グリペンNGデモンストレータがスイスへ飛来/ダッソーがAESA装備のラファール生産型1号機を納入/エルビットがコロンビアにてミッション・トレーニング・センター建設を受注/イスラエル空軍のF-16が任務復帰/インドネシア空軍にスーパーツカノ、CN295が引き渡される

グリペンNGデモンストレータがスイスへ飛来

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-gripen-demonstrator-arrives-for-latest-swiss-promotion-377312/

10月3日、グリペンF開発機にあたるデモンストレータと随伴機のグリペンDが、スウェーデンのLinköpingからスイス、エメンの第7空軍基地に到着した。飛行時間は2時間ほどだった。
10日間の滞在期間中、スイスの国防委員会に公開されるほか、スイス側のパイロットの操縦でAxalpエアショーにも参加することになっている。

Axalpエアショーは、スイスアルプスの山中、標高2000mあたりにある演習場において実弾射撃とフライトディスプレイが行われる事で有名。死ぬ前に一度ぐらい見てみたい。

参考:地元スイス在住、Daniel Rychcikさんの個人頁。

http://airshow-reviews.com/index.html

スイスでは、今のところF-5後継としてのグリペンE/F選定は覆っていないものの、契約にも至っていない。ダッソーの物言いがついて以来、議論は継続している。今のところ2013年後半から2014年中頃にかけて契約見込み(2018年から納入)と言われている。

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ダッソーがAESA装備のラファール生産型1号機を納入

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-france-accepts-first-aesa-equipped-rafale-377216/

AESA(タレスRBE2)を搭載したラファール最初の生産型は、機体番号C137となる単座型。10月2日、ダッソーのMerignacにて最終組立の後、DGAに引き渡された。Mont-de-Marsan空軍基地に到着するのはもう少し先のことで、さらに実戦配備となるのは2013年中頃とされている。

C137以降の規格はF3-04Tと呼ばれ、RBE2搭載の他にも、機体前部の光学センサ(タレス製)、DDM-NG受動ミサイル接近警告装置(MBDA製)が搭載されている。フランス向けの最新バッチは、空海軍合わせて60機。

ユーロファイター、グリペンに先んじてAESAを搭載することは、選定済みのインドMMRCAだけでなく、ブラジルF-X2向け提案などにおいても重要な要素の一つとなっている。

なおDGAの発表によると、フランス軍が発注したラファールは合計180機で、うち111機が引き渡し済みとなっている。内訳は、海軍向けM型が36機、空軍向け単座のC型が37機、同じくD型が38機。

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エルビットがコロンビアにてミッション・トレーニング・センター建設を受注

http://www.flightglobal.com/news/articles/elbit-lands-colombian-mission-training-centre-deal-376844/

エルビットシステムズは、コロンビアからミッション・トレーニング・センター(MTC)の建設を受注した。金額は1850万ドルで、2014年竣工予定となっている。正確には顧客名は明かされていないものの、情報筋によるとコロンビアで間違いないとのこと。
コロンビアでは、イスラエルで余剰となったクフィルを導入していることもあるので、状況から見ても不自然ではない。

MTCは、一言で言えば様々な任務シナリオを想定した訓練が可能な施設であるが、同社ではイスラエル空軍向け(主にF-15とF-16のパイロットを対象とする)のMTCを建設した実績がある。

なおコロンビア空軍の主要装備機としては、クフィルの他にA-37やEMB-314スーパーツカノ、OV-10などがある。

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イスラエル空軍のF-16が任務復帰

http://www.flightglobal.com/news/articles/israel-clears-repaired-f-16cd-fighters-for-duty-377190/

イスラエル空軍のF-16C/D Barakは7月、インテイク内の塗装剥離がFODを引き起こし、離陸直後に緊急着陸するというインシデントが2件発生。以来、対策がとられるまで飛行停止措置が続いていた。

対応として、9月末までに古い塗料を除去、再塗装を実施している。原因は、今夏イスラエル国内を襲った異常な高温によるものと結論づけられた。

8月20日付だがロイターの動画ニュース
47度…

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インドネシア空軍にスーパーツカノが引き渡される

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-indonesian-air-force-inducts-first-four-super-tucanos-376603/

インドネシア空軍は、OV-10の後継機として2010年11月、スーパーツカノ8機を発注した。2012年7月には8機の追加発注を発表している。
9月初め、ジャカルタのハリム空軍基地に到着したのは、このうち最初のバッチ4機に該当するもの。サンパウロで8月6日に引き渡し式典が行われてから、12カ国を経由して飛来したとのこと。
残りも2013年内、さらに追加分の8機は2014年内の引き渡しが計画されている。

時代がかった巨大なシャークティースが目立つ。OV-10でもこんなのあったなあと思ったが、インドネシアじゃなかったみたい。フィリピンかこれは。

http://www.flightglobal.com/blogs/asian-skies/2012/02/something-fishy-about-this-phi.html

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インドネシア向けのCN295引き渡し式典

http://www.flightglobal.com/news/articles/indonesia-receives-first-two-c295s-376711/

もう一つインドネシアの新装備の記事。

エアバスのセビリア工場最終組立ラインにおいて、インドネシア向けのCN295、2機の引き渡し式典が行われている。2月のシンガポールエアショーで合意に至った発注機数は9機で、2014年夏までに完納の見込み。

この調達計画では、インドネシア側の作業分担が相当量に上る。地元のPT Dirgantara Indonesia (PTDI)は、後部胴体から尾翼、外板パネルを製造し、整備センターと最終組立ラインも設置することになっている。
セビリアで引き渡された2機に続いて、7機目まではPTDIからの引き渡しという形になり、8機目と9機目はインドネシアで最終組立まで行う。

これらの機体は輸送と救急搬送、人道支援に用いられる。

A400Mの最初の引き渡しが遅延の見通し/PZL-ŚwidnikがSW-4 Soloヘリコプターの有人型を展示/ポーランドは空中給油機の入札準備を進める

A400Mの最初の引き渡しが遅延の見通し

http://www.flightglobal.com/news/articles/first-a400m-delivery-suffers-fresh-slip-376002/

A400Mの最初のカスタマーはフランス空軍で、MSN7に相当する機体がそのまま2013年3月31日(つまりQ1)までに引き渡されるという契約になっていたのだが、どうやらこれは困難となっている模様。

遅延の直接の原因となっているのは、ファーンボロ直前の7月のエンジントラブルの一件で、原因調査のためにfunction and reliability (F&R)試験の日程が滞る結果となってしまった。ユーロプロップインターナショナル(EPI)の発表によると、調査に300飛行時間ほど要しており、F&R試験は160飛行時間にわたって中断されたとのこと。現問題となったエンジン内の金属片、MSN6のTP400-D6エンジンのうち1基の内部で発見されたそれは、カバープレートのクラックによって生じたものであり、ギアボックスの隙間で孤立した位置にあるため、エンジンの運転に支障は無いものと判断されている。
しかしだからといって、無害として放置するわけにも行かず、結局現存するエンジンのカバープレートを全て交換する措置をとることが決まった。つまり、EASAの型式証明の上では、変更を加えたパーツの再承認が必須ということになり、そこまでの手続きが済んで初めてF&R再開が確定するわけだ。

これに最も影響を受けるのは、引き渡しの迫るフランス向けの1号機、MSN7。引き渡しの遅れは「わずか」であると述べられている一方、8月23日の初飛行予定は順延されたままで、新しい日付すら出てきてない状態にある。
しかしエアバスミリタリーでは、それ以降の引き渡しスケジュールには影響なしとしている。なお2013年の引き渡し予定は、フランス空軍向けが3機とトルコ空軍向けが1機。

‥というのが8月末の記事で、9月12日の記事ではF&Rの再開が11月見込みとの声明。ILAで言及されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-a400m-reliability-tests-to-resume-by-november-376424/

ILAでは飛行展示が再開された。記事の写真は120度バンクをキメて高速でフライパスする様子。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-a400m-makes-flying-return-to-show-circuit-376271/

この他ILAでは、ドイツの民間防衛団体Technisches Hilfswerk (THW)が、これまでの災害救援にかかった航空機のチャーター費用を示し、ドイツがA400Mを導入することに対する期待感を表明している。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-airbus-pitches-a400m-for-disaster-relief-role-376399/

THWの代表者によれば、中国の大地震(2008年の四川大地震だろう)における救援活動で、Il-78をチャーターして浄水装置を空輸。このときかかった費用は片道34万5000ドルだった。また、昨年の東日本大震災において、ボーイング767をチャーターしてSAR要員を送り込んだ際も、同様の費用がかかったが、チャーター会社が原子力災害を嫌ったため、別料金を請求されたという。
この組織の予算でA400Mを購入することは不可能だが、ドイツは2014年から53機を調達する予定となっている。これを利用できればロシアの輸送機をチャーターするよりずっと良い。

エアバスでは、A400Mは不整地滑走路から運用できることから人道援助などに向いた機体であるとしており、ドイツがその種の能力について熱心に調査しているとも述べている。

エアバス・コーポレート・ファウンデーションは、2008年から試験機を使って物資輸送などの災害救援活動を行っており、9度の災害に対して27回のフライトを実施しているとのこと。

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PZL-ŚwidnikがSW-4 Soloヘリコプターの有人型を展示

http://www.flightglobal.com/news/articles/pzl-swidnik-reveals-optionally-piloted-solo-rotorcraft-376154/

PZL-ŚwidnikのSW-4 Soloは、ポーランド空軍の訓練ヘリコプターSW-4を原型とした有人/無人ヘリコプターとなる。このメーカーは2010年からアグスタウェストランド傘下で、イタリア軍向けの提案も考えられているようだ。
Soloの初飛行は2013年6月までに実施予定だが、メーカーではもっと早く飛ばしたい意向を表明している。

PZL-Świdnikは昨年から無人型開発のデータ収集のため、有人機の試験飛行を繰り返している。一方、地上管制とフライトマネジメントといったソフトウェア関連はイタリアで開発する。

SW-4のエンジンはRR(旧アリソン系) M250 C20R/2(457shp)の単発。ベル206と同系のエンジンであり、性能も似通っているが、出力が大きい分は性能が高い。
用途としては軍用および法執行機関向けを想定しており、監視装置と通信装置を搭載、軽武装も可能。貨物輸送や救急搬送も考えられている。
無人ヘリコプターとしては、MQ-8CやK-MAXより更に小さい。

在来のSW-4との見た目の違いは、操縦席上方のカメラとか兵装搭載のためのスタブウイングなど。

http://www.flugzeuginfo.net/acdata_php/acdata_sw4_en.php

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ポーランドは空中給油機の入札準備を進める

http://www.flightglobal.com/news/articles/two-bidders-await-polish-tanker-battle-376149/

ポーランド国防相によると、同国は2機の空中給油機調達を予定しており、9月末に入札を開始する事になっている。入札に先立ってポーランド開催のイベント、MSPOエキシビションにおいて2チームが名乗りをあげた。
ポーランド側では、原文見れば判るけど空中給油と輸送の両用型を求めてる。

一方は、ポーランドの航空機整備大手企業Bumarと、イスラエル、IAIのタンカー転換担当部門Bedekが組んでおり、中古のボーイング767-200ERを改修して引き渡す計画を進めている。つまり改修をIAI、運用にまつわる様々な支援はBumarが担当するという形。
もう一方は、エアバスミリタリー。機種はA330 MRTTで、こちらはEADS傘下のPZL Warszawa-Okecie工場にて整備が可能と主張している。ここはC295を整備(オーバーホールまで)する施設として建設され、昨年11月に落成したもの。C295のオーバーホールについても、8月に1機の実績がある。

コンソーシアムに署名後34ヶ月以内の引き渡しと、最低20年の運用を想定している。

RRスネクマが設立される/F-15SEデモンストレータにJHMCS IIがインテグレーションされる/韓国がF-16のアビオニクスアップグレード(レーダー除く)でBAEシステムズを選定

RRスネクマが設立される

http://www.flightglobal.com/news/articles/rolls-royce-snecma-powers-up-next-generation-military-engine-study-374930/

7月30日、名称そのまんまの英仏エンジンメーカー2社のJV設立が発表されている。これは次世代軍用機エンジン研究を主目的とするもので、より大きなfuture combat air systems (FCAS)というデモンストレーション計画においても、JVとして契約を結ぶことになる。
FCASも英仏共同研究計画であり、英国のBAEシステムズとフランスのダッソーが協力して行う。7月始めに調印された最初の契約では、18ヶ月ほどの共同研究が予定され、次世代航空戦力のあり方にも踏み込むという題目を掲げるが、当面は両国のUCAVデモンストレータ、TaranisとNEURONの成果をもとに話を進めるようだ。

これらの機体はいずれもアドア951を搭載しているので、短いタームではこれを実用UCAV向けに発達させる、という流れのようだ。アドア開発当時はRRとチュルボメカだったが、今はここも(サフラングループ傘下の)スネクマ傘下になっている。将来的にエンジン単体で外国に輸出することもありえなくはない。
アドアは英仏共同エンジンの成功例と言える(日本に輸出したときは揉め事の種になったが…)。最新の共同開発エンジンと言えばドイツとスペインのメーカーも参加したユーロプロップのTP400、ということになるものの、成功例と言い切れるかはまだわからない。開発も難航したし。

将来、この枠組みを基礎としてユーロファイターやラファールの後継機のエンジンも共同開発ということになれば、EJ200とM88の次が統合されることになるが、あるとしても当分先だろう。

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F-15SEデモンストレータにJHMCS IIがインテグレーションされる

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-integrates-joint-helmet-mounted-cueing-system-into-f-15se-374904/

ボーイングは、ビジョンシステムズインターナショナル(VSI)製のJHMCS II/Hを、F-15SEデモンストレータにインテグレーションしたと発表。これは現用のJHMCSの改良型とのことで、小型化してバランスが改善され、ケーブル類も軽く取り回しが良くなっているそうだ。

http://boeing.mediaroom.com/index.php?s=13&item=2027

見たところ、バイザー部分が出っ張る感じはあまりなくなっている。

http://www.vsi-hmcs.com/index.php/jhmcs-ii

JHMCS IIは、低コストで従来の装備にレトロフィット可能という点は従来のJHMCSと同様であるが、HMDの向きを検出する方式などの違いで2種類ある。
II/Mは磁気トラッキング式で従来のサブシステムと互換性があるタイプ。
II/Hはopt-inertialとあるので、光学式とジャイロの併用みたいな感じ?で従来サブシステムとの互換性はなく、新しいAircraft Interface Unit (ACIU)と接続される。これは軽量化されて冷却も不要となったもので、こちらのII/Hが全くの新型ということになる。
600KEASまで対応。

ボーイングによると、デモンストレータの最近の飛行試験はこのシステムのインテグレーションも含んでおり、期間としては3ヶ月以内に完了したとのこと。

ちなみにF-35のHMDの次ではSTRIKEYE HMDSというのが開発中。機能面ではJHMCS IIから更に発達し、イメージ映像ではF-35Bにインテグレーションされている。CASに完全対応みたいな。

http://www.vsi-hmcs.com/index.php/jhmcs-ii?id=55

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韓国がF-16のアビオニクスアップグレード(レーダー除く)でBAEシステムズを選定

http://www.flightglobal.com/news/articles/seoul-names-bae-systems-for-f-16-avionics-upgrade-374962/

韓国DAPAはROKAFの134機のF-16についてアップグレードを計画しており、このほどアビオニクスに関する部分に関して、LMではなくBAEシステムズを選定すると発表した。これにはAESAレーダーが含まれておらず、そちらの選定は今のところ2013年前半まで先送りする予定としている。

同様の提案は、台湾向けでは競争入札にすらならなかったので、BAEシステムズにとっては大きな収穫となる。なおF-16絡みなので、米国のFMS経由での契約という形となり、金額は10億ドル程度。

DAPAではAESAレーダーを先送りした理由として、アビオニクス(兵器システム、ミッションコンピュータの更新、MFDの導入を含む)に比べて緊急性が低いこと、インテグレーションに要する時間がレーダーより長いことを挙げているが、現実問題としてAESAの機種がUSAFと統一されていなければインターオペラビリティや兵站上の問題も発生しうるので、そちらの動向を見てからという形になっている。

日産リーフ・リムジン(非公式)/蘭デルフト工大が英国の学生フォーミュラに水素燃料電池車を参戦させる/グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2012で走ったEV/最初の速度記録挑戦車

日産リーフ・リムジン(非公式)

http://www.gizmag.com/nissan-leaf-limousine/23367/

何でも延ばせばいいってもんじゃないのはもちろんだが、ミズーリ州のImperial LimoLandというところが、わりと簡単にリーフのリムジンを作った。同社は「世界初のリムジンEV」と主張している。
Embassy Suites Nashville Southというホテルが発注したもの。

400ポンドの重量増に対しバッテリの増設などは行われていない上、どうみても空力台無し(後部を絞ればボートテール風になって向上しそうだが座席が狭くなるので論外)のため、連続走行距離は相当縮んでると思われるが、ホテルのVIP客送迎用(だいたい5マイルぐらいしか走らないとか)ゆえに問題はないようだ。その辺の仕様や金額は未発表となっている。
6人乗りまたは8人乗りというのは、前部座席に運転手含む2人、後部の客席に6人ということらしい。

http://www.venere.com/ja/embassy-suites/franklin/embassy-suites-nashville-south-cool-springs/

ここかしら。ナッシュビル国際空港まで往復すると30マイルぐらいあるな。

基本構造には手を入れず、ストレッチして内装を豪華にしたという改造。EVは駆動系がシンプルで済むから、延ばすだけならガソリン車とかよりずっと簡単そうだ。

リーフ自体の評判がどうなのかイマイチ分からんが、エコとかグリーンとか言いたい向きには少なくとも好評のようで、

http://www.gizmag.com/portugal-worlds-first-nissan-leaf-police/23300/

ポルトガル警察(Polícia de Segurança Pública)が、リーフ8台をパトカーとして導入したそうだ。これも世界初ということになっている。
5000台からのパトカーの中では微々たる数で、性能的にも十分かどうか意見が分かれるところであるものの、低騒音なのは静かな住宅街のパトロールや張り込みとかには便利かも。

このカラーリングは魚っぽさを際立たせる縞々ですね。

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蘭デルフト工大が英国の学生フォーミュラに水素燃料電池車を参戦させる

http://www.gizmag.com/forze-v-hydrogen-race-car/23332/

英国の学生フォーミュラ選手権は、今年が14回目の開催となる。会場はシルバーストンサーキット。
これまでは、全てガソリンエンジン車によるエントリーで行われてきたが、今大会では初めて水素燃料電池を動力源とする車が正式に参加した。オランダのデルフト工大のチームがそれで、Forze Vというマシンを持ち込んでいる。昨年もエントリーしたものの、技術的トラブルで記録が残せなかったようだ。
結果は、参加100台中の29位。

同校のチームが燃料電池のレーシングカーに取り組み、形にしたのは2008年のフォーミュラ・ゼロが最初で、Forze Vが最新となる。
重量280kgで2モータ。通常時出力18kW(24HP)だが、60mphまで5秒以下の加速と最大速度120km/hを達成している。またエネルギー回生の併用によって、出力は短時間ながら60kW(80HP)まで上積みできる。

水素ガス600gでレーシングスピードを1時間持続でき、3リットルぐらいの水が出るそうだ。
現存するEVレーシングカーではここまで持続できない。やはり本命は燃料電池か。

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グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2012で走ったEV

・Lola-Drayson B12/69EV

http://www.gizmag.com/drayson-ev-goodwood-record/23218/

http://www.draysonracingtechnologies.com/home.html

4モータの合計出力が850HPに及ぶレーシングEVで、最大速度は320km/h、ほとんど200mphとされている。
グッドウッドではヒルクライムのEVコースレコードを樹立した。総合タイムでは11番目。

http://www.gizmag.com/lola-drayson-b1269ev-electric-racing-car/21212/

Drayson Racing Technologiesは、英政府で科学技術担当相を努めた経験のあるPaul Drayson卿が設立した。
まずE85バイオ燃料で走るアストンマーチンを開発し、GT2カテゴリでALMSとル・マンに投入し、2010年にはローラB10/60にジャドの多燃料仕様のV10を載せたLMPマシンで成功を収める。
B12/69EVは2012年1月に公開されたもので、サーキットコースにおけるEVのラップタイム記録樹立を目標としており、ローラ製のLMP1のシャシに、独自開発のEVのパワートレーンを載せている。
加速性能は60mphまで3秒、または100mphまで5.1秒とされるが、短時間のタイムアタックに割り切ったため、最新のLithium Nanophosphate電池を搭載しても全開走行時間は15分がいいところという。

http://www.a123systems.com/lithium-iron-phosphate-battery.htm

充電システムは無線のHaloIPTになっている。これは去年クアルコムが買収した技術に基づく。

http://www.qualcomm.co.jp/news/releases/2011/11/08/qualcomm-acquires-haloipt-team-and-its-wireless-electric-vehicle-charging-t

・インフィニティ EMERG-E

http://www.gizmag.com/infiniti-emerg-e-goodwood/23148/

http://en.infinitiemerg-e.com/

もう一台は日産が開発したEMERG-Eで、ここではマーク・ウェバーがドライブしている。初公開は今年のジュネーブだった。こちらも英国政府の支援を受けてる。
出力は2モータで402HP(300kW)。加速性能は60mphまで4秒。

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最初の速度記録挑戦車

http://www.gizmag.com/le-jamais-contente-first-land-speed-record/23094/

100年前は今よりたくさんのEVメーカーが存在した、という類の話は段々認知されてきたような気がするが、速度記録挑戦専用の車が生まれたのもEVが先だった。
1898年12月18日、フランスの自動車雑誌La France Automobileが陸上速度記録大会を開催。Gaston de Chasseloup-Laubat伯(あるいはElectric Count、人呼んで電気伯爵)がJeantaudという電気自動車をドライブし、知られている限りで最初の自動車の陸上速度記録を打ち立てた。その速度は63.13km/h(1km区間を走った時間を測定し、平均速度で表した記録)だった。モータ出力は36馬力だった。
記事中の画像は1/43スケール、Touchwoodというメーカーの木製モデル。
なおこのタイプの特徴として、史上初のステアリングホイールの採用、というのがある。現在の乗用車とは異なり、ホイールが水平に取り付けられているのがわかる。今でも作業車などでは見られる形だ。

この記録に挑んだのはベルギー人ドライバーのCamille Jenatzyで、翌1899年1月17日にCGA Dogcartというマシンをドライブした。この車に関する情報は乏しく、80セルの鉛蓄電池を積んでいたということしか伝えられていない。この日、記録は66.17km/hでわずかに上回るも、Chasseloup-Laubat伯のJeantaudはすぐにこれを上回る70.17km/hを達成したため、記録を保持していたのはごくわずかな時間に過ぎなかった。

10日後の1月27日、再びCGA Dogcartが記録に挑み、80.35km/hを出した。
さらに6週間後の3月4日、Chasseloup-Laubat伯は以前と同型の新車を改造車に仕立てて巻き返しを図る。Jeantaud Duc Profiléeと呼ばれたそれの記録は、92.7km/hに達した。

Jenatzyがこれに対抗して製作した車両が、世界初の速度記録専用車となる。
魚雷型のボディを与えられたマシンはJamais Contente(英語ではNever Satisfiedというから不満足号?)と名付けられた。材料にはプラチナ、アルミ、銅、亜鉛などの合金と、それまで自動車には用いられなかった鉄が使われ、25kWモータ2基を直結、200V/124Aのバッテリを積んで、合計出力は68馬力ほどだったという。
記事にあるのはその復元車。

このマシンによって4月29日、105.9km/hの記録が打ち立てられる。この記録は1902年、蒸気自動車によって破られるまで保持された。

以降の半世紀、陸上速度記録は内燃機関、レシプロエンジンの時代に移っていく。唯一の例外は蒸気自動車のスタンレー・スチーマーで、195.65km/hの記録を1905年から4年間保持していた。
その次に来たのはタービンエンジンの時代ということになる。この間、ジェットとロケットで100mphぐらいずつ記録が伸びた後、1997年スラストSSCに至るが、その記録は未だに破られていない。

ボーイングがブラジルF-X2提案で新たに地元パートナー企業を選定/ペルーがスーパーツカノとKC-390の導入を検討/中国の防衛予算と航空戦力の近代化について/カザフスタンがC-295を導入/インドMMRCAでダッソーが最終交渉入り

ボーイングがブラジルF-X2提案で新たに地元パートナー企業を選定

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-has-new-partner-for-f-x2-bid-in-brazil-369145/

ボーイングはブラジルF-X2向けにF/A-18E/Fを提案しており、3月5日、新たなパートナー企業としてブラジルのAEL Sistemas社を選定したとのこと。AELはアビオニクスのメーカーで、イスラエルのエルビットが現地法人として設立した企業。KC-390の開発にも深く関わっている。

ティールグループのアナリストによれば、ボーイングが提案する次世代コクピットの大型タッチパネル(F/A-18E/Fの発達型、F-15SEなど)はエルビットが供給することになっており、それに関する投資はAELを通じて行われる、という繋がりがあるそうだ。結論としては、技術移転に絡んだ提携という話。地元産業界への働きかけという意味では、F-15SEの開発にKAIを関与させているのと似ているが、こちらは先進コクピットの研究センター設立にも繋がる。
コクピット内のシステムを中心とするアビオニクスのアップグレードは、わりと将来有望な分野であるのは確か。

F-X2の状況は未だに変わらず、F/A-18E/FのほかにラファールとグリペンE/Fが競合している。

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ペルーがスーパーツカノとKC-390の導入を検討

http://www.flightglobal.com/news/articles/peru-considers-super-tucano-kc-390-offers-368991/

2月中旬、ペルーとブラジルの両国政府は、包括的な防衛協力について合意した。この中にはEMB-314スーパーツカノとKC-390の導入等が含まれているという。
EMB-314は老朽化したA-37Bを更新するもので、以前から導入が計画されていたものの、予算難から交渉は進展していなかった。しかしペルー国防相がブラジルを訪問したのを機に、10機の導入を前提とした交渉が始まっている。金額は1億5000万ドル程度。

もう少し密接にブラジルと関係するのが、導入済みのEMB-312の近代化改修、KC-390計画への参加というもの。
以前ペルーがEMB-312を導入したのは1987年で、30機が配備された後、アンゴラに6機を売却。現在は16機が稼働状態とされている。ペルーは20機を改修する意向とのことで、少なくとも4機を稼働状態に戻すという事になるのかな。
KC-390の方は、導入機数やその役割についてまだ明確になってない。どういったレベルのパートナー国になるかは、ペルーの航空宇宙産業界の意向によるだろう。

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中国の防衛予算と航空戦力の近代化について

http://www.flightglobal.com/news/articles/chinas-defence-budget-to-aid-air-force-modernisation-369083/

中国は2012年度予算のうち、国防予算を11.2%引き上げて6700億元(約1060億米ドル)とする旨を公表しているが、例によって航空機の調達やR&Dに関する内訳は明らかにしていない。
金額ベースや成長率でみる中国脅威論に対する、中国の公式な見解としては、GDP比だと1.28%に過ぎないので米の国とかに比べりゃ全然低い、といったもの。まあ確かに、倍々になってた頃の勢いはないけども。

航空戦力の近代化については、もはや隠すまでもないというか周知の事実に近いものがあり、PLAAFにおいてはJ-10、J-11、Su-30の配備が進行中。最近ではSu-35の導入も交渉中と伝えられた。回転翼機でも同様で、新型機の配備が進む。AEW&CとJ-20は…実態よくわからんけど止まってるわけではないだろう。

海軍はJ-15が試験中、空母建造とも密接に関連するが実態やっぱりよくわからず。2011年に確認された他の機体としては、Y-8のASWまたはMPA型というのがあった。

R&Dはセンサと兵装、また長期的に見てエンジン開発の優先度が高いと考えられている。

シンガポールの研究者が、同国の防衛白書で記述したところでは、防衛予算のうち航空機の調達とR&Dに費やされる金額は、およそ1割と予想しているそうだ。

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カザフスタンがC-295を導入

http://www.flightglobal.com/news/articles/airbus-military-lands-c-295-deal-with-kazakhstan-369016/

3月1日、エアバスミリタリーは、カザフスタン国営企業のKazspetsexportに対し、2機のC-295を2013年4月までに納入することで調印した。これと別の覚書で6機の追加が合意されている。
この契約には一通りのサポートとスペアパーツ、地上支援設備が含まれる。金額は書かれていない。
将来的にはカザフスタン国内に整備工場や技術者の養成施設などをおいて、独立性を高める計画とのこと。

これらのC-295はカザフスタン防空軍の輸送機部隊に加わることになる。このクラスでも現用のAn-12/24/26/72より高性能だ。
原設計時期で20~30年の開きがあるから当然ではあるが、G.222/C-27JとC-295に匹敵する双発ターボプロップ輸送機は、旧ソ製には存在しない。中国のY-7系は乗員減っただけという感じだし。

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インドMMRCAでダッソーが最終交渉入り

http://www.flightglobal.com/news/articles/india-dassault-enter-final-mmrca-negotiations-369150/

インド国防省は、ダッソーがMMRCAにおけるL1ベンダーに選ばれたことを公式に発表した。長きにわたったMMRCA選定もついに最終局面を迎えた模様。
また、MMRCAの126機導入とともに、2014年からMiG-21を段階的に退役させることも明らかとなった。

2月上旬の報道からほぼ1か月経ったわけだが、この間にラファールのライフサイクルコスト算出に関する匿名の告発みたいのがあったようで、これも国防省から公式に否定されている。

L1ベンダーという状況は、インド側の契約交渉委員会(CNC)との最終交渉が許可されたことを示す。MMRCAにおけるCNCは、空軍当局や産業界の当事者(HALとか)から構成されているようだ。126機のうち108機をインド国内で製造することになるので、関連メーカーも多そう。
CNCとダッソーの交渉は、6か月~1年で合意に至る見通しだそうだ。

ブラジルF-X2選定でラファールが最有力か?/スイスのF-5後継機選定の流出文書

ブラジルF-X2選定でラファールが最有力か?

http://www.reuters.com/article/2012/02/13/brazil-jets-idUSL4E8DD11W20120213

ロイターの2月13日の記事。ブラジルF-X2の選定で、ラファールが最有力であるとの匿名政府関係者の談話が載っている。
この情報源によると、F-X2の36機の選定において、現大統領とその助言者は、ダッソーとの取引が最も良い条件であると考えている、という。F-X2では、ラファールの他、F/A-18とグリペンが最終選考に残った状態で、政権交代などの大きなイベントを経てずるずると遅延してきた経緯がある。この契約は40億ドル程度の価値があり、その後のメンテナンスサポートや追加発注があれば、より大きな取引に繋がると考えられている。

この展開は、インドMMRCA選定の結果が大きく影響しているとのことで、2/6の週にブラジルの国防相がインドを訪問し、MMRCAの取引条件について情報を収集した模様。

ボーイングの副社長はこの報道が出たときシンガポールにいたが、ブラジルF-X2はまだ決定事項ではないと述べるに留まる。
ブラジル側にとっては、米国製の機材が載ったエムブラエル機の海外輸出に制限が掛けられたりした件で、米国からの技術移転がうまく行くか懐疑的とも言われる。

このところダッソーの売り込みが積極性を増したのは、今年、2012年4月から5月に選挙を控えたサルコジ大統領が、その対策の意味も込めてテコ入れを図った、というのも大きな理由になってるようだ。
選定プロセスはかれこれ10年以上続いており、大統領は3回変わって大きく揺れた。前大統領は2009年にラファール導入の意志を明確に示したが、契約には至らなかった。この辺、空軍の現場が抵抗したとも言われていたはずだ。現大統領は前大統領に近い立場と見られていたのだが、2011年1月に大統領になったらすぐF-X2を白紙に戻してしまった。同年2月にはF/A-18を評価するコメントを出しているものの、技術移転の条件が折り合わなかったとされている。

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スイスのF-5後継機選定の流出文書

スイスで欧州製の3機種のうち、グリペンが選定されたが、流出文書で一騒動あった件の続き。
これが元のコピー。あまり衆目に触れる文書ではない点も含めて興味深い。

http://kovy.free.fr/temp/rafale/pdf/12332.pdf

Excelかなんかでグラフを抜き出して纏めたのがこれ。

http://rafalenews.blogspot.com/2012/02/switzerland-evaluation-report-quick.html

妙にラファールの評価が高いような気もするが。

Peugeot 208 GTi Concept/シルバーストーン・クラシックでフェラーリF40が集結/Gibbs Technologies Phibian / Humdinga II 水陸両用トラック/英国で考案された水害対策住宅

Peugeot 208 GTi Concept

http://www.gizmag.com/peugeot-new-208-gti-concept/21502/

ジュネーブショーに出展予定。
プジョーでGTi、と言えばそりゃ205ではあるが、現代的な3ドアハッチバックだから、どっちかというと2003年の206RCを連想させる。2Lターボから1.6Lターボになるのも、WRCの移り変わりと重なるようだ。このエンジンはRCZ搭載のものと同型で、6MTで最高出力203bhpを発生する。
1984年の205GTiの市販モデルは、最高出力104bhpだった。

208系ではもうひとつ、XY Conceptというのが出展予定。1.6LのeHDiディーゼルエンジン(最高出力115bhp)を搭載し、回生ブレーキと併せてリッター31.6km走る。トルクは285N・mあるというから、走行性能は十分以上だろう。見る位置によって色が変化する塗装も特徴らしい。でもディーゼルは音が致命的にダサい。というのはなんとかなったんだろうか。個人的にはプジョーはわかんないけどVWのでイメージよくない。

大きく重くなりすぎた207から、208で軽量化する流れを、205への回帰という言い方をしている。
でも205なんて1000kg割ってたわけで、100kg軽くなった程度じゃ206じゃないのやっぱり。

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シルバーストーン・クラシックでフェラーリF40が集結

http://www.gizmag.com/ferrari-f40-world-record/21463/

シルバーストーン・クラシックは、同サーキットで毎年7月中旬に3日間開催されるモータースポーツ系のイベント。往年の名車やドライバーが登場する他に、歴史に残る有名な車を集めてその節目の年を祝う、といったこともやっている。ジャガーEタイプが大挙してパレード走行したのは50周年の年だった。
フェラーリF40は2007年に20周年を迎え、この年は40台が参加している。今年はさらに台数が増えて50台以上になりそう、という話。

F40の生産台数は1315台。フェラーリ創立40周年を記念して作られ、またエンツォ・フェラーリ最後の作品としても知られている。
当時、英国においては30万ポンドで売り出されているが、その後は100万ポンドを超える価格で取引されたそうだ。
最近のオークションでは、走行距離300マイル未満の1991年型F40ベルリネッタが、78万1000米ドルで落札された。この金額は新車時の30万ポンドにほぼ等しいという。

今年のシルバーストーン・クラシックは7月20日から22日にかけて開催され、揃って50周年を迎えるACコブラ、ロータス・エラン(初代)、MGBの記念イベントと、英国のBMWファンクラブであるBMW Car Club GBの60周年イベントも予定されている。

http://www.silverstoneclassic.com/

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そしてフェラーリ250は相変わらずアホのような値が付いていた。

http://www.gizmag.com/ferrari-250-gto-record-price/21521/

2000万ポンドで落札と書いてある。
この250は、1963年9月製造。1962年型としては最後に作られた1台で、オクタン・マガジン誌によればシャシ番号5095GT。最初はフランスにおいてレース活動に投入され、1967年にオリジナルの状態に戻されてフランスのコレクターに売却。30年近く経った1996年にクラシック・フェラーリのディーラーから売りに出され、サムスン社長が350万ポンドで買った。その次の2007年の売値が1570万ポンドと暴騰。この時落札したのは英国の不動産屋だったそうだ。現オーナーの氏名は公表されていないものの、2000万ポンド以上で転売されるのかは定かでない。

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Gibbs Technologies Phibian / Humdinga II 水陸両用トラック

http://www.gizmag.com/gibbs-amphibious-phibian-humdinga/21388/

デトロイトに拠点を置くGibbs Technologies社は、過去に数種類の水陸両用車両を開発している。
この記事のは最新のもので、Phibianは4WD、船に引込式のタイヤをくっつけた感じの割り切った外観だが、ツインターボ付きディーゼルエンジンとカーボンファイバ製の軽量ボディで、陸上の高速走行も可能となっている。水上航行モードへの転換はボタン押して10秒で完了し、2基のウォータージェット推進により30mph以上で航行できるという。
定員は、乗員3名、乗客12名。貨物は最大1.5ton積載可能。軍事、人道支援向け。

Humdinga IIはもっと小型でPhibianと同等の性能を持ち、2つの車種を組み合わせて運用することにも配慮されている。
V8ガソリンエンジンは最高出力350bhpで、乗客5~7名、貨物は750kg積載可能。パトロールや緊急展開向け。

軍事または準軍事用途が主体で、その意味でもシュビムワーゲンの末裔といった雰囲気が漂う。

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英国で考案された水害対策住宅

http://www.gizmag.com/amphibious-house/21524/

英国のBaca Architectsが設計した水害対策住宅が、同国で初めて公的な建築許可を得ている。大雑把に言うと基礎工、土台の内側を空洞のプールとして洪水時には水を流し込み、水位の上昇とともに住宅全体が浮く。一種のポンツーンのような構造となっており、最大で2.5m浮き上がる。この数字は100年に1回程度の水害を想定したものだそうだ。
現在は、バッキンガムシャーのテムズ川沿いに建設する準備を進めている。

この住宅の設置面積は225平米で、河岸から10mの位置に建てられる。
Flood Zone 3bの中に建設された、古いバンガローを置き換えることが想定されている(Flood Zone 3bというのはFunctional Floodplainと定義される。日本の河川法で言えば堤外、高水敷に相当?)。従来、洪水被害を避けるためにはそのまま建物を高くする必要があったが、土台を庭より1階分高くしなければならなかった。

そもそも日本では堤外地に住宅をガンガン建てるという発想がないものの、世界的にはこうした浮上式の住宅は例が無いわけではない。この記事でも英国で初となっている。
英国で認可された背景にあるのが、オランダ、Maasbommelで2005年に建設された同種の建物32棟(と水上住宅14棟)が、2011年2月の洪水において、うまく機能したという事例。ニューオーリンズにもあるらしい。

コスト面では20~25%ほど高くなるが、Baca Architectsでは将来の気象変動、治水政策への変化をも踏まえて計画しているとのこと。
日本ではやたらに川に近付く必要もないというか、湿地帯の保全とかそういう方向性ならアリかもしれない。
こうした住宅が普及しても、簡単に水がつく居住地では衛生問題も出てきそうだが、人口減少時代になると土地利用もそんなにうるさくなくなる…のかなあ。

MMRCAとスイスF-5後継、イスラエルA-4後継の続報/NATOはRQ-4 Block 40の導入プロセスを前進させる

MMRCAとスイスF-5後継、イスラエルA-4後継の続報

いずれも国家間の軍事的な取引が、普通の商取引と全然違う、というのを端的に示している。少なくとも価格はあってないようなもんと言えよう。

・MMRCA入札においてダッソーはユーロファイターコンソーシアムより(少なくとも)25%安い金額を提示した?

http://www.spacewar.com/reports/Dassault_beat_Eurofighter_hollow_in_India_deal_999.html

2月10日、タイムス・オブ・インディア紙はインド国防省筋の情報として、MMRCAの入札に際してユーロファイターコンソーシアムの提示した金額が、ダッソーの提示した金額よりも50億ドル高額だったと伝えた。
同情報源によれば、この価格差によりラファールは、ライフサイクルコストと取得コストの両方でタイフーンを大きく引き離し、どんな提案であれ、タイフーンが再び競合に浮上する可能性は皆無になったとしている。ダッソーは来週からインドと独占的交渉に入る予定。
また、この前週に英国キャメロン首相がユーロファイターを再検討するよう要請しているが、インドから特に目立ったリアクションは無し。

取引金額は未定ながら全体で120億~200億ドルと言われており、50億ドルが割合としてどれだけになるかは、まだはっきりしていない。
真偽はさておいて、ダッソーが頑張って売り込んだというのは間違いなく言えるところだろう。

・サーブがスイス向けグリペンの提案で価格引き下げ?

http://www.spacewar.com/reports/Saab_to_cut_jet_fighter_price_for_Swiss_report_999.html

これもダッソーと値下げ競争状態に陥りつつある模様で、11月にサーブが提示してグリペンが選定された時の、31億フラン、22機という提案のうち、金額の部分を25~28億フランまで引き下げたという。スイスの日刊紙Tages-Anzeigerが報じている。
金額としては、先日ダッソーが再提案していた27億フラン、ラファール×18機というのに対応する。

スイスでは、今月中に政府が取引への支持を表明することになっているが、最終的には議会で承認されないと話が進まない仕組みであり、時期としては今年後半となる。フランスもスウェーデンも国家を挙げてバックアップしてるのは同様だ。

にしても捨て身で取りに行ってるなダッソー…

・イスラエルへのT-50売り込み

http://www.spacewar.com/reports/Seouls_final_bid_to_win_1B_Israeli_deal_999.html

http://www.flightglobal.com/news/articles/south-korea-demands-fair-fight-for-israeli-trainer-deal-368039/

こちらも選定は最終段階を迎えており、結果の発表は2月末に予定される。公式アナウンスは出てないものの、国防省の調達部門がM.346を推したというところまではほぼ間違いないようだ。これを受けてウディ・シャニ将軍とバラク国防相が相談するという流れになる。
エルサレム・ポスト紙の報道によれば、土俵際に追い詰められた韓国側は、大統領レベルの書簡を出したりで強く働きかけているとのこと。シンガポールエアショーでも韓国側は不当競争を主張しているが、結果が出る前からいろいろリークして当事者が批判する、というのはちょっと珍しい。お国柄という感じはするけども、自国が不利と大声で喧伝しているに等しい状況と言えよう。

以下はこれまでの経緯について書かれてるが、特に新しい情報ないため省略。

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NATOはRQ-4 Block 40の導入プロセスを前進させる

http://www.flightglobal.com/news/articles/nato-clears-funding-hurdle-to-buy-five-global-hawks-367822/

NATOはalliance ground surveillance (AGS)を担うプラットフォームとしてRQ-4 Block 40を5機導入する計画を立てていた。しかし2010年10月の契約当初の参加15ヵ国のうち、カナダ、デンマーク、ポーランドの3カ国が撤退し、計画は資金と運用に関係する交渉の詰め段階で停滞することになる。
NATO事務総長は2月3日の会議では詳細は決められないと述べているものの、別の情報源によると資金の目処は付いた状況であるとのこと。
関連して、ノースロップグラマンは以前、ポーランドが計画に復帰する可能性に言及しているが、これについても公式なコメントは出ていない。

AGSにおいては、参加国の中で今後20年の共同運用が計画されている。取得した情報は幾つかのレベルに分けて共有される。このBlock 40はMP-RTIPを装備し、E-8Cに近い能力を有するものの、これを凌駕するほどではない。

英国防相がF-35計画の将来に懸念/イスラエルのLIFT選定が近付く/ルノーがフランス軍に発砲検知システムを供給

英国防相がF-35計画の将来に懸念

http://www.spacewar.com/reports/Britain_voices_concern_over_future_of_F-35_in_US_999.html

1月4日、ワシントン・シンクタンクの催した大西洋会議において、フィリップ・ハモンド英国防相は、レオン・パネッタ米国防長官に対して、QDRによる軍事予算削減がF-35計画に及ぼす影響に関して話し合いたいとの意向を表明した。

米国のQDRに関しては、二正面戦略の放棄と軍事予算削減(次の10年で4870億ドル削減)の2つをメインに、一般報道でも大きく取り上げられた。実際のところ、軍事予算規模が縮小するのは、この10年、大規模な海外での軍事行動が続いたからという面も大きいから、流れとしては必然と言える。問題はどれだけ減って何に影響が及ぶか、という話。
そしてQDRの大枠は発表されたものの、具体的な内容は現時点では乏しい。特に米軍向けのF-35調達プログラムは、およそ3850億ドルという史上最大規模の値札が付いてるので、一般的には予算削減の影響を免れないと考えられている。

英国はF-35B導入を取り止めてF-35Cに変更することを正式に決め、これに伴って両国間ではcarrier cooperationに関する合意が成されたとのこと。英国では絶えて久しいCTOL空母運用の準備のために、米国が乗員とパイロットの訓練を援助することが決まっている。
英海軍がCTOL空母の保有と運用を止めたのは、フォークランド戦争の後、2代目HMSハーミーズ(現INSヴィラート)退役の1984年。この時点でスキージャンプを追加されており、艦載機はシーハリアー。その前は回転翼機を搭載した対潜艦やコマンドー母艦として使われていたから、CTOL艦載機を積んでたのは、もっと古い時代の1960年代一杯、ということになる。
ウィキペによると最後期の1968~1970年当時のCAWの内訳は、

801NAS バッカニアS2×7機
893NAS シービクセンFAW2×12機
849NAS ガネットAEW3×4機とガネットCOD4×1機
814NAS ウェセックスHAS3×5機(ASW機)
救難機 ウェセックスHAS1

といったものだったようだ。時代を感じますな。

話を戻すと、英国は少なくともプリンスオブウェールズ就役に間に合わせたいと考えているので、引き渡し時期の変動には神経を使わざるを得ないわけだ。どっちも遅延気味だけども。

開発パートナー国が及び腰になり、ついに米国も折れそうになってる状況では、計画の先行きが危ぶまれるのも仕方ないことであろうが、メーカーから見るとあくまでも「輸出向けは別枠」なので、実はカギを握るのはFMS第一陣のイスラエルと日本なのかもしれない。
うまくやれるのかなあ…

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イスラエルのLIFT選定が近付く

http://www.spacewar.com/reports/Israel_out_to_wrap_up_1_billion_jet_deal_999.html

イスラエル国防相ウディ・シャニは、選定候補を製造しているメーカーを相次いで訪問した。すなわち先週イタリアのアレニア・アエロマッキを訪問、今週は韓国へ飛んでKAIと話し合いを行った。はず。
A-4後継のLIFT/軽攻撃機×20~25機(金額は10億ドル程度)の選定は大詰めに差し掛かっている。

二国間の防衛協力にも直結しているという件については以前書いた通り。
大雑把にまとめると、イタリアからM-346を買うとなればAWACS機×2機のバーター、衛星の共同開発、イスラエル製UAV導入などで10億ドル相当の取引に繋がる。マイナス要素としては、ネタニヤフ首相と個人的なパイプがあったベルルスコーニ首相の失脚、ドバイでの墜落事故(乗員は脱出に成功したが機体はペルシャ湾に沈む。原因未公表)がある。
韓国からT-50を買うとなれば、UAV、ATGMや対砲・ロケット弾・ミサイル防御システムの導入など50億ドル規模の兵器取引、回転翼機での協力、KAIとエルビットの合弁設立など。また現時点でもイスラエルと韓国は防衛に関する協定を結んでおり、年間2億8000万ドルの取引があり、T-50が選定されなかったらこれを取り止める事を表明している。
マイナス要素は特にないが、なんか韓国側が一方的に顧客になってるだけのような気はするし、金額がフカシ気味に見えなくもない。

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ルノーがフランス軍に発砲検知システムを供給

http://www.spacewar.com/reports/Renault_delivers_gunfire_detection_systems_999.html

フランス陸軍は昨年、アフガニスタンへ展開するVAB装輪装甲車に、ルノー製のSlate acoustic sniper localization systemを搭載する事を決定。ルノーは11月下旬にDGA向けとして80セットを供給した。

このシステムは、12.7mmの遠隔操作機銃(ノルウェー製のRWS、TOP12.7/プロテクターM151)と連動し、ターレットを自動的に撃たれた方向へ旋回させることが可能となっている。また口径と発砲位置をある程度識別して記憶でき、将来的には戦術情報システムでデータ共有も可能なようにできているとのこと。

01dB-Metravibの音響センサが使われてるようだ。

http://www.01db-metravib.com/uploads/media/Press_release_Slate_VAB_-_050112.pdf

記事がプレスリリースまんまだった。

インドがミラージュ2000アップグレードに付随するAAMの導入を発表/アクラII級SSNが近々インド海軍に引き渡される/インド空軍が空中給油機選定の追加トライアルを完了/MiG-31の空撮画像

インドがミラージュ2000アップグレードに付随するAAMの導入を発表

http://www.spacedaily.com/reports/India_clears_12_bn_missile_deal_with_European_firm_999.html

インドは2011年7月に保有するミラージュ2000H×51機のアップグレード契約について、フランスのダッソー及びタレスと合意した。金額は24億ドルで、10年かけて実施する事になっている。

そして1月4日、アップグレード改修の実施に伴い、新型AAMの導入も併せて進められる。ここではMBDA製のAAM×500発とあるので、MICAを指す。金額は12億ドル。なお改修後の仕様としては、ギリシャなどと同様にミラージュ2000-5相当からアビオニクスとレーダーを換装、EWシステム、新兵装のインテグレーションに対応したアップグレード型、2000-5 Mk.2と大体同じ…だと思う。グラスコクピットで、HMD装備のようだ。

http://www.dassault-aviation.com/en/defense/mirage-2000/mirage-2000-5-mk2.html?L=1

試改修は既にフランスにおいて2機分が実施済みで、飛行試験も行われた。残りはインドのHALが改修することになっている。

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アクラII級SSNが近々インド海軍に引き渡される

http://www.spacewar.com/reports/India_rejoins_the_nuclear_submarine_league_999.html

ロシアのアクラII級SSN、Nerpa(K-152)は、インド海軍に10年間の期限でリースされることになっている。2008年の公試中の火災でここまで長引いたが、タイムスオブインディア紙によると、1月末にもインドへ回航される予定とのこと。

この艦は、インド海軍ではChakraという名前で運用される。Chakraという名前は以前インド海軍が、1988年から1991年にかけてリースしたチャーリーI級SSGN(K-43)にも使われた。その経験はインド国産戦略ミサイル原潜アリハント級の建造にも影響を及ぼしたという。なおアリハント級自体はチャーリーII級に類似するとの指摘もあり。ロシアのチャーリーI/II級は1994年までに退役している。
インド国産SSN開発に関連してくる可能性はあるが、あるとしても当分先かもしれない。
アリハント級は2009年7月に進水、年内の就役を予定している。

極東のウラジオストクから25マイルほど離れたボリショイ・カーメン造船所で引き渡しの調印が行われた。この造船所は通常、外国人の立ち入りが制限されてる区域にある。
K-152はコムソモルスク・モン・アムールで、ロシア海軍向けとして1993年頃から建造が開始されたが、予算の都合で中断され、2004年にインド政府との取引(金額6億5000万ドル)が成立するまでそのままになっていた。それから建造が再開され、2008年に進水。火災を起こしたのはその直後のことだった。

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インド空軍が空中給油機選定の追加トライアルを完了

http://www.spacewar.com/reports/India_completes_more_air_refueling_trials_999.html

インド空軍は2004年、空中給油機としてIl-78×6機を導入した。この後、2006年の空中給油機入札で、インド財務省はIl-78の追加導入が低コストである、との結論を出しているが、2009年末、空軍はA330MRTTを選定した。
この結果を巡って空軍と財務省は完全に対立し、2010年には、ついには財務省が取引自体を白紙に戻してしまう。
それから選定プロセス見直しなどを行って仕切り直し、2010年9月の再入札という流れになる。

記事になってるのはインド空軍が行ったトライアルのことで、場所は中北部のグワリオール空軍基地、トライアルに参加したのはA330MRTTとIl-78だった。それに先立ち、2011年7月にはそれぞれの地元であるスペインとロシアで評価が行われてる。
グワリオール空軍基地ではインド空軍の作戦機のうち、Su-30MKI、MiG-29とミラージュ2000Hを使って空中給油が行われたとのこと。

どう見ても4発の方がカネ掛かりそうな気がするが。

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MiG-31の空撮画像

http://tuku.military.china.com/military/html/2012-01-05/191329_2019967.htm

どこが出所かいまいち不明だが例の中国サイト経由で。

空中給油機から撮った感じ。雲海が美しい。