2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ/F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成/2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる/F-15SAが2月20日に初飛行/ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

USAF関連。

*

2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ

今年はB-2配備20周年。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123336776

2月19日、ミズーリ州ホワイトマンAFBにおいて、B-2配備20周年を記念する式典が催されている。509th BW指揮官、Thomas Bussiere准将の訓辞によるとB-2は過去4つの武力紛争(後述)に投入されたとのこと。
また、4月1日はIOC獲得から16年の節目にあたり、12月17日はライト兄弟の初飛行の日(1908年)として有名だが、509th BWの前身、509th Composite Wingが1944年にユタ州Wendoverで編成された日でもあり、更にホワイトマンAFB所属の最初のB-2、スピリットオブミズーリが配備された日でもある。

B-2の起源を辿れば1979年スタートのATB計画にまで遡る。言うまでもなく当時は冷戦の最中であり、核戦力三本柱いわゆるトライアッドの一つを担うものとして考えられていた。今では核爆撃というオプションは現実味を失いつつあるものの、最初から高度のステルス性を与えられていることで、今なおB-2は最も厳重に防御された領域への侵攻すら可能で、核戦力としての意義を保持し続けている…と、少なくともUSAFの公式見解はそうなっている。

1980年代に設計、製造が進められ、1988年初公開。75機の製造が計画されていたが旧ソ連崩壊により21機に削減され、1機が事故で失われて20機となり現在に至る。機体名はスピリットオブアメリカとキティホークを除けば州名が付けられた。

戦略爆撃機として配備された後、最初の改修は通常兵器の運用能力の付与となった。そして1999年、コソボでNATOの作戦に参加。このときのソーティ数はNATO軍全体の1%に過ぎなかったが、目標の11%を攻撃したとされている。
2001年9月11日以降は、アフガニスタンで「テロとの戦い」が始まる。
2003年、「イラクの自由」作戦において開戦後最初の爆撃(“shock and awe” campaign)を行う。戦争全体では投下した爆弾の量は、100万ポンド以上に達した。
2012年、NATOの対リビア軍事行動である「オデッセイの夜明け」作戦に3機が参加。25時間かけて欧州へ進出し、航空機のシェルター破壊任務を遂行、2000ポンドJDAMを45発投下した。

 

同じ4月1日にはスピリットオブフロリダが7000飛行時間を記録。

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123343279

この機体は2007年5月に最初に5000飛行時間に達した機体でもあり、6000時間を記録したのは2010年1月で、これも最初だった。

 

最近の改修計画としては、衛星通信に関するものと自己防御システムに関するものがある。

前者は5月15日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10032612

Advanced Extremely High Frequency (AEHF)通信衛星に対応するための改修で、現時点では地上での実証試験が進められている状態。レドンドビーチのノースロップグラマンの施設で4月15日にデモンストレーションを行ったとある。
自社製のAESA型アンテナと海軍のマルチバンド端末により、AEHFの模擬ペイロードを使って行われた。当然ながら、メインはアンテナ。この改修については他にもいろいろなものが含まれてる件は前にも書いたので省略。

現用のMilstarの後継となるAEHF衛星は2001年から開発が始まっているが、まだ6機中2機しか軌道に上がってない。

http://en.wikipedia.org/wiki/Advanced_Extremely_High_Frequency

後者は2月14日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10021861

Defensive management System (DMS)と呼ばれ、現在TDフェーズ2という段階にある。ノースロップグラマンがシステムインテグレータとして受注しており、想定される脅威・環境に対抗可能なシステムを設計、アンテナやアビオニクスといったハード、ソフトをとりまとめてEMDフェーズに備えることになる。新規開発の技術を避けて、実証済みの技術を用いて開発リスクを下げると称している。

 

B-2が20年目を迎えた一方、それよりも更に以前の爆撃機もアップグレード改修が行われてる。

B-1の最新の改修については、

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123334294

337th TESが、Sustainment-Block 16(SB-16)と呼ばれる大規模な改修計画の実証試験を担当する。B-1の改修としては最も大がかりなものとされ、Fully Integrated Data Link(後方操縦席のデジタルアビオニクス部分を変更してLink 16に対応、Joint Range Extension Applications ProtocolによりBLOSでも運用可)とCentral Integrated Test System(後方操縦席のコンピュータ交換とカラーMFDの追加)、Vertical Situation Display Upgrade(前方操縦席(パイロット席とコパイロット席)の2台のモノクロディスプレイを4台のカラーMFDに交換)など。

肝の部分はデータリンクで他はそれを使うためのUIの改善といった感じ。Link 16およびJREAPなどの実証にはUHF無線とLink 16のネットワークが必要なため、その設備を準備するのに50万ドルかかったとある。
337th TESの実証試験は訓練計画にも関連しており、7th BWでの訓練が円滑に行えるよう、機材到着前から整備班含め準備しているとのこと。実証試験は4月からエドワーズAFBで開始予定。

実際にFIDL、VDSUの試験で改修機を飛行させた経験があるパイロットは、全く新しい機体だと思って扱わなければならないぐらい、劇的に変わった、と述べている。

Sniper ATP-SEがダイスAFBのB-1に装備される。

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123345084

4月15日付。ATP-SEはネットワーク関係が強化されたもので、Link 16相当の双方向データリンクに対応するため、地上との交信・情報共有が迅速化され、中継能力も備えるようになる。前世代型は1方向データリンクだったので、その違いは大きい。
またデータリンクの情報を保存できるというのも新しい機能で、訓練や分析に有用なデータが残せる。
ATP-SEは前世代のATPと互換性があり、ATPが搭載可能な機種全て(USAFではB-52、F-15E、A-10、
F-16)に搭載できることになっているが、予め訓練が開始されていたこともあってダイスAFBのB-1が最初に装備することになった。

 

2nd BWのB-52HにはSniper XR、AN/AAQ-33が装備される。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123341194

ATP-SEよりは旧式だが、従来はLGBを投弾するのに5分間程度、30から40のボタン操作を行う必要があったのに対して、わずか2、3秒で済むという。60年物の爆撃機でも金をかければここまでやれる。あと25年飛べるという調査結果もあるので、数は減らしつつもしぶとく飛び続ける公算。

またティンカーAFBでは7月から衛星通信システムCombat Network Communications Technology (CONECT)の装備がスタートする。

http://www.tinker.af.mil/news/story.asp?id=123353771

これまでB-52では飛行前にアップロードされたミッションデータに従って任務を遂行することしかできなかったが、CONECTの装備によって飛行中にミッションデータを入れ替えることが可能となる。よつて、より柔軟な運用ができることになる。試験はここ数年、エドワーズAFBで行われていた。
主体は衛星通信装備だが、乗員向けの装備としては、最新端末への更新、ノイズキャンセル型のヘッドセットやデジタルインタホンなども含まれてる。
ボーイングが主契約で金額は7600万ドル。この中にはメンテナンスほかの支援と、LRIPの製造が含まれる。LRIP 1は3月契約で8機分、LRIP 2は来年3月契約予定で10機分。全率生産は2015年1月契約見込みで10機分。FY2014での予算は30機分。

最初の改修は、ティンカーAFBでのprogrammed depot maintenanceに合わせて行われる。7月から翌年4月までというから約9ヶ月を要する。

*

F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成

http://www.edwards.af.mil/news/story.asp?id=123345680

4月24日付。

4月19日、エドワーズAFB所属のF-22 CTFにおいて、1000ソーティが記録された。機体は2001年10月に配備されたテールナンバー4007で、飛行しているF-22としては最も古い。AIM-9Mを初めて発射し、2度目にQF-4を撃墜した機体でもある。
着陸後、末尾の007にちなんでジェームス・ボンドのテーマで出迎えられたそうだ。
この飛行は、最新のソフトウェア改修であるインクリメント3.2Aでの初の試験飛行だったため、パイロットはボーイング社のテストパイロットだった。

*

2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123339451

米国航空界のアカデミー賞的なものであるが、MC-12とかえらく地味だなと思ったが、本機はUSAFとしてP-51以来のスピード採用であり、かつアフガニスタンで目覚ましい働き(記事によると710名のタリバン指導者、爆弾製造者、野戦指揮官の殺傷および逮捕に直接関わり、プロジェクトリバティ全体で3000名の反政府勢力の兵員を排除したとある)を見せた、というのがノミネート理由となっている。

ちなみに結果は3月12日に発表、5月9日に授賞式が行われ、

http://naa.aero/html/awards/index.cfm?cmsid=62

JPLの火星科学研究所とキュリオシティのチームが選ばれている。

*

F-15SAが2月20日に初飛行

http://www.wpafb.af.mil/news/story.asp?id=123339926

各国に改修が進んだ新造F-15が輸出されるようになって、何かUSAF本国仕様のF-15が相対的に性能低くなりそうな情勢であるが、2月にサウジアラビア向けF-15SAが初飛行している。この機体はF-15シリーズとしては試験機F-15 S/MTD以来のデジタルFBWを備えたものとなり、その他ハードポイント増設やIRST、スナイパーXR、AESAレーダーなど、イスラエル配慮で微妙にダウングレードされていたS型を、E型相当以上にアップグレードする形になる。

当面は3機体制で米国内での試験が続けられ、2015年から2019年にかけてデリバリ予定。

*

ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123352839

ドイツ駐留の52nd FWは、F-16とA-10を運用してきて、隷下の81st FW(シュパンダーレム基地)にはA-10が配備されていた。この部隊は71年の歴史がある飛行隊であったが、6月18日をもって解散となり、A-10を運用する部隊は無くなった。これは欧州でのA-10の歴史が終わることも意味する。

欧州のA-10は、最大で6個SQが配備されていた。押し寄せるワルシャワ条約機構軍の戦車軍団をちぎっては投げちぎっては投げ(最後は核でry)いった情景がよくイメージされていたものである。

最後のソーティの様子が公式動画であった。

http://www.youtube.com/watch?v=yNUhA_qffqM

*

英国内でニムロッド早期退役の余震が続く/英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集/RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする/RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

英国内でニムロッド早期退役の余震が続く

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-uk-left-exposed-by-nimrod-cancellation-report-says-376998/

SDSRの結果、ニムロッドMR.2は2010年3月に退役。MRA.4のキャンセルとともに、RAFの長距離海洋哨戒能力は、事実上消滅した。ことにMRA.4に関しては、開発が長期に及び、40億英ポンドという巨費を投じて、翌年には戦力化というところまで進んだ状態からのキャンセルだったため、様々な論議を呼んだ。
後に、あるMoDの官僚は、哨戒機に関する部分は、SDSRの判断の中でも最も難しい決定だったと述べたそうだが、この決定を巡っては今も議論が続いている。

9月19日、英国の下院軍事委員会は、長距離哨戒能力の欠如したままでやっていけるかどうかを評価し、Future Maritime Surveillance reportという文書にまとめた。この中には哨戒能力を再整備する選択肢の一つとして、MR.2の現役復帰に関する2011年の研究評価も織り込まれていたという。

英政府の公式見解としては、短~中期的にはASWおよびMPAの不在によるリスクは、許容できる範囲であり、それらが必要とされるような(軍事的な)圧力も受けていないというものだった。
下院軍事委員会は、MoDの主張を引用する形で、この結論に対して疑問を呈した。リスクが突発的に増大した場合の対応や、哨戒能力の欠如あるいは不足によって、中期的に状況が悪化する可能性を取り上げている。英国が横腹を晒すことにならないよう、より注意深く継続的にレビューを続けるべきであるとした。

2011年の研究においては、UAV、監視衛星、C295 MPAもしくはP-8Aのような有人機による代替手段を検討していたが、これらはSDSRに含まれず、次の10年における調達計画に入っていない。ということで、2015年の次のSDSRまで棚上げ、ということになっているのが現状。
最終的には哨戒機は不要としながら、それらの欠如に対するリスクも認めているのは具合が悪いというのが結論で、SDSRを進めた連立政権にとっては、あまりうれしくない内容となっている。

この他に出てるのが、ニムロッドの搭乗員の技量維持に関するコストとその後の代替手段の話。
技量維持の計画は、Speedcornと呼ばれており、2012年にはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国へ、合計33名の人員を派遣した。これにかかるコストは年間320万英ポンドで、同計画では2019年まで実施することが定められている。しかしこれが役に立つ(ニムロッドを現役復帰させる)可能性があるのは、現実的にはあと5年程度のため、委員会とエアバスミリタリーは、その間に次のMPAを導入すべきであるとの勧告を出している。

一口に代替手段と言ってもニムロッドに匹敵するような多目的プラットフォームと、単なるMPAとでは意味合いが異なり、前者であれば簡単には準備できない(事実上、替えが効かないと言いたいっぽい)が、後者であれば出来合の機体で間に合わせることができる、と述べたのは、統合/航空作戦能力/トランスフォーメーション担当の空軍少将。

有人のMPAとしては、まずP-8Aが挙げられるが、これは1機1億7000万ドルほどで非常に高価である。この金額はC295 MPA、4機分に相当する(もちろん能力は劣るが現実的)。
これ以外には、センチネルR.1Aの転用、RAFの保有するA400Mもしくはボイジャーにセンサを追加する案、またサーブ2000MPAソードフィッシュなど。いずれにせよ、次のSDSRでは検討する必要がある。

最後に登場しているのはスコットランド国民党のアンガス・ロバートソン議員。ニムロッドが長らく活動拠点としてきたRAFキンロスに関わりの深い人物で、MRA.4の退役について強く批判。アドミラル・クズネツォフが領海付近を航行した一件を取り上げ、英国政府がこの(哨戒機不在の)状況を放置するなら、海洋国家として横腹を晒し続けるのは認められぬ故スコットランド政府が防衛政策としてやるべきだとまで言っている。
実際に可能かどうかは知らないが、制度上は一応アリみたい?
ロシアでいくつかの市が原潜のスポンサーになった話を思い出した。

*

英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-mod-seeks-casevac-service-provider-for-kenyan-exercises-377310/

10月4日、英国MoDはケニア国内でのcasualty evacuation (Casevac)活動を支援する民間企業の募集について説明を行った。これはNanyuki基地に駐留する英陸軍訓練部隊、British Army Training Unit in Kenya (BATUK)を支援するための航空機と人員を投入するためのもので、予算は25ヶ月間で900万英ポンドを上限としている。

Casevacは読んで字のごとく、負傷者を迅速に搬送するための活動を指しており、緊急事態に際しては、10分から4時間で対応することが求められる。機体の要求としては、少なくともストレッチャー1名分と医療担当1名を乗せて、300kmほど輸送でき、活動する地域は標高8200ft以下、天候と時刻を問わず、飛行場のない不整地でも離着陸できることとある。また2つの分離した演習地域を同時にカバーできることも求められる。

Nanyuki基地では、1年間に6回程度、英陸軍の大規模な演習が行われており、駐留する人員は300~1700名と変動がある。1回の演習は概ね6週間続く。これらの演習は、アフガニスタンへの派遣に備えた内容となっている。写真はケニアでのプーマHC.1。

Casevac以外の副次的な任務としては、実弾演習後の後始末や写真撮影、演習そのものの支援といったものが含まれ、また、すべての活動はケニアの民間航空当局の定めた枠内で行われることになっている

*

RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-reveals-pilot-levels-on-reaper-uav-unit-377263/

英国議会においてMQ-9の配備状況に関する質問が出て、これに回答する形で人員数などが明らかにされている。これによるとRAFでは31名がMQ-9の操縦資格を有しており、2012年10月から2012年9月までに16名が訓練を受けるという。

RAFのMQ-9は39Aqnに所属し、カンダハルに展開中。これらは2007年10月以来、米国のネバダ州クリーチAFBからRAFからの派遣人員によって遠隔操作されている。1機の操作には、パイロット、センサオペレータ、ミッションコーディネータ兼映像解析要員の3名がつく。この他に機体を取り扱うごく少数が現地のカンダハルに展開している。

今後は、リンカンシャーのRAFウォディントンに新たな地上管制局を設置し、機体を10機まで増強する計画がある。

活動状況については、6月19日までの3年間で176回の攻撃を実施した。標準的な装備は500ポンドのぺイヴウェイII×2とAGM-114×4。
偵察任務では、1週間あたり平均250時間ほどの映像を伝送してくるとのこと。

*

RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/uks-first-airseeker-on-track-for-2013-delivery-says-mod-376813/

微妙にニムロッド退役と関連。
RAFではSIGINT機として、51SqnがニムロッドR.1を運用していたが、これは2011年をもって退役となった。その後継機として選ばれたのが、USAFで余剰となったKC-135を改修、RC-135Wリベットジョイント相当仕様にするという案で、L-3コミュニケーションズが受注して3機の改修作業が進行中となっている。
改修作業はUSAF側でも支援し、テキサス州グリーンヴィルにて2011年1月からスタートした。

耐用年数を延ばすために機体外皮を交換したほか、給油ブームを撤去し、逆に空中給油を受けられるようにするためのリセクタプルを追加する。またグラスコクピット化と、後部客席部に機器ラック追加、電線の全交換などが実施される。
2013年早々から地上試験、飛行試験が開始予定で、引き渡しは同年内を目指す。

L-3コミュニケーションズってNZ向けのP-3でやらかしてたが大丈夫か。

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備/バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続/ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告/EADSとBAEシステムズの合併交渉

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-mbda-germany-to-test-defensive-laser-weapon-376474/

MBDAドイツは、ドイツと欧州国防省から一部の資金を受けつつ、対IEDおよび砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃用の、レーザ兵器開発とデモンストレーションを行ってきた。
最初の試験は2008年に行われた。複数の発振器を束ねる設計が特徴で、5kWレーザ発振器を2基使った2011年の初期の試験では、有効射程2.3km以上を達成した。

現在試験されているのは、より実用型に近い10kWレーザを4基束ねたシステムで、2012年初頭に最初の試射を行った。この時の結果は、迫撃砲弾の弾殻と鋼板を2~3秒で貫通しており、レーザ光の性質が良好で、個々のビームの損失の低さを実証できたとされている。
これに続いて10月には、砲弾を模した飛行物体を連続的に迎撃する試験を実施予定。

計画では、IEDを100m程度の距離から破壊するシステムを3年以内に、対砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃システムは24ヶ月で実用化することになっている。後者は20kWレーザ×5基のシステムとなり、有効射程は最大3km。

その後の発達型としては、UAV迎撃および野戦滑走路の防衛システム(航空機の離着陸時を狙うMANPADSに対処する)というのが挙げられている。
基本的に地上設置型のシステムとして考えられており、航空機搭載については研究もされてないとのこと。

*

バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-cassidian-plans-further-tests-with-barracuda-uav-376416/

バラクーダUCAVデモンストレータは、そのまま実用型に発達する可能性があんまり無くなっているものの、UAV技術の開発には重宝されてる模様で、今年は6月から7月にかけ、カナダのグースベイにおいて飛行実験を行った。有人機のセンサとなって連携するといった内容が伝えられており、バラクーダの活動はここで一区切りとなった。

Cassidianでは次の2~3年についての議論を行っているところで、より多くの航空機と連携し、複雑な任務へ対応させるための計画に期待しており、それに沿って実際にバラクーダを飛ばすのは、2014年頃と予想される。実現すれば、一連の飛行実験としては4度目。
APARの搭載により、移動目標の探知と追跡が可能になれば、更に多くの実験・実証が可能になる。

欧州のUAV実験機は、1990年代から2000年代にかけて各国で同時多発的に現れたものの、開発リソースが集中せずにその後の開発が滞り、立ち消えとなったものが多い。バラクーダもそうした世代に属する一機種だが、技術開発や装備の評価のために、もうしばらく生き残ることになるのかもしれない。

*

ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-air-force-details-success-during-red-flag-exercise-376410/

ILAにてレッドフラッグ演習について報告する講演があり、数字が幾つか出ている。

JG74からの派遣人員は約150名でパイロットは10名(ユーロファイターは8機)。

ドイツ空軍の指揮したある防空任務では、友軍全体として38:1というスコアを挙げた。これはレッドフラッグ演習の成績としては記録的な数字である。

ユーロファイターの模擬ミサイル発射は18回で、命中と判定されたのは16回だった。この中には少なくとも1回のF-22撃墜が含まれる。

ドイツ空軍のソーティ数は、212回計画されたうち、208回が実施された。

2014年のレッドフラッグにも参加予定となっている。

 

やや関連で、ドイツとユーロファイターの関わりについての記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-luftwaffe-advances-eurofighter-experience-376247/

ILAにはJG31所属の2機が参加し、1機はCassidianのテストパイロットによるデモンストレーションフライトを実施したそうだ。
ドイツ国内では、Cassidianにて直接ユーロファイターに関わる人数は約3000名、間接的に関わる人数は、22000名ほどになるという。合計すると25000名で、これは欧州全体でユーロファイターに関わる人数(100000名)の、約1/4に相当。ドイツの税収にも大きく貢献する内容と言える。

*

EADSとBAEシステムズの合併交渉

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-systems-eads-in-merger-talks-to-create-100bn-turnover-business-376423/

話がでかすぎて先が読みにくいが、EADSとBAEシステムズの合併交渉が持ち上がっているらしい。9月12日にロンドン証券取引所のプレスリリースで、BAEシステムズ側から明らかにされた。
単純に2011年実績の2社の年間取引高を足すと、958億ドル。うち、航空宇宙分野に限っても740億ドルと、ボーイングのそれ(2011年実績は687億ドル)を凌ぐ。

BAEシステムズは2000年代から米国向けの事業に軸足を移しており、合併相手のEADSとしては、米国進出の強力な基盤を手に入れることになる。

欧州と英国の防衛産業は近付いたり離れたりを繰り返してきた印象があり、BAEシステムズは、ユーロファイターやMBDAとの事業で長期的な協力関係にあって、欧州企業との合併を模索しつつも、EADSが成立した2000年以降は英国内の事業で競合することになったし、2006年にはエアバス株を手放したこともあった。
合併が成立すれば、長年の確執も解消することにはなる。

BAEシステムズが40%、EADSが60%の株式を保有する計画(英仏独の各国家が保有する分は別の処理が必要らしい)で、両社が存続する二元上場会社になるとのこと。見かけ上は比較的緩いグループ企業化といった感じだがよくわからん。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%85%83%E4%B8%8A%E5%A0%B4%E4%BC%9A%E7%A4%BE

英国のM&Aは、テイクオーバー・パネルという民間機関が取り仕切っており、このケースでは10月10日までに当事者の両方または一方が意図を公表するよう求めた。EADS側の結論が出なければ、BAE側から期限延長を申し出るとしている。

野村資本市場研究所による説明。

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2008/2008aut20.html

エアバスがEADSの完全子会社であることなどから、背景はかなり複雑。株主の反応は総じて冷たく、翌13日の株価はEADSは9%、BAEシステムズが8%下げたと報じられている

http://www.flightglobal.com/news/articles/lukewarm-response-from-markets-to-eads-bae-merger-plans-376478/

BAEシステムズ側の問題として挙げられているのが、米国の事業部門を分離しなければM&Aが認められない、となった場合、大きな収益源を手放すことになってしまう上、米国市場への進出どころじゃなくなる、というもの。
米国内に資産が存在する以上は、外国投資委員会CFIUSが審査することになる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-eads-merger-could-face-us-regulatory-hurdles-376431/

この記事では米国で合併したサンダーズとユナイテッド・ディフェンスという2社についてクローズアップしている。
特に前者は、電子戦機器での大きな成功(F-35のALR-94を含む)に繋がっている。合併した2000年当時、欧州の企業はその分野で締め出されていた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/eads-bae-tie-up-unlikely-to-affect-airbus-business-376429/

合併後の従業員数は220000人。BAEシステムズはEADS以前、欧州の企業との合併を模索した時期があった。1998年にDASAとの合併交渉も行っている。
EADSの意図として、エアバスへの依存を減らし、防衛産業の方を強化したい節があるため、エアバスの事業にはあまり影響がないとの見方もある。

そして、もし合併が成立したら、という考察記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/weighing-the-defence-implications-of-bae-eads-consolidation-376455/

BAEシステムズがEADSと一体化するとなれば、英国を含む欧州の防衛産業がいよいよ一つのものになることを意味する。ダッソーの株式も46.32%はEADSが保有してたりするし、全体的には一つ穴の狢といった情勢だからだ。唯一の例外となるのは電子機器系で、イタリアのSELEXガリレオが残る。

合併後、戦闘機に関しては2機種が競合することになるので、企業戦略として難しい選択になるものの、どちらかが選定されれば勝ちという見方も可能だ。
また、JSF計画への関与はBAEシステムズ単独のまま推移すると予想される。ユーロファイターなどに関しても、現状維持のまま事業継続される可能性が高い。

現世代の製品はこのまま行くとして、長期的に利点となり得るのは次世代戦闘機の開発ということになる。
無人機にせよ何にせよ、開発リソースを1機種に集中させることができ、EADSのUAVデモンストレータで得られた技術も使える。取引高がそのまんま技術力に比例するわけじゃないが、ボーイング等に匹敵する可能性は出てくるだろう。

南アフリカ向け提案のベル407AH/RUAGが南アフリカにDo228NGを提案/南アフリカ空軍にグリペン最後の4機が正式引き渡し/スイスとスウェーデンはグリペン調達計画を進める

もうちょっとAADの記事を。

ベル407AH

http://wwwflightglobal.com/news/articles/aad-bell-pitches-armed-407ah-to-african-market-376803/

ベルがAADに持ち込んだ主力商品は2つで、一つはUH-1Hの近代化改修プラン、ヒューイII、もう一つはベル407の武装型、407AHとなっている。
前者についてはエンジン換装が目玉で、ハネウェルT53-L-703に変更、機体はリビルドというもの。
後者は軽武装偵察ヘリコプターとしての提案になっており、南アフリカの企業と協力して、南アフリカ軍のニーズに合わせて設計されているという。写真の407AHでは、M260無誘導2.75インチロケット弾ポッドと、M134ミニガンが搭載され、各種の自己防御装置とセンサを備える。

*

RUAGが南アフリカにDo228NGを提案

http://www.flightglobal.com/news/articles/aad-ruag-offers-south-africa-do-228ng-deal-376796/

南アフリカ空軍(SAAF)では現在、洋上哨戒機としてC-47/DC-3を運用している。言うまでもなく恐ろしく古い機体を使ってるので、RUAGはこれの代替としてDo228NGを提案している。その中にはリース契約というオプションも含まれているようだ。

具体的な話はあまり出ていないものの、初期の訓練や部品供給が一通り済んだら、南アフリカ地元企業との緊密なパートナーシップによって運用を支える体制とすることを謳う。
南アフリカの業界にとっては悪い話ではないだろう。

基本的な条件は、年間1000飛行時間で10年間の取引としている。

http://www.dc-3.co.za/saaf-daks.html

USAFで余剰になってRAFで余剰になった機体なのか。

*

南アフリカ空軍にグリペン最後の4機が正式引き渡し

http://www.flightglobal.com/news/articles/aad-south-africa-receives-last-four-gripens-376804/

サーブの南アフリカ現地法人の社長が発表している。
南アフリカ向けのグリペンC/D、合計26機のうち、最後の4機が正式に引き渡されたとのこと。これらの機体は、今年の初めに北欧諸国の合同軍事演習Lion Effortに、南アフリカ空軍(SAAF)パイロットが搭乗して参加していたもの。

SAAF向けのグリペンの中でも、これらは最後になっただけに、最も新しい装備を有するタイプとなっている。主要なものは、南アフリカ/ブラジル共同開発のA-Darter AAM、タレスのデジタル統合偵察ポッドおよびHMDといったもののインテグレーションで、HMDについてはグリペンとしては初とされる。
次の標準仕様はウエポンシステム20と呼ばれるもので、順次アップデート予定。

記事中の写真は、AAD会期中にデモフライトを実施したグリペンD。

またC/D型の完納を受けて、更なる発達型の導入、またはアップグレードについても言及された。グリペンE/Fと呼ばれるタイプになるが、こちらはスイスが8月末に開発参加することでスウェーデンと合意している。南アフリカとして計画に加わる可能性も含め、今後の検討事項となるらしい。

*

スイスの方の記事はこっち。

スイスとスウェーデンはグリペン調達計画を進める

http://www.flightglobal.com/news/articles/sweden-switzerland-cement-gripen-pact-375879/

スイスでは、F-5後継機としてグリペンの導入を巡る議論が政治問題化しており、下手をすると国民投票(で否決される可能性もある)までこじれる可能性を残しているものの、8月28日、両国はグリペンE/Fに関する枠組み合意に署名して、早々と手を打った形になっている。
スイス国防省は、2014年にも最初の22機分の取引に漕ぎ着ける見通しを示した。

この場合の引き渡しは2018年Q2からとなり、2019年までにE/F型合わせて11機となる予定。
一方、F-5の退役に間に合わない期間は、ストップギャップとしてC型×8機、D型×3機をスウェーデンからリースする契約も提案中で、これは2016年から2020年まで、年間4400万スイスフランという金額が提示されてる。

次のバッチからの機数についてはまだはっきりしてないが、スイス政府は2013年度予算に計上する意向であり、順調なら9月20日以降のどこかで決定される。この分が40~60機とされているので、調達機数は62機から最大で82機という計算が成り立つ。

*

A-Darterは、V3E Agile Darterとも呼ばれる第5世代SRAAMで、AIM-9のステーションにそのまま搭載できる。
IRIS-T同様のTVC付きIR画像誘導方式であるが、もっと経済的であるということになっている。
1995年からデネルが中心となって計画していたが、資金不足で開発は滞った。2006年にブラジルが計画に加わって、今年の初めにグリペンからの試射を成功させており、2013年から製造を開始する計画。
派生型として、SAAF向けにレーダー誘導のBVRAAM型、B-Darterと、ブラジル向けに地上発射型のA-Darterが考えられている。後者はランチャーを新規開発する他、ブースタを追加する必要あり。

http://www.airforce-technology.com/projects/a-darter-air-to-air-missile/

南アフリカではホークにも搭載する予定で、ブラジルでは現用のF-5A/B/E/F、将来のF-X2でも採用予定。

ハネウェルがイスラエル向けM346のエンジンを受注/イラク空軍向けC-130Jが初飛行/RNZAFはP-3K2の乗員訓練を開始する/ボーイングがF-15KのMROセンター建設を発表

ハネウェルがイスラエル向けM346のエンジンを受注

http://www.flightglobal.com/news/articles/honeywell-receives-israeli-order-for-m-346-engines-376125/

ハネウェルが、イスラエル(イスラエル国防省、IMOD)向けのM346に搭載するエンジンF124-GA-200を受注したと発表している。金額は7億3500万ドルとされるが、基数は明らかにされていない。この契約にはスペアパーツとメンテナンスサポートが含まれる。

プレスリリースによれば、F124/F125シリーズの累計飛行時間は70万時間以上に達しているとのこと。
TFE731の軍用タイプとして始まった同型式のエンジンは、1979年に初めて運転された。AIDC経国に搭載されたのが始まりで、以後、大口の採用としてはホーク/T-45でアドーアに負けてたが、M346でやや復活した。
推力倍増計画(F125X)も存在したが、実現はしないだろう。12000ポンド級双発の経国とか胸厚。

イスラエルのM346に関するまとめがあったのでついでに。

ttp://www.flightglobal.com/news/articles/israeli-firms-to-support-but-not-assemble-nations-m-346-trainers-376324/

結局のところ、イスラエル国内での組立というのが無くなって、1億ドルほどのオフセット契約で決着する模様。

M-346×30機について、イスラエル国内で面倒見るのはIAIとエルビットのJV、TORシステムズ。金額は全部足して6億300万ドルでIMOUと合意。

イタリア側は、ガルフストリームG550 AEW&Cを2機、地上管制系と兵站支援などのパッケージ合わせて7億5000万ドル。

またイタリアのTelespazioとIAIが、監視衛星の共同開発および製造で合意している。金額1億8200万ドル。

イスラエルの企業の分担をまとめると、IAIはAEW&C機と監視衛星、エルビットはM-346の運用と若干のアビオニクス機器の供給という感じらしい。

http://www.ibtimes.com/prnews/20120910/tor-the-elbit-systems-iai-partnership-and-israeli-ministry.htm

TORはエルビットの方が主体っぽい。訓練にまつわるインフラ整備は3年で1億1000万ドル、20年分の運用経費3億1000万ドル。

*

イラク空軍向けC-130Jが初飛行

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-iraqs-first-c-130j-makes-flight-debut-376108/

9月5日のLMの発表によると8月中旬、マリエッタ工場でイラク向けC-130Jの1号機が初飛行したとのこと。
この機体は今年後半に引き渡し予定で、ストレッチ型のC-130J-30となっており、発注数は6機。軍用および人道支援用途で運用される。

イラク空軍は既にC-130Eのリファービッシュ機を3機運用している。これらは1963年から1964年にかけてUSAFに配備された機体だった。

*

RNZAFはP-3K2の乗員訓練を開始する

http://www.flightglobal.com/news/articles/nz-conducts-training-sorties-with-upgraded-orion-376013/

王立ニュージーランド空軍のP-3K2は、L-3コミュニケーションズがアップグレード改修を施した近代化改修機で、航法および通信機器を一新、グラスコクピット化され、新しいセンサシステムとミッションシステムを有する。
ニュージーランド政府は2010年の防衛白書にて、現用のP-3とC-130の扱いについて触れた。これによれば、2030年まで運用してその後は無人機という選択肢を含めて選定するとされている。

P-3K2改修については、2004年10月に2億9100万米ドルで契約し、改修原型機となるs/n:NZ4204は、2005年9月からテキサス州グリーンヴィルにて改修を受けた。これは2008年後半にニュージーランドへ戻される予定だったが、改修に伴うトラブルが複数発生した。アビオニクス入れ替えとグラスコクピット化の際の飛行制御にまつわる問題の他、主翼ストラップのファスナに不良が発見された2010年には、半年もの飛行停止措置がとられたりしている。結局、RNZAFがこれを受領したのは3年遅れの2011年5月になった。

この9月下旬には新たに2機が引き渡し予定で、うち1機が受入試験中となっている。試験・評価計画においては、まずSARと海洋監視任務に関する能力を確認する。
訓練任務は、オークランド近郊のRNZAF Whenuapaiを中心に行われる。

*

ボーイングがF-15KのMROセンター建設を発表

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-to-set-up-f-15k-mro-centre-in-s-korea-376031/

ボーイングは、F-15KのMRO(maintenance, repair and overhaul)センターを韓国の大邱に建設すると発表した。大邱空軍基地に隣接する経済特区に建てられるようだ。

次のF-X IIIに向けて外堀を埋めてきてるが、既に韓国のF-15Kは60機ほどの勢力になっているので、これらの稼働率を高めるというだけでも意義は大きいと言える。

プーチン大統領が軍事技術(兵器)の輸入についてコメント/ロシアは外国製のMBTは導入しない/ロシア海軍装備の開発、潜水艦などの話題/BTR-82Aの訓練の様子/S-400の訓練の様子/ソ連映画ポスター集

プーチン大統領が軍事技術(兵器)の輸入についてコメント

http://en.rian.ru/mlitary_news/20120831/175542547.html

8月31日、プーチン大統領はロシア国内での安全保障会議の席で、ロシアが手っ取り早く導入可能な兵器と軍事技術が外国製であったことについて、外国との協力は可能であり、恥ずべきことではないと述べている。が、その一方、自国の軍需工場が輸入品のノックダウン生産しかできなかった状況について、受け容れ難いものだったとも述べた。これについては、もっと政府の調達担当部門が効果的に動くべきとしている。

また、過去30年にわたって軍需産業が現代化する機会を幾度か逸したことを指摘し、今度こそ現代化の成果を上げなければならないとした。このとき、同様のことを1930年代にソ連が成し遂げたという例を引き合いに出している。技術移転も伴っていたから、状況は現在に近いといえば近い。でもその後大粛正でまた停滞に入りかけたような気もするが、歴史的事実として戦争には勝ったからいいのか。

この発言に関連して大統領は、軍需産業のうち、もっとも民間投資を必要とする分野をピックアップするためのデータベース開設を提案したとのこと。

*

ロシアは外国製のMBTは導入しない

http://en.rian.ru/mlitary_news/20120824/175409016.html

こちらも8月31日、ロシアの軍産複合体を担当するドミトリー・ロゴージン副首相は、ロシアの機甲部隊装備(装甲車輌)について、大規模な輸入は計画していないと述べた。
外国製の装甲車輌の導入については、評価するための少数の輸入や、ロシアで開発が遅れている分野の車輌については共同生産を行うとした。これは同じ週に、イタリアのチェンタウロ装輪自走砲が初めて陸揚げされたことを踏まえてのコメントとされている。
オットー・メララ側の発表では、最初の2輌はそれぞれ105mm砲搭載と125mm砲搭載であり、モスクワ近郊で試験中とされる。

ロシアとしてはもちろん、主要装備として外国の戦車を買うなどあり得ぬ、というのが公式な立場となるが、そもそも西欧諸国は経済危機のただ中にあってさえ、最新型MBTを売ってくれるところなどなかった、という事情もボロリと漏らしている。
この御方もプーチンに名指し批判されて大変だな…

*

ロシア海軍装備の開発、潜水艦などの話題

・ロシア版イージス戦闘システム

http://en.rian.ru/mlitary_news/20120831/175538466.html

ユナイテッド・シップビルディングの防衛部門を率いるAnatoly Shlemovは、ロシア国内で米国のイージス戦闘システムに相当するシステムの開発を既に受注していると述べたが、詳細についてのコメントは拒否した。
開発しているのはPVO Almaz-Anteiとされる。

防空戦闘はイージス戦闘システムの役割の一部なのだが、この文脈だと防空システムだけのような気もする。MD能力の有無も不明だが、S-500の艦載タイプとは別の話なのかな。

・UUV

http://en.rian.ru/mlitary_news/20120831/175539837.html

同じくAnatoly Shlemovの発言からで、特殊作戦向けのUUVを開発しているという件。旧ソ連におけるUUV開発は1980年代後期に端を発するとのことで、有人ミゼットサブのプロジェクト865ピラーニャ(NATOコードネームLosos)にとって代わるものだったという。
ピラーニャの静粛性は極めて高く、またチタンの船殻で構成されており、MADによる探知や触雷を免れることができたと言われている。12隻の建造が計画されたが、のち6隻に縮小、完成したのは2隻に留まったとされる。これを中止させたのがUUV開発計画だった、と言いたいらしい。

米海軍の構想に類似とあるが、ストレートに特殊作戦向けのUUVとかは、あんまり印象にない。むしろ667ANみたいなミゼットサブ母艦と一緒に復活させると言われた方がしっくり来るような。

・ボレイ級SSBNの配備

http://en.rian.ru/mlitary_news/20120831/175536382.html

これも同じ発言元。ユーリ・ドルゴルキーは北海艦隊、アレクサンドル・ネフスキーは乗員訓練を経てその1年後に太平洋艦隊に配属される予定。2隻とも北海艦隊に籍を置いて乗員訓練が行われるため、太平洋艦隊への配備が後になるという事のようだ。
以前の情報では、2隻とも太平洋艦隊への配備というのもあったが、政治的発言だったのか、別の計画だったのかは判然としない。

・黒海艦隊向けのディーゼル潜が起工される

http://en.rian.ru/mlitary_news/20120817/175263174.html

黒海艦隊向けのキロ級は、プロジェクト636.3と呼ばれるタイプで、Varshavyanka級と呼称されている。
1隻目のノボロシスクは2010年、2隻目のRostov-on-Donは2011年に起工しており、今回のStary Oskolが3隻目となる。計画では6隻が建造予定。現在黒海艦隊で実働体勢にあるのは877型が1隻だけなので、全部揃うとかなりの戦力になる。
このあたりはウクライナの動向とも関係するところだが、今のところ親露政権なので、合意は成立してる。

636.3型は、隠密性が高められた877型の改良型。対潜水艦、対水上艦戦闘に対応しつつ、浅海域での作戦能力と対地攻撃能力を有する。乗員52名、水中速度20kt、電動時は45日間活動可能で巡航航続距離400マイル。主武装は533mm魚雷×18、ASM(3M54)×18。
自動化が進められ、運用コストも安くなっているとされる。全体的に877EKMより強い。

http://www.naval-technology.com/projects/kilo877/

636型はベトナム向けの建造も始まった。ベトナムは2009年に6隻を発注している。金額はおよそ20億ドルで、2016年までに引き渡される予定。

ついでに。フランスの外務相は、ロシアのシリア内戦への対応が、自国とミストラル級の取引には影響しないとの立場を表明している。第3国への輸出となれば別だが、二国間では影響なしとの見解。

http://en.rian.ru/world/20120829/175498868.html

*

BTR-82Aの訓練の様子

http://en.rian.ru/video/20120823/175385008.html

最新型のターレットはこんな感じらしい。14.5mmはBTR-80と同じかな。

*

S-400の訓練の様子

http://en.rian.ru/video/20120818/175278541.html

夜間訓練で全天候性能をアピール。

*

ソ連映画ポスター集

http://en.rian.ru/photolents/20120827/175457032.html

時期は1920年代から1930年代前半かな。味わい深いフォント。

インドネシア空軍の今後の調達計画について/イスラエルのCH-53にインシデント、飛行停止措置がとられる/インドが最初のEMB-145 AEW&Cを受領/シンガポール向けM-346がロールアウト

インドネシア空軍の今後の調達計画について

http://www.flightglobal.com/news/articles/indonesia-to-rely-on-upgraded-f-16s-and-k-fx-fighters-375272/

インドネシアはSu-27/30を合わせて10機調達している。将来はSu-30×6機を加え、1個sqの定数まで引き上げることを計画していたが、予算上の制約からこれを断念し、より優先度の高い輸送機調達を急ぐことにした模様。現用の輸送機はC-130B×4機とC-130H×9機だが、C-130の1機(H型の民間仕様、L-100-30(P)とウィキペに書いてある)は、2009年に墜落事故を起こし、100名近い死者が出ている。墜落原因はちょっと調べたところでは出てこない。詳しく報じられないままだったようだ。
これらに代えて新しく調達する機材は、RAAFで余剰となったC-130H×4機と、CN-295となる。

戦闘機に関してはSu-27/30は現有機で十分ということにして、それを補うのは、こちらもUSAFで余剰となったF-16×24機となり、今後20年ほど使う計画。その先に来るF-16とF-5の後継機がKFXということで、今の所3個sqの配備を計画している。1個sq定数は16~22機というから、予備機を合わせても最大70機前後か?
既にKT-1を導入してT-50も選定済みなので、韓国側産業界との繋がりも当面は強固だろう。
しかしKFXは、何のかんのでF-50のステルス版というか、今のJF-17みたいな事になりそうな気がするのだが。対米依存はどうしょもなさそうな。

その他、OV-10の後継機はEMB-314を選定しており、最初のバッチにあたる4機は受領済み。次は12機なので最終的に16機を調達予定となっている。主な任務としては、暴動鎮圧、監視、偵察といったもの。
AS332を更新する回転翼機と、無人または有人MPAへの需要もある。

インドネシア国軍及び官僚としては、新しい航空機の調達を巡り、次の5ヵ年計画(2014~2019年)で予算を付けたい意向とされている。政府の意向では20%のオフセット、あるいは共同生産を求めているとかで、請けるメーカーも限定されてきそうな流れだ。

ちなみに引き渡されたEMB-314の写真。アジア太平洋地域では同国が最初のカスタマーとなった。

http://www.flightglobal.com/news/articles/indonesia-receives-first-four-super-tucanos-375185/

あと、陸軍と海軍はベル412EPを調達している。

http://www.flightglobal.com/news/articles/indonesian-army-receives-four-bell-412s-375500/

*

イスラエルのCH-53にインシデント、飛行停止措置がとられる

http://www.flightglobal.com/news/articles/israeli-air-force-grounds-ch-53-fleet-after-emergency-landing-375598/

8月16日、イスラエル空軍のCH-53 Yasurの1機が、Tel Nof空軍基地から離陸直後に緊急着陸するというインシデントが発生した。乗員3名に怪我などはなし。現在、原因を調査中であるが、初期の調査ではローターブレードの問題という可能性が指摘されている。

これらの機体はYasur 2025という計画に基づいて近代化改修が施されたばかりだが、老朽化は否めないのが現状。交換用のギアボックスをシコルスキーから調達するだけでなく、頻繁なクラック検査が必要とされている。今のところ、CH-53Kの導入までは使い続ける予定。

なお改修に際しては、EWシステムとSATCOMを中心に、20程の新機材がインテグレーションされた。その中には独自の高度維持/ホバリング安定化システムとレーザ妨害装置、ディスプレイの更新なども含まれる。

*

インドが最初のEMB-145 AEW&Cを受領

http://www.flightglobal.com/news/articles/india-receives-its-first-emb-145-aewc-aircraft-375588/

これはインドが2008年に発注した3機のEMB-145 AEW&C(金額は2億800万ドル)のうち最初の機体にあたるもので、このほどエムブラエルの本拠地であるブラジルのSão Josė dos Camposにて、インドに引き渡されている。飛行試験と地上試験はここを中心に行われたようで、エムブラエルとDRDOが定めた設計仕様に沿って開発された。この後、DRDOのミッションシステム統合を経て、インド空軍に加わる見込み。

インド向けのEMB-145 AEW&Cは、DRDOの設計したレーダーを搭載し、空中給油能力が付与され、冷却性能が強化されているとのこと。
同型機はこれまでに10機が製造され、ブラジル、ギリシャ、メキシコで運用されているが、インド向けとは異なり、全てサーブのErieyeレーダーを搭載している。
冷却云々は、より長時間の滞空を想定したためか、単に技術的に厳しかったからか、あるいは高性能なレーダーを搭載したものと思われる。

*

シンガポール向けM-346がロールアウト

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-alenia-aermacchi-rolls-out-first-m-346-for-singapore-375218/

8月7日、イタリアのベニスに近いVenegono Superiore工場にて、シンガポール向けM-346のロールアウト式典が行われた。納入時期は今年後半となっている。
2010年9月に受注した12機のうち最初の機体ということになる。アレニアはシンガポールの地元STエアロスペースと共同して働いており、2011年から20年にわたって後方支援を行う契約。

シンガポールの訓練課程はフランスのCazaux空軍基地で行われているので、M-346の配備先はフランスということになり、現用のA/TA-4SUと交代する。なおパイロットの最初の2名は、イタリアで訓練を受けた。

イタリアの航空当局DNAは、7月にM-346の耐空証明を与えたが、これは同時にシンガポール空軍の耐空証明を兼ねることで合意している。

ホークの販売数が1000機目前に達する/インド向けP-8Iの2号機が初飛行/C295の対艦ミサイル搭載試験

ホークの販売数が1000機目前に達する

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-bae-close-to-selling-1000th-hawk-trainer-374394/

画像はRAFのホークT2。4Sqn(1912年創設)の100周年記念塗装を施されている。

BAEシステムズは、ホークAJTの販売数が990機に達したと発表。6月調印のサウジアラビア向けホーク165×22機が最新だが、インドの飛行展示チーム、スルヤ・キラン向けの20機が数週間内に確定する見込みとしている。現用はインド国産のHAL HJT-16 キランMk.2。

http://indianairforce.nic.in/show_gallery.php?cat_id=17&pg_id=3

本来の後継機は同じくインド国産のHJT-36 Sitaraであるはずだが、初飛行から10年近く経った今も調達は進んでないみたいなので、まだ開発中に近い状況と思われる。

http://www.airforce-technology.com/projects/hjttrainer/

それはともかくとして、この交渉がまとまればホークの累計は1010機になる勘定だ。
なおホーク165の仕様は、RAF向けのホークT2と同一であり、EWなどを含む戦闘訓練用のシミュレータを組み込んであるのが特徴。これにより、レーダーや武装を実際に搭載しなくても訓練が行える。

将来型として2015年以降のOC4+という仕様がアナウンスされているが、これは米国のT-X向け提案と関連したものということしかわからない。ソフトウェアを指してるようだが。

*

インド向けP-8Iの2号機が初飛行

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-indias-second-p-8i-makes-flight-debut-as-testing-advances-374442/

P-8Iの2号機は、インド海軍機としての登録番号IN321をつけた機体となる。
7月12日、ボーイングのテストパイロットの操縦で、レントンからシアトルまで2時間14分間飛行した。飛行中にはシステムチェックが実施され、最大高度は41000ftだったとのこと。
この5日前には、1号機にあたるIN320が飛行試験を開始。今のところ計画通りに進行しており、2013年に引き渡し予定とされる。

今後は、ワシントン北西のニア湾(東日本震災の漂着物で話題になったとこ)と、カナダと米国の共有するジョージア海峡(ブリティッシュコロンビア州とバンクーバー島の間)のテストレンジにて、数ヶ月間の試験日程が組まれている。これにはミッションシステムと翼下パイロンに模擬弾を搭載しての試験などが含まれる。

*

C295の対艦ミサイル搭載試験

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-c295-makes-first-test-flight-with-anti-ship-missile-374391/

C295のMPA型開発の一部として、対艦ミサイルを搭載しての飛行試験が行われている。
翼下パイロンに搭載されているのは、MBDAのMarte Mk.2/Sで、重量は310kg。Mk.46魚雷の搭載試験は2010年に実施済みで、インテグレーションまで完了している。

比較的好調なセールスを記録するC295であるが、チェコでは自己防御システムの能力不足が指摘されたりもした。

http://www.spacewar.com/reports/Czech_armys_CASA_planes_fail_anti-missile_tests_999.html

チェコでは、An-26の後継機としてC295Mを4機導入している。海外展開に備えて対ミサイル装備DASの試験を行ったところ、17箇所のうち7箇所が作動しなかったとか何とか。機体設置のセンサの話?
当局はメーカーに対応を依頼済みだが、この話はこれだけで終わることではなかった。同機種が2010年以来、数度の飛行停止を経ているのが問題を大きくしているようだ。
アビオニクスと通信装置の不具合は修正され、平時の輸送任務と訓練には問題ないとされたが、海外展開などには安全性が不足しているとの判定になった。

さらに調達価格が高すぎるとの指摘から、ありがちな汚職疑惑に繋がっており結構グダグダ。
問題の人物は、2007年1月から2009年5月まで国防大臣を務めたVlasta Parkanová議員で、警察当局から内閣に対して、刑事訴追のためとして免責特権の停止要求が出てる。既に相当クロに近い感じだ。

この手のトラブルは慣れない機材のためという側面もあるはずだが(この場合は旧ソ製→スペインだし)、

カタールがMH-60R/Sを22機導入/A400Mの公式愛称がアトラスに決まる/オランダ議会でJSF計画撤退論が拡大/F-35の弾道ミサイル探知/追尾能力についてデモンストレーションが行われる

カタールがMH-60R/Sを22機導入

http://www.flightglobal.com/news/articles/qatar-requests-seahawk-helicopter-purchase-373730/

DSCAはカタール向けのMH-60R/Sについて、6月26日に議会へ通知した。内訳はMH-60S×12機と武装キット、MH-60R×10機となる。金額は25億ドル。オプションは武装型MH-60S×6機。

これらはカタールのウェストランド・シーキングを代替する物となる。
2週間前には、同じく米国のFMSでUH-60M×12機の購入を要請している。こちらの金額は11億ドルだった。

*

A400Mの公式愛称がアトラスに決まる

http://www.flightglobal.com/news/articles/riat-a400m-reborn-as-atlas-373861/

RIATにおいて、RAFのSir Stephen Dalton元帥が命名者となった模様。
ということは、少なくともRAFではアトラスC1とかそんな呼称になるわけか。

A400Mは、MSN6のTP400エンジンの1基から金属片が発見されるというトラブルがあり、今年のRIAT、ファーンボロでも地上展示に留まる。
このエンジン自体は既に交換されているが、個体差によるものか設計などの不備によるものかはまだわかっていない。MSN6は信頼性試験のうち160飛行時間を消化しており、エンジンの点検結果如何では、160時間分をやり直しにする必要が生じる可能性がある。

来年3月の引き渡しは契約で確定しているが、既にエンジンの問題で1回延期を使っており、今年後半の引き渡し予定から期限ギリギリに先送りしているので、条件は厳しい。

6月7日に飛行試験機5機がトゥールーズに集められたときの画像(空撮あり)が出てる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-five-grizzlies-go-wild-in-toulouse-372747/

このうちMSN2は、タンカー型を想定した付属物をランプ下に追加されている。

*

オランダ議会でJSF計画撤退論が拡大

http://www.dutchnews.nl/news/archives/2012/07/parliament_reaches_a_majority.php

オランダでは財政緊縮を巡る5月の政変で連立与党がほぼ崩壊した。元々労働党中心の少数与党でやっていたので、議会勢力としては劣勢になり、総選挙も近いと言われていた。
野党側もかねてより反対姿勢を明確にしていたため、今更意外というほどでもない。

なお現状、キャンセルすると10億ユーロぐらいをドブに捨てる結果となるらしい。今後の展開は総選挙の結果次第であるが、ここを決断するのは中々難しいだろう。
戦闘機の保有数も減らす勢いでないと決められないんではないかと思うが‥

*

F-35の弾道ミサイル探知/追尾能力についてデモンストレーションが行われる

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=260297

http://www.youtube.com/watch?v=qF29GBSpRF4

地上から5回連続して発射された模擬弾道ミサイルを、AN/AAQ-37 DASとAN/APG-81によって追尾するデモンストレーションであるが、実はNASAのAnomalous Transport Rocket Experiment (ATREX)を利用したもの。

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/atrex.html

ATREXは気象観測用ロケットを80秒間隔で打ち上げ、高度60~65マイルのジェット気流を観測するという実験だった。人工的に雲を発生させ、どのように吹き流されるかを観測して電離層のモデル化に役立てる。5基のうち2基には気圧計と温度計が搭載された。場所はバージニア州みたい。
いずれも低軌道までは到達しないから、中距離以下の弾道ミサイルに比較的近い挙動を示すと言える。
使用されたのはテリアとその改修型で、全て2段式。

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/terrier-improvedMalemute.html

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/terrier-improvedOrion.html

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/terrier-improvedOriole.html

 

ノースロップグラマンではATREXにBAC1-11 CATバードを持ち込んだ。弾道ミサイル追尾のための軽微な改修を施したソフトウェアが組み込まれていたとのこと。

結果、5基全てを別々に探知、追尾することに成功。DACの視野は広いので、パイロットはセンサの向きを気にせず活動できるとしている。
探知距離などのデータは公表されていない。

QF-16の最初の引渡しが2012年内に予定される/F-15SEのCWBについて風洞試験が完了/ボーイングがサウジアラビア向けのF-15Sアップグレードについて契約締結

QF-16の最初の引渡しが2012年内に予定される

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-set-to-deliver-six-qf-16-target-drones-before-years-end-373483/

ボーイングはF-16の標的機改造型、QF-16の開発を請け負い、3月にPre EMD契約(金額7200万ドル)、5月4日には有人で初飛行させている。
今回の発表では、QF-16×6機を2012年内にUSAFへ引き渡す予定が示された。これらの機体はBlock15、25、30で全て単座というから、A型とC型に相当する。

改修は、フロリダ州ジャクソンビルの旧NASセシルフィールドで行われているが、技術的には下請けなどを使わずボーイングの直営状態で、セントルイスから支援が出てるとのこと。LMは一切関与してない。
1999年以来のセシルフィールドは、民間のセシル空港と陸軍航空とフロリダANGなどが同居する軍民共用になっている。かつての海軍機の整備施設は、ボーイングとノースロップグラマンが使っているようだ。

QF-16の開発契約は、まだPre EMDの段階なので、USAFからの要求もまだ有人または無人で飛行可能な機体といったシンプルなものに留まる。固有の装備としては飛行中断装置(FTS)、視覚増強システムなどがあり、在来の標的機制御系との互換性も求められている。
MiG-29やSu-27に相当する標的機となるため、他の改修が施される可能性もある。有人では不可能な機動が可能になったりするのかどうかは定かでないが、構造に手を加える必要も出てきそうだから多分無い。

今後は、8月にsystems verification reviewを経て、9月にEMD契約(予想金額1700万ドル、15ヶ月)で、この中でUSAFに6機を引き渡し、ティンダルAFBとホワイトサンズ試験場で試験を行われる見通し。そして順調に行けば、2014年からLRIPが始まって最初のバッチが20機、全率生産に移ると2015年中盤から4つのロットで各25機、ということは合計120機の見込みか。

ボーイングはF-16と関係ないメーカーなので、設計図その他の技術的データを持っていない。このため、機体の構造をリバースエンジニアリングするところから始める必要があった。そけには、従来の手法(普通に分解して寸法取ったり重量測ったりするやり方)だけでなく、より洗練された手法、X線後方散乱検査装置を用いた解析などを行う事で、かなり詳細なデータを得られたという。
今回は特に古い機体(耐用期限切れの場合もある)に対して、人間が乗っても大丈夫な程度の安全性を確保する必要があり、部分的な構造の改修も伴ったそうだ。

こうした作業の副産物として、ボーイングには老朽化したF-16改修のノウハウが蓄積された。ボーイングは複数の潜在顧客と予備的な交渉を行っているというが、実現するとしてもまだまだ先の話になるだろう。
今のところLMは特にコメントしていない模様。

*

ボーイングがエムブラエルとKC-390計画への協力で合意

http://www.flightglobal.com/news/articles/kc-390-partnership-may-signal-coalescing-of-earlier-agreement-373439/

ボーイングはブラジルF-X2でF/A-18E/Fを提案しているが、技術移転とオフセット条件の部分で欧州勢に遅れをとる状況が続いていた。現在は、技術移転の方は政府を動かして何とかクリアする方向であり、オフセットの方は、4月からエムブラエルとの包括的な協力についての枠組みを模索する流れだった。
ただしオフセットと周辺の軍事技術協力に関しては、原潜まで持ち出してるフランスが最も必死なので、これでどこまで押せるのかは不明。

この発表では具体的な内容には言及されていないものの、KC-390に関しての協力というのは明言されている。KC-390はC-130後継に相当する輸送機であり、従ってLMとの競合関係にあるが、ボーイングはこのクラスの輸送機を持たず、競合関係は発生しない。この辺はMRJについての協力関係と似た部分がある。
だからと言って米国向けへの有望な商談が見込めるかというと、そういうわけでもなさそうだが、国際市場においてボーイングがついて売り出すとなれば話が違ってくる。かもしれない。エムブラエルに、大型軍用機の大量生産の実績が無いのは確かだ。

なお、ティールグループのアナリストによれば、米軍はターボプロップの方を好むだろうとの見解。ヘリコプターの空中給油を行うのにも(C-130Jの方が)有利としている。

*

F-15SEのCWBについて風洞試験が完了

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-wind-tunnel-tests-for-f-15-silent-eagle-cwb-completed-373389/

現在のF-15SEのコンフォーマル・ウェポン・ベイ(CWB)は、最初のデモンストレータのものから変更が加えられており、まだ開発途上にある。風洞試験では、様々な対気速度と角度に対する検証に加え、シミュレーションモデルとの比較検証なども行われた。今年後半にかけては兵装搭載状態や上下のドアの開閉が性能に及ぼす影響について試験を行う予定。
真正面の画像を見る限り、増積されて下に出っ張ってる感じだが、全体形状の変化はよくわからん。CWBは、設計開発から製造までKAIが担当している。

F-15SE本体については、1月にRCS試験が行われ、生産仕様は確定しているとのこと。
先ごろ正式入札が行われた韓国F-XIIIが最大の目標であるが、今のところF-35かF-15SEという見方が有力。ちなみにDAPAは、LMとユーロファイターに対しては韓国語で再提出するよう要求したそうだ。今のところ、年内には選定されることになっている。

*

ボーイングがサウジアラビア向けのF-15Sアップグレードについて契約締結

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-awarded-184-billion-contract-to-develop-saudi-f-15-upgrade-kit-373438/

サウジアラビアが保有するF-15Sを新造のF-15SAに相当する仕様にアップグレードするもので、機数は68機、FMS経由で金額18億4000万ドル。
政府間取引の色が強いようで、ボーイングより国防総省の出した情報の方が多い。