指す挑戦の途上にある。
Beastieと名付けたこの自転車は、うつ伏せ姿勢で乗車する形態。Beastieもまた自ら製作したものであるが、透明なカウルはグラスゴー芸術学校に製作を依頼したという。透明なのは、自らが外を見るためというより、外から乗り手が見えるようにするためだそうだ。

http://www.obree.com/ihpva.php

車体そのものはほぼ完成していて、シュープレートと肘のプロテクターなどの調整だけ残っているとのこと。
メインのスプロケットは前方(胸の下あたり)にあるが、これはリンク機構を介し、足漕ぎの直線運動で回す。この形式では機械損失は増えるが、前後の直線運動にすることで、前面投影面積は更に減らせる。
空気抵抗を減らしていく方向を突き詰めると、最後にたどり着くのはこの形だろうなあ、というのはわかる。わかるが、フロントフォークにグリップが付いてたりして、もはや正気とは思えん代物になっているのも確かだ。車輪は16か18か。

当初、この自転車を用いた記録挑戦は、ネバダ州バトルマウンテンにて開催のWorld Human Powered Speed Challenge(今年は9月10日~15日で、オブリー氏の誕生日もこの期間に入っている)となる予定だったが、準備が間に合わず断念。

http://ihpva.org/home/

http://www.recumbents.com/wisil/whpsc2012/speedchallenge.htm

ここでは2009年の記録で、82.819mphというのが出てる。見た感じ、フルカウルのリカンベントが主流のようだ。
人力走行の絶対速度記録とはまた別の話になるが、もし100mphに達することができれば、空前の記録になるのは間違いない。

現在は英国内で代替地を探しているとの事。2マイルほどの舗装滑走路を使用する方向で調整中だが、これはバトルマウンテンの記録用コース(ウィキペではハイウェイ305の直線区間と書いてある)よりも条件は良くない。バトルマウンテンは標高が5000ftほどあるので空気抵抗が減るし、勾配もついている。工学系の学会誌?によるとその結果、エネルギー的には平地に対して156W程の得があるとされているそうだ。また舗装が記録向けであれば走行抵抗は更に減るだろうともコメントしている。

バトルマウンテンより不利になるにも関わらず、オブリー氏は英国内での記録挑戦について、むしろポジティブに捉えている。英国人が英国で作った自転車で記録に挑む場所は、やはり英国がふさわしい、ということだ。
普通に考えると、年齢的な面でも相当厳しい挑戦になることは明らかだが、常識が通用する人ではなさそうだ。

なお、現在のアワーレコードは仰向けのリカンベントで達成されており、記録は91km台と100kmに迫りつつある。素人がガレージで作って何とかなる時代ではなくなった。

http://www.gizmag.com/new-world-record-in-one-hour-cycling/19497/

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スケートボードのダウンヒル速度記録

http://www.gizmag.com/skateboard-world-speed-record/23043/

6月18日、カナダ、ケベック州のLes Éboulementsにおいて、スケートボードのダウンヒル速度記録が更新された。記録は80.74mph(129.94km/h)とある。Mischo Erbanという人で、チェコで生まれてオーストラリアに渡り、両親は共産政権が倒れてからチェコに戻ったけど本人はカナダに移住した、という経歴を持つ。
これの前の記録は2007年、ブラジルにおいてダグラス・ダ・シルバという人が達成した70.21mph(113km/h)だった。

更新幅は10mphと大きい。この記録を支えたのはRecon社の試作HUD…と書いてあるけど、一般的にはHMDの一種かなこれは。単眼タイプで、速度、時間、ナビゲーション情報をリアルタイムで表示可能なものとなっている。
スピードメーターの有無みたいなもんなので、あるとないとではルールが全然違う。記録は記録だが。

Recon社は情報表示可能なスキー用のゴーグルも開発している。これもHUDというか、HMDだ。

http://www.gizmag.com/recon-next-gen-in-goggle-display-technology-revealed/17582/

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もう一つ生身系の。

ワールド・ウイングスーツ・リーグ第一戦

http://www.gizmag.com/the-evolution-of-a-new-sport-the-world-wingsuit-league-begins/24043/

生身一つで滑空することを可能にしたウイングスーツ、その歴史は精々10年といったところ。超軽量機やハンググライダーに比べるとまたまだエクストリームスポーツの香りがする。

さて、ウイングスーツの競技団体であるワールド・ウイングスーツ・リーグの創設により、記念すべき第一回グランプリが開催予定となっている。エントリーしたのは16名で、うち2名は女性という。場所は中国湖南省、Tianmen Mountain (天門山)で、10月13日から14日にかけて開催予定。
ここでは昨年、Jeb Corliss氏がエキシビションフライトを行った。張家界天門山国家森林公園内に位置し、カルスト地形の物凄い岩山が立ち並ぶ。世界遺産にも指定されている。また天門山はアバターのロケ地としても有名で、ロープウェーで登れるみたい。
レッドブル的にも、エアロバティックスの飛行機で天門洞を通過するというチャレンジをやった縁があるところだ。
当時のピーター・ベゼネイのオンボード映像があった。もうずいぶんと昔の話になった。

http://www.youtube.com/watch?v=0h0O5AvGAo8

レースは、飛び出し台を設けた天門山の頂上からスタートし、レッドブルの熱気球(パイロン)で区切った1.2kmほどのコースを飛ぶ。標高差は2600ft。2ラウンド制で、各ラウンドは2回のフライトが含まれ、タイムを競う。1ラウンド終了時に8名が決勝に進む形式。
ゴールドメダルの賞金は米ドルで20000ドル、シルバーは10000ドル、ブロンズは5000ドル。これと別に最速タイムに対してもメダルが授与されるという。
この模様は世界にTV中継されることになっている。そもそも観客席とか無さそうね。

Jeb Corliss氏はこの道では最も有名な一人で、経験も豊富だ。有名なウイングスーツの映像にはほとんど出てると思う。

http://jebcorliss.net/

前も書いたような気がするが、ウイングスーツは地上で不細工なのが、難点といえば難点である。さながらカーテンに包まった子供のごとし。

A400Mの最初の引き渡しが遅延の見通し/PZL-ŚwidnikがSW-4 Soloヘリコプターの有人型を展示/ポーランドは空中給油機の入札準備を進める

A400Mの最初の引き渡しが遅延の見通し

http://www.flightglobal.com/news/articles/first-a400m-delivery-suffers-fresh-slip-376002/

A400Mの最初のカスタマーはフランス空軍で、MSN7に相当する機体がそのまま2013年3月31日(つまりQ1)までに引き渡されるという契約になっていたのだが、どうやらこれは困難となっている模様。

遅延の直接の原因となっているのは、ファーンボロ直前の7月のエンジントラブルの一件で、原因調査のためにfunction and reliability (F&R)試験の日程が滞る結果となってしまった。ユーロプロップインターナショナル(EPI)の発表によると、調査に300飛行時間ほど要しており、F&R試験は160飛行時間にわたって中断されたとのこと。現問題となったエンジン内の金属片、MSN6のTP400-D6エンジンのうち1基の内部で発見されたそれは、カバープレートのクラックによって生じたものであり、ギアボックスの隙間で孤立した位置にあるため、エンジンの運転に支障は無いものと判断されている。
しかしだからといって、無害として放置するわけにも行かず、結局現存するエンジンのカバープレートを全て交換する措置をとることが決まった。つまり、EASAの型式証明の上では、変更を加えたパーツの再承認が必須ということになり、そこまでの手続きが済んで初めてF&R再開が確定するわけだ。

これに最も影響を受けるのは、引き渡しの迫るフランス向けの1号機、MSN7。引き渡しの遅れは「わずか」であると述べられている一方、8月23日の初飛行予定は順延されたままで、新しい日付すら出てきてない状態にある。
しかしエアバスミリタリーでは、それ以降の引き渡しスケジュールには影響なしとしている。なお2013年の引き渡し予定は、フランス空軍向けが3機とトルコ空軍向けが1機。

‥というのが8月末の記事で、9月12日の記事ではF&Rの再開が11月見込みとの声明。ILAで言及されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-a400m-reliability-tests-to-resume-by-november-376424/

ILAでは飛行展示が再開された。記事の写真は120度バンクをキメて高速でフライパスする様子。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-a400m-makes-flying-return-to-show-circuit-376271/

この他ILAでは、ドイツの民間防衛団体Technisches Hilfswerk (THW)が、これまでの災害救援にかかった航空機のチャーター費用を示し、ドイツがA400Mを導入することに対する期待感を表明している。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-airbus-pitches-a400m-for-disaster-relief-role-376399/

THWの代表者によれば、中国の大地震(2008年の四川大地震だろう)における救援活動で、Il-78をチャーターして浄水装置を空輸。このときかかった費用は片道34万5000ドルだった。また、昨年の東日本大震災において、ボーイング767をチャーターしてSAR要員を送り込んだ際も、同様の費用がかかったが、チャーター会社が原子力災害を嫌ったため、別料金を請求されたという。
この組織の予算でA400Mを購入することは不可能だが、ドイツは2014年から53機を調達する予定となっている。これを利用できればロシアの輸送機をチャーターするよりずっと良い。

エアバスでは、A400Mは不整地滑走路から運用できることから人道援助などに向いた機体であるとしており、ドイツがその種の能力について熱心に調査しているとも述べている。

エアバス・コーポレート・ファウンデーションは、2008年から試験機を使って物資輸送などの災害救援活動を行っており、9度の災害に対して27回のフライトを実施しているとのこと。

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PZL-ŚwidnikがSW-4 Soloヘリコプターの有人型を展示

http://www.flightglobal.com/news/articles/pzl-swidnik-reveals-optionally-piloted-solo-rotorcraft-376154/

PZL-ŚwidnikのSW-4 Soloは、ポーランド空軍の訓練ヘリコプターSW-4を原型とした有人/無人ヘリコプターとなる。このメーカーは2010年からアグスタウェストランド傘下で、イタリア軍向けの提案も考えられているようだ。
Soloの初飛行は2013年6月までに実施予定だが、メーカーではもっと早く飛ばしたい意向を表明している。

PZL-Świdnikは昨年から無人型開発のデータ収集のため、有人機の試験飛行を繰り返している。一方、地上管制とフライトマネジメントといったソフトウェア関連はイタリアで開発する。

SW-4のエンジンはRR(旧アリソン系) M250 C20R/2(457shp)の単発。ベル206と同系のエンジンであり、性能も似通っているが、出力が大きい分は性能が高い。
用途としては軍用および法執行機関向けを想定しており、監視装置と通信装置を搭載、軽武装も可能。貨物輸送や救急搬送も考えられている。
無人ヘリコプターとしては、MQ-8CやK-MAXより更に小さい。

在来のSW-4との見た目の違いは、操縦席上方のカメラとか兵装搭載のためのスタブウイングなど。

http://www.flugzeuginfo.net/acdata_php/acdata_sw4_en.php

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ポーランドは空中給油機の入札準備を進める

http://www.flightglobal.com/news/articles/two-bidders-await-polish-tanker-battle-376149/

ポーランド国防相によると、同国は2機の空中給油機調達を予定しており、9月末に入札を開始する事になっている。入札に先立ってポーランド開催のイベント、MSPOエキシビションにおいて2チームが名乗りをあげた。
ポーランド側では、原文見れば判るけど空中給油と輸送の両用型を求めてる。

一方は、ポーランドの航空機整備大手企業Bumarと、イスラエル、IAIのタンカー転換担当部門Bedekが組んでおり、中古のボーイング767-200ERを改修して引き渡す計画を進めている。つまり改修をIAI、運用にまつわる様々な支援はBumarが担当するという形。
もう一方は、エアバスミリタリー。機種はA330 MRTTで、こちらはEADS傘下のPZL Warszawa-Okecie工場にて整備が可能と主張している。ここはC295を整備(オーバーホールまで)する施設として建設され、昨年11月に落成したもの。C295のオーバーホールについても、8月に1機の実績がある。

コンソーシアムに署名後34ヶ月以内の引き渡しと、最低20年の運用を想定している。

Type 26 Global Combat Shipの概要が公式発表/ACTUV フェーズ2でDARPAが一社と契約/CAAT水陸両用車

Type 26 Global Combat Shipの概要が公式発表

http://www.royalnavy.mod.uk/News-and-Events/Latest-News/2012/August/20/120820-Future-Type-26

http://www.mod.uk/DefenceInternet/DefenceNews/EquipmentAndLogistics/DesignUnveiledOfRoyalNavysFutureWarships.htm

英海軍の計画としては、2020年以降のType22/23の後継艦種ということになっているフネ。英国防省とBAEシステムズが共同で検討を進めていた。
今度のコンセプト図では、Type45の小型版の様な初期案よりも更に小排水量の中央船楼型となっており、米国のLCSに影響を受けた感じになった。ただしあれほどの高速艦ではなく、速度は28kt超、航続距離11000kmとされる(CODOGかな?)。モジュラー化設計も取り入れられるものの、任務に応じたモジュール換装まではできなそうだ。中身のコンセプト的にはMEKOに近いのかもしれない。
基準排水量は、当初案の6850tonから5400tonになり、全長は141mから148mになった。この案自体は、SDSRからコスト削減圧力が強まった2010年5月が初出のようだ。
この時、1隻あたり5億ポンドから、2億5千万~3億5千万ポンドに下げなければならなかったというから、えらい安物にされた感は否めず。

以前のは、どことなくType 23にも似ていたと思う。

http://www.defenseindustrydaily.com/Britains-Future-Frigates-06268/

建造開始まではまだ時間があり(造船所の方でも揉めてるみたい)、詳細仕様はこれから詰めるとのこと。特殊作戦や無人兵器運用への対応、シーセプターSAM、Type 23から引き継ぐ曳航ソナー、リンクスワイルドキャットとマーリンの搭載というあたりまでは確定としても、砲は中口径となってるから、BAEシステムズの新型127mm砲から76mm砲とかに変更されそう。

現在のType42とType22/23の世代は、防空艦の開発に失敗が続いて汎用艦との区切りがおかしくなってたので、今後のType45とType26である程度まとめられることにはなる。
ただし、これらの主力艦艇が十分な数だけ揃えられるかはまだ不透明だ。無理に下げても造ってみたら余計な出費が必要になっちゃったとかよくある話だし、既にType45はコスト高騰で隻数減らされてる。

詳しくは来月か10の《再来月》世艦で。

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ACTUV フェーズ2でDARPAが一社と契約

http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2012/08/16.aspx

http://www.gizmag.com/robot-sub-hunter/23759/

Anti-Submarine Warfare (ASW) Continuous Trail Unmanned Vessel (ACTUV) は、対潜作戦を実施可能なUSVとして計画されている。2011年4月に無料ゲームを配布して、そのアルゴリズムに関するデータ収集を行ったのが話題になった。
最初の段階にあたるフェーズ1には大手を含む数社が関係していたようだが、このほどDARPAが契約を締結したのはそのうちの1社、Science Applications International Corporation (SAIC) という企業。契約はフェーズ2から4までに該当し、設計から建造、デモンストレーションまでが含まれる。海上でのトライアルは2015年中頃を予定。

ACTUVの運用構想について、DARPAでは長距離(数千km単位)かつ長期間(数ヶ月単位)に及ぶディーゼル潜水艦の探知と追尾を第一に挙げている。
海事法に沿ってというから、必然的に相手国沿岸から遠く離れた距離から浅海域のディーゼル潜水艦を追跡する形になると思われる。浅海域でのASWについては、重視され始めたのが比較的最近だし、フネのハードウェアとしても、ある程度の速度と高度な自律制御を必要とするので、ハードルは高い。
それでもDARPAの見積では建造及び運用コストは普通に対潜艦艇を整備する金額の1/10程度で済むとしている。これは無人であるために、スタビライザの類や予備浮力を必要としないこと、さらに有人では危険と見なされる状況にも対応可能なことも加味されてるようだ。

あまりあてにならない想像図はアウトリガの張り出した3胴船となっており、底面に独立したソナーのポッドを有している。
寸法は不明だが、トップの航海用レーダーの長さからすると、少なくとも全長20~30mぐらいはありそうな感じ。いやもっとでかいか?

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CAAT水陸両用車

http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2012/06/26.aspx

http://www.gizmag.com/caat-disaster-relief-darpa/23828/

DARPAが開発中のCaptive Air Amphibious Transporter (CAAT)試作原型の映像が出ている。これはTactically Expandable Maritime Platform (TEMP)という軍事目的っぽい計画の一部に含まれるものではあるが、一応、(特に空輸と陸路、港湾すら使用できない状況でも)海上の船から陸への迅速な展開を可能とする人道支援目的のものということになっている。そのため、モジュラー化設計を取り入れ、負傷者などの輸送から物資の陸揚げなど多様なミッションに対応できる上、自航可能だからクレーンつきの普通のコンテナ船からも運用可能となる。
もちろん、そのような性能が水陸両用作戦においても有用であることは言うまでもない。

この試作車輌は20%スケールなのだが、全長は10m以上、重さは4tonあり、下手な重機よりごつい。足回りはキャタピラにフロートを取り付けたような構造となっており、水上では浮力を確保しながら水をかくことができる。映像を見たところ接地圧はかなり低く、旧陸軍の湿地車の末裔のように見えないこともない。喫水線が低く見えるものの、シュノーケルを備えているというから、波をかぶる程度なら支障なく行動できるだろう。

実用車輌となると全長50m超、重さ450tonとなり、ペイロードは数百ton単位。これ自体に貨物を積載することもできるし、状況が許せば筏の曳き船としても使う事ができる。
こうなるとLCACよりはるかに大きく、さすがに小回り利かなくないかと思わないでもないが、浮き桟橋がそのまま自走してくるようなもんだと思えば使い勝手は…いいのかなあ?

 

EADSがロシアと共同してCDE開発計画をロンチ/セスナ・ターボ182NXTがジェットA燃料での飛行をデモ/FanWing機の有人型は来年初飛行予定/ソーラーインパルス HB-SIAが欧州からアフリカへの飛行に成功/Glasair Sportsman GS-2の路上走行キットPD-2

EADSがロシアと共同してCDE開発計画をロンチ

http://www.flightglobal.com/news/articles/eads-launches-ambitious-plan-to-develop-detonation-engine-374527/

EADSはロシアのスコルコボ・ファウンデーションとのJVを設立し、CDEの開発計画をロンチした。このCDE、continuous detonation engineは、亜音速からMach 5あたりまでで作動するエアブリージングエンジンになっている。概念としてはPDEの更に先にあり、ものによって構造は異なるっぽい。

EADSの中では、フランスのMBDAが主体か。ロシア側はラブレンチェフ流体力学研究所。現在は予備的な研究の段階にある。

http://ftp.rta.nato.int/public//PubFullText/RTO/EN/RTO-EN-AVT-150///EN-AVT-150-08.pdf

単純な燃焼管を束ねる構造のよくあるPDEとは異なり、円筒状の燃焼室内をデトネーション波がぐるぐる回って、原理的には途切れることがない。一次元ではなく二次元流れになる。
1周したら1サイクルという数え方になるらしいが、PDEのような不連続な運転にはならないから、CDEに分類される。

米国のテキサス大アーリントン校で研究されてるのがこちらで、

http://arc.uta.edu/research/cde.htm

デトネーション波が斜めに進行するのがODWE、回転するのがRDWEとか書いてある。後者の方が、概念としては新しいようだ。
RDWEの試験映像では、酸素と水素の混合気を入れて2~3サイクル程度の連続運転が行われている。

PDEは、主に燃焼温度の高さから来る熱効率の高さと、構造が単純にできて極超音速の領域まで達する可能性に期待され続けてきた。しかし学術論文が最初に出たのは1940年、特許が取得されたのが1960年代、最初に実証エンジンが空中で運転したのが2008年のLong-EZ改造機と、その発達は非常にゆっくりとしたものだった。実験室レベルから実用に向けては、この10年で少し前進し始めたというところだ。70年かけて実証というのは、核融合炉級の進行速度と言えよう。

実証エンジンを積んで飛行したLong-EZ “BOREALIS”は現在、PDEともどもオハイオ州ライトパターソンAFBのR&Dギャラリーにて保管・展示されている。

http://www.nationalmuseum.af.mil/factsheets/factsheet.asp?id=12876

CDEでは脈動に関連する問題が軽減される可能性はあるが、実際に安定して連続運転できるかどうかが難しいところか。
デトネーション系のエンジンはインレットからどう繋がるのかよくわからんな。

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PDE搭載を計画した実験機としては、DARPAのBlack Swiftが有名だが2008年キャンセル済み。なのだがデトネーション機関系の研究開発はVulcanというのでまだ生きてるっぽい。

http://www.flightglobal.com/news/articles/darpa-plans-for-vulcan-engine-decision-by-december-331027/

2009年のこの記事の後、フェーズIが完了、フェーズII(実証エンジンのデモンストレーションを含む)が進行中らしい。ターボジェットエンジンとの組合せで航空用エンジンとする他にも、舶用や発電機用として、要するに在来のタービン機関との置き換えを狙うもの。
フェーズIIIに至ると、出力3~5MW級のエンジン試作が計画され、在来機関と比べて燃料消費率は20%ほど改善の見込みとなっている。
記事ではフェーズIVでターボジェットと結合とあるが、公式の方には書いてない。

http://www.darpa.mil/Our_Work/TTO/Programs/Vulcan.aspx

ここではPDEやCDEの技術をpressure gain combustion (PGC)技術、エンジンとしては定積燃焼エンジン、constant volume combustion engine (CVC)と呼んでいる。

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セスナ・ターボ182NXTがジェットA燃料での飛行をデモ

http://www.gizmag.com/cessna-turbo-182-nxt/23465/

7月23日のエアベンチャー2012において、セスナ・モデル182のエンジンをディーゼルに換装したセスナ・ターボ182NXTがデモフライトを実施した。
このディーゼルエンジンはサフランのSMA型で、出力は230馬力。

NXTの1時間あたりの燃料消費量は11ガロン。最大巡航速度155ktで、燃料タンク容量が87ガロンだから、航続距離は1025nm。経済的な比較をすると、航空ガソリンエンジン仕様よりも3~4割の燃料消費量削減となる。乗客4名、ペイロード1000ポンド、最大高度20000ft。
プロペラは回転数の低下に伴って変更され、ついでに騒音が低減される。またエンジンは最新のクリーンディーゼルに準じた仕様ということで、一酸化炭素や鉛化合物(Avgasは有鉛ガソリン)も出さない。

NXTって最初の発表は結構前だったような気がしたけど、まだ飛行試験中で、開発は完了してなかった模様。発売は来年となる見込みで、価格は515000米ドルとのこと。

メンテナンスコストとかはどうなのかね。

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FanWing機の有人型は来年初飛行予定

http://www.gizmag.com/piloted-fanwing-aircraft-debut/23398/

http://www.fanwing.com/news.htm

1999年から英国FanWing社が開発している航空機は、分厚い主翼の上面に、ローター回転軸と推力線が直交するスタイルの「プロペラ」を持つ。これは見た目が流しかけ水車というか、クロスフローファンを軸方向に延ばした格好になっている。吹き出し方向を制御することで容易に推力偏向でき、超短距離離陸などもお手の物というのが特徴。ただし十分な推力を確保しようとすると、異様に横長な形態になるみたい。
空力的には、ファンの支持構造がそのまま翼とも言い切れない微妙な代物なので(一応主翼だが)、揚抗比は低いらしい。が、オートローテーション可能というから見た目よりは伝統的な回転翼機に近いのかもしれない。

これまでサブスケール実験機(そのままでもUAVには使える)による試験とデモンストレーション飛行は行われてきたが、今年は有人型の製作をスタートさせる。既に風洞実験は終えていて、機体は8月から11月にかけて完成させ、来年のエアベンチャーにて初公開するという。

有人実験機の大きさは、テールブームまで入れて全長14m、ローターは直径75cm×長さ10m。機体重量350kgのMTOW600kgで、エンジンはRotax 912。飛行速度20~70kt、離陸滑走距離は15m。これらは計画値だが、なんかオートジャイロと大差なくないか?という気がしないでもない。

http://www.fanwing.com/fanwing%20manned%20aircraft%20project%202013.pdf

安全性も高いんだか低いんだかよくわからん。理論的にはローターが回っている限り失速しない事にはなるが、FODとかオートローテーションとか大丈夫なんじゃろか。

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ソーラーインパルス HB-SIAが欧州からアフリカへの飛行に成功

http://www.gizmag.com/solar-impulse-completes-intercontinental-journey/23442/

ソーラーインパルス HB-SIA太陽電池動力実験航空機は7月24日、2ヶ月ぶりに出発地のスイス、Payerneに着陸。欧州、スイスから北アフリカ、モロッコまでの往復、全行程6000kmの飛行を終えた。4カ国を通過し、3つのFAI記録申請を行ったそうだ。
経路の詳細はURL参照。

http://www.solarimpulse.com/en/tag/Crossing-Frontiers

飛行は8つのレグに分けて行われた(地中海を横断する際、強風のために1度引き返したのも含む)。それぞれ2週間程度の間隔をあけている。最後のレグ、マドリードからPayerneまでの飛行で搭乗したのはBertrand Piccard氏で、飛行中の平均速度63km/h、平均高度11800ftで、移動距離は615kmに達した。なおパイロットとしてはもう一人、André Borschberg氏も交代で操縦桿を握った。

搭載したリチウムイオン電池は400kg程の重量があり、夜間飛行に十分な電力を蓄えることができる仕様だったが、実際には防寒装備が無いため、深夜に着陸することもあった。

チームは次のステップを世界一周に定めており、20~25日で世界一周する計画を立てている。
使用する機体は現在製作中の2号機、HB-SIB。これはHB-SIAよりも大型・高性能化しており、2013年春に初飛行、2014年の4月から7月にかけて世界一周に挑む。

http://www.solarimpulse.com/en/airplane/hb-sib/

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Glasair Sportsman GS-2の路上走行キットPD-2

http://www.gizmag.com/plane-driven-pd-2-raodable-aircraft/23552/

これもエアベンチャーに出たもののようだ。

空飛ぶ自動車ものとしてはTerrafugiaがかなり実用に近付いているが、Trey Johnson氏率いるPlane Friven LLCは、主翼だけ何とかして機体はそのまんま滑走路まで自走できればいいじゃないか、という割り切った発想のもと、軽飛行機を公道走行可能とするキットを開発した。対応機種はGlasair Sportsman GS-2で、キットの名称はPD-2。
GS-2は元々主翼を折り畳める構造なので、自走可能な足回りにすれば事足りる。

http://www.glasairaviation.com/sportsmanspecs.html

これを装着すると、前輪をブレーキつきの操縦輪、後輪を動力輪とする逆三輪車となり、各種ランプなど交通法規に照らして必要とされる安全装置一式が追加される。機体のエンジンは使わないっぽい。
後輪(ポッドと呼ばれる)には50馬力ほどのエンジンが付いてる。元がキットプレーンだけに自重は700kg台であり、パワーウェイトレシオは初代VWビートル(1965)程度とのこと。

これでどこでも走り回れる、というのが一応の建前ではあるが、現実的なところで悪天候時の移動だとか空港までの移動といった限定的な利用がメインに

http://planedriven.com/

前型にあたるPD-1は、逆に後ろが二輪の固定装備となっていたが、PD-2ではポッドを取外して機内に収容することが可能となった(ただし後部の二人分の座席は潰れるので、便利になったかどうかは謎)。タンク1基分の燃料で200マイルほど走行できる。
価格は機体を除いて6万ドル以下になる予定。