最近、FlightGlobalの日本関係の記事がまともになってきている。普段シンガポールで記事を書いてるグレッグ・ウォルドロンさんがすごい勉強したのか、まともな情報源とのコンタクトを作ったのかはともかく、9日から名古屋で開催のJA2012取材のために来日中。
日本のイベントなので普通に報道もされると思うけど。
http://www.flightglobal.com/air-shows/japan-expo/
*
輸出関連。
・C-2民間型のYCX
パンフレット類はそのうちネットでも出回ると思われるが、資料の概要を少し。
MTOW141tonはA400Mと同等、現存するC-130民間型L-100の2倍相当。貨物室の高さは4.29mで、747-400Fなど旅客機ベースの貨物機よりも高く、大型貨物(シコルスキーS-60など)を積載可能。エンジンはGE90双発。最大ペイロード30ton時の航続距離は3080nm(5700km))となっている。が、潜在顧客からのフィードバックにおいてはCF6搭載型も有望だったという。CF6ならC-2と全く同じか。
川崎の市場予測としては、この種の大型貨物輸送機の需要は2020~2030年にかけて最大100機。
今のところC-2の開発は2014年度いっぱい続く予定なので、民間型はその先の話だ。
・US-2
http://www.flightglobal.com/news/articles/shinmaywa-looks-to-india-for-us-2-amphibian-sales-377407/
インドは1月、海軍のSAR用飛行艇についてRfIを発出。発注数は9機で、オプション含めると最大18機となる。
一応、建前的には、非武装の救難機が求められているので、三原則見直しの以前からUS-2の輸出は支障なしと判断されている。
国内向けが両手の指で足りる程度という馬鹿げた製造数のため、新明和にとって輸出の成否は死活問題。
インド海軍向けについては、競合するのはCL-415とBe-200あたりが想定されている。これらに対して、US-2の性能以外に特筆すべき点の一つはエンジン。US-2はインドが既に保有するC-130Jと同型式のエンジン、RR AE2100を4発搭載する。
性能に関してはUS-2が突出している(速度性能だけはジェットのBe-200が上だが)ので、問題は値段とサポート体制だろう。輸出がなかなかできないBe-200と状況は若干似ている。
インド向けは基本、軍用なので、US-2のまま売れるというのも大きい。
インド国内民間向けも売り込み中。というのは国内報道されたとおり。
http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/0005008823.shtml
・MRJ関連の分析
http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-mrj-continues-to-defy-the-doubters-376868/
MRJは開発の遅れなどいろいろ言われはしたが、ボーイングの支援でサポート体制を構築できる点や、初期の段階でGTFを最初に選定したアドバンテージが、競合(この場合は同じく新型機のMS-21やCSeriesなど)に対して優位に立つ要因となっている。と分析されている。
逆に既存の大手2社が同等のエンジンを備えるようになったら、厳しくなるとも。買う方はキャリアにせよリースにせよ、保守的な選択に至るのが普通であるから、わりと当たり前な話。新規参入はとにかく評判を上げていくしかないだろう。
・株式会社リンクが2013年からATR72-600を国内導入
リンクは4月に設立された企業で、2013年度からリースのATR72-600×3機体制での運航を開始する計画。
ATR72-600の国内導入は、なにげに初だ。日本市場は、とりあえず傍目には巨大と映るし、サーブ340やQ400の後継が不在の状況とあって、ATRには大きな一歩と考えている模様。滑走路が短いところに小型のATR42が入る余地もある。
・警視庁がAW139を2機追加、国内のAW139は40機に
http://www.flightglobal.com/news/articles/japanese-police-order-two-aw139-helicopters-377488/
2014年納入予定とのこと。40機のうち11機は法執行機関向けとなる。
*
軍用機関連。
・F-35のFACO稼働予定など
LMの発表によると、名古屋に設置するFACOラインで最初の機体が組み立てられる時期は、2017年とされている。
この他にLMと空自の関わりと言えば東日本大震災で損害を受けたF-2の再生作業における協力、というのがある。しかし申し訳ないがLMはボッタクルイメージしかない。
・ボーイングと空自の関係
ボーイングは空自に色々ご提案してますよというのが出ている。F-X選定では失敗したが、有事に生命線となるE-767もKC-767もF-15もボーイングが扱ってるので、関与する度合いは大きい。
特にF-15に関してはマーケティングの段階とは言え、レーダー、アビオニクスを含め様々なプランが挙がっているようで、一例として主翼を強化しハードポイントを増設、AAMの搭載数を4発増やす、というのが出ている。巡航ミサイル対処では搭載数が重要なファクターとなる場合がある、という話のようだ。SEよりは日本向きのプランか?
KC-767は、誰がどう見ても足りないが、実際に防衛省からは全く動きが無いらしい。将来はKC-46を4~8機程度の単位で提案する可能性もあるようだ。KC-46はブームシステムが新しくなって、KC-767より燃料搭載量が多いっぽいという以外はよくわからんけど、まあ双子みたいなもんではある。
E-767は年内に4機全てのレーダーアップグレードが完了する。737AEW&Cについても書かれているが、E-2C後継とかその辺を指してるのかな。
最後にUAV。今年のファーンボロにて、評価用のスキャンイーグル×2機の契約が明らかとなっていた。去年予算要求されてた分にあたる。
この先、本格調達に繋がる可能性は十分にある。まあJA2012で発表されるようなもんでもなさそうな気はするが。
…というのを解説する上で、日中の空軍力パワーバランスの記事があった。
まとめ的な内容なので特に目新しい話ではないが、あちらの記事にしては珍しくだいたいあってる。
以下要点。
・空自は、F-15後継としてF-22が導入できなかった時点でケチがついている。
・中国では、この10年で第4世代戦闘機の数は400~500機に達し、短距離弾道弾や海軍力(この場合は防空能力の向上がポイント)が飛躍的に増強されている。
・中国の第5世代戦闘機は2018年から配備される可能性がある。
・一方日本ではまだF-4が防空戦力として現役。10年前に保たれていたバランスは完全に崩れた。
・F-XはF-4の後継で空対空戦闘中心の選定だったはずがなぜかF-35にしちゃった。ステルス大好きという以外に、米国との関係を継続・強化する選択だったとも言える。(が、それで空軍力低下の問題が解決するわけではない)
・F-15の近代化改修でAESA装備はいまだ話題にも上らない。(F-2のJ/APG-1について触れられてないのは多分ミス)
・国産機に投じられる技術は高いが、輸出できないからアホのように高い。
・調達数が40~50機にとどまるなら、ATD-Xから実用機に発達する可能性は極めて低い。ただしF-35のオフセットなりライセンス生産なりを分捕る手段にはなるかもしれない。
うむ、大体間違ってない。
最後のは、開発自体が失敗しない限りF-15/F-2の置き換えで100機近く行きそうな気がするけど。これはF-35の運用実績と調達状況に左右されるだろう。
F-15のAESAは、USAF向けが動き出したらそれに追随するんじゃないかと思ってたのだが、それも出てきてない。
そういえばUHXの件が出てないなあ。この記事。