USAFのF-16近代化改修計画の変更について/台湾向けF-16アップグレードの契約が締結される/B-2向けEHF通信機アップグレード/定期整備中のJSTARSにサボタージュの痕跡が発見される/F-35の低率生産分のアップグレード改修について

USAFのF-16近代化改修計画の変更について

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-air-force-changes-acquisitions-strategy-for-f-16-radar-modernization-377627/

USAFのF-16近代化改修計画は、F-16 Combat Avionics Programmed Extension Suite (CAPES)と呼ばれるもので、レーダーの関する部分はF-16 Radar Modernization Programとされ、CAPESに含まれている。改修を施す機数は、最終的には300機程度が考えられている。

従来計画だと、F-16 Radar Modernization ProgramにおいてはCAPESの主契約(prime integrator)のLMに対し、発注側がレーダーを支給しLMが機体に組み込む、という形式になっていたのだが、このレーダーはCFE (Contractor Furnished Equipment)として取り扱われることになった。つまりは主契約のLMがレーダー選定、調達から組み込みまでを行うことになるらしい。

何度か出ているが、F-16向けAESAはノースロップグラマンのSABRとレイセオンのRACRの2機種が存在する。前者はF-22のAPG-77、F-16E/FのAPG-80、F-35のAPG-81と関連しており、後者は同様にF-15CのAPG-63(v)3、F/A-18E/FのAPG-79、F-15EのAPB-82と関連する。今のところF-15系の改修でレイセオンの方に実績がある。

LMでは、既に両方のレーダーを自社のシステムインテグレーションラボにおいて試験したとのことで、実際に飛行試験まで行われているようだ。しかし自分のところに決定権が回ってくるとは考えてなかったため、どちらがどうという判断はしていない。ただ、どちらもUSAFの要求性能を満たしているのは確認済とのこと。
とは言え、2018年Q4までに24機の引き渡しというCAPESのスケジュール、実際のインテグレーションと標準化に2~3年かかることから逆算すると、時間はあまりない。レーダーだけでなくアビオニクス統合、コクピットの中央表示装置の交換、EW能力の強化、データリンクなどのインテグレーションがあるため、レーダーは最重要ではあるものの、要素としては一部分に過ぎない。

なお、このあたりの開発は台湾向けと共通で進められるようだ。LMとしては、世界で使われているF-16の新たな標準仕様とすることを望んでいる(例外となるのはBAEシステムズと契約した韓国のF-16アップグレード)。
このアップグレード改修キットは、台湾向けとUSAF向け合わせて550セットが確定。
これと別に輸出向け新造機は100機程度が契約見込みとなっている。

AESA以外で進行中の案件としては、機体寿命延長に関する研究。試験機はジグ上に設置済みで、10月11日に事前チェックを終えた。本試験は年内に開始予定となっている。

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台湾向けF-16アップグレードの契約が締結される

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-wins-185bn-contract-to-upgrade-taiwans-f-16s-377178/

7月の政府間合意(総額38億ドル)の一部となるもので、金額は18億5000万ドル。ROCAFのF-16A/B×145機について改修を実施する。
内容は概ねUSAFのCAPESに準じるが、この時の発表では、レーダーに関して未定とされていた。
上の記事はこの直後に出てきたので、USAF向けと同様の経過を辿ると考えられる。輸出と共通化するから、LMの方に主導権を移したような感じなのかな。

一方、韓国の方はLMから離れたのでどうなるか全くわからん。同国の調達官庁DAPAによると2013年に選定予定ということにはなっている。こちらはC/D型で機数は134機。

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B-2向けEHF通信機アップグレード

http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-begins-production-of-b-2-satcom-upgrade-377584/

ノースロップグラマンはB-2のEHF通信機アップグレード、インクリメント1の生産を開始した。9月28日に契約したもので、金額は1億800万ドル。このインクリメント1では、単に無線機を交換するだけでなく、プロセッサの交換、ネットワークケーブルの光ファイバ化やディスクドライブの大容量化といった内容が含まれており、メーカーでは全体的な情報処理能力が大きく拡大されるとしている。

EHFインクリメント1のOTは、ソフト、ハードとも7月末に完了。ノースロップグラマンによると、SDD段階で少数の機体に新しいサブシステムを搭載しはじめているとのこと。

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定期整備中のJSTARSにサボタージュの痕跡が発見される

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-investigating-potential-jstars-sabotage-incident-377576/

ルイジアナ州レイク・チャールズ(ノースロップグラマンが保有・運営する施設)にて定期整備中のE-8の1機で、ワイヤが切断されているのが発見された。
同施設内の他の機体を点検したところ、もう1機でも同様の状況が確認され、USAFは何者かによる意図的なサボタージュの疑いありとして、調査を開始している。

現在E-8の整備と保管は、ノースロップグラマンがこの施設で一手に引き受けている状態となっているようだ。
ノースロップグラマンからのコメントは記事の時点では無し。

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F-35の低率生産分のアップグレード改修について

http://www.flightglobal.com/news/articles/jpo-plans-to-award-lockheed-upgrade-contract-for-93-f-35s-377526/

F-35 JPOではLMに対し、標準仕様のBlock 3未満に該当する低率生産分の機体について、アップグレード改修を発注予定。具体的にはLRIP-2からLRIP-5までの93機がこれにあたる。3iとか3Fというのはよくわからんが、LRIP-5ではBlock 2Bにとどまった。

参考:Acrobat起動注意。

www.f-16.net/f-16_forum_download-id-16260.html

http://s3.documentcloud.org/documents/274217/dod-quick-look-ahern-report.pdf

現状、JPOは競争入札を想定していない(=LMへの指名発注)が、競争入札を求めるメーカーなどが出てくる可能性には触れている。
LMではこれに対し、経費見積のデータを出すなどの対応を行う。

ただしLRIPの初期の機体をアップグレードするには多大な経費がかかるとの指摘もある。そうした見解を提示している一人がレキシントン研究所のダン・グール氏。
製造スケジュールを先送りしたのは、Block 3で本格的な量産を開始して、事後の改修にかかるコストを下げるためであり(その分Block 3未満の機数は減ってるのだから)、あえて遡って手を加えるのは本末転倒、という結論となる。
加えて、Block 3未満の機体でも現用のF-16などよりも優れている部分はあるのだから、そのまま使ってもいいのではないか?というような意見も出されている。

F-16というか、Block 2まではイメージ的にはF-117みたいな感じなのだが。レーダーとかは強いけどガンもないし。
せめて機外搭載ぐらいはできるようにした方がいいのでは。

艦載兵器関連/台湾に雄風IIEが配備される?/LCS-3が予定より2ヶ月早く引き渡される/オーストラリアが次世代潜水艦の建造計画に着手

艦載兵器関連

・RAMのランチャーからグリフィンBの発射試験が行われる

http://navaltoday.com/2012/04/20/usa-navy-fires-raytheons-griffin-b-missile/

http://www.spacedaily.com/reports/US_Navy_Fires_Raytheon_Griffin_Missile_From_RAM_Launcher_999.html

4月の記事。
USNの発表によると、レイセオンは2011年Q3に、小型空対地ミサイルのグリフィンBを、改修したRAMのランチャーから発射するデモンストレーションを行った。地上に設置されたランチャーから約2マイル先の静止目標に対して発射され、命中している。
グリフィンの誘導方式はGPSまたはレーザで、空中発射型のグリフィンAはHARVEST HAWKにインテグレーションされた。グリフィンBは回転翼機、固定翼機からの運用に加えて地上発射も可能となったタイプ。信管は目標に応じて空中爆発、着発、遅発のモードが選択できる。全長43インチ、重量33ポンド、弾頭重量13ポンド。

改修は必要だが、RAMのランチャーから撃てるASuMということで、FACとの交戦や対地攻撃にRAMが使えるようになる。
砲ほど柔軟に運用できるわけではないにせよ、対空戦闘以外へ用途を広げるのは比較的容易になりそうだ。

・LMがExLSをオーストラリアで試験

http://www.spacedaily.com/reports/Lockheed_Martin_New_Standalone_Launching_System_Significantly_Reduces_Weapons_Integration_Costs_999.html

5月5日、LMは、オーストラリア南部でRAAF管理下のウーメラ・テストレンジにおいて、ExLSからの発射試験を実施した。

この垂直型発射機はExtensible Launching System(ExLS)と呼ばれるもので、Mk.41から派生した小規模VLS。ランチャー外部のサブシステムから制御されて、大型ミサイルを撃てるMk.41やMk.57などとは異なり、単体で完結したシステムとなっている。ただし、底部に制御系を納めたため、キャニスタを上げ底したような形になり、小型のミサイルしか搭載できない。これに適合するのはNLOS-LS/PAMやRAM Block 2、Nulkaデコイなどで、1基につき4発が搭載可能。

http://media.defenseindustrydaily.com/images/ORD_ExLS_Insert_Explained_lg.jpg

NLOS-LSとの関連が強かったが、周知の通り、同計画は2010年正式キャンセル。
ExLSは、単体でセル1基から搭載できることから、既存のVLSよりも小型の艦艇に搭載でき、在来艦艇へのインテグレーションか容易というのを前面に押し出している。

Nulkaは艦船そのもののデコイで、主に対巡航ミサイル防御用となる。豪州BAEシステムズで開発された。
この試験では2発のNulkaの発射が行われている。

http://www.nrl.navy.mil/tew/5710/

他のミサイル等に対しては、上げ底部分(アダプター)を変更することで対応でき、コスト的な効率も良いとしている。

・USNがトマホーク Block IVを発注

http://www.spacedaily.com/reports/US_Navy_awards_Raytheon_contract_for_Tomahawk_999.html

2011年のオデッセイ・ドーン作戦で射耗した分を含む追加発注で、総額3億3800万ドル。

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台湾に雄風IIEが配備される?

http://www.spacedaily.com/reports/Taiwan_deploys_anti-China_missiles_report_999.html

5月28日、台湾の地元マスコミが雄風IIEの配備を報じた。雄風IIEは射程500kmクラスの巡航ミサイルと言われており、中国本土を射程に収める可能性がある。
言い換えると、台湾が中国本土を攻撃可能なミサイルを初めて装備したと言うことになる。詳細は不明だが、100発程度が配備されたとも。

これとは直接関係無いが、

http://www.spacewar.com/reports/Taiwan_probes_stealth_boats_missing_computer_999.html

6月11日、台湾の最新鋭ミサイル艇、光華6号艦の1隻でラップトップコンピュータの紛失事故が発生と報道される。5月下旬のこととされており、場所は左営海軍基地。初期の調査では、紛失の状況などがほとんど判明していないという。
この機材は民間所有となっているものだが、6ヶ月間にわたって秘話通信装置の試験のために持ち込まれていた。物が物だけに、情報漏洩となれば結果は重大なものになる。

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LCS-3が予定より2ヶ月早く引き渡される

http://www.spacewar.com/reports/US_Navy_Littoral_Combat_Ship_Delivered_Two_Months_Early_999.html

LMの方のLCSとしては2隻目、全体では3番艦のLCS-3 フォートワースは今年5月、予定より2ヶ月早くUSNの受入検査(五大湖で行われた)に合格し、引き渡された。
新世代の艦艇としては異例の前倒しスケジュールであり、これにはUSNも大喜び。

http://www.spacewar.com/reports/Third_US_Littoral_Combat_Ship_Completes_Acceptance_Trials_999.html

トライアルの内容について報じられた記事。4月30日から5月4日までの日程で行われ、4時間の全速航行と対空・対水上戦のデモンストレーションなどを行っている。

LCS-3フォートワースはLCS-1フリーダムに続く2隻目で、さらにLCS-5ミルウォーキー、LCS-7デトロイトが建造中。LCS-9リトルロック、LCS-11スー・シティは3月に予算がついたので、部材調達などがスタートしている。
こっちのLCSチームにはフィンカンティエーリも入ってるのね。

偶数番のLCS、ノースロップグラマン/オースタルの方は、LCS-2インデペンデンスの後がLCS-4コロナードで、1月に進水し、今年後半に受入検査を経て引き渡し予定、LCS-6ジャクソン、LCS-8モンゴメリーはモジュール建造がスタートしている。

http://www.austal.com/us/media/media-releases/12-01-11/Austal-Launches-2nd-Littoral-Combat-Ship.aspx

LCSでは押され気味だが、オースタルは高速輸送艦のJHSV-2チョクトー・カントリーとJHSV-3を受注して建造が始まっている。元々の計画だと10隻建造予定で、艦名もだいたい付いてたのだが、番号と名前が振り直されてるようだ。過去の予算で部材調達が先行していたようなので、2隻目以降の建造が決まってからの着工は早かった。

http://www.austal.com/en/products-and-services/defence-products/naval-vessels/joint-high-speed-vessel-jhsv.aspx

しかしTSV-1XスピアヘッドとJHSV-1スピアヘッドは別物であったりしてややこしい。
ただでさえあの辺の高速輸送艦試用期間の流れは陸軍が絡んでややこしいのに。名前変えてください。

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一方DD(X)ことDDG-1000の方は中々話が進んでないが、建造は進行中。
艦体ブロックが構内を移動して組み立てられる様子を早送りで。3月にバス鉄工所で撮影されたもの。

http://defensetech.org/2012/04/05/awesome-video-ddg-1000-coming-together/

搭載センサなどの中身については、レイセオンの関与する部分が大きい。

http://www.raytheon.com/capabilities/products/zumwalt/

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オーストラリアが次世代潜水艦の建造計画に着手

http://www.spacewar.com/reports/Australia_kicks_off_submarine_replacement_999.html

オーストラリア国防省は、Expert Panel of the Future Submarine Industry Skills Planという将来潜水艦計画専門の組織を設け、関連する造船・防衛産業各メーカー及び教育機関との協議を始めた。産業界からはLM、レイセオン、ボーイング、タレス、サーブシステムズ、BAEシステムズなどの主要な海軍システムインテグレータと、ASC、オースタル、BAEシステムズとフォルガーチエンジニアリングなど、主要な地元造船会社が参画する。次の30年にわたって造船業界の雇用にも大きな影響を与えるので、政府機関の代表者だけではなく、組合の代表者も加わる。
オーストラリアでは5月に、将来潜水艦を建造するための最初の段階として、2億1400万ドルの研究費用を計上した。推進システムの地上試験設備も計画されている。Future Submarine Projectと呼ばれ、数は12隻、通常動力潜水艦となるところまでは確定。オーストラリア最大の軍事的プロジェクトとなる見込み。

この組織の管轄には、各種システムの設計計画から建造計画、部材調達、リスクマネジメント、予算及び財務管理までが含まれ、難易度の高い作業にあたる熟練工(溶接、ボイラー、電気などの各専門工)が足りるかどうかも調査されることになっている。コリンズ級のときは溶接の問題もあったんだっけ。今は一応、世界最強通常潜みたいな持ち上げられ方になってるけど…

またオーストラリア政府は、独自開発以外の選択肢として、フランスのDCNS、ドイツのHDW、スペインのニルヴァーナから購入することも検討している。ここら辺もコリンズ級のときと同じだ。DCNSならスコルペヌ型、HDWならType212か214、ニルヴァーナならS-80が代表的。
昨年暮れの2011年12月には3社に対してRfIが発出され、地上試験設備についてはバブコック造船に研究を委託した。

また、これとは別に現用のコリンズ級6隻を維持する必要もある。1996年から就役し、退役は2025年以降とされているので、継続的なアップデートが欠かせない。起こり得る旧式化問題について、同級の設計を提供し、建造にも携わったスウェーデン、コックムス造船と検討を進めているとのこと。

米軍用機で見つかった中国製パーツ偽装問題の顛末/MC-130Jのフルモーションシミュレータ訓練が開始される/台湾へのF-16売却を認める法案が米下院を通過

米軍用機で見つかった中国製パーツ偽装問題の顛末

http://www.flightglobal.com/news/articles/china-made-counterfeit-parts-found-in-us-military-aircraft-senate-372155/

米上院軍事委員会は、一部の米軍機(C-27J、C-130J、P-8Aなど)で見つかった、機能しない偽装電子機器の供給元が中国であった事を報告した。調査は個別のパーツ数にして100万、1800ケースが対象となり、報告書は112ページにのぼる。

報告書には、具体的なルートについての調査結果もある。2011年11月にL-3ディスプレイシステムズで生産したコクピットの表示装置の例では、偽のメモリチップが入っており、発見された時点で500以上が取り付けられていた。カリフォルニアの卸業者を通してシンセンの会社から買ったものだった。報告書では、2009年と2010年に数万個単位で同じ会社から買ったと結論されている。

P-8Aの例は凍結を検出する部品で、2011年8月17日にボーイングから海軍へ報告が上がったが、その18か月前、2010年1月に製造者のBAEシステムズも海軍に報告を上げている。こちらもカリフォルニアの会社から買ったが、さらにそこはフロリダの会社から買っており、製造元まで辿るとこれも別のシンセンの会社に行きついた。

対策としては、元請に渡す前にちゃんと試験しましょう、という話になるのだが、サプライチェーン的な意味で国防上の弱点となる深刻な話でもあるので、同委員会では対策を法制化する準備を進めているそうだ。

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MC-130Jのフルモーションシミュレータ訓練が開始される

www.flightglobal.com/news/articles/afsoc-mc-130j-crews-start-training-in-new-full-motion-sims-372209/

ニューメキシコ州のカートランドAFBにおいて、空軍特殊戦(AFSOC)のMC-130Jの乗員訓練が開始される。2月からAETCにて準備が進められていたもので、フルモーションシミュレータを使用した訓練となる。MC-130J weapons system trainer (WST)は、FAAのレベルDフルモーションシミュレータと同等のものに、実機同様のミッションシステムのシミュレータを組み込んだもので、各種センサ、EW、NVG環境と戦場における脅威などを再現する。さらにシミュレータをネットワークで結び、複数の基地に設置されたシミュレータで同じ仮想環境における訓練が実施できたりもする。

MC-130J専任となるコンバット・システム・オペレータ(CSO)は3月から転換訓練を開始した。またHC-130Jの搭乗経験があるCSOの訓練は4月からで、同じくパイロットとロードマスターは5月から開始されている。なおHC-130JとMC-130Jは同じシミュレータで訓練できる。

シミュレータでできることが拡大されたため、訓練のうち80%は座学とシミュレータ、残り20%は飛行訓練となった。AFSOCはmulti-function training aid (MFTA)を導入を命じられた最初の組織でもあり、今後も日常的な訓練などに、その役割は広がっていく見込み。将来のAC-130Jでもシミュレータ訓練が大きな役割を果たしそうだ。

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台湾へのF-16売却を認める法案が米下院を通過

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-house-of-representatives-mandates-taiwan-f-16-sale-372084/

5月18日、台湾へのF-16売却を認める法案が米下院にて賛成多数で可決。ただし上院で同様の結果になる可能性は低いと見られている。

台湾への輸出に関する部分は、テキサス州選出のKay Granger共和党議員が防衛関連法案に書き加えたものだった。上院での支持は限定的で、同じテキサス州選出の上院議員などはこれを評価している。
オバマ大統領はここ数カ月、F-16売却についての対応を変更することを示唆しているが、一連の動きはF-16改修に関して中国側の反応が予想されたほど激しくなく、実際には一部のイベントが流れた程度に留まっ、て事務レベル協議と高レベル対話は継続されていた事と関連している。

少数のF-22パイロットが飛行を拒否する/LASの改訂版RfPが発出される/A2ADと第5世代戦闘機、nano-UAV/台湾向けF-16に関する新たな動き

少数のF-22パイロットが飛行を拒否する

http://www.flightglobal.com/news/articles/some-f-22-pilots-decline-to-fly-371339/

ACCの長であるMike Hostage大将は4月30日、ラングレーAFBでの共同会見において、ごく少数のF-22パイロットが飛行を拒否している事について述べた。まだ進行中の事象らしく、センシティブな問題であるとしたが、F-22における酸素発生装置関係のトラブル(11例あった)が完全に解決されないまま、任務に復帰させた事が理由になっている。この件は何度も報じられた通り、5ヶ月の飛行停止と調査が行われ、その後も累計12000時間ほど飛行しているが、未だ原因は明らかとなっていない。このため、不安を抱くパイロットがいるのも全く不思議ではないと言える。

彼らの処遇については、搭乗するよう強制することも、簡単に他の任務に就けることも難しいようだ。結局のところは再発リスクを可能な限り抑えたから大丈夫、と説得するしかないみたい。

会見の中でもう一つ、UAEへの展開についても触れられている。昨年と同じくAl  Dhafra基地へ展開したと見られるが、公式にはコメントが出ていない。ある情報源によると、UAEへの展開は航空遠征軍のルーチンに組み込まれ、ホロマンAFBの49FW / 7FSから派遣されたとのこと。

で、ここの記事に出てる写真の最後のF-22は5月2日、ジョージアのマリエッタ工場でUSAFに引き渡されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-usaf-receives-last-f-22-raptor-371401/

式典が催され、USAFからは参謀長のノートン・シュワルツ大将なども出席した。テイルナンバーは10-4195。
5月4日には4193とともにエレメンドルフ統合基地へ移動したはず。

以下、沿革と改修予定について書かれてる。改修に関する部分を要約しておくと、

2014年内にインクリメント3.2A、これはソフトウェア改修で、電子的保護技術と戦闘情報識別の強化、Link 16と機載センサ情報の統合などが含まれる。

そのフォローアップにあたるのが3.2Bで、3.2Aのソフトウェア改修にAIM-120DとAIM-9Xのインテグレーションが加えられる。改修キットの調達に関するマイルストンBが2012年12月予定。これが通るとFY2016から調達開始、FY2017Q3から引き渡し、FY2018Q1に改修を実施となる。
3.2Bはさらに細かくアップデートが分かれており、兵装関連は2017年以前に搭載可能となる計画。2013年のアップデート4でAIM-120D、2015年のアップデート5でAIM-9Xを、一応運用できるようにする。
一方、GAOの勧告で削られた要素もある。SDBの独立8目標誘導と対地衝突防止システムAuto-GCASがそれで、後者は機上酸素発生装置のトラブル対策としても謳われていたものだ。これさえあれば安心というものではないが、最後の安全装置としては重視されていた。

その先はまだLM社内の研究段階ながら、搭載コンピュータのオープンシステムアーキテクチャ化というのがあって、うまく実現すれば、第5世代の枠を拡げるような、大きな可能性が開けるかもしれない。

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LASの改訂版RfPが発出される

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-issues-new-rfp-for-afghan-las-programme-371483/

5月4日夕刻、USAFはLASのRfPを改めて発出した。入札締切は6月4日。以降のスケジュールは、2013年早々に機種選定、2014年Q3に最初の機体をアフガニスタンへ引き渡す、となっている。

前のLASに関しては、シエラネバダ/エムブラエルのA-29スーパーツカノ、ホーカー・ビーチクラフトのテキサンIIの2機種が選定を争う形となっていたが、今度も入札者は同じと見られる。機数は20機で金額は3億5500万ドル。
前回よりも条件は若干緩められているようだ。デモンストレーション無し。中小企業の参加に関する部分も削られた。

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A2ADと第5世代戦闘機、nano-UAV

http://www.flightglobal.com/news/articles/future-nano-uavs-could-collect-isr-in-heavily-defended-airspace-alongside-raptors-and-f-35s-371189/

A2AD環境に対する偵察、ISR能力を、F-22とF-35、2機種の第5世代戦闘機に与えるという研究が始まっている。その先にはnano-UAV群による同様の能力が提供されることになるだろう、という話だが、実現にはまだ時間がかかる。

F-22とF-35、いずれも高度なセンサを備えており、潜在的な情報収集能力に関して不足はないが、収集したデータをどのように送出するかが課題になっているとのこと。ACCとUSAFの科学諮問委員会が共同で研究に当たっている。

この手の話は、機体規模に限界のあるnano-UAVの方がさらに難しそうな気もするが。

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台湾向けF-16に関する新たな動き

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-to-re-visit-f-16-cd-sales-to-taiwan-371349/

テキサス州選出のJohn Cornyn上院議員が、ウェブサイト上で台湾へのF-16売却に関して触れている。大統領副補佐官兼 director of the office of legislative affairs (OLA、立法問題室長?)からの書簡というもので、台湾へのF-16を含む軍事援助は、次期国防副長官にとり高いプライオリティを持つとかなんとか。言うまでもないがテキサス州にはLMの本拠、フォートワースがある。

もし実現すれば例のF-16V (Block60相当)が提供されることになる可能性が高い。

ボーイングがインド向けC-17輸出について契約を締結する/RAAFのF/A-18A/Bの改修/イタリアはF-35の発注機数削減を検討/台湾のF-16A/Bアップグレード交渉進行中/AT-3が空中衝突事故/イスラエルのAH-64Aアップグレード

ボーイングがインド向けC-17輸出について契約を締結する

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-confirms-178-billion-contract-for-india-c-17s-367749/

2月2日、ボーイングはインドと17億8000万ドルの契約を締結したと発表している。ただし内容は明らかでない。2010年のオバマ大統領訪印時のステートメントでは、10機で41億ドルとされていたので、その一部の契約に留まった可能性がある。なおF117エンジンを搭載したC-17の参考価格は、1機あたり2億5000万ドルとされている。

C-17の製造は、USAF向けの発注が、FY2010の10機(全体で223機)を最後に止まってしまうという事情に、大きく影響を受けた。それ以降の製造は、海外顧客の発注状況次第となり、単価を据置のまま継続するためには、年間10機を製造する必要がある。
RAAFなど既存顧客への追加提案や、新たな市場の開拓といった努力が続けられているものの、製造終了の時期を睨みつつ、サプライチェーンの方をコントロールしていかなければならない時期に来ている。現状のまま、5月以降に部品発注を続けるとしたら、それは買い手が付くか判らない機体の分になってしまう。

あとは製造ペースを更に減らして単価を上げるか、別の市場を開拓するかという事になる。
民間向けに転換する案はMD時代からあったが、これは商用航空輸送会社からの評価がイマイチで終了…と思ってたら、まだ完全に潰えたわけじゃなかったみたい。クレア・マカスキル上院議員はFAAに対し、民間型式証明の取得プロセスを早めるよう働きかけているとのこと。MD時代はMD-17、その後はBC-17とかBC-17Xとか呼ばれていたものだ。

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RAAFのF/A-18A/Bの改修

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-l-3-win-contract-extension-for-australian-hornet-modifications-367646/

2003年から続いている改修で、エアフレームのリフレッシュと能力向上を含む。BAEシステムズの現地法人とL-3MASカナダが担当している。
14機の改修が追加されたことで、期間が10か月延長、金額も8000万オーストラリアドルから1億3000万オーストラリアドルまでの増額契約となる。

Hornet Upgrade (HUG) と呼ばれており、アビオニクスや航法装置やレーダーなど、かなり大掛かりな改修になっている。MLU相当。

http://www.defence.gov.au/news/raafnews/editions/4412/story04.htm

http://www.defence.gov.au/DGTA/Documents/DAVENG/Software%20Symposium%20documents/2011/Day%202%20Presentations/HUG%202%20(Hudson%20&%20Saarenpaa)%20-%20USN%20Sw%20Development%20and%2023X%20Compliance%20Finding.pdf

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イタリアはF-35の発注機数削減を検討

http://www.flightglobal.com/news/articles/italy-committed-to-f-35-programme-but-may-cut-order-367733/

イタリアは、JSF計画にはレベル2パートナーとして参加しており、それなりにまとまった数のF-35の導入を表明していた。が、ここに来て2012年の装備調達計画では、14億5000万ユーロの減額という大幅削減が打ち出されており、F-35の発注が槍玉に上がっている模様。
当初のプランではA型×62機、B型×69機、合計131機とされていたものが、B型を中心に20~30機程度の削減幅が提示されているという。

F-35の調達に関しては、既に20億ユーロが費やされているが、全体では174億ユーロにも達する事から、計画は議会から問題視されているのが現状。

とはいうものの、レベル2パートナーとして重要な位置につけている事も確かで、パオラ国防相が建設中の最終組立ラインとFACO施設を視察したり、LMのトム・バーベッジ副社長がイタリアを訪問したりしてる。FACO施設は20の建造物と付随するインフラから構成され、敷地面積は6万平米。2012年末に完成予定という。
これらの施設はイタリア空軍向けに加えて、オランダ空軍向けの約80機も組立を行うことになる。ここでは最終組立、整備、修理、オーバーホール、将来のアップグレード改修まで実施可能。またアレニア・アエロマッキの分担である主翼も製造され、これは2023年まで約1200機分を供給する事になる。全体としては、イタリアの20社ほどが関係する。

また最初のF-35Aがイタリアに引き渡されるのはおよそ2年後で、訓練は米国で行われる予定。

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台湾のF-16A/Bアップグレード交渉進行中

http://www.flightglobal.com/news/articles/taiwan-values-f-16-upgrade-at-nt110-billion-367850/

台湾国防部は、RoCAFの保有するF-16A/B×152機のアップグレード改修について、LMとおよそ1100億台湾ドル(37億米ドル)相当の交渉を行っていると発表した。アップグレード改修の内容についてはまだ確定していないとのことだが、今回の発表は「他の予算を500億台湾ドル削ってアップグレードに充てる」とする地元報道への反論として出されたようだ。
今回の発表された数字は、2011年9月承認時に米側のDSCAから出た、53億米ドルというものより大分低い。この時はAESA×176セット、AN/ALQ-213×176セット、JHMCS×128セットに加えて、AIM-9Xなどの兵装が含まれていたが、台数か何かが削られてる可能性も無くはない。
このままやれば、Block60にも近い仕様となるはず。

AN/ALQ-213 EWMSの公式ページ。

http://www.terma.com/defense/aircraft-survivability-equipment/electronic-warfare-management-systems/

ここで業界的に注目されるのが、AESAに何が採用されるのかという点。
F-16アップグレードのAESAは、ノースロップグラマンのRACRとレイセオンのSABRのいずれかとなる。米国が採用を決めた時点で趨勢が固まると思われるものの、海外含めて大量発注はまだ無い状態が続いている。輸出で言えば、韓国向けの134機分というのも大きい。これは2011年11月から選定を開始している。

最初の発注で勝負が決まるというのが大方の予想らしい。

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AT-3が空中衝突事故

http://www.flightglobal.com/news/articles/taiwan-grounds-at-3-trainers-after-mid-air-collision-367800/

RoCAFの話題がもう一つ。台湾の国産練習機、AIDC AT-3が2月4日、訓練飛行中に空中衝突事故を起こし、1機が墜落した。衝突したもう1機は、自力で基地へ帰投している。墜落した方は乗員2名とも脱出に成功するも腕の骨折などの重傷を負った。この事故を受けて当局はAT-3の飛行停止を発表。

AT-3は1980年代末から12回の事故を起こしており、7人が死亡しているとのこと。画像は飛行展示チームのAT-3。

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イスラエルのAH-64Aアップグレード

http://www.flightglobal.com/news/articles/israel-resumes-apache-upgrade-programme-367647/

イスラエルは元々、AH-64Dの追加導入を望んでいたのだが、最終的にはA型を近代化改修する方を選んだ。3機が米国に送られたが、昨年は予算の都合で計画が凍結された。これが運用上のニーズに合わせるべく再開されたという話。これらの機体は、2012年末にはイスラエルへ戻される事になっている。

イスラエルは現在、AH-64D×18機を運用している。これらの機体は新造または再生機で、イスラエル製の兵装がインテグレーションされており、Sarafと呼ばれる。その他の型を合わせて50機程度が現役。

A型の近代化改修と密接に関連しているのが、米陸軍がAH-64Aの寿命延長を決定するかどうかという点で、余剰となれば譲り受けたい意向があるらしい。米陸軍がD型だけ残すというのは、割とあり得そう。

台湾空軍E-2Tのアップグレード/フィンランド空軍がAGM-158 JASSMの導入を再び計画/米国がインドに対してF-35の売り込みを本格化へ

台湾空軍E-2Tのアップグレード

http://www.spacewar.com/reports/Taiwan_Hawkeye_aircraft_head_for_US_upgrading_999.html

台湾空軍は、15年前からE-2T×4機を保有、運用しており、このうち2機が既にアップグレード改修のため米国へ送られている。地元報道では、残る2機も11月7日早朝、厳しい警備の中、高雄港へ送り出されたとのこと。これに関して台湾空軍はコメントしていない。ただし先に送られた2機の改修作業は進行中で、年内にも台湾に戻される予定と発表された。

2008年の65億ドル分の軍備近代化の一部で、ホークアイ2000仕様へ改修されると見られる。

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フィンランド空軍がAGM-158 JASSMの導入を再び計画

http://www.flightglobal.com/news/articles/finland-launches-fresh-request-for-jassm-weapons-364201/

フィンランドは米国に対し、AGM-158 JASSMの売却を求めた。これは4年前に続いて2度目のことで、前回は議会が承認しなかったため、交渉は不成立に終わっている。もともと、同国の運用するF/A-18C/DのMLU2に合わせて計画されたらしい。一時は外交問題になったとか。

米DSCAが公表したところでは、フィンランドが求めているのは70発+試射用2発で、金額は2億5500万ドルに達するとのこと。

なお、フィンランドが保有するF/A-18の数は、C型×55機とD型(複座練習機型)×7機となっている。
MLU2の内容としては主に対地攻撃能力の付与で、JSOWやJASSMのインテグレーションの他に、IFFの更新や、AN/APG-73への換装等も含まれる模様。

http://www.airforce-technology.com/news/news88702.html

JASSMはNATO諸国ではまだ導入されていない。調べてみたらオランダが導入という話は出てくるが、まだ配備されてないっぽい?

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米国がインドに対してF-35の売り込みを本格化へ

http://www.flightglobal.com/news/articles/usa-keen-to-discuss-f-35-with-india-report-says-364191/

MMRCA選定では、結果としてF-35を持ってこなきゃ相手しません、みたいな流れになって終わったため、その反省を踏まえて今後はF-35の売り込みを本格的に…というか、11月初めにMMRCAが2機種で入札との発表に合わせて出てきた。

具体的に言及こそされていないものの、狙っているのは次のMCAと見られている。MCAは、少なくともFGFAより小規模な機体という話なので、ちょうどF-35が適すると言えば、そういうことにはなる。DRDOはインドで開発する気みたいだけど、簡単ではない。2010年代の終わりまでに飛ばして2020年代半ばに配備といったスケジュールだが…

FGFAとF-35を一緒に使うというのは幾分興味深くはあるが、ちゃんと組み合わせて運用できるんじゃろか。

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ついでに10月中、F-35B BF-2の艦上試験以降にあったこと。

https://www.f35.com/news-events/news-releases.aspx

10月20日、F-35A AF-12がエグリンAFBに到着。

10月25日、F-35B BF-6(生産型1号機に該当) が初飛行を実施。テールレターはVMになっている。VMFA-451か。

10月26日、F-35A AF-13がエグリンAFBへ到着。

2つのオーストラリア警察機関がメタルストームMAULのトライアルを実施へ/RAAFに3機目のKC-30A(A330 MRTT)が納入される/RAAFのWadgetail AEW&CがBersama Lima演習に参加/台湾の早期警戒レーダーが近日中に完成

2つのオーストラリア警察機関がメタルストームMAULのトライアルを実施へ

http://www.spacewar.com/reports/Australian_Police_to_Trial_Metal_Storm_MAUL_999.html

MAULはライフルのバレル下に取り付ける12番ゲージのショットガンで、最近、散弾の他に非殺傷兵器のTASER XREPが使えるようになったらしい。

http://www.taser.com/products/law-enforcement/taser-xrep

スタン弾(ダート)の一種と言える。
近接武器に分類されると思うが、射程距離は100ftとそこそこ長い。

メタルストームはオーストラリアの企業なので、地元での採用に大きく弾みがつくとしている。今まで46の米国の法執行機関、6つの米連邦政府の法執行機関、11の国際的法執行機関から問い合わせがあったそうだ。

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RAAFに3機目のKC-30A(A330 MRTT)が納入される

http://www.spacewar.com/reports/RAAF_receives_another_Airbus_Military_A330_999.html

RAAFはKC-30A×5機の導入を計画しており、これが3機目となる。
今後の納入予定は、4機目が12月にマドリードで納入。5機目はブリスベーンに転換前の機体が到着したばかりで、納入は来年になる。

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RAAFのWadgetail AEW&CがBersama Lima演習に参加

http://www.spacewar.com/reports/Aussie_Wedgetails_complete_exercises_999.html

Bersama Lima演習については、タイフーンが参加したとも報じられていた。

FPDAはマレーシアとシンガポールの防衛を主な動機として、1971年に創設された。英連邦系の5ヶ国が参加。演習はマレー半島と南シナ海周辺で行われている。軍事行動のほか、オーストラリア軍指揮官のコメントによれば、人道支援や災害救援についての可能性を模索する方向性もあるようだ。これも時代の流れという感じ。

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台湾の早期警戒レーダーが近日中に完成

http://www.sinodaily.com/reports/Taiwan_says_early-warning_radar_nearing_completion_999.html

ハードウェアとしてはレイセオンが開発している固定レーダーサイトで、パトリオットSAMと連接して機能する。UHFレーダーで、探知距離は長く、弾道ミサイルから巡航ミサイルまで探知可能とされている。
建設費用は10億ドルだそうだが、山岳地帯にある建設予定地までの道路が崩落するなどのトラブルで一部の工期は3年ほど遅れ、来年完成予定となっている。最近、初の動作試験が実施されたとのこと。

具体的な性能は明らかでないが、中国からのミサイル攻撃に対して、最短でも台湾に到達する6分前に探知できるといった謳い文句。これに関しては、10億ドルかけて6分では高価に過ぎるといった声もあるようだ。時間的には、飛行距離を考えれば、まあそんなもんかなという感じではある。

米空軍の緊縮予算に影響を受ける装備計画について/台湾のF-16A/Bアップグレードが米政府により承認される/米陸軍がCH-47の更なる派生型を研究/LM/ノースロップグラマンがNGM開発継続を表明/CHAMPの最初の飛行試験実施

米空軍の緊縮予算に影響を受ける装備計画について

http://www.flightglobal.com/articles/2011/09/22/362360/trainers-and-helicopters-stuck-in-usaf-budget-limbo.html

軍事予算の縮小に関しては空軍に限った話ではなく、米国の財政問題が根底にあるのは言うまでもないところだが、近年の米空軍においては、自爆気味の選定失敗例や開発難航例が現在進行形で存在するため、厳しく見られるのも当然という部分がある。

9月19日、空軍の航空宇宙カンファレンスで、空軍長官が基調講演に立った。この時、厳しい財政状況の中で、将来にわたり空軍の優位性を維持するために不可欠である、として挙げたのが、F-35とKC-46A、それに偵察衛星だったとのこと。偵察衛星についてもある意味F-35以上の大失敗をやらかしてるのだが、ここでは触れない。

じゃあ名前が挙がらなかった計画はどうなるの?というのがこの記事の趣旨で、T-X、CVLSP、CSARと軽攻撃/航空支援/練習機の4つを取り上げている。

この中で、業界的にも一番大きいのはT-38C×約450機の後継機となるT-X。LMがT-50、北米アレニアがM.346/T-100、BAEシステムズ/ノースロップグラマンのホークのほか、ボーイングはV字尾翼の新型機構想(Advanced Training Concepts)を明らかにしている。

http://www.flightglobal.com/blogs/the-dewline/2011/09/photos-fighter-bomber-trainer.html

2020年前後のT-38C更新を想定しているようだ。F/A-18似というか若干ノースロップくさい。
アレニアは米国でのパートナーが未定。でかいとこは別個に提案してるので、やや苦しいか。

T-38Cは飛行停止に繋がる墜落事故、CVLSPはUH-1の能力不足が言われており、どちらもあまり時間は残されてない。CVLSPの方はストップギャップのH-70系でごまかされそうな気もするが。CSARの来年度予算は未定、CVLSPはドラフト版RfPのまま止まってる。

さらに一番切られそうなのは軽攻撃機。今のところ、EMB-314スーパーツカノの米軍向けA-29とビーチクラフト/LMのAT-6が提案済みではあるものの、全くの新規導入になるし、両院議会でも中止の話が出てるとか。

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台湾のF-16A/Bアップグレードが米政府により承認される

http://www.flightglobal.com/news/articles/usa-approves-53bn-upgrade-for-taiwans-f-16s-362406/

AESAの輸出も認められるようで、金額は53億ドルにのぼる。
内訳としては、AESAレーダー×176、ALQ-213×176、JHMCS×128で、新兵装はAIM-9Xとその他の対地兵装、アビオニクス更新など。F100-PW-220から-229へのエンジンアップグレードはメーカー調査中となっている。
なお現在、台湾が保有するF-16A/Bの総数は152機。
主契約はLM。AESAは2種類存在するが、台湾のイベントに出展した方ならノースロップグラマンのSABRとなるだろう。
Block 15 OCU相当ながら、空対空作戦能力はBlock50並に向上すると思われる。

これと別のスペアパーツと兵站支援についてはF-5やC-130H、経国を対象とする5200万ドル分の取引となる。
パイロット訓練の5億ドル分には、アリゾナ州ルークAFBへのパイロット派遣なども含む。

追加66機の方は10月1日に、米国務省の結論が議会に上がることになっているものの、却下される可能性が高いと考えられている。

関連して9月14日の台湾の報道では、

http://www.sinodaily.com/reports/Taiwan_crash_sparks_calls_for_US_jets_sale_999.html

台湾空軍のF-5FとRF-5が墜落し、搭乗員3名が死亡するという事故があった。
2機は9月13日19時52分に台湾東部の花蓮空軍基地から離陸し、その13分後にレーダーから消失。山腹に衝突する形で墜落したようだ。霧で視界は悪かった模様。

原因調査のため、同型機の飛行は一時停止された。夜間飛行で霧という状況からすると、パイロットエラーの可能性が高いか。老朽化が直接の原因でなくても、就役から35年以上経過した機体と、最新の航法装置を備えた機体とでは、安全性が全然違うのは確かだ。
というか元々F-5に全天候作戦能力は無い。

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米陸軍がCH-47の更なる派生型を研究

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-army-moves-to-set-up-possible-growth-variant-of-ch-47-chinook-362408/

CH-47Hは2020年代の就役を見込んだ派生型となる。9月初めには、米陸軍のレッドストーン兵器廠内に近代化プログラムオフィスが設置されているとのこと。

H型が実現すると第4世代チヌーク(A~Cが最初、Dが2番目、FとMH-47Gが3番目?)になるが、まだ先の話でもあるためか、詳細はまだ検討中らしい。
これまでボーイングが提示したアップグレード案では、ローターハブ、トランスミッションの改良で揚力が1ton程度増加できるほか、金はかかるがリエンジンによる能力向上も可能としていたようだ。具体的には、F型のハネウェルT55(4870shp)を7500shp級のエンジンに換装した場合、輸送能力は29500kgまで向上できるとした。
さらに最大離陸重量を34000kgまで引き上げることも不可能ではないとするが、C-17Aで輸送不可能になって陸軍のポリシーから外れてしまい、現実的ではない。

2020年代以降というのは、CH-47F/Gの製造が2019年までの契約になってるかららしい。5年間の複数年契約、155機調達という計画に続き、FY2013で次の複数年契約が交渉中とのこと。しかし予算(略)

CSAR-Xで失敗した派生型のHH-47では、エンジンの大幅パワーアップなどは含んでなかった。
対してH型は普通の能力向上型と言える。さらなる高出力エンジンが搭載されるようなら、D型以来の大きなアップデートになるだろう。

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LM/ノースロップグラマンがNGM開発継続を表明

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-stays-in-competition-to-replace-amraam-harm-with-new-missile-362403/

次世代の航空機用ミサイルは、対空と対地の両方に使えるNGMとして研究されているもの。かつてはJDRADMという名前だった。
これに関しては、LM/ノースロップグラマン/ATKとボーイング/レイセオンが、DARPAとのデモンストレーション契約triple target terminator (T3) 計画の受注を競う形となっていたが、昨年ボーイング/レイセオンの勝ちに終わる。負けた方からはATKが脱落したものの、LM/ノースロップグラマンのチームは残って開発を続けている。
現用のAIM-120とAGM-88はいずれもレイセオン製なので、そっちが有利と言えば有利だ。

LMのブースにNGMとして展示されたものの画像が出ているが、その正体は明らかでない。
どのような計画にしても、AIM-120Dと似たようなサイズ・形状に納めないとF-22やF-35のウェポンベイには収まらないので、あまり外観に意味はないかもしれない。弾頭、信管、シーカの方がより重要。

NGMの本格的なプロトタイプ製作とデモンストレーションは、2012年からスタートする予定となっている。

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CHAMPの最初の飛行試験実施

http://www.spacedaily.com/reports/Boeing_CHAMP_Missile_Completes_First_Flight_Test_999.html

CHAMPはCounter-electronics High-powered Microwave Advanced Missile Projectのアノニム。物理的に目標を破壊する代わりに、高エネルギーのマイクロ波を放出し、電子機器を無力化するミサイルということになる。ボーイングがAFRLと開発しているもの。またマイクロ波発振部はKtechという企業が担当している。契約期間は2009年4月から3年間。

米国防省、年次報告でJ-20に言及/An-148の製造について/An-3のコストダウン型/Yak-130の墜落事故

米国防省、年次報告でJ-20に言及

http://www.flightglobal.com/articles/2011/08/26/361283/chinas-j-20-to-be-effective-capability-by-2018-pentagon.html

まとめると「運用能力の獲得は2018年」「戦闘機というより長距離攻撃プラットフォーム」「エンジン技術が開発の障壁」といったところのようだ。

その他、空軍力近代化のペースについても書かれてるようで、2000年時点で「近代的な」プラットフォームの比率はわずか2%程度だったのに対して、現在では25%に達しているとする。これは主にSu-27/Su-30/J-11とJ-10の配備の進行を指している。

また戦闘機1680機のうち、台湾を航続距離に収める機数は330機。これは台湾の保有戦闘機338機とほぼ等しい数で、攻撃機・爆撃機については620機のうち160機が台湾まで到達可能としている。
空中給油なしで台湾に到達できる機数はこれらの合計、490機となるものの、実際にやるとなれば、ミッションプロファイルと展開状況によって変動することは言うまでもない。

中国の”anti-access” strategyについては省略。

あと、最近のJ-20。

http://tuku.military.china.com/military/html/2011-08-27/182048_1886192.htm

平面が比較的判る画像。スジボリとかの参考…にはならんな。

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An-148の製造について

http://www.flightglobal.com/articles/2011/08/17/360829/maks-kievs-aviant-plant-turns-to-an-148-production.html

MAKSの残り。

アントノフは、キエフのKiGAZ航空機製造工場にAn-148/158の製造ラインを新設する計画で、2012年以降、両タイプ合わせて12機/年のペースでの量産を行う予定。
工場をアントノフ傘下にしてからの3年で、投資額は2億ドルを超えたそうだ。

ここはAn-32の製造を行っているが、アフガニスタンとインドからの受注分が製造終了したら、An-148/158とAn-70の製造へと完全に転換される。

アフガニスタンの分は6機が最終組立段階、インドの分はアップグレードと寿命延長で、5機が引き渡し済みとのこと。

あちらの輸送機もついに新世代になるのか、と思うと感慨深いな。An-70もAn-148も10~20年足踏みしたが…

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An-3のコストダウン型

http://www.flightglobal.com/articles/2011/08/16/360822/maks-antonov-to-test-fly-lower-cost-an-3.html

これもMAKSの残り。

An-2と言えば物凄い数が製造された星形空冷エンジンの複葉機だったが、初飛行から40年近く経った1990年代になり、ターボプロップ搭載型のAn-3が作られた。これはオムスクの弾道ミサイル工場で少数生産され、An-2と同様、極地のような厳しい環境での運用が可能な信頼性の高い機体だった。しかしロシア国内の普通の環境で使うには高価すぎるという事にもなってしまい、An-2の代替とはならなかった。

そんな経緯から、より安価な派生型が今更計画されている。エンジンはウクライナのMotor-Sich(要するにクリモフ)が開発しているAl-14-Xとなる予定。このエンジンは現在ベンチテスト中との事。この新An-3はAn-2を直接代替する機材となり、年内に飛行試験を実施予定。

今、何機ぐらい現役なのだろうか。
中国でも運輸5として製造しているが…

数年間南極に放置されていたAn-2。

http://www.adventure-antarctica.de/2003/09/26/antonov-biplane-bubble-panorama/

これは2001年のロシア隊がAdventure Network Internationalの救助活動に使った後、置いていった機体で、撮影は2003年とある。2005年に修理してマクマード基地から船便で輸送されたとか。

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古い記事だがYak-130の墜落事故

http://www.flightglobal.com/articles/2010/06/01/342633/russia-investigates-cause-of-yak-130-crash.html

5月30日、Yak-130がリベツク市付近で墜落した。乗員は2名とも脱出に成功している。
2ヶ月経ってるが、続報はない。まあロシアだし。

ロシア空軍は同機種を150機程度導入予定。姉妹機のM346とは異なり、クリモフAl-222-25ターボファンエンジンを装備する。今はM346の方が高性能になってるのね。

リビアとアルジェリア(16機)からも受注しているが、リビア向けはどうなるのか。

米国以外の西欧諸国、台湾のF-16アップデートに及び腰/台湾がBQM-167i無人標的機を追加購入か/台湾の次世代UAV開発

米国以外の西欧諸国、F-16アップデートに及び腰

http://www.flightglobal.com/articles/2011/08/15/360737/western-aerospace-firms-keep-low-profile-at-taipei-show.html

かといってそれ以外をアテにできるわけもないのだが。
台北航空宇宙・防衛技術展示会(TADTE2011)にブースを出した大企業は、ITT、LM、ノースロップグラマン、P&Wとレイセオンだけで、(様々な面で中国と関係の深い)欧州メーカーのほとんどとボーイングとGEは出展しなかった。
それでなくても、ご丁寧に中国に情報渡すフランスとかはノーサンキューだろう。

しかし逆に言えば、F-16アップデートに関わる可能性がある主要なメーカーは入っている。

ITTはALQ-211V4 AIDEWS。

http://iews.es.itt.com/datasheets/211.pdf

レイセオンはアビオニクスにミサイルにRACR、ノースロップグラマンもSABRを持ってる。機体メーカーはLM、エンジンはP&W(現用も-220。-229になるか)。つまり、何かしら競合するとしたらレーダーだけ。
あとはFMSが認められるかどうかという感じになってきた。

アップグレード機数についてはまだよくわからない。総数166機の内、一部だけに留まるとする報道もあるものの、最終的には新造機の導入如何で決まるものと思われる。

新造のBlock50導入(66機の導入を希望していると言われる)については今のところ、10月1日にワシントンの決定が下されるということになっている。

(追記)

新造機導入絶望的という記事が出たが、どちらかのAESA輸出が認められれば、レーダーだけのアップグレードでもかなり状況が変わる。

http://www.sinodaily.com/reports/Taiwan_to_pursue_purchase_of_F-16_fighters_999.html

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台湾がBQM-167i無人標的機を追加購入か

http://www.flightglobal.com/articles/2011/08/16/360735/cei-pitches-bqm-167i-target-drone-to-taiwan.html

BQM-167iを作ってるのはComposites Engineering (CEi)という企業。台湾海軍の入札は未定ながら、納入実績があるので、だいたい確定と見ているようだ。機数は10機程度。

遷音速の無人標的機で、米国ではBQM-74チャカシリーズの後継として採用されている。再使用可能。

http://www.af.mil/information/factsheets/factsheet.asp?id=14593

http://www.compositeeng.com/uav_BQM167.htm

シースキミング飛行が可能なだけでなく、運動性能もそこそこ高い。なお、この手のドローンは実戦で囮に使われた事例もある(湾岸戦争時のチャカなど)。あとUAV研究にも使われた。台湾がどう使うかは定かでない。

同型のBQM-167Xiはシンガポールも採用したようだ。

http://www.businesswire.com/news/home/20110803007122/en/Composite-Engineering-Selected-Singapore-Provide-Unmanned-Aerial

CEiって会社は、ビーチクラフトの無人標的機部門がレイセオンに移ったあと、また独立した企業っぽいのだがよくわからん。オービタルサイエンスのSSST、GQM-163 Coyoteもここが下請でやったみたいなことが書いてある。

http://www.navair.navy.mil/pma208/?fuseaction=controller.target_view&target_id=62&type=target

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台湾の次世代UAV開発

http://www.flightglobal.com/articles/2011/08/12/360628/taiwan-looks-to-develop-advanced-unmanned-systems.html

http://www.flightglobal.com/articles/2011/08/19/360736/unmanned-systems-star-at-taiwanese-defence-show.html

TADTE2011に関する記事。

名前がないのばかりだが、記事中で言及されているプレデターA似なのがこれ。

http://tuku.military.china.com/military/html/2011-08-17/181323_1876141.htm

UCAVがこれ。尾翼があり、厳密には全翼じゃない。X-45やX-47というより、F-117の無人型みたい。

http://tuku.military.china.com/military/html/2011-08-17/181323_1876140.htm

運用イメージ?

http://tuku.military.china.com/military/html/2011-08-17/181323_1876137.htm

イメージ映像では、プレデターA風のが台湾海峡の監視と兵器の誘導を、F-117風のUCAVがSu-27(あるいはJ11)に対して空対空戦闘と本土への対地攻撃を行うといったものだったようだ。地上ステーションは、ある程度の数が敵の第一撃から生き残るのが前提になっている。

実際の開発については、前者は既に開発可能な段階まで進んでて、後者は10年以内の戦力化を目指すとしているようだ。

もう一つの記事で触れている串型結合翼UAVというのはこれ。11月初飛行予定で、4時間滞空が可能とされている。大気汚染などのモニタが主目的…と言うものの、ISRペイロードも積める規模。

http://tuku.military.china.com/military/html/2011-08-17/181323_1876138.htm

ついでに雄風三型のモックアップ。今話題のアレが背景で大炎上。
GQM-163というかロシア系超音速ASMそのまんまな感じだ。ASM/SSMの誘導も、無人機で中継する事になるだろう。

さらについでだが光華6号ミサイル艇。

http://tuku.military.china.com/military/html/2011-08-04/180476_1864333.htm

そういえば中国の昇竜UAVも、DF-21Dの誘導が主目的だという説があったなぁ。

この他、民間企業の展示にもUAVがあったとのこと。

http://www.uaver.com/

手投げ式のAVIAN(電動で90分滞空)と、カタパルト式のACCIPITER(ガソリンエンジンで6時間滞空)が出展されてた模様。