ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約/ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定/ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約/ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約

http://www.space-travel.com/reports/ATK_Awarded_50_Million_Contract_for_NASAs_Advanced_Concept_Booster_Development_for_SLS_999.html

ATKの発表によると、SLS能力向上に関わるAdvanced Concept Booster Developmentの一部にあたる、エンジニアリング開発とリスク低減試験についてNASAと契約を結んだとのこと。金額は5000万ドル。

この計画では、TVCノズルの電動化(リチウムイオン電池を利用する)、高性能推進剤、軽量複合材製のケース、新型ノズルが開発され、試験用エンジンを製作、静止運転試験までが含まれる。
全体としてはコストを下げつつ、性能と信頼性の向上につなげるものとなっている。

宇宙機では枯れた技術が使われる、とはよく言われる話であるが、材料や電池の分野は今でも日進月歩で発達し、かなりの速度でコモディティ化が進んでいる。様々な形で民生部品を使うのも一般的になりつつあるし、新しめの複合材やリチウムイオン電池もそろそろいいだろう、という感じではある。

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ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定

http://www.spacedaily.com/reports/Key_flight_for_Europes_GPS_is_cleared_for_launch_999.html

10月5日、ESAはガリレオ航法衛星2機打ち上げが承認されたと発表した。
打ち上げ場所はクールー。使用されるロケットはソユーズST-B(上段がFregat-MT)で、既に組立棟に搬入済みとのこと。打ち上げ予定日は10月12日、1815GMTとなっている。
これらは2011年10月21日の1、2号機に続くもので、軌道投入に成功すれば稼動衛星の数は4基となり、測位システム(緯・経度、高度、時間の情報を取得し、地球上の航法を支援する)の最小単位を構成できるようになる。

計画では2015年までに18機を運用、商業利用が可能となり、2020年には全衛星30機体制となって、システムが完結する。これは米国のGPS衛星より6機多く、より高精度な(GPSの誤差3~8mに対して誤差1m程度の)測位が可能。
また、5月の欧州委員会への報告では、2015年までにかかる費用が50億ユーロとされている。

なお、クールーでのソユーズ打ち上げは3回目。アリアン5とヴェガの間を埋める打ち上げシステムとして活躍し始めている。

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ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約

http://www.gizmag.com/pulsar-navigation/24498/

恒星間航法において、パルサー観測を用いるというアイディアはSFでよくあったような気がするが(終わりなき戦いとか)、パイオニア10号の有名な図版でも地球の位置情報(と地球を出発した時期)を示す図形として描かれたこともある。ESAはそれを真面目に実用に耐えるものにできるか研究しましょうという趣旨で、英国立物理研究所NRL及びレスター大学と契約した。

宇宙船が地球から遠ざかるほど、航法支援は困難になる。電波の速度による時間差も生じるし、光の速度で数週間、数ヶ月の距離ともなれば、送信設備の出力も膨大なものとしなければならない。
理屈では人工的なビーコンを設置することも可能だが、同じ理由で現実的ではない。そこで天然のビーコンと言えるパルサーの観測で何とかしようという話。
科学的にその辺の利点を述べると、パルサーはそれぞれが固有の周期で電磁波を発するので、非常に見つけやすい。そしてパルサーのX線を観測することができれば、地球上でGPS衛星を利用するのと同じように扱うことができる。
レスター大学のチームは、この目的のためのX線観測装置の可能性を、NPLは観測データから測位情報を得るためのアルゴリズム開発などをそれぞれ担当する。

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ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

http://www.gizmag.com/boeing-ballistic-gas/24403/

使用されなくなった人工衛星など、いわゆるスペースデブリの問題は年々深刻さを増している。代表的な事例としては、2009年2月10日に起こったイリジウム33とコスモス2251の、高度789kmでの衝突があった。

ボーイングで特許申請の形で提案しているのは、デブリの進行方向にガスを撒くことで、その軌道周回速度を第一宇宙速度以下まで減速させるという方法。わずかでも第一宇宙速度を割りさえすれば、後は地球の重力井戸に真っ逆さまというわけだ。これまでに幾つか提案されたような、ソーラーセール等を用いて物理的に回収したり、つついたりする方法に比べても、最小のエネルギーで対処可能なアイディアと言えるだろう。更に言えば、回収のための衛星が何かと衝突することすら有り得る。

発案者はMichael Dunnという人で、ガス発生器を搭載した小型衛星を使用する。このガスについては、低温のキセノンまたはクリプトンのタンク、あるいは重金属を気化する装置か、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられている。原理的には何でもよく、デブリの進路上、逆向きのベクトルを与えてガスを撒き、運動量を削げばよい。

この方法の利点としては、システムがかなり単純で済むだけでなく、デブリに余計なダメージを与えて更に細かい破片が分離するといった可能性がほとんどないこと、精密に狙いを定める必要がないこと等がある。大型の衛星や軌道高度が高い場合は、単に数回に分けてやれば良い。
また1個の衛星で、異なる複数の軌道を周回するデブリに対して使えるのも利点とされる。
大気圏で燃え尽きそうにないとか有害物質入りとか原子炉搭載とかだとちょっと困るが、基本的には何にでも使える。

言うなれば宇宙フマキラー的な?
米国でスプレー式殺虫剤の代表的なものとはなんだろうか。

NASAがL2点に宇宙ステーション設置を検討/SLSの補助固体ブースタ製造が進む/SpaceXがVTVLの実験機を初飛行させる/ドラゴン宇宙機が初のISS補給ミッション、CRS-1を実施中/2012年の100YSSにおけるFTL航法のまとめ

NASAがL2点に宇宙ステーション設置を検討

http://www.gizmag.com/nasa-space-station-beyond-moon/24265/

米国の地方紙オーランド・センチネルが報じたところでは、NASAがオリオンMPCVを使う深宇宙探査の拠点として、L2点(EML-2 = Earth-Moon Lagrange 2)への宇宙ステーション設置を検討、9月初めにNASA長官からホワイトハウスへ文書として提出されたとのこと。
L2は大雑把に言って月(裏側)から61000km、地球からだと446000kmぐらい離れた位置にある。

建造にあたっては、ISSを構成するモジュールの流用が検討されており、記事中では、ロシア及びイタリアのモジュールを含む可能性にも触れられている。
この構想では、2017年、SLSにより各モジュールを打ち上げ、オリオンMPCVで人員と物資を輸送、2019年にL2へ配置するといったスケジュールとなるらしい。

この宇宙ステーションは2022年まで、無人探査機による月面サンプルリターン及び小惑星探査、有人火星探査の拠点となる。また深宇宙探査のための経験を積み、リスクを低減するという意味でも重要な役割を果たすとされている。

金額などの詳細は不明。NASAも記事の時点ではコメントを出していない。

GizmagではInternational Space Exploration Coordination Group (ISECG)の将来構想、2011 Global Exploration Roadmapとの関連を指摘している。このロードマップでは2020年以降までISSの耐用年数を延長し、次の25年に可能となるであろうミッションについて記述していた。

http://www.nasa.gov/pdf/591067main_GER_2011_small_single.pdf

L2点へステーションを設置する際の技術的なポイントとしては、ステーション本体に地球の低軌道よりも強固な放射線防護が必要である点(ヴァン・アレン帯の外なので)、オリオンMPCVは惑星間空間からの再突入に近い条件(NASAとしてはアポロ以来)で運用される点などが挙げられている。
このほか、ステーションへの補給もISSほど簡単ではなくなるから、低温流体の保管・管理のための技術が求められるし、常駐する人員がいないか、少数である前提なら、より高度な自動化が必要となる。いずれも人類が惑星間空間に出て行く上で、欠かせない技術であるのは確かだろう。

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SLSの補助固体ブースタ製造が進む

http://www.gizmag.com/sls-largest-solid-rocket/24408/

SLSの補助固体ブースタは、計画では固体ロケットとして史上最大級の推力を発生することになっている。
ATKスペースシステムズが開発を担当し、スペースシャトルのSRBを元に5セグメント化、推力は12000kNから16000kNと33%増しになる予定。

写真に出ているのはQualification Motor-1と呼ばれる実証用のエンジンで、実際には飛行せず、設計と製造についての評価を行うためのものとなる。2013年に運転試験を実施予定。
製造面では、組立工程を合理化して、ノズルの超音波検査をX線検査に変更する(別の検査室に送らず、組立工場内でできるようになったのが大きいみたい)などの改善が試みられ、コストを46%も削減したとのこと。
ある組立工程では47の作業があったのを、7まで減らした、という例が挙げられている。作業手順を単純化することが、品質的にも有利となるのは言うまでもない。ましてSRBはチャレンジャーの事故の主因ともなっているため、このあたりには特に慎重になるところだろう。

が、それ以前にスペースシャトルで何十年も合理化してなかったんか、という気はしないでもない。SRBは半端に再利用とか変なことになってたとはいえ、とても公共事業っぽくはある。
コメント欄にSpaceX信奉者が散見されるのもわからんでもないが、その辺はもう少し実績が増えないと何とも言えないかな。
今回のCRS-1打ち上げでも、1段目のエンジン1基がフェイルしたという話も出てるし。

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SpaceXがVTVLの実験機を初飛行させる

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-first-commercial-launch/24413/

実験機はGrasshopperと名付けられている。マーリン1Dエンジンに4本脚を付けた格好のもので、9月21日に初の飛行実験を成功させた。6ftほどジャンプした程度に留まったので、飛行と言えるかは微妙か。
実験は数ヶ月続く予定で、最終的には100ft上空でホバリングして降下するのを目指している。

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ドラゴン宇宙機が初のISS補給ミッション、CRS-1を実施中

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-first-commercial-launch/24413/

5月のISSドッキング実験に続いて、Commercial Resupply Services (CRS)契約に含まれる。12回の補給ミッションのうち、最初のミッションORS-1が行われている。CRS契約の金額は16億ドル。
ロンチコンプレックス40から東部時間10月8日、午後8時35分に打ち上げられた。ISSとのドッキングから3週間ほど経過した後、再突入して海上にて回収される見込み(有人では動力着陸が予定されている)。ペイロードとして積載した物資は905kgほどで、同量の実験サンプルなどを積載して戻ることになっている。
現在ISSにはエクスペディション33のクルーとして、星出宇宙飛行士が滞在しており、ドッキング用のアーム制御を担当する。

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2012年の100YSSにおけるFTL航法のまとめ

http://www.gizmag.com/warp-drive-bubble-nasa-interstellar/24392/

原文がなかなか良い記事なのでそっち読むのがオススメ。

光の速度を超えることに関しては、最近の研究でも宇宙開闢からインフレーションの間に少なくとも光速の3京倍の速度で膨張した、というのが既定の事実になりかけている程度で、基本的な概念のレベルでは、Miguel Alcubierreが1994年、時空の歪みを利用してFTL航法を実現可能という研究結果を発表した時とあんまり変わってない。つまり、平坦な時空の内部で光速を超えることはできなくても、時空そのものが変形したり膨張するのであれば、その限りではないという理屈だ。以下、時空の歪みをワープ効果と呼ぶ。

FTL航法を考えると、宇宙船の前方に時空間を歪めるワープ効果を発生させ、宇宙船の存在する時空では拡張(復元)して平坦にする必要がある。この状況を時空の歪みに囲まれた泡に例えてワープ・バブルと呼ぶ。この手の研究では、移動速度を光速の10倍と想定していることが多いらしいが、理論上の限界は今のところ無い。
時空間を海、時空間の歪みを波に置き換えた説明では、波の進行速度は海水の進行速度よりもずっと速い。というわけで、FTL航法はサーフィンのようなものとも表現されている。

問題はワープ・バブルをどうやって形成するかというところで、ワープ・バブル形成のためには膨大な負のエネルギーを投入する必要があり、古典物理学は役に立たないし、量子力学で論じられるようなものとも桁が違う。しかし、最近の研究では、当初Miguel Alcubierreが計算したような、小型宇宙船を包み込む程度のワープ・バブルを形成するのに宇宙全体の質量でもまだ足りない、といったレベルではなくなってきたらしい。現在のモデルでは、数百kg程度の質量で済むそうだ。

SFだと最終的に、エキゾチック物質とかダークエネルギーとかに頼るわけであるが、ここではわけのわからなさが多少少ない?後者のダークエネルギーについて述べている。
宇宙全体に広がったダークエネルギーの密度は極めて小さく、地球磁場の5万分の1程度の強さしかないとされるものの、磁力の場合は希土類磁石が恒星間空間の磁場の1億倍の強度を発してたりするから、決め付けるのはまだ早い。

とまあそんな感じで、どうにかしてワープ・バブル形成に成功したとすると、どうやって制御するか、止めるときはどうするかという問題が出てくる。ここら辺はモデルが複雑になりすぎて手がつけられない、というのが実情みたいだ。
で、分析が不足していることも棚上げして話を進めると、対称なバブルが形成されたら向きはどうやって決めるのかとか、バブル内部から外部の状況がわかるのかとか、ワープ効果が現れた時点でホーキング輻射が起こってバブル内外の物質が蒸発するんじゃないのかとか、まあわからんことだらけなので、単なる思考実験の域を出ない感じになっていく。

さてこれだけだと単なるおもしろいおはなしで終わるところだが、そこはさすがにNASAなので、ワープ効果を実証するための実験装置を提案している。White-Juday Warp Field Interferometer (WFI)と呼ばれるこの装置は、要は極めて高精度な干渉計であり、1nm単位の経路長の変化を検出可能となる。これで微細な時空の歪みを観測しようという試み。

小さいことからコツコツと。

NROが余剰の偵察衛星2基をNASAに移管する/Kinectを人工衛星に搭載する試み/X-37B OTV-2の着陸予定が発表される

NROが余剰の偵察衛星2基をNASAに移管する

http://www.gizmag.com/spysatellite/22813/

NROは、余剰となった偵察衛星2基をNASAに移管した。これはニューヨーク州ロチェスターにて保管されているもので、宇宙に向ければ光学観測に用いることができ、HSTよりも新しく、高性能な機材を搭載可能となる。ただしNASAではHSTの代替として使うわけではなく、超新星観測、太陽系外惑星の探査や、ダークエネルギー関連の研究といった用途での運用を考えている。HST後継は依然としてJWST計画が進行中だが、計画はHSTと同じく難航、遅延を重ねて現在に至る。

2つの衛星は、機密指定が解かれたとは言え、国防総省とNROが軍事を含む情報収集用途で製造・保管していたものである為、偵察衛星としての能力や運用はもちろん、元々搭載されていた機材や、その材料についての情報も明らかにされていない。公式情報に基づく推測として、KH-11(1975年運用開始)かその派生型、おそらくは1990年代かもう少し新しい時期に製造された可能性が挙げられている。

宇宙望遠鏡としての衛星の外見は、NASA広報の説明を引用すると「短くて太いHST」といったもので、本体重量は1700kg。主鏡直径94インチはHSTと同じだが、焦点距離は短く、その分全長も短い。これはHSTよりもずっと広い画角を有することを意味する。また、HSTにはない補助鏡によって焦点操作が容易になっていたり、後部の機器設置スペースが広くとられている等の特徴がある。
その他の仕様はスライドの内容を参照。

http://www.gizmag.com/spysatellite/22813/pictures#2

NASAに移管された当初は、望遠鏡部分以外の部分、太陽電池パネルから姿勢制御システムに至る人工衛星として必須の部品の大半が取外された状態。おまけに移管は文書による通知のみ、輸送費用も移管後の保管費用(2基で年間100万ドル)もNASA持ちで、取扱いに苦慮した時期があったようだ。

改修案を強く後押ししているのは、ゴダード宇宙センター主導のWFIRST(Wide Field Infrared Survey Telescope)計画の宇宙望遠鏡に流用するというアイディアだった。WFIRSTでは、観測機材の目玉として新造の宇宙望遠鏡(主に近赤外線観測用)を計画していたものの、打ち上げ時期は早くとも2024年(当初2020年から変更。L2点に投入する都合でランチウィンドウの制約もある)、コストは15億ドルまで膨れ上がり、計画自体が危ぶまれる状況になっていた。NASA内部では航空機搭載の望遠鏡で代替できないかという検討もなされたが、能力不足との結論に至る。
この状況に対して偵察衛星改修案では、2億5000万ドルの経費節減が可能となる。打ち上げ時期も2020年まで前倒しできるということで、一石二鳥の妙案になった。これには静止軌道での運用に変更されることも関係しているが、予備機も手に入るし悪い話ではない。
WFIRSTより不細工だけど。

http://wfirst.gsfc.nasa.gov/

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Kinectを人工衛星に搭載する試み

http://www.sstl.co.uk/news-and-events?story=2025

http://www.flightglobal.com/news/articles/surrey-satellite-turns-to-xbox-for-latest-technology-372661/

http://www.gizmag.com/strand2/22752/

Surrey Satellite Technology Limited (SSTL)は英国のサリー大学との産学協同研究を行っている民間企業で、Kinectを搭載した小型の人工衛星2機の打ち上げと試験を計画している。Kinectを衛星同士のドッキング制御などに応用する目的なので、2機は一対で打ち上げる必要がある。

大型衛星のドッキング技術はある程度確立しているが、能力の限られる小型衛星同士が自律的に結合できるようになると、各々の人工衛星という独立した装置から、より大きなシステムを構成することが容易になり、メンテナンスの面でも大きなメリットがある、というのが研究の題目。実用化されれば、例えば故障部分を分離して入れ替えたり、能力を向上するといったイメージであって、マイクロサット以下の規模の衛星からなるモジュール化衛星のようなものに発展する可能性にも期待している。また人工衛星とデブリとの衝突・損傷の危険性は日々増大しているが、小型衛星の集合体の方が、単体の大型衛星よりも損傷などのトラブルへ対処しやすい。

SSTLではSTRaNdという一連のナノサットを開発。中身にスマートフォンを流用したSTRaNd-1は、10cm×10cm×30cmの直方体で、10cm×30cmの4面に太陽電池セルが貼り付けられている。制御系などには、スマートフォンのカメラ、通信装置、モーションセンサが利用され、積極的に使い道が無いのはタッチスクリーンぐらいであるが、これも宇宙放射線の検出に使えるかもしれないというから恐れ入る。打ち上げ時期はピギーバックペイロードの空席次第となり、うまくいけば今年後半とされている。

STRaNd-2は-1と同様の外装を持ち、Kinectの中身のカメラとIRセンサを組み込む。前述のように2機一組が製作される予定で、このセンサを利用して自律的なドッキング操作を行わせる計画。
Kinectの空間認識を自律飛行などに応用する試みは、既にMITがクワッドローターのマイクロUAVで行っており、それがヒントになったとの事。こうした機械では、ハードウェアと同等以上に画像解析アルゴリズムも重要であるが、その開発費用も全部込みでのあの価格、産業機械や航空宇宙向けとは桁の違う量産体制だからこそできたというのが実感できる。

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X-37B OTV-2の着陸予定が発表される

http://www.flightglobal.com/news/articles/vandenberg-afb-readies-for-x-37b-landing-372490/

現在軌道周回中のX-37B OTV-2は、2011年3月に打ち上げられている。今回の発表では、6月中旬までに(天候その他の条件がクリアされれば)ヴァンデンバーグAFBへ着陸するとのことなので、軌道を周回した期間は15ヶ月ちょっとということになる。OTV-1による1回目が2010年4月から10月までだったが、今回は設計当初の仕様と言われた270日間を大きく上回った。
3回目の打ち上げとなる次回は、X-37B OTV-1が再度使用される計画で、時期は今のところ秋頃と言われている。ミッション内容が機密指定になってるのは変わらず、はっきりしたことは当事者以外判らない。なおOTV-1は1回目のフライトを終えた後、ヴァンデンバーグAFBに留まっていた。再使用のためのリファービッシュ作業のほか、搭載機材のチェックなどが行われたと推測されている。

100 Year Starship Initiative/Dragon打ち上げ成功、ISSとドッキングを果たす/Dream Chaserの飛行試験が始まる

100 Year Starship Initiative

http://100yss.org/

http://www.gizmag.com/darpa-funds-100-year-starship/22662/

100YSSと略称される、DARPAの新しい無駄金プロジェクト。来る22世紀、恒星間航行を実現すべく動き始めた。
50万ドルの資金はドロシー・ジェミスン財団というところに提供されることが決まっている。この財団で100YSSへの提案を作成した中心人物は元NASAの宇宙飛行士、メイ・ジェミスン博士で、恒星間航行に関する民間レベルでのイニシアティブを構築する事になる。
初年度の主要な目標は、まず投資を募り、メンバーを揃え、関連する一般の研究プロジェクトに対する助成を通じて、恒星間探査の構想を発展させる。一般の研究と簡単に書いたが、これは理数系と工学系に留まらず、恒星間航行を実現する上で検討対象となるであろう哲学、社会文化、経済など広範囲にわたる。そのあたりは公開のシンポジウムを開催して取りまとめる計画となっており、今年は9月13日から16日まで、ヒューストンで催される。

また100YSSの中では長期的な理論研究、技術開発を担う研究所も設立する予定。

DARPAの無駄予算獲得能力が半端なさすぎて最早笑えない。いやむしろNASAの政治力が衰弱しすぎてヤバイという感じか。

この手の計画としてはレーザ核融合のダイダロス計画、原子力ロケットのオリオン計画が有名だったが、もはや若い人は知らないのではないかというレベルの古さになってしまった。
オリオン計画の方では、ダイソン博士が恒星間航行までを想定した有人宇宙船を検討している。40年以上前のことだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Project_Orion_(nuclear_propulsion)

初期の検討では船体は直径20kmの半球状で、最大0.00003g加速を100年間持続し、巡航速度は光速の0.33%、1330年かけてアルファケンタウリまで到達するといったものだったが、後には直径100mで最大1g加速を10日間持続し、巡航速度は光速の3.3%、アルファケンタウリまで133年と効率を100倍ぐらい改善したプランになった。
現存する技術で実現可能ということになっている。

ダイダロス計画の方は、今でもやや微妙かなあ。レーザ核融合の進歩がないわけではないが。

世代型恒星間宇宙船にせよ、冷凍睡眠にせよ、有人だといろいろ厄介なことも多い。
投資を集めるっつーのも、相当無茶と言えば無茶だよな。観測データを売り買いするにも、100年200年の契約になるだろうし。SFではさらっと流されたりルール変更で対応されがちな経済的な側面は興味深いが、現実は厳しい。まして世界恐慌一歩手前が延々続きそうな現状では、どんなもんなのか。

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http://www.gizmag.com/engineer-proposes-uss-enterprise/22532/

ついでだからぶっちゃけネタとしか思えんエンタープライズ建造構想も。

匿名の技術者BTE-Danは、1兆ドル以下の予算と20年の建造期間でスタートレックに出てきたUSSエンタープライズみたいな惑星間宇宙船を造れると主張している。BTE-Dan氏がGen1 Enterpriseと呼ぶこの宇宙船は、主推進機が1.5GWのイオンエンジンで、地球から月まで3日、火星まで90日で到達可能という。

円盤状のブロック人工重力区画とし、トラクタービームは無理なんで艀みたいな着陸機を積む。

http://www.buildtheenterprise.org/

公開したら鯖がパンクして増強したとか何とか。
確かに労作ではある。一見の価値はあるがしかし、現状に痺れを切らしたトレッキーがマジギレしてやっちゃった感が凄い。火星有人探査ですらあと最低でも四半世紀は無理っぽいからな。

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Dragon打ち上げ成功、ISSとドッキングを果たす

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-reaches-iss/22685/

最後の最後でちょっと延期が入ったものの、5月22日の東部時間3時44分、Dragonは無事に打ち上げられた。3日後の5月25日、東部時間9時56分、エクスペディション31のクルーが操るISSのロボットアームにより捕捉され、ドッキングに成功している。何度も報じられている通り、民間開発の宇宙船としては初の快挙となった。

 

Falcon 9 Heavyを使った打ち上げで、最初の顧客としてIntelsatとの契約が締結されたり、Space Xの勢いは凄い。

http://www.flightglobal.com/news/articles/spacex-signs-intelsat-as-first-falcon-9-heavy-customer-372429/

Space Xに関しては既存技術の活用でコスト削減で云々~という報道があちこちで見られたが、その既存技術がどこから来たか、技術基盤が固まるまでの膨大な投資を支えたのが何なのかは、あまり触れられてなかった。公開論文だけで現物作れれば世話ねーよみたいな。

今更であるがFalcon 9 Heavyは、1段目のFalcon 9の1段目と同様の増設ブースタを2基追加した形態となる。今のところ専用の射点はヴァンデンバーグAFBに建設中で2013年半ばに完成予定。将来はFalcon 9と同様にKSCでも打ち上げたいとしている。ヴァンデンバーグは極軌道投入に適した射点となる。

打ち上げ時期と射点は未定。インテルサットの発表ではヴァンデンバーグは使わないとされているので、そこから推測すると打ち上げ時期は2013年よりも後で、SpaceXが建設中のブラウンズヴィルの新打ち上げ施設かKSCということになる可能性が大。

まだ詳細は交渉中のようだ。

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Dream Chaserの飛行試験が始まる

http://www.flightglobal.com/news/articles/corrected-sierra-nevadas-dream-chaser-begins-flight-testing-372483/

シエラネバダ・コーポレーションが開発中のリフティングボディ型宇宙機Dream Chaserは、先頃飛行試験を開始、CCDevの4つのマイルストーンを通過したと発表。これには落下試験による着陸脚の確認、分離装置の試験が含まれる。
飛行試験はごく初期の段階で、コロラド州デンバー近郊のブルームフィールド飛行場から、S-64に吊り下げられてのキャプティブ・キャリー試験を実施した模様。次の段階ではエドワーズAFBに移動し、今年後半にも滑空・着陸試験が行われる予定。approach and landing test (ALT)と書いてある。

http://www.flightglobal.com/news/articles/sierra-nevada-completes-dream-chaser-preliminary-design-review-372702/

PDRも着々と進んでいるようだ。

 

SpaceXのDragon宇宙機が4月30日の打ち上げを準備/MT AerospaceがIXV再突入体の製造で下請契約/サウスウエスト研究所(SwRI)がXCORと契約/嫦娥3号以降の嫦娥計画について/ROSCOSMOSが2030年までの宇宙計画の草案提出

SpaceXのDragon宇宙機が4月30日の打ち上げを準備

http://www.space-travel.com/reports/SpaceX_NASA_readies_for_April_30_launch_to_ISS_999.html

3月20日、NASAのISSマネージャであるMike Suffredini氏は、Dragonの打ち上げ準備が、4月30日を目標として進行中と述べた。当初は2月の打ち上げで計画していたが、技術的問題の為に延期された経緯がある。

もう一方の当事者、SpaceXの広報は正式な打ち上げ日について、最終承認が4月16日のFlight Readiness Reviewの後になると言っている。

このフライトの目的は、ISSへのフライバイ(距離2マイル程度)を含む軌道周回と、ISSのロボットアームを使用した係留など。試験や検証のスケジュールを消化して再突入した後はフロリダに着水、回収される段取りとなる。
NASAが推進する民間開発の有人宇宙機としては、これが最先端を走ってる状況に変わりは無い。

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MT AerospaceがIXV再突入体の製造で下請契約

http://www.space-travel.com/reports/MT_Aerospace_to_manufacture_flight_hardware_for_IXV_reentry_vehicle_999.html

IXVはESAの計画の一つで、大気圏再突入の実験を含んでいる。主契約はタレス・アレニア・スペース・イタリアで、今回ドイツのアウグスブルクにあるMT Aerospaceが下請で実験機の製造を行うことで契約締結された。

IXYの再突入体はセラミック製の全長0.8m、重量37kgと小型軽量な機体で、リフティングボディの後端にフラップが付いている。
MT Aerospaceの技術は熱防護システムの方で、特許取得済みの耐熱性繊維強化セラミックが使用される予定。

飛行計画としては、ヴェガで打ち上げられた後、高度450km付近から再突入して最大速度は7.5km/s程度、最高温度1900℃になり、最大gは5.7と計算されている。
今のところ2013年後半までに製作され、2014年に実験がおこなわれる見込み。

静止軌道付近まで上がるので、かつて日本で計画されたDASH(H-IIの打ち上げ失敗で終了)に近い感じだ。

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サウスウエスト研究所(SwRI)がXCORと契約

http://www.space-travel.com/reports/SwRI_and_XCOR_agree_to_pioneering_research_test_flight_missions_999.html

2011年、SwRIとXCORは、6回のLynxを使用した弾道飛行ミッション(オプション契約で3回追加)を行う協定に合意した。明けて2012年、1または2回のミッションについて正式契約が締結されたとのこと。
これにより、通常の商業ミッションよりもSwRIの科学ミッションが先に実施される公算となった。

SwRIからはアラン・スターン博士をリーダーとして3名が参加する。2010年から0g飛行や遠心分離機タイプの高g訓練、F-104への搭乗といった準備を続けてきたそうだ。
弾道飛行による微小重力実験は、これまで全く不可能だったというわけではないものの、コストの割に微小重力状態の継続時間が長いというのも大きなメリット。
加えて、研究者が直に操作できるというのは大きいみたい。単に実験装置を航空機に積んで飛んでもらうよりも、大きな成果が期待できる。

この発表は2月末のNext Generation Suborbital Researchers Conference (NSRC) 2012というので行われたみたいで、XCOR関係ではペイロードインテグレーターの新規参入も報じられている。

http://www.space-travel.com/reports/XCOR_Announces_New_Lynx_Vehicle_Payload_Integrators_999.html

ペイロードインテグレーターは、Lynx用の実験装置などを開発・標準化して、切り売りする担当。新たにスペインのEMXYS、テキサスA&Mの宇宙工学研究センター、惑星科学協会といった名前が挙がる。これまでSwRIなど学術系を中心に7つほどの組織が関わるものになっており、地道に営業活動を結実させつつあるようだ。

XCORはペイロードインテグレーターを統括して、会議を通じて情報を共有したり、各種の調整、とりまとめを行う。

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嫦娥3号以降の嫦娥計画について

http://www.spacedaily.com/reports/Chinas_Lunar_Docking_999.html

中国の月探査関連は嫦娥計画と名付けられており、嫦娥2号までの周回探査機は一応の成功に終わっている。
これに続くのは表面探査ということで、嫦娥3号の準備が進行中。

嫦娥3号は2013年に打ち上げ、月面探査車の投入を含む月面着陸を目指す。その2年後、2015年には嫦娥4号。これは3号と同様のミッションが計画されており、事が計画通りに進むなら、さらに2年後、2017年の嫦娥5号で、サンプルリターン計画を遂行することとなっている。

着陸機に関しては発表当初、旧ソ連が1960年代と1970年代を通じて月面探査に投入した、ルナー探査機の影響が指摘された。月面車ルノホートが投入可能である点や、ルノホートの代わりにサンプルリターン用の機材と小型ロケットが搭載可能である点も同じであったりした。

が、嫦娥5号のサンプルリターン計画は、後に変更されたようで、現在は月軌道を周回する宇宙機(輸送機)と、サンプルリターンのための着陸機を別々にする形をとる、小規模なアポロ計画のような方針になっているという。

どのようなハードウェアになるのかはまだはっきりしていないが、想像図を見た感じでは、輸送機と着陸機を別々に打ち上げ、地球軌道上でドッキングして月に向かうような感じではある。

変更されたとすれば、単により大きな成果を求めたというよりも、嫦娥5号を将来の月面有人探査へのステップとして位置付けた、という可能性が高い。神舟8号などのランデブー実験を、その前段階と捉えることもできるだろう。

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ROSCOSMOSが2030年までの宇宙計画の草案提出

http://www.space-travel.com/reports/Russia_Drafts_New_Space_Exploration_Strategy_999.html

3月13日のコメルサント・ビジネス紙が報じたところによると、ロシア宇宙機関ROSCOSMOSは、2030年までの宇宙関連戦略についての草案を、政府へ提出したという。

この草案によると、目標とするのはロシアの宇宙産業が、将来にわたって世界トップ3のレベルを維持し、それを確実なものとすること。
また、2011年の宇宙市場におけるロシアのシェア(?)が0.5%に留まったのを受け、2030年までは10%まで引き上げる方針を示した。衛星含めた金額ベースの事かしら。

衛星関連の具体的な目標としては、2020年までに人工衛星の完全国産化(特に電子機器を指す)を達成し、2030年までには軍民合わせたロシア国内需要の95%を満たすとする。

探査関連では、月への有人飛行、金星探査と木星探査を挙げ、火星への恒久観測ステーション建設計画は、国際共同で行う予定としている。

その他、軌道上のゴミ掃除とか、いわゆるNEO対策にも注力するとのこと。

とりあえず思いついたこと全部書きましたという感じではあるが、同紙は大統領直下に調整のための独立機関が設けられる可能性を指摘している。

この10年は前進するどころか失敗が続いちゃってるからなあ。辛うじてGLONASSは面目を保ったが、Kliperはどっかいっちゃったし…

4インチ大の誘導弾丸/NWSCでレールガンの試験が開始される/高速UAV構想、GoJett/Startram Project

4インチ大の誘導弾丸

https://share.sandia.gov/news/resources/news_releases/bullet/

http://www.gizmag.com/sandia-self-guided-bullet/21286/

米国のサンディア国立研究所において研究されているもので、レーザ誘導によって最大2000m先の目標に命中させることができるという。長さは4インチ程度で、12.7×99mmとほぼ同サイズ、ただし見たところでは弾丸というよりも矢に近い形状になっている。
サボが飛んでるのを見てもわかるけど、弾の重心を前方寄りにし、後ろ半分の動翼を使って空力で飛行経路を制御する仕組みのため、ライフリングはない。滑腔銃身、スムースボアというやつだ。

弾には8bitプロセッサと電池が載っており、先端の光学センサの情報を処理して飛行経路を計算し、動翼を制御する。
この仕組みは、より大きな誘導兵器に見られる、加速度計とジャイロスコープを組み込んだ慣性誘導装置(IMU)と比べたらずっと簡易なものと言える。しかし、弾丸サイズの飛翔速度と質量を考慮すると、飛翔中の弾のブレを1秒間に30回程度は修正しなければならず、精度よりも進路補正のスピードの方が重視される、ということのようだ。

シミュレーションでは、通常の弾丸が1000m先の目標から9m程度の誤差で弾着するところ、この誘導弾では誤差20cm程度に抑制できるという。
試作においては民生品が多く用いられ、電磁加速式の銃身で初速730m/sを達成している。

銃身を補正する方が簡単なような気がしなくもないが、現在製品化パートナー募集中とのこと。

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NWSCでレールガンの試験が開始される

http://www.gizmag.com/em-railgun-commences-firing/21644/

http://www.navy.mil/search/display.asp?story_id=65577

1月30日、ヴァージニア州ダールグレンのNWSCに、BAEシステムズ製の試作EMレールガンが納入され、その評価のための準備作業を経て、低エネルギーでの試射が開始された。現在は20~32MJでの試射が始まっている。32MJが設計上の最大出力にあたり、初速は4500~5600mph。ここにきて出力は、当面USNが求めている射程距離50~100NMを達成するのに十分な数字となった。

4月からはゼネラルアトミクスの試作したものが加わる予定。

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高速UAV構想、GoJett

http://www.gizmag.com/gojett-supersonic-jet-uav/21675/

GoJettは、コロラド大のライアン・スターキー氏が開発中のUAVで、最大速度Mach 1.4を目指している。また機体だけでなく独自設計のエンジン、L-FX00というのも開発しており、これは従来の同クラスのジェットエンジンよりも2倍高効率だそうだ。
いくら何でも倍は吹きすぎだろ、というツッコミ待ち?と思ったら、コメント欄でもカルノーサイクル超えるわそれ、とか書かれてた。

プロトタイプの製作は3月1日の時点で2週間以内にというから、もう始まってると思われる。
重量50kg、全長1.5m、全幅1.8m。この重量のUAVとしてMach 1.4を達成できれば記録的なことと称している。製作費は5万~10万ドル。
エンジンにダブルデルタ翼が付いてるだけで、見た目は普通。

一方、エンジンのL-FX00に関しては情報が情報が乏しい。ショックコーンが見あたらないし、効率はともかくとして軽く、潤滑が要らんとか書いてるので、ラムジェットとかパルスジェットとかの類を連想するのだが。
正体が何であるにせよ、うまくいけばUAVだけでなく巡航ミサイルなどにも採用される目があるから、米軍、DARPA、NASAも関心を示しているそうだ。

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Startram Project

http://www.startram.com/

http://www.gizmag.com/startram-maglev-to-leo/21700/

懐かしの宇宙ケーブルカー構想の一種。
計画では、打ち上げ能力は30万トン、LEOへの輸送単価は1kgあたり40ドル以下とされる。貨物輸送用のStartram建設に要する費用は200億ドルで、工期は10年。人員輸送用では同600億ドル、工期は20年という。
ちなみに現在のLEOへの輸送コストは、完全再使用宇宙機が実現できなかったこともあって、1kgあたり10000ドルといったレベルで足踏みしている状況。RLVの目標値でもでも1kgあたり1000ドルだっけか。
このシステムはマスドライバーの一種でもあるので、ロケットを使う場合とはコストの内訳が全く異なる。

以下、必然的に国際共同のプロジェクトとなることを宣言しており、やや胡散臭い理想平和主義的なステートメントが続く。妙に大仰な雰囲気になってるのは、この企業が超電導リニアモーターカーの発明者、ジェイムズ・パウエル博士(ゴードン・ダンビー博士との共同研究で1968年に特許を取得、2000年にベンジャミン・フランクリンメダルを授与されている)、熱工学とMHD、原子力ロケットなどの権威であるジョージ・マイス博士の二人の大御所を担いでいることと関係しているようだ。

仕組みを簡単に言ってしまえば、真空に近いチューブ内を走るリニアモーターカーで、第1宇宙速度まで加速するだけ。現在のリニアは600km/hかそこらで、第1宇宙速度はその50倍近いが、真空チューブ内なら技術的には大差なくなる。
第1宇宙速度まで、ロケットならば最大3g加速で5分ぐらいかかる。この間の移動距離と同様、Startramの上り軌道も1000マイルほどは必要とされる。大雑把に言って、大陸横断鉄道を複線のリニアで造るようなもんである。

チューブ内の気圧は、MHD真空ポンプを使って、高度20km付近まで0.01torr程度(高度75kmの大気圧相当)に保つ。そこからは大気圧の抵抗によって加速度を3g以下に抑える。
超電導ケーブル自体が磁気浮揚するので、チューブ自体も保持されることになっている。地上ステーション側で2億A、チューブ側で2000万Aという膨大な電流を流すため、1mあたり4tonを支える計算。

こうした計画では、規模の問題を除けば、既存技術の組合せで十分に実現できるというのが決まり文句であるが、Startramについては権威ある人々が絡んでいるだけに抜かりはない。サンディア国立研究所が検証を行い、実現可能との結論を下している。

実際に600億ドルで済むかはともかくとして、現在の宇宙インフラにどんだけ金が掛かるかが最後に書かれてる。

・ロケットの打ち上げ施設建設:(規模にもよるが)だいたい5000億ドル

・スペースシャトル計画の総コスト:1700億ドル

・国際宇宙ステーション計画の総コスト:現時点で1500億ドル

試してみるぐらいの価値はある…のかなあ。

そういや大林組もなんか出してたな。軌道エレベータ構想。

http://www.obayashi.co.jp/press/news20120220

本誌は見たことない。

準惑星エリスの直径が計測される/ロゼッタ探査機による小惑星Lutetiaの観測について

準惑星エリスの直径が計測される

http://www.spacedaily.com/reports/Dwarf_planet_sized_up_accurately_as_it_blocks_light_of_faint_star_999.html

2010年11月、チリ、ESOのLa Silla天文台にあるTRAPPIST望遠鏡で、エリスの掩蔽現象が観測された。その結果を元に計測された大きさは、冥王星にほぼ等しいとのこと。詳細はネイチャー誌10月27日号に掲載予定。アルベドが高いことから、表面は薄い氷の層で覆われ、大気が凍結している可能性がある。

観測に先立ち、MPG/ESOの口径2.2mの望遠鏡を用いて掩蔽される方の星を特定した。
TRAPPISTの主鏡は0.6m。TRANsiting Planets and Planeteslmals Small Telescopeという正式名の通り、太陽系内の惑星観測用に作られてる。特に遠方の天体を観測する上では観測精度が重要で、海王星よりも小さな天体を観測する場合は高い観測精度と、周到な計画の両方が必要になる。

地球上でエリスの影が落ちる範囲の、掩蔽現象が観測可能と予測された観測施設は26あったが、直接観測できたのはチリにある2つのみだったとのこと。その1つがTRAPPISTで、もう1つはサンペドロ・デ・アタカマの2つの望遠鏡だった。
これらの観測結果を総合して検討した結果、エリスはほぼ球形であろうとの結論。極端に高い山などがあればまた話は違うが、氷を多く含む天体においてはその可能性は低いと見られる。

今回の観測により測定されたエリスの直径は2326km(精度12kmで)。この数値は、冥王星の推定直径である2300~2400kmに極めて近く、従来の推定直径3000kmよりもかなり小さい。冥王星は大気があるので、掩蔽観測でも正確な計測は難しいとされている。
またエリスの質量は衛星の運動を観測することで推定でき、冥王星より27%重く、密度は2.52g/cm3と考えられている。脚注にある月の密度は3.3g/cm3。エリスの構造は、氷が15%、岩石が85%で、岩石の核を100kmほどの氷の層が取り巻いていると推定される。

エリス表面の反射率アルベドは0.97と極めて高く、土星の衛星エンケラドスとほぼ同じ。率で言えば新雪よりも高い。これはスペクトル解析によれば、窒素を多く含んだ氷と凍ったメタンが1mm未満という極めて薄い層を成しているためとされる。近日点で太陽との距離は57億kmぐらいになるが、この時は表面の物質が気化して、極薄い大気を持つ可能性がある。
表面温度は-238度、夜の側はさらに低い。

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ロゼッタ探査機による小惑星Lutetiaの観測について

http://www.spacedaily.com/reports/Rosetta_reveals_the_science_and_mystery_of_Asteroid_Lutetia_999.html

2010年7月10日、ESAの小惑星探査機ロゼッタは、第2の観測対象である21番小惑星、Lutetiaに最接近した。最接近時の距離は3170kmで、搭載されたOSIRISイメージングシステムにより、太陽光の当たる北半分の462枚の画像を撮影、表面の50%ほどを観測することに成功している。OSIRISによる観測と解析は、ドイツのマックス・プランク研究所が中心となって行われた。NASAの保有するDSNの70m級アンテナがマドリード近くにあり、ここを経由して観測と追跡が実施されている。
またこの時、Lutetiaの不規則な形状と、大雑把に121km×101km×75kmといったサイズが明らかになった。

Lutetiaは火星-木星軌道間に存在する小惑星としては最大の天体の一つで、1852年に発見され、金属質のM型小惑星と分類された最初の天体でもあった。しかしその後の電波観測では、M型としてはアルベドが低すぎる事が判明し、可視光と赤外光の観測では輝石コンドライトと炭素質コンドライト、つまり典型的なC型小惑星のように見える。

今回の観測に続く解析では、撮影された領域に存在するクレーターが350個以上確認される。その大きさは600mから55kmまで、深さは最大10kmまで。分布には偏りがあってクレーターの密集したところの方が古く(Achaia地域)、およそ36億年前のものと判定された。それ以前は、球形に近かったのではないかと推定されている。

比較的新しい方のクレーターは北極周辺にあり、直径21kmのクレーターが固まっている(Baetica地域)。最初の衝突で舞い上がったエジェクタの大部分は脱出速度に達せず、表面に降下してクレーター周辺に堆積した。この地域は堆積したエジェクタの影響で、アルベドが低くなった。一方、Achaia地域の明るさは均一。こちらは太陽の輻射、高エネルギー粒子、微小隕石によって一定の割合で「風化」し、全体的に暗くなったものと考えられる。

その他の特徴的な地形としては、火星の衛星フォボスに類似した、大規模な地溝帯のネットワークが確認されている。

表面観測のもう一つの目玉がVisible, InfraRed and Thermal Imaging Spectrometer (VIRTIS)で、可視光と赤外光の領域で、波長ごとの情報をイメージング分光する機器。ハイパースペクトル分光、スペクトル反射分布地図、温度分布地図を取得できる。
表面のスペクトル特性は、地球からの観測と同じく、やはり均一であり、ケイ酸塩やミネラルの水和物や水の痕跡は見つからず、衝突してきた天体の性質は特定できなかった。しかしその分布からは、鉄分を多く含む炭素質コンドライトや頑火輝石コンドライトが主成分である可能性が示唆されてる。
温度分布は、太陽の当たる側で表面温度170Kから245Kまで。50~100ミクロンの粒子の層で覆われていると推定され、スペクトル分布の均一さと合わせて考えれば、表面に均一に広がっているものと思われる(月のレゴリスに相当)。

この他、ドップラー変移法による質量計測を実施し、地球上からの観測よりも高精度で質量が計算されたが、これまでの結果よりも小さい値になったとのこと。しかし画像観測から得られた体積も小さく、密度は3.4g/cm3と算定される。この数値は今まで観測された小惑星の密度、1.2g/cm3~2.7g/cm3に比べて大きく、既知の小惑星で最大。

といった感じで、中身を直接知る手がかりは割と限定的だったようなのだが、高密度であるのは内部構造が多孔性で、その隙間に鉄のような重い金属が入り込んだ状態、という説が考えられてる。小惑星が形成されてから比較的早い時期に溶けた金属が浸透して冷え固まったなど。
Lutetiaは太陽系内で極めて古い天体と考えられているので、これは地球型惑星など、もっと新しい時期に形成された天体とのミッシングリンクとなる。重爆撃期ぐらいの微惑星が現在まで残っている、と考えるのはそれなりに感動的だ。

メッセンジャー探査機6か月の観測成果/ドーン探査機の初期観測/「火星の運河」復権の可能性

メッセンジャー探査機6か月の観測成果

http://www.spacedaily.com/reports/Messages_from_Mercury_999.html

フランス、ナントで開催された欧州惑星科学会議において、NASA水星探査機メッセンジャーの研究チームは、この探査機が水星軌道の周回を始めてから約半年間の観測成果を発表した。その内容は30の論文などからなり、米国天文学会の惑星科学部門が特別講演を行っている。大きな会議における発表は、今回が最初となった。

軌道投入は2011年3月18日。それから半年というのは正確には176日で、水星の自転周期1日分に相当する期間。
観測対象としたのは、地質、地表面の組成と地形、重力場、磁場、大気圏および太陽風との相互作用。最初の本格的な軌道周回型探査ということで、内容は多岐にわたる。
もう少し大きな枠組みでの水星探査の意義としては、岩石からなる天体(いわゆる地球型惑星)の研究や、恒星からの距離と可住圏の情報を集めることで、生命探査や居住に適した惑星探しに役立てる、というのがある。また太陽系内の惑星形成過程の研究にも、大きな成果が期待されている。

・磁場
磁場の中心が水星の中心から大きくずれてることが判明。北極点側、水星の半径の20%あたりに来ている。現在の理論では、惑星のサイズに対して相対的にずれが大きいことになるが、理由はまだわかってない。磁場を形成するダイナモ効果に関連すると考えられている。ただし内部構造が相変わらずよくわかってないので、その先は今後の研究による。
この観測結果は、南半球は北半球より著しく磁場が弱いことを意味しており、北極点の磁場は南極点のそれより3.5倍ほど強いとのこと。

磁場が南北で大きく異なるということは、荷電粒子、太陽風、高エネルギー電子などの大部分が南半球に降り注ぐということにもなるので、水星表面の原子やイオンの組成も非対称となる。

・大気圏
水星は極めて薄い大気圏を持つ。濃厚な大気を維持するだけの重力は無いが、地球の上層大気圏に似た環境でもある。太陽風との相互作用という意味では似た挙動を示すと考えられている。
水星大気がナトリウム、カリウム、カルシウムでできてるという従来の定説はそのままだが、どこから供給されてるかというのは、従来の理論で説明できない結果になってるので、これも修正が必要。磁場の方の理論を修正したら、こっちも影響を受ける。

・地質学的進化と地形
メッセンジャーが軌道周回を始めてから、自転周期1水星日分で、最初の表面映像を観測。取得した観測データは2種類で、一つは1ピクセル250mの8色、もう一つは1ピクセル1kmのフルカラーだった。次の1水星日では不要な部分を飛ばして映像を補間し、全体をより高精細なカラー映像とする。
過去のマリナー10号、メッセンジャーも行ったフライバイ観測では、観測不可能な領域が広く、火山活動による平原形成などの仮説は、完全には証明されなかった。今回は全球観測に引き続いて、重要箇所をX線分析することで、詳細なデータを得ようとしている。

・表面反射スペクトルの変動
水星表面の組成を調べるため、可視光とIRを観測するVIRS、地表面と大気を観測するMASCS、2種類の分光計が搭載されている。VIRSでは目立つ大きな地形を全て調べて、新しい小クレーターや火山活動の痕跡(火砕流など)を詳細に観測する。
フライバイ観測である程度判明していたが、MASCSによる観測結果でも、鉄とケイ酸塩はほとんど鉱物に含まれていないことがわかった。IR観測によるミネラルの探査は継続中。存在しても量は極少ないと考えられている。UV観測でも地表面に鉄がほとんど存在しないことがわかってきたが、新しいクレーターなどの特別な地形を重点的に探す。鉄が少なく硫黄が多い環境のようだ。

・今後の展開
2014年にはベピ・コロンボの打ち上げが予定されているので、それに繋がるような観測が期待される。
先月には研究チームがメッセンジャーの初期観測データを携え、京大の研究者との会合を開いた。これは過去10年以上続いているもので、2つのチームが密に連絡を取り合うことにより、双方の探査機が最大の成果を挙げられるように働いている。

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ドーン探査機の初期観測

http://www.spacedaily.com/reports/NASA_Dawn_Science_Team_Presents_Early_Science_Results_999.html

こちらはミネソタ州ミネアポリスでの地質学会にて発表されたもの。研究チームはナントの会議にも出席予定。

ドーン探査機は2011年7月中旬、小惑星ベスタに達し、観測を開始した。

ベスタ地表面には、様々なクレーター、太陽系最大級の山、赤道を取り巻くように形成された峡谷といった、特徴的な地形が存在する。
南半球は北半球よりも新しいクレーターが多い(10~20億年前に形成)。これらは南半球に巨大な規模の衝突が起こった後に形成された、という仮説があり、シミュレーションモデルともよく一致するとのこと。

ドーン探査機は、螺旋軌道を周回しながらベスタ表面に接近していったため、時間が経過するほど精密なデータが得られた。8月初めから終わりにかけて高度2700kmの軌道に入り、9月29日、高度680km、High Altitude Mapping Orbitと呼ばれる軌道に到達している。

今後ドーン探査機は、2012年7月までの1年間ベスタの観測を続け、それから準惑星セレスに向かう。2015年に到達予定。

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「火星の運河」復権の可能性

http://www.marsdaily.com/reports/Tracing_the_Canals_of_Mars_999.html

火星探査機MROに搭載されたHiRISEカメラは、これまでにない高解像度で火星地表面の光学観測を5年にわたって続けている。

今年8月、研究チームはそれまで観測されたことがなかった黒い筋を確認した。火星の南半球側で、水が斜面を流れたと思しき痕跡が見つかったとのこと。研究チームでは夏に出現して冬に消えると推定しており、夏には塩分を含んだ水が斜面を流れ下っているのではないか、と考えている。

スキャパレリ、ローウェルのころの19世紀科学ロマン的な意味合いでは、運河は高度文明の所産ということになってたので、まあ全然違うけど水が流れるところだけは同じだ。

 

別の記事では火山性のものという可能性も示唆されている。

http://www.marsdaily.com/reports/New_Mystery_On_Mars_Forgotten_Plains_999.html

SLSに本国でも賛否分かれる/ スペースシャトルの外部燃料タンクの思い出/J-2Xの試験

SLSに本国でも賛否分かれる

http://www.space-travel.com/reports/NASA_new_plan_for_massive_rocket_greeted_with_enthusiasm_criticism_999.html

Space Launch System (SLS)は、サターンV型を上回るという点だけでも十分に壮大な計画ではあるが、年間で30~35億ドルとされるコストは決して安くない。このため、米議会でもいろいろな立場を反映して賛否が分かれてる状態のようだ。

計画通りなら2017年に最初の無人打ち上げが行われる。高さ400ft(サターンV型より50ft高い)、ブースタ推力は400~500万ポンドに達し、大雑把にサターンV型よりも20%ほど強力。さらに能力向上の可能性としては、LEOまでペイロード70~130tonという試算があり、実現すればスペースシャトルの27tonを大きく上回る。ただし製造メーカーは未定。

南カリフォルニア、共和党、下院科学委員会のDana Rohrabacher下院議員は、所要コストが新しさも革新性もない計画には見合わないと断じ、サターンの時のように何機か打ち上げたら予算難で終了するだろうと述べた。
また、目的がはっきりしていないにも関わらずスペースシャトルの後継機(規模の壮大さ、米国の象徴・フラグシップ的な意味合いは別として)と位置づけられたのも異例であるが、NASAとしては設計開発と試験を終えた段階で科学ミッションと目的を決定するとしている。可能性で言えば火星や小惑星帯への有人探査という話はある。

この他、同じくカリフォルニア州の共和党、「宇宙ティーパーティ」グループのTom McClintock下院議員は9月22日、GAOの長に宛てた文書で、SLSに関わる企業の選定について(新しく公開入札とかをするのではなく)途中でキャンセルされたりした計画を元に、事実上の指名契約を行おうとしている、と主張した。
実際コンステレーション計画絡みの3社、ATK、ボーイング、P&Wロケットダインはそのまんまなので、言われても仕方ない。
これに対する回答はGAOからもNASAからもまだ無いとのこと。

一方、賛成意見は宇宙関連のロビーが強いとこの民主党議員が中心。
フロリダ州オーランドの民主党、Bill Nelson上院議員は、SLSが実現すればここ数十年で最大規模の宇宙探査が可能で、最終的なゴールは外宇宙(地球-月系より遠く、位の意味か?)への有人計画となる、と述べた。
またテキサス州の民主党、Kay Bailey Hutchison上院議員も賛同を表明してる。

いずれにせよ、2012年の選挙で大統領と議会の勢力図がどうなるかというのが大きい。オバマ大統領というか民主党苦戦が伝えられるが…
場合によってはNASAのCharles Bolden長官が議会で証言することになるやもしれん、と書いてある。

現政権、オバマ大統領の宇宙政策に関しては、スペースシャトル退役後の人員輸送手段が少なくとも2015年までロシアのソユーズに頼らなきゃならなくなった件、月を捨てたことで実はコンステレーションより後退している気もするSLSの件などで十字砲火を浴びてる状態。

http://www.space-travel.com/reports/Obama_under_fire_over_space_plans_999.html

スペースシャトル後継を新興の民間企業に任せたのは英断と言えるが、SpaceXをはじめ、経験値が全然足りないっつーのも事実だからなあ。しかも競争相手は世界一の実績を誇る有人宇宙機のソユーズ。批判されるのも仕方ないとこではある。

「2020年に月」から「2025年に小惑星帯」というのは、やっぱり後退したようにも思えるというか、地球重力井戸の外の恒久基地が先じゃないのみたいな外野の意見にも一理あるし、まして中国やらどこやらが月を次の目標に定めてる状況を放置していいのか、という意見も当然出る。
この手の発言はニール・アームストロングやユージン・サーナンといった元宇宙飛行士から出てる。その他、下院の科学宇宙技術委員会の議長で共和党のRalph Hall下院議員もこれに同意する立場で、さらにこれまでの技術の蓄積が散逸することに懸念を表明。マイケル・グリフィン元NASA長官も否定的な見方を示してる。

 

この辺青筋立てて論じるのはえらぁい人に任す。

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スペースシャトルの外部燃料タンクの思い出

http://www.space-travel.com/reports/External_Tank_Was_Backbone_Of_Shuttle_Launches_999.html

最後のET、ET138は他と同様に、ルイジアナ州Michoud組立工場から900マイルほど輸送され、去年7月13日にKSC内のVABに運び込まれた。その後、2011年7月8日のSTS-135の打ち上げに使われている。

外部燃料タンク(ET)はスペースシャトルの背骨とも呼ばれていたが、実際に推力方向の荷重の一部を分担する構造にもなっていた。
ETの本体重量は58000ポンド、燃料が入って160万ポンド。高さは15階建てのビルを上回る。外のオレンジ色は吹き付けの泡状断熱材で中はアルミ構造。下は液体水素で、上は液体酸素が入ってた。

最初の打ち上げをリアルタイムで見てた人は知っていると思うが、STS-1とSTS-2までETの外部は白かった。これはオレンジ色の外に白い塗料を塗っていたためで、STS-3からは重量軽減のためにオレンジ色まんまになっている。塗料の重量は600ポンドほどだったそうだ。
ETにはスペースシャトル現役期間に、数度の改設計と材質変更が加えられ、最初のコロンビアに使われたものと最後のものを比べると、17000ポンド軽いという。
このほか、コロンビアの事故後に変更が加えられてる。カメラも付いたのもこの時。

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J-2Xの試験

http://www.space-travel.com/reports/NASA_Tests_Deep_Space_J2X_Rocket_Engine_at_Stennis_999.html

9月28日、ステニス宇宙センターにて40秒間の運転試験が実施されている。
今の計画では、SLSの上段に使われるエンジンにあたる。

http://www.nasa.gov/mission_pages/j2x/40_second_test.html

SKAに向けた電波天文台群の光ファイバ網接続完了/ロシアの宇宙電波干渉計RadioAstron/Spektor-R/STS-135のアトランティスが帰還、残存したスペースシャトル全機の退役/NASAのドーン探査機がベスタ周回軌道に到達

SKAに向けた電波天文台群の光ファイバ網接続完了

http://www.spacedaily.com/reports/Big_step_forward_for_SKA_999.html

将来のSKAは、数千の電波望遠鏡同士を国際的な光ファイバ網で接続する計画であるが、これは地域をオーストラリアとニュージーランドに限った、より小規模な実地テストとなるもの。
光ファイバ網で接続されたのは、CSIROが建設・管理するオーストラリア西部のSKAパスファインダー(ASKAP)、ニューサウスウェールズの3基のほか、タスマニア大とオークランド工科大の2基を合わせて6基。最初の観測対象は、クエーサーのPKS0637-752。この電波源は、互いの周囲を回る2つのブラックホールとも推測されている。
全てのデータは、パースのカーティン大にある国際電波天文学研究センターでストリーミング処理され、リアルタイム画像を作成する。望遠鏡の制御も、インターネットを介して直接行える。

接続する望遠鏡が増えて、ネットワークが大規模になるほど通信速度が必要になるが、オーストラリアの研究所にデータ網を提供するAARNetでは、既存の光ファイバで最大40Gbpsの通信速度を達成する技術も実証済み。

http://www.skatelescope.org/

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ロシアの宇宙電波干渉計RadioAstron/Spektor-R

http://www.asc.rssi.ru/radioastron/

http://www.gizmag.com/russian-radioastron-largest-telescope-launched/19294/

http://www.youtube.com/watch?v=km45CzGApa8

電波干渉計ということならとにかく遠く離して配置すればイイ、ということで、むかしラグランジュポイントか、いっそのこと太陽を回る軌道に置けばいいんじゃねというアイディアもあったような気がするが、

http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/aboutalma/more/system.html

ここの最後の部分にあるように、事はそこまで単純じゃない。とは言え、全く意義がないわけでももちろんない。

RadioAstron/Spektr-Rのアンテナは直径10m。長楕円軌道に乗せることで、様々な相対位置での観測は可能になる。地球と月の間を周回するが、安定した軌道には乗らない。詳細はPDFとかで。

http://www.asc.rssi.ru/radioastron/_files/bdescr2011_en.pdf

http://www.russianspaceweb.com/spektr_r.html

実は21世紀に入って初めて打ち上げるロシアの天文衛星でもあるが、元々は1980年代からのプランだった。その後VSOP計画なんかもあったので、2002年には計画に高いプライオリティが与えられ、2004~2006年、遅くとも2007年打ち上げが予定されていた。設計は1980年代の時点からNPOラボーチキンが担当。

http://www.laspace.ru/rus/index.php

日米中心の最初のスペースVLBI、VSOP計画などのMUSES-B「はるか」は、2005年まで運用されている。これは直径10m(有効径8m)のアンテナを持ち、近地点560km、遠地点21000kmの長楕円軌道を周回した。

http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/halca/index.shtml

VSOP-2計画のASTRO-Gの足音も聞こえてくる中での打ち上げとなったわけだ。

http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/astro-g/index.shtml

これらは金属メッシュ鏡面のアンテナ展開が技術的に難しかったというが、ロシアは打ち上げ手段として強力なプロトンやゼニットが使える(今回使用されたのはゼニット2SB)ので、投入質量もM-Vの数倍。アンテナには硬質のパネルが使われてるみたい。このへんは考え方が根本から違いそうだ。

この手の計画が実行まで行くのはあまり例がなく、観測可能な周波数帯域もこれまで以上に広いため、各国の参加する国際計画となっている。ただしGizmagの記事では、地上局のデータ受信がモスクワ近郊の22m級アンテナしかなくて貧弱という点が指摘されている。もっとあちこちで受けられないと意味が無くなる。なおデータ送信は32Mbpsと144Mbpsの2系統とのこと。

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STS-135のアトランティスが帰還、残存したスペースシャトル全機の退役

http://www.astroarts.co.jp/news/2011/07/22atlantis/index-j.shtml

様々な意味で、宇宙開発におけるアメリカアズナンバーワンの象徴的な存在だったと言えるだろう。

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NASAのドーン探査機がベスタ周回軌道に到達

http://www.astroarts.co.jp/news/2011/07/19dawn/index-j.shtml

現在は軌道調整中。観測以外の話題としてはイオンエンジンNSTARの搭載がある。移動距離は4年で28億kmに達するそうだ。
ベスタ軌道上からの観測は1年で、2015年2月にはケレスに達する予定。今はセレスって言わないのね。