2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ/F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成/2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる/F-15SAが2月20日に初飛行/ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

USAF関連。

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2013年前半のUSAF爆撃機群に関するまとめ

今年はB-2配備20周年。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123336776

2月19日、ミズーリ州ホワイトマンAFBにおいて、B-2配備20周年を記念する式典が催されている。509th BW指揮官、Thomas Bussiere准将の訓辞によるとB-2は過去4つの武力紛争(後述)に投入されたとのこと。
また、4月1日はIOC獲得から16年の節目にあたり、12月17日はライト兄弟の初飛行の日(1908年)として有名だが、509th BWの前身、509th Composite Wingが1944年にユタ州Wendoverで編成された日でもあり、更にホワイトマンAFB所属の最初のB-2、スピリットオブミズーリが配備された日でもある。

B-2の起源を辿れば1979年スタートのATB計画にまで遡る。言うまでもなく当時は冷戦の最中であり、核戦力三本柱いわゆるトライアッドの一つを担うものとして考えられていた。今では核爆撃というオプションは現実味を失いつつあるものの、最初から高度のステルス性を与えられていることで、今なおB-2は最も厳重に防御された領域への侵攻すら可能で、核戦力としての意義を保持し続けている…と、少なくともUSAFの公式見解はそうなっている。

1980年代に設計、製造が進められ、1988年初公開。75機の製造が計画されていたが旧ソ連崩壊により21機に削減され、1機が事故で失われて20機となり現在に至る。機体名はスピリットオブアメリカとキティホークを除けば州名が付けられた。

戦略爆撃機として配備された後、最初の改修は通常兵器の運用能力の付与となった。そして1999年、コソボでNATOの作戦に参加。このときのソーティ数はNATO軍全体の1%に過ぎなかったが、目標の11%を攻撃したとされている。
2001年9月11日以降は、アフガニスタンで「テロとの戦い」が始まる。
2003年、「イラクの自由」作戦において開戦後最初の爆撃(“shock and awe” campaign)を行う。戦争全体では投下した爆弾の量は、100万ポンド以上に達した。
2012年、NATOの対リビア軍事行動である「オデッセイの夜明け」作戦に3機が参加。25時間かけて欧州へ進出し、航空機のシェルター破壊任務を遂行、2000ポンドJDAMを45発投下した。

 

同じ4月1日にはスピリットオブフロリダが7000飛行時間を記録。

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123343279

この機体は2007年5月に最初に5000飛行時間に達した機体でもあり、6000時間を記録したのは2010年1月で、これも最初だった。

 

最近の改修計画としては、衛星通信に関するものと自己防御システムに関するものがある。

前者は5月15日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10032612

Advanced Extremely High Frequency (AEHF)通信衛星に対応するための改修で、現時点では地上での実証試験が進められている状態。レドンドビーチのノースロップグラマンの施設で4月15日にデモンストレーションを行ったとある。
自社製のAESA型アンテナと海軍のマルチバンド端末により、AEHFの模擬ペイロードを使って行われた。当然ながら、メインはアンテナ。この改修については他にもいろいろなものが含まれてる件は前にも書いたので省略。

現用のMilstarの後継となるAEHF衛星は2001年から開発が始まっているが、まだ6機中2機しか軌道に上がってない。

http://en.wikipedia.org/wiki/Advanced_Extremely_High_Frequency

後者は2月14日付。

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=10021861

Defensive management System (DMS)と呼ばれ、現在TDフェーズ2という段階にある。ノースロップグラマンがシステムインテグレータとして受注しており、想定される脅威・環境に対抗可能なシステムを設計、アンテナやアビオニクスといったハード、ソフトをとりまとめてEMDフェーズに備えることになる。新規開発の技術を避けて、実証済みの技術を用いて開発リスクを下げると称している。

 

B-2が20年目を迎えた一方、それよりも更に以前の爆撃機もアップグレード改修が行われてる。

B-1の最新の改修については、

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123334294

337th TESが、Sustainment-Block 16(SB-16)と呼ばれる大規模な改修計画の実証試験を担当する。B-1の改修としては最も大がかりなものとされ、Fully Integrated Data Link(後方操縦席のデジタルアビオニクス部分を変更してLink 16に対応、Joint Range Extension Applications ProtocolによりBLOSでも運用可)とCentral Integrated Test System(後方操縦席のコンピュータ交換とカラーMFDの追加)、Vertical Situation Display Upgrade(前方操縦席(パイロット席とコパイロット席)の2台のモノクロディスプレイを4台のカラーMFDに交換)など。

肝の部分はデータリンクで他はそれを使うためのUIの改善といった感じ。Link 16およびJREAPなどの実証にはUHF無線とLink 16のネットワークが必要なため、その設備を準備するのに50万ドルかかったとある。
337th TESの実証試験は訓練計画にも関連しており、7th BWでの訓練が円滑に行えるよう、機材到着前から整備班含め準備しているとのこと。実証試験は4月からエドワーズAFBで開始予定。

実際にFIDL、VDSUの試験で改修機を飛行させた経験があるパイロットは、全く新しい機体だと思って扱わなければならないぐらい、劇的に変わった、と述べている。

Sniper ATP-SEがダイスAFBのB-1に装備される。

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123345084

4月15日付。ATP-SEはネットワーク関係が強化されたもので、Link 16相当の双方向データリンクに対応するため、地上との交信・情報共有が迅速化され、中継能力も備えるようになる。前世代型は1方向データリンクだったので、その違いは大きい。
またデータリンクの情報を保存できるというのも新しい機能で、訓練や分析に有用なデータが残せる。
ATP-SEは前世代のATPと互換性があり、ATPが搭載可能な機種全て(USAFではB-52、F-15E、A-10、
F-16)に搭載できることになっているが、予め訓練が開始されていたこともあってダイスAFBのB-1が最初に装備することになった。

 

2nd BWのB-52HにはSniper XR、AN/AAQ-33が装備される。

http://www.afgsc.af.mil/news/story.asp?id=123341194

ATP-SEよりは旧式だが、従来はLGBを投弾するのに5分間程度、30から40のボタン操作を行う必要があったのに対して、わずか2、3秒で済むという。60年物の爆撃機でも金をかければここまでやれる。あと25年飛べるという調査結果もあるので、数は減らしつつもしぶとく飛び続ける公算。

またティンカーAFBでは7月から衛星通信システムCombat Network Communications Technology (CONECT)の装備がスタートする。

http://www.tinker.af.mil/news/story.asp?id=123353771

これまでB-52では飛行前にアップロードされたミッションデータに従って任務を遂行することしかできなかったが、CONECTの装備によって飛行中にミッションデータを入れ替えることが可能となる。よつて、より柔軟な運用ができることになる。試験はここ数年、エドワーズAFBで行われていた。
主体は衛星通信装備だが、乗員向けの装備としては、最新端末への更新、ノイズキャンセル型のヘッドセットやデジタルインタホンなども含まれてる。
ボーイングが主契約で金額は7600万ドル。この中にはメンテナンスほかの支援と、LRIPの製造が含まれる。LRIP 1は3月契約で8機分、LRIP 2は来年3月契約予定で10機分。全率生産は2015年1月契約見込みで10機分。FY2014での予算は30機分。

最初の改修は、ティンカーAFBでのprogrammed depot maintenanceに合わせて行われる。7月から翌年4月までというから約9ヶ月を要する。

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F-22 Combined Test Forceが1000ソーティを達成

http://www.edwards.af.mil/news/story.asp?id=123345680

4月24日付。

4月19日、エドワーズAFB所属のF-22 CTFにおいて、1000ソーティが記録された。機体は2001年10月に配備されたテールナンバー4007で、飛行しているF-22としては最も古い。AIM-9Mを初めて発射し、2度目にQF-4を撃墜した機体でもある。
着陸後、末尾の007にちなんでジェームス・ボンドのテーマで出迎えられたそうだ。
この飛行は、最新のソフトウェア改修であるインクリメント3.2Aでの初の試験飛行だったため、パイロットはボーイング社のテストパイロットだった。

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2012年度のCollier TrophyにMC-12がノミネートされる

http://www.acc.af.mil/news/story.asp?id=123339451

米国航空界のアカデミー賞的なものであるが、MC-12とかえらく地味だなと思ったが、本機はUSAFとしてP-51以来のスピード採用であり、かつアフガニスタンで目覚ましい働き(記事によると710名のタリバン指導者、爆弾製造者、野戦指揮官の殺傷および逮捕に直接関わり、プロジェクトリバティ全体で3000名の反政府勢力の兵員を排除したとある)を見せた、というのがノミネート理由となっている。

ちなみに結果は3月12日に発表、5月9日に授賞式が行われ、

http://naa.aero/html/awards/index.cfm?cmsid=62

JPLの火星科学研究所とキュリオシティのチームが選ばれている。

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F-15SAが2月20日に初飛行

http://www.wpafb.af.mil/news/story.asp?id=123339926

各国に改修が進んだ新造F-15が輸出されるようになって、何かUSAF本国仕様のF-15が相対的に性能低くなりそうな情勢であるが、2月にサウジアラビア向けF-15SAが初飛行している。この機体はF-15シリーズとしては試験機F-15 S/MTD以来のデジタルFBWを備えたものとなり、その他ハードポイント増設やIRST、スナイパーXR、AESAレーダーなど、イスラエル配慮で微妙にダウングレードされていたS型を、E型相当以上にアップグレードする形になる。

当面は3機体制で米国内での試験が続けられ、2015年から2019年にかけてデリバリ予定。

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ドイツ駐留の81st FWが解散、欧州のA-10装備部隊が姿を消すことに

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123352839

ドイツ駐留の52nd FWは、F-16とA-10を運用してきて、隷下の81st FW(シュパンダーレム基地)にはA-10が配備されていた。この部隊は71年の歴史がある飛行隊であったが、6月18日をもって解散となり、A-10を運用する部隊は無くなった。これは欧州でのA-10の歴史が終わることも意味する。

欧州のA-10は、最大で6個SQが配備されていた。押し寄せるワルシャワ条約機構軍の戦車軍団をちぎっては投げちぎっては投げ(最後は核でry)いった情景がよくイメージされていたものである。

最後のソーティの様子が公式動画であった。

http://www.youtube.com/watch?v=yNUhA_qffqM

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USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出/TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表/ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく/ACTUVの活躍(イメージCG)/GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出

http://www.gizmag.com/us-special-forces-subsonic-ammunition/25172/

SOCOMが用いている制式ライフル弾の初速は、弾種によって異なるがおおよそ音速の2~3倍とされている。
これを大きく下げて静粛性を高め、市街戦(殊に隠密作戦、個人あるいは少人数グループへの襲撃など)に使用したい、というのが主な動機となっている。が、大口径の亜音速弾には精度や信頼性の問題がつきまとうので、簡単な話ではない。

SOCOMは本格開発の前段として、SBIRに基づくRfPを発出した。
この手の計画は過去にも存在したが、開発は言うまでもなくうまくいってない。が、材料技術、製造技術の進歩によって実現できれば大成功、みたいな。

確実に機能する亜音速弾は、現在知られている限り小口径のピストル弾が存在するのみで、ライフル弾としては例がない。初速を遅くしつつ、精度を保ち、信頼性の高いライフル弾となると、技術的なハードルは高い。
装薬を減らすことになるから、有効射程距離が著しく縮むのは仕方ないとして、比較的大きなカートリッジに少量の装薬という組合せでは、燃焼が不安定となり、薬室内のガス圧を低下させ、不発や停弾を招く危険性が高くなる。薬室からのガス漏れが起これば、現代的なライフルのガス圧作動式の機構が満足に動かない可能性もある。

これらを解決する具体的な手法としては、新しい形式のカートリッジが必要になる見通しで、高分子系の材料で抜弾抗力を下げたり、ガス漏れ防止用のサボを入れるなどの案が示されてる。

実現の見通しが立てば原型試作、デモンストレーションと進むことになり、最終的には法執行機関向けにも(どっちにしても特殊部隊だろうけど)供給されるそうだ。

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TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表

http://www.gizmag.com/trackingpoint-precision-guided-firearms-scopes-digital/25264/

TrackingPointの社長は、特殊作戦の経験豊富な元海兵隊大尉(イラクでの作戦行動を通してブロンズスター、シルバースターを受勲している)で、除隊後レミントンの副社長を勤めた後、現在に至る。

で、ここに紹介されているのはTriggerPointという精密狙撃システムであり、.338ラプアマグナム弾を使うXS1と、.300ウィンチェスタマグナムのXS2およびXS3という製品を準備している。

拡大映像で目標点をマーキングした後、空気抵抗、風向きなどの補正を加えて正確な弾着ができる方向を指示、その方向に向くまで引き金が引けないよう抑止する、といった動作をするようだが、移動目標に使えるのかとか詳細はよくわからず。
具体的には映像の方を参照。

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ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく

http://www.rheinmetall-defence.com/en/rheinmetall_defence/public_relations/news/latest_news/details_2368.php

http://www.gizmag.com/rheinmetall-laser-test/25504/pictures

2011年に実施した5kW×2門の10kWタイプによるデモンストレーションに続くもので、レーザの出力を向上し30kW×1門+20kW×1門の50kWタイプの試射を実施している。場所は前回同様、同社保有のスイスのOchsenboden試験場。

11月には、3種類の目標への試射が試みられた。
1つ目は1000m先の15mm厚の鋼板、2つ目は3000m先から毎秒50m程度の速度で飛行するターゲットドローン、3つ目は迫撃砲弾をシミュレートした毎秒50mで移動する直径82mmの鋼球で、それぞれ悪天候下でも十分迅速に破壊できたと発表されている。

なお、同社は複数のレーザを束ねて使用する技術はBeam Superimposing Technology
(BST) と呼んでいる。つまり32bitプロセッサ2つで64bit級みたいな(違う)。
写真のうち、2門の方が今回の50kWタイプかな。

実用型では合計100kWを目指すが、2013年は60kWのレーザを試験するとのこと。
これはレーザ出力を(30kWの)2倍にすると書いてあるので、つまり実用型は60+20+20=100という解釈でよいのだろうか。

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ACTUVの活躍(イメージCG)

http://www.gizmag.com/darpa-saic-actuv-drone/25607/

SAICが受注したACTUVのイメージCG映像が公開されている。ACTUVはASW作戦を主要任務とするが、モジュール変更によってISRから小規模な補給まで可能ということだから、多目的USVとした方が適切な気がする。

形態は受注の時のイメージと大体同じで、長期間のディーゼル潜水艦追尾の例を説明している。映像では非武装で、長期間にわたって目標を追尾し、情報を収集して終わる。SAICは60~90日間の作戦行動が可能としているが、あくまで最大ということか、そこまでは長くない。というか相手がディーゼル潜の例だしな。
興味深いのは、搭載した人工知能で目標の欺瞞行動に対応可能というくだりで、民間船舶を利用して追尾を混乱させるといった潜水艦の戦術機動にも対処できるという。つまり目標の位置を推定し、民間船舶などを避けつつ追尾を続けられることになっている。オペレータによる訂正ももちろん可能だが、勝手に動いてくれた方が労力が少なくて済むのは言うまでもなし。
水中の長距離センサは磁気(total field magnetometer array)、短距離センサは高周波アクティブソナー×2基。目標を識別するのはソナーの方になる。

total field magnetometer arrayというのはよくわからんが、ここにはMADのローコスト版みたいな事が書いてある。

http://www.psicorp.com/news_events/display_news.html?id=1217

こんなにうまくいくのかなあというのはおいといて、通して見た感じ、P-8と連携するだけでなく、CVNに積んでたASW機の役割も一部担うように見えるな。でP-8を水上はBAMS、水中はACTUVが補うと。

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GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

http://www.gizmag.com/gps-radio-telescope-underground-nuclear-test-detection/25434/

米オハイオ州立大の研究チームは、GPSの信号記録または電波望遠鏡VLAの観測記録によって、秘密の地下核実験(記事中ではunderground
nuclear explosions、UNEと称している)を検出できることを発見した。

従来、地下核実験を検出する最も確実な方法とされているのは地震計のデータ解析であるが、核分裂反応の規模が小さいと通常爆薬などとの区別が難しくなる。例えば北朝鮮の2006年、2009年の核実験のうち、2006年の時は1キロトン未満と推定されたため、おそらくは失敗と見られたものの地震計のデータだけ判断するのは困難だったという。

オハイオ州立大でGPSを専門に扱うグループは、2009年の核実験の直後、朝鮮半島上空にあったGPS衛星の信号が、訂正によりごく短時間だけ遅延し、その程度がGPS衛星の位置によって異なることに気がついた。核実験に伴う電離層の乱れ(traveling ionospheric disturbance (TID))が、GPS信号に影響を与えることは以前から知られていたが、GPS衛星の位置と訂正の関係についての研究はされていなかった。
核爆発の爆心地から単純にTIDの状態が波のように一定速度で拡がっていったと仮定すると、2009年のデータでは高度300kmあたりを870km/hで移動した計算になる。
その後、2006年のケースと、1992年のネバダ州での核実験のケース、2011年の東日本大震災におけるTIDをGPS信号の記録から確認したところ、核実験と地震によるTIDの発生パターンが異なることや、核爆発の規模でTIDの伝搬速度が異なることがわかった。後者については、1992年の20キロトンの核爆発が、2009年のUNEで起こったTIDの3倍の速度だった、とある。

VLAの方だが、こちらもGPSと同じくTIDに対する訂正を連続的に行うため、基本的には同じ考え方でデータを分析すればよく、VLAの技術者と連携して実際に同様のデータが残っているのを確認できたとのこと。

うまく捉えられるかはGPS衛星の位置関係にもよるし、核拡散の問題をどうこうする技術というわけではもちろんないが、新しい手段を得たのは悪い話ではない。
情報提供者を危険に晒す必要も少なくなるし。

BLOODHOUND SSCの推進システムが試験される/メルセデスベンツがエアロダイナミック・トレーラー/トラックを公開

BLOODHOUND SSCの推進システムが試験される

http://www.bloodhoundssc.com/

http://www.gizmag.com/bloodhound-engine-test/24347/

http://www.gizmag.com/bloodhound-test-successful/24398/

BLOODHOUND SSCは最新の地上速度記録挑戦車で、目標速度を1000mph、1600km/h、Mach 1.4としている。
利用する推進システムはEJ200ターボジェットエンジンとロケットモータの組合せとなるが、ここで話題になっているのはロケットモータの試験。

このロケットモータはFalcon(まぎらわしい)と名付けられた独自開発のもので、分類としてはハイブリッドロケット。独学で学んだという28歳の技術者が設計している。

英MoDが公式サポートし、REMEから5名のロケット技術者が派遣されることも決まった。

本体の諸元は、全長4m、直径45.7cm、重量450kgで、最大推力122kNを発生し、噴射炎は8mに達する。軸馬力換算すると60000kWで、大雑把にF1マシン95台分。
固体ロケットを車(ほかにもいろいろやったが)に使った草分けといえば、1920年代のフリッツ・フォン・オペルだが、スロットル調整ができない以外は、この種の目的には理想的な推進システムと言えた。

Falconの燃料はHTPB(末端水酸基ポリブタジエン)、酸化剤は高濃度の過酸化水素水で、燃焼温度はセ氏3000度。
酸化剤の調節によってスロットル制御が可能となる理屈であるが、酸化剤の投入量は20秒未満で963kgといったレベルであり、ロケットエンジンのターボポンプが流用された。これはアヴロ・ブルースティール(スタンドオフ型の核ミサイルで、エンジンはアームストロング・シドレー製の液体ロケットだった)から取ってきたもので、

http://www.youtube.com/watch?v=FwMnEoC0gVg

さらにこのポンプを動かすのはコスワースのわりと新しいF1用V8エンジン、CA2010となっている。

これにEJ200を加え、動力源は3系統となる。補機が800bhpという。
計画では、EJ200で350mphまで加速(最大2.5g)する。写真の軍人さんはRAFのアンディ・グリーン空軍中佐で、BLOODHOUND SSCの搭乗者となることが決まっている。

挑戦を行う場所は南アフリカのHakskeen Pan。

http://www.bloodhoundssc.com/project/adventure/desert-race-track/hakskeen-pan

2009年に選定。当初は、マルコム・キャンベル卿が1929年に速度記録挑戦のためのコースを設営したこともあるVerneuk Panを調査した。ここは平坦ではあるが頁岩が散らばる地形となっており、幅120ftのコースを整備するのに3ヶ月を要したとされている。BLOODHOUNDを走らせるためには、全長18km×幅1500mのコースを設営しなければならない。
調査の結果、表土の下にばらばらの頁岩の地層があって無理ということになり断念。

Hakskeen Panは、幹線道路があるために候補から外されていたが、1年前、新たに別ルートを通る舗装道路が開通したため、候補として再浮上した。現在は未舗装の旧道が残る形なので、これを利用してコースの設営を実施する。
既にノーザンケープ州政府からの支援を取り付けていたため、ロケーションの変更は簡単だった模様。

10月3日のロケットモータ試験では、ベンチ上にて出力22370kW(30000bhp)で、10秒間の運転が行われた。
今後、14回の運転試験が予定されており、安全性が確認されれば車両への搭載、低速走行試験と続く見通し。

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メルセデスベンツがエアロダイナミック・トレーラー/トラックを公開

http://www.gizmag.com/mercedes-benz-aerodynamic-truck-trailer/24262/

コンセプト公開から約1年、国際商用車ショーにて実車両の登場となった。
外観からも判る通り、空力面の改良を突き詰めたトレーラーで、トレーラーとトラクターの隙間をいい感じに埋め、13.6m長の標準的なサイズでありつつ、車輪が完全にカバーされるなどの変更箇所が目に付く。
側面だけでなく下面もパネルで覆われ、気流はボートテール状となった後端のディフューザから抜けるようになっている。これらの変更により、通常のトレーラーとしての日常の取り扱いには影響なしに、抵抗を18%低減する事に成功した。
具体的には年間2000リットルの燃料(金額にして約3000ユーロ、CO2排出量にして5ton)を節約できるとされる。

なお組み合わせられているトラクターは既に販売されているモデルで、メルセデスベンツ曰く、公道上で最も高効率な大型トラクターだそうだ。
側面の延長パネルはオプションらしい。

エアロダイナミック・トラックの方は、同様の手法に基づいて設計されており、抵抗を12%低減している。具体的には、年間350リットルの燃料(金額にして約500ユーロ、CO2排出量にして1ton)を節約できるとされる。

これらは国際商用車ショーに展示された後も試験が続けられる見込みであるが、EUにおいてはボートテールとしての500mmの延長部分が法的に引っかかる。この問題については、メルセデスベンツでは来春にも解決すると見ている。

Gizmagで取り上げられた、その他のトラックの燃費改善の試みとしては、

GPSと連動し、起伏に沿ってスロットル制御するといったスマートなクルーズコントロールシステムをVWグループのスカニアが開発。
燃料消費低減効果は3%程度という。熟練ドライバーとかだとあんまり効果ない気もするが、個人の技量に左右されないメリットはあるだろう。

http://www.gizmag.com/scania-active-prediction-system/20870/

同種のシステムは、トラック業界ではダイムラー、その他にも一部の鉄道でも採用されている模様。

さらに発想を自由にしすぎた感じの例がInnotruck。

http://www.gizmag.com/innotruck-diesel-reloaded-ev/22206/

ミュンヘン工科大が製作したデモンストレータというかコンセプトカーというか。ルイジ・コラーニ教授のわけもなくかっこいいデザイン炸裂だ。
だが見た目に反し、情報化とかそっち系の技術が主になってるみたい。太陽電池、風力タービン、回生ブレーキで発生した電力をスマートグリッドに流すとか夢一杯な感じだ。

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ついでにSLS AMGクーペのEVが発表されてるのでこれも。

http://www.gizmag.com/mercedes-benz-sls-amg-coupe-electric-drive/24320/

4モータで、だいたいコンセプト発表時のまんま出てくるようだ。エンジン音も出せる。音だけ。

RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか/タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ/オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み/RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

基本的に遡らないようにしてるのだけども、メモだけして貼ってなかった記事が出てきたので。

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RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-tornado-fleet-to-retire-in-2019-says-bae-375014/

8月2日付。

BAEシステムズの上半期中間発表において、RAFのトーネードGR.4が2019年3月に退役するとの記述があった。これはMoDの決定事項として確認済みのようだ。

現用のトーネードGR.4は、124機が存在する(FlightGlobal調べ)。これらの機体はRAFロシーマスとRAFマーハムにそれぞれ配置されており、アフガニスタンのカンダハルにも分遣隊が送られている。

F-35Bの配備について、最終的な決定には至っていないものの、現在の予定では2018年からRAFマーハムで運用がスタートすることになっている。これによってハリアー以来のS/VTOL攻撃機部隊が復活し、GR.4の一部と交代できるようになる見込み。

これとは別にサウジアラビア向けトーネードIDSのアップグレード、Tornado Sustainment Programmeにおける73機の改修が、2012年前半の12機の引渡しをもって一応完了している。今後はインテグレーションされた新兵器の引渡しが活発になるとのこと。

2007年の改修試作の時期の記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/saudi-arabia-reveals-progress-of-tornado-upgrade-216775/

ストームシャドウやブリムストン、ダモクレス・ターゲティングポッドなどが使用可能になる。

一方、ドイツではトーネードIDSを2025年まで運用する計画としている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-tornado-upgrade-on-track-as-laser-jdam-tests-near-376386/

F-4Fなどもそうだったが、ドイツは物持ちが良い。ドイツ軍は1990年代後半に至るまで海外展開しなかったから、エアフレームも長持ちしている、というのも理由の一つだろう。
RAFの機体などは、多国籍軍の中核として長年酷使されてきた。ハリアー退役後を支えたのもトーネードだったわけだし。

ASSTA 3.0仕様の近代化改修機は、6月下旬に3機が引渡し済み。Büchel空軍基地のJBG33に配備されている。写真の機体はそのうちの1機ということらしい。
ASSTAでの改修計画は、2018年までに85機予定となっており、1ヶ月に1機のペースで進行している。
ASSTA 3.1仕様は2015年以降で、MIDSの完全なインテグレーションのほかに、後席の表示装置を交換、チャフ/フレアディスペンサの一新するなどの予定がある。

GBU-54 レーザJDAM(LJDAM、500ポンド)のインテグレーションはOT&Eの段階にあり、10月からスウェーデンの射爆場で試験を実施予定。これには4機が使用され、実弾5発を用いることになっている。

以前書いたのと重複するが、ASSTAの内容ではMIDS/Link 16データリンクへの対応が最も大きなもので、その他に機体前部へ追加したサーブ製のRWRや、デジタルデータ/ビデオレコーダ、通信機と、タイフーンに採用されたのと同系のデジタルムービングマップ等が追加・更新される。

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タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-first-tranche-3-eurofighter-takes-shape-375776/

8月24日付。

トランシェ3A仕様の1機目はRAF向けの、機体番号BS116となる。8月下旬にSamlesbury工場で機体構造が作られ、ウォートン工場での最終組立に移行する。
BAEシステムズによると、トランシェ3Aの胴体部品には、350以上の設計変更が加えられているとのこと。AESA搭載に伴って電力供給量を増加し、冷却システムを強化したのが大きく影響した。

2009年に発注されたトランシェ3Aは、RAFの導入予定数が40機で、独31機、伊21機、西20機まで合計すると、112機となる。

また、9月下旬にはアレニアが製造する左主翼と後部胴体が出荷されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-alenia-delivers-sections-for-first-tranche-3-eurofighter-376899/

この機体、BS116の初飛行は2013年に予定されている。

次の段階はトランシェ3Bとなるが、こちらはまだ未確定という状態。2013年12月までに関係各国が合意してゴーサインが出なければ、2017年後半で生産完了となる。これについては、製造ペースを落として期限を先送りにした経緯がある。

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オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-edges-towards-eurofighter-contract-with-oman-375018/

これもBAEシステムズの上半期の中間報告から。

オマーンでは2012年1月に戦闘機入札のRfQ(request for quotation、要するに見積依頼)を発出、BAEシステムズはタイフーン×12機の提案で応じており、今年後半にかけての契約を目指し、交渉を行っているという。BAEシステムズとしては、2008年中頃に初めてオマーンを潜在顧客として挙げていた。

UAE向けには、タイフーンはラファール選定の当て馬扱い風で、あまり情報が出ていない。F-16E/Fの追加発注という線も似たような扱いか?
インドMMRCA向けもまだ諦めてない模様だが、これ以上の逆転はさすがに…あるのかなあ?でもインドだし。

このほか、タイフーンの製造状況についても触れられている。2012年前半に、EADSとBAEシステムズから各国に引き渡された機体は21機で、トランシェ2仕様としては合わせて144機に達した。発注数236機の半分は超している勘定。

ILAの時のユーロファイター首脳へのインタビューもついでに。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurofighter-chief-casolini-outlines-priorities-376246/

ここではMMRCAについて、まだフランスとインドの間で何の契約も交わされてないことを強調しており、2月のエアロインディアに出展する予定も明らかにした。

現在進行中の商談は、上で挙がったオマーンのほか、ブルガリア、クウェート、マレーシア、カタール、ルーマニア、韓国、UAEといった国々が挙げられている。

最後の方では、今後20年間の次世代戦闘機市場予測についても触れられている。ワールドワイドでは800機規模の市場と予想しており、ユーロファイターとしてのシェアは25%程度を狙っていく。

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RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

http://www.flightglobal.com/news/articles/rafs-1-sqn-reforms-with-eurofighter-typhoon-376556/

RAFで最も長い歴史を持つ実戦部隊、1Sqnは1912年に編成された。その後、2010年にハリアーGR.9の早期退役に伴って一時解隊となるも、今年9月15日、タイフーン装備の第4の前線部隊として再編成を終えた。RAFルーカーズにて、6Sqnとともに配備されることになる。

RAFルーカーズの2個Sqnは、いずれも北方空域のQRA任務を主体とするが、マルチロール任務を発達させる役割も持つ。

なお、残りの2個Sqnは、RAFコニングスビーの3Sqnと11Sqnで、ここではタイフーンに機種転換中の29Sqn、評価部隊の17Sqnも所属しており、タイフーンの大所帯となっている。

29Sqnが機種転換を完了した時点で、タイフーン装備の前線部隊は5個Sqn体制となり、編成が完結する。

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備/バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続/ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告/EADSとBAEシステムズの合併交渉

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-mbda-germany-to-test-defensive-laser-weapon-376474/

MBDAドイツは、ドイツと欧州国防省から一部の資金を受けつつ、対IEDおよび砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃用の、レーザ兵器開発とデモンストレーションを行ってきた。
最初の試験は2008年に行われた。複数の発振器を束ねる設計が特徴で、5kWレーザ発振器を2基使った2011年の初期の試験では、有効射程2.3km以上を達成した。

現在試験されているのは、より実用型に近い10kWレーザを4基束ねたシステムで、2012年初頭に最初の試射を行った。この時の結果は、迫撃砲弾の弾殻と鋼板を2~3秒で貫通しており、レーザ光の性質が良好で、個々のビームの損失の低さを実証できたとされている。
これに続いて10月には、砲弾を模した飛行物体を連続的に迎撃する試験を実施予定。

計画では、IEDを100m程度の距離から破壊するシステムを3年以内に、対砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃システムは24ヶ月で実用化することになっている。後者は20kWレーザ×5基のシステムとなり、有効射程は最大3km。

その後の発達型としては、UAV迎撃および野戦滑走路の防衛システム(航空機の離着陸時を狙うMANPADSに対処する)というのが挙げられている。
基本的に地上設置型のシステムとして考えられており、航空機搭載については研究もされてないとのこと。

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バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-cassidian-plans-further-tests-with-barracuda-uav-376416/

バラクーダUCAVデモンストレータは、そのまま実用型に発達する可能性があんまり無くなっているものの、UAV技術の開発には重宝されてる模様で、今年は6月から7月にかけ、カナダのグースベイにおいて飛行実験を行った。有人機のセンサとなって連携するといった内容が伝えられており、バラクーダの活動はここで一区切りとなった。

Cassidianでは次の2~3年についての議論を行っているところで、より多くの航空機と連携し、複雑な任務へ対応させるための計画に期待しており、それに沿って実際にバラクーダを飛ばすのは、2014年頃と予想される。実現すれば、一連の飛行実験としては4度目。
APARの搭載により、移動目標の探知と追跡が可能になれば、更に多くの実験・実証が可能になる。

欧州のUAV実験機は、1990年代から2000年代にかけて各国で同時多発的に現れたものの、開発リソースが集中せずにその後の開発が滞り、立ち消えとなったものが多い。バラクーダもそうした世代に属する一機種だが、技術開発や装備の評価のために、もうしばらく生き残ることになるのかもしれない。

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ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-air-force-details-success-during-red-flag-exercise-376410/

ILAにてレッドフラッグ演習について報告する講演があり、数字が幾つか出ている。

JG74からの派遣人員は約150名でパイロットは10名(ユーロファイターは8機)。

ドイツ空軍の指揮したある防空任務では、友軍全体として38:1というスコアを挙げた。これはレッドフラッグ演習の成績としては記録的な数字である。

ユーロファイターの模擬ミサイル発射は18回で、命中と判定されたのは16回だった。この中には少なくとも1回のF-22撃墜が含まれる。

ドイツ空軍のソーティ数は、212回計画されたうち、208回が実施された。

2014年のレッドフラッグにも参加予定となっている。

 

やや関連で、ドイツとユーロファイターの関わりについての記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-luftwaffe-advances-eurofighter-experience-376247/

ILAにはJG31所属の2機が参加し、1機はCassidianのテストパイロットによるデモンストレーションフライトを実施したそうだ。
ドイツ国内では、Cassidianにて直接ユーロファイターに関わる人数は約3000名、間接的に関わる人数は、22000名ほどになるという。合計すると25000名で、これは欧州全体でユーロファイターに関わる人数(100000名)の、約1/4に相当。ドイツの税収にも大きく貢献する内容と言える。

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EADSとBAEシステムズの合併交渉

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-systems-eads-in-merger-talks-to-create-100bn-turnover-business-376423/

話がでかすぎて先が読みにくいが、EADSとBAEシステムズの合併交渉が持ち上がっているらしい。9月12日にロンドン証券取引所のプレスリリースで、BAEシステムズ側から明らかにされた。
単純に2011年実績の2社の年間取引高を足すと、958億ドル。うち、航空宇宙分野に限っても740億ドルと、ボーイングのそれ(2011年実績は687億ドル)を凌ぐ。

BAEシステムズは2000年代から米国向けの事業に軸足を移しており、合併相手のEADSとしては、米国進出の強力な基盤を手に入れることになる。

欧州と英国の防衛産業は近付いたり離れたりを繰り返してきた印象があり、BAEシステムズは、ユーロファイターやMBDAとの事業で長期的な協力関係にあって、欧州企業との合併を模索しつつも、EADSが成立した2000年以降は英国内の事業で競合することになったし、2006年にはエアバス株を手放したこともあった。
合併が成立すれば、長年の確執も解消することにはなる。

BAEシステムズが40%、EADSが60%の株式を保有する計画(英仏独の各国家が保有する分は別の処理が必要らしい)で、両社が存続する二元上場会社になるとのこと。見かけ上は比較的緩いグループ企業化といった感じだがよくわからん。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%85%83%E4%B8%8A%E5%A0%B4%E4%BC%9A%E7%A4%BE

英国のM&Aは、テイクオーバー・パネルという民間機関が取り仕切っており、このケースでは10月10日までに当事者の両方または一方が意図を公表するよう求めた。EADS側の結論が出なければ、BAE側から期限延長を申し出るとしている。

野村資本市場研究所による説明。

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2008/2008aut20.html

エアバスがEADSの完全子会社であることなどから、背景はかなり複雑。株主の反応は総じて冷たく、翌13日の株価はEADSは9%、BAEシステムズが8%下げたと報じられている

http://www.flightglobal.com/news/articles/lukewarm-response-from-markets-to-eads-bae-merger-plans-376478/

BAEシステムズ側の問題として挙げられているのが、米国の事業部門を分離しなければM&Aが認められない、となった場合、大きな収益源を手放すことになってしまう上、米国市場への進出どころじゃなくなる、というもの。
米国内に資産が存在する以上は、外国投資委員会CFIUSが審査することになる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-eads-merger-could-face-us-regulatory-hurdles-376431/

この記事では米国で合併したサンダーズとユナイテッド・ディフェンスという2社についてクローズアップしている。
特に前者は、電子戦機器での大きな成功(F-35のALR-94を含む)に繋がっている。合併した2000年当時、欧州の企業はその分野で締め出されていた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/eads-bae-tie-up-unlikely-to-affect-airbus-business-376429/

合併後の従業員数は220000人。BAEシステムズはEADS以前、欧州の企業との合併を模索した時期があった。1998年にDASAとの合併交渉も行っている。
EADSの意図として、エアバスへの依存を減らし、防衛産業の方を強化したい節があるため、エアバスの事業にはあまり影響がないとの見方もある。

そして、もし合併が成立したら、という考察記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/weighing-the-defence-implications-of-bae-eads-consolidation-376455/

BAEシステムズがEADSと一体化するとなれば、英国を含む欧州の防衛産業がいよいよ一つのものになることを意味する。ダッソーの株式も46.32%はEADSが保有してたりするし、全体的には一つ穴の狢といった情勢だからだ。唯一の例外となるのは電子機器系で、イタリアのSELEXガリレオが残る。

合併後、戦闘機に関しては2機種が競合することになるので、企業戦略として難しい選択になるものの、どちらかが選定されれば勝ちという見方も可能だ。
また、JSF計画への関与はBAEシステムズ単独のまま推移すると予想される。ユーロファイターなどに関しても、現状維持のまま事業継続される可能性が高い。

現世代の製品はこのまま行くとして、長期的に利点となり得るのは次世代戦闘機の開発ということになる。
無人機にせよ何にせよ、開発リソースを1機種に集中させることができ、EADSのUAVデモンストレータで得られた技術も使える。取引高がそのまんま技術力に比例するわけじゃないが、ボーイング等に匹敵する可能性は出てくるだろう。

独DLRが可変式の前縁フラップを開発/ガルフストリームG650がFAA型式証明取得/SBiDir-FWコンセプト

独DLRが可変式の前縁フラップを開発

http://www.dlr.de/dlr/en/desktopdefault.aspx/tabid-10081/151_read-2107/year-all/

http://www.gizmag.com/morphing-leading-edge/24068/

ドイツ政府の航空宇宙開発期間であるDLRが、翼の前縁断面形状を変化させるタイプのフラップ、smart droop noseを開発した。
通常の前縁フラップ、特にスラットの様な隙間ができるやつは、揚力を高めるが抵抗を増し、騒音源ともなる。smart droop noseでは、前縁部分の断面形状そのものを変化させることで、欠点を無くして同様の効果だけを得られるように開発されている。

開発にあたっては、表面を平滑に仕上げつつ、弾力性と強度を両立するのが困難だった(着陸時には機体重量の1/3を支えなければならない)とのことだが、最終的にはGFRPを積層して解決したそうだ。その外皮の内側にアクチュエータが仕込んであって、形を変える仕組み。

風洞実験は、ジューコフスキーにあるTsAGIの大型風洞を利用した。その結果、前縁20度下げ状態までは、全く抵抗の増加が見られなかったとのことで、空力面の検証はひとまず成功している。
次の段階では実機への適用を目指し、バードストライクや落雷に耐え、あるいは凍結防止装置の装備などへ発達させることになっている。

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ガルフストリームG650がFAA型式証明取得

http://www.gulfstream.com/news/releases/2012/gulfstream-g650-receives-type-certificate.htm

ガルフストリームの9月7日付のプレスリリースによると、同社は2008年より開発を続けてきた新機種、G650の型式証明を取得したとのこと。
既に200機ほどのオーダーが入っており、顧客への引渡しは年内にスタートする予定となっている。
ガルフストリームで最大・最速の機体であるだけでなく、価格は6000万ドルからとなっており、名実ともに同社のフラッグシップと言えるだろう。

初飛行は2009年で、それから35ヶ月間に.1181回のフライトで3889飛行時間を記録。以下、セールスポイント等が列記されているが、試験飛行のハイライトについての部分を抜粋。

2010年5月2日のフライトでは初めて最大運航速度Mach 0.95に達し、2010年10月の高速巡航飛行試験では、大西洋上にて5000nmを9時間45分、平均速度Mach0.9で飛んだ。
2011年2月にはカリフォルニア州バーバンクからサバンナまでの1900nmを3時間26分、巡航速度Mach 0.91~0.92で飛び、最高速度Mach 0.925を記録。
2012年5月12日に最初の大西洋横断飛行が実施された。ワシントンDC-ジュネーブ間の3780nmで、飛行時間は6時間55分だった。

2011年4月の悲劇的な墜落事故は記憶に新しいが、再開後は大きなトラブルを出さずに現在に至る。

巡航速度がMach 0.9に達するビジネスジェット機は少ない。G650の他にはサイテーションXぐらいか。

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SBiDir-FWコンセプト

http://www.gizmag.com/rotating-bi-directional-flying-wing-design/23982/

今月初めに、手裏剣みたいな想像図で話題になったアレ。まあ一応。
エンジンマウントした胴体部分に対して翼のある下半分が回転する感じなんかしら。その辺の機構がよくわからぬ。
こんなのに10万ドルぽんと出しちゃうNASAにある意味安心した。最近は景気の悪い話しかなかったので。
でも斜め翼と同じ匂いがしますおわり。

コメント欄でガミラス艦に言及している人を見つけて驚愕(しかもちゃんとSpace Battleship YAMATO (2010年のじゃなくて1974年の)って書いてある)。メリケンオタ侮れじ。

航空自衛隊向けF-35Aの最初のバッチについて合意/レッドフラッグ演習に参加した独空軍指揮官のインタビューなど

航空自衛隊向けF-35Aの最初のバッチについて合意

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2012/06/29a.html

FlightGlobalではLMのプレスリリースという形で、今週に入ってから報じられている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/japan-orders-initial-batch-of-four-f-35s-373704/

最初のバッチ4機を2016年度末(H28年度末)に導入するというのは、とりあえず達成されそうだ。
シミュレータは1機分に近い価格なのか。

予算に対しては、FACで6億ほどオーバーしたが、初度部品の調整で600億という枠には収まった。
この枠内に収まったということは、金額的には米軍向けLRIPのFACに近いところになったわけで、条件としてはそんなに悪くない。まあ、残りも同じ値段ならボッタクリだが、FACOを日本に置くなら、そっちを通しても金は回るため、簡単に損得は言えない。
米国というよりLMの立場として、値段も納期も強気に出られない事情がある。
USAF含むJSF参加国向け量産時期の後ろ倒しのため、製造数を早い年度に押し込むには、普通のFMSでの輸出契約を取ってくるしかない。そうなると顧客の条件を外して取り消されるリスクは回避したい、といったところだろう。

LMの韓国向けF-XIIIの提案がどうなってるのか不明だが、秋選定だと2016年度末納入にギリギリアウトなんではというか、日本のは実質2017年3月末期限だしな。

http://japanese.joins.com/article/790/144790.html

ただし韓国の場合はボーイングの影響力が強いので、F-15SEの可能性もそれなりに高そうだ。
F-XIII単体でなくKFXまで視野に入れるなら、タイフーンの方がまだ技術移転などのメリットが大きい。しかしFXIIのときのような方針転換もあるから予想し難い。

つい数ヶ月前も、イスラエルの次期練習機でT-50採用しなかったら取引全部止める!とか言ってたけど、6月24日にはエルビットへC-130Hの近代化改修を発注した。

http://www.flightglobal.com/news/articles/elbit-to-upgrade-south-korean-c-130-transports-373343/

建前はともかく、エルビットとKAIとの繋がりがあるので簡単に切れないのも周知の事実であったりとか。同様に産業界の繋がりならやはりFXIIIはF-15SEになるがどうなるか。
ROKAFのC-130Hは1987年から1990年にかけて導入。機数は12機で、うち4機はストレッチ型のC-130H-30。さらに2014年には、J型を4機受領予定となっている。
主にアビオニクスの改修とグラスコクピット化などで、金額は6200万ドル。

そもそもKFXも複数の異なるコンセプトが伝えられており、最終的な姿はよくわからんのが実状。F/A-50をステルスにしてみた、とかそういう辺りに落ち着きそうな気が。そうなるとLMの方が都合が良いが。

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レッドフラッグ演習に参加した独空軍指揮官のインタビューなど

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-german-eurofighters-impress-during-red-flag-debut-373312/

ドイツ空軍のユーロファイター初参加が報じられた今年6月のレッドフラッグ演習。この記事はJG74の指揮官であるAndreas Pfeiffer大佐など関係者のインタビューを交えて、演習の位置づけや状況、成果についてまとめられている。

長いので適当に拾っておくと、

ドイツ空軍のユーロファイターは、RAFのそれとは異なり、大規模な実戦参加を経験していない。平時の演習でも、近隣国との合同演習程度に留まっており、レッドフラッグほどの規模の作戦行動は未経験だった。レッドフラッグ演習への参加は、同盟国との共同作戦などの経験を通して、今年11月のNATO反応軍(NATO Reaction Force)立ち上げと、2013年3月のNATO軍事力評価に備えるという目的もあった。

ユーロファイターはマルチロール(スウィングロールと自称するが)戦闘機として設計されているが、まだ対地攻撃能力は完全ではなく、ドイツ空軍でも今のところ空対空戦闘専門となっている。
部隊としてマルチロール化するには、ハードウェア的な準備が整ってから、最低2年の人員訓練が必要とされる。

外国軍機としては他に、航空自衛隊のF-15JとポーランドのF-16C/D Block 52も参加。これは既報の通り。演習参加機としては戦闘機以外のタンカーなども含まれる。
USAFからF-16、A-10、ホストを務めた354FWのF-22が青軍として行動。EA-18Gの参加も予定されていたものの、作戦行動の都合でキャンセル。また18FSのAESA装備型F-15Cも調整のため不参加。
仮想敵の赤軍を務めたのは18Aggressor Sqnで、装備機種はF-16C Block 30。Su-27/30とJ-10をシミュレートし、EW環境も再現しているものの、普段の兵器学校レベルではなく、あくまで教育に適した設定となっていた。

ドイツのユーロファイターについては、ソフトウェア改修の検証も実施された。これにより、RAFのタイフーンに近いレベルの能力を発揮できるようになる。
大きなところでは搭載レーダーのCAPTOR関連。詳細は機密事項だが、無線機、ミッションデータ及び対抗手段のソフトウェアが追加されている。この改修は、まだアラスカへ飛んだ8機のみにしか適用されてないとのこと。
が、こうした目に見える成果よりも、長距離の海外展開を経験することで、ドイツ空軍自体のメンタリティが大きく変化したとも書かれている。かつて自衛隊でも似たような話があった…ような気がしないでもない。

あとF-22との有視界格闘戦の演習について。ユーロファイターは外部タンクを落とした状態で臨んだとある。
双方の視点からいろいろ書かれているが、ユーロファイターは加速性能と旋回性能はそこそこ高いものの、高AOA時やTVCで負ける的な。
全体としてはやっぱりF-22が最強っぽい、といった結論。当たり前だけど。ドイツ側のコメントでは、BVRでは話にならん、らしい。米側はノーコメント。

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追記

レッドフラッグ演習を巡っては、FY2013最初のレッドフラッグ13-1において、ロシア空軍が参加するという情報がある。

http://english.ruvr.ru/2012_07_03/80124065/

10月8日~19日の日程で、ネバダ州ネリスAFBを中心に行われる予定だが、実際に参加するかは当日近くならんとわからんかもな。政治状況とも関連するだろうし。

エクリプス550の製造がスタート/ドルニエ・シースターCD水陸両用機/ピアッジョP180特殊任務型の提案

エクリプス550の製造がスタート

http://www.flightglobal.com/news/articles/eclipse-starts-550-production-in-uncertain-market-372726/

エクリプス550はエクリプス500の改修型で、2013年から引渡し開始予定となっている。既にFAAの製造承認と型式証明は済ませている。当面は低率生産を続け、2014年から全率生産に入って年間50~100機を製造予定。ここは市場環境次第となるだろうが、予測は難しい。

かつてエクリプス500を開発・製造したエクリプス・アビエーションは2009年に破産。その後、同社の資産全てを買い取ったエクリプス・エアロスペースが引き継ぐ。現役で使われている260機の顧客サービスとサポートを再開し、アビオニクスのアップグレードと性能向上を行った改修型を開発。

こうして世に送り出されたエクリプス550は、1機270万ドルという価格で発売中。発注状況などは非公開となっている。
General Aviation Manufacturers Association (GAMA)の発表から、他の生き残ったVLJを参考にするなら、あまり景気のいい話は聞こえてこない。2011年、エムブラエルのPhenom100(370万ドル)は41機、セスナ・マスタング(310万ドル)は43機を売ったが、2012Q1はそれぞれ4機、7機と落ち込んでいる。
世界的にもこの低落傾向は顕著であるが、前年同期比で見ると機数ベースより金額ベースの落ち込みが大きいらしい。あれ?それじゃマスタングより安いのって有利なんじゃね?という気もするが、公表されてないので何とも言えない。更に安いレシプロ機の方が売れてるのかもしらんし。

新会社はシコルスキーの出資(株式の43%を保有)を受けており、PZL Mielecへの製造委託が実現した。これがサプライチェーン的には大きな違いとなっている。5月にエクリプス・エアロスペースはPZL Mielecに胴体、尾翼、主翼の製造を委託する契約を締結した。

FHIとの縁は完全に切れているが、まあこの円高だしな…

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ドルニエ・シースターCD水陸両用機

http://www.flightglobal.com/news/articles/dornier-seawings-earmarks-2015-for-first-seastar-amphibian-delivery-372913/

Do 18を金属で作ってターボプロップエンジンにしましたという趣の12人乗り水陸両用機(実際の構造などはDo28が元になり、パラソル翼には複合材が使われてる)。1984年?初飛行。その後、ドルニエという会社自体がフェアチャイルドに買収されたり色々あって終了したと思ったら、2009年に設計者であるクラウディウス・ドルニエJrの息子(つまり創業者のドルニエ博士の孫)がシーウイングAGなる会社を設立して製造計画を発表、その後ドルニエ・シープレーンAGに改名して現在に至る。この機体に関しては権利関係が個人というか一族持ちになってたんだろか。詳しくは分からない。
プッシュプル式のターボプロップ双発というのは、他にあんまり無いような気がする。

NBAA2009の時の記事。米国内をデモンストレーション飛行しながら回った。

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-09-buoyant-seaplane-market-triggers-seastar-launch-333811/

さて現在この計画がどうなっているかというと、最終組立を行う拠点を探しているところで、カナダのケベック州が最有力で、中国とインドも検討しているという。最終的には1ヶ所に絞るが、これらの国々は将来のパートナーになり得るものとして対応している。判断の基準は、約1億ドルという資金の目処がつくかどうかであり、ケベック州政府の提示した条件が良かったということらしい。

よくある机上プランと大きく異なる点は、米国、欧州両方での型式証明が既に取得できていることで、1980年代のままのダイヤル計器タイプではあるが、作ったらすぐにでも引渡しができる(衝突警報装置だけは追加したので、この分は追加型式証明が未取得)。このタイプは20機を製造予定となっている。
それ以降はグラスコクピット化され、凍結防止、自動操縦と空調を備えたタイプに移行予定で、追加型式証明が必要となる。

現在の発注状況は、確定発注が14機、覚書まで行ったのが32機と発表している。機体価格は600万ドルで、2015~2025年の10年間に350~500機の製造を見込む。製造能力としては、最大で年間50機程度とし、アジア向け、特に中国の市場に期待しているようだ。
売り込み先は、島嶼部の民間航空路線向け、政府向け、個人向け、企業向けと書いてある。

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ピアッジョP180特殊任務型の提案

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-piaggio-pushes-into-special-mission-with-p180-373121/

1990年代、ピアッジョP180が市場に投入された当時は、700万ドル台の燃費が良い個人VIP向け双発ターボプロップ機、という位置づけだった。あまり成功作とは言えなかったが、220機ほどが現在も運用されている。このうち32機は、自家用機とは全く異なる特殊な任務に就く。
32機のうち、18機は救急搬送仕様、9機が国境監視仕様。ポーランドの航空レスキュー隊とカナダの騎馬警官隊で3機の救急搬送仕様がある他は、全てがイタリア軍と州政府により保有される。
ピアッジョとしては、こうした任務への対応を新たな市場開拓の糸口にしようと考えた。近年はセンシング系などエレクトロニクス技術の発達が著しく、小型機を低コストで監視機に変更できるようになったのが一つの理由。かつては737やATRのような規模の機体が必要とされたことが、もっと小さい機体でも達成できるようになった。
つまり低コストを武器とした、政府機関やパラパブリック向けの売込みが考えられており、2、3年のうちにはVIP向け以外の仕様が半数を占めるようになるとの予想を示した。

現在のピアッジョの株式の過半数は、アブダビの国営ファンドとインドのタタ・グループによって保有されている。同社は来年2月にアブダビで開催されるIDEXにてロンチカスタマーを発表する予定で、この方針に関してはアブダビの意向が強いことを伺わせる。

特殊任務向けの他には、飛行検査(FIS)用途にも力点が置かれてる。昨年11月のドバイエアショーでは、ロシア向けの飛行検査機5機のうち、最初の機体を引き渡したと発表。ロシアにおける現用のFISはAn-26とAn-24Bで、これらの更新になると、最大50機の発注見込みだそうだ。一部がロシア国内で組み立ての可能性もある。

FISについては、イタリアではENAVという組織が行っているが、自国以外の外国向け(マルタ、ルーマニア、ケニア)にもそのサービス提供を始めていて、3機のP180が採用された。2009年から引き渡しが始まり、最近3機目の引き渡しが完了している
FIS仕様はNorwegian Special Missionが供給するミッションシステムを搭載する。胴体には垂直設置されたカメラを含む約20のセンサがあり、無線信号を記録できるようになっている。乗員は3名で、うち1名が機上で検査を実施する専門技術者。この手の検査は6~12ヶ月ごとに実施する必要があるので、重要度は高い。

日本だと国交省管轄下で、サーブ2000とかが使われてる。
http://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000351.html

飛行検査官の仕事。
http://www.mlit.go.jp/common/000054345.pdf

FIS仕様のP180は、ジェノバの工場でセンサおよびコンソールの搭載などが行われるが、これには機体価格と同じぐらいのコストがかかるとのこと。エコノミークラスの座席4つと洗面所が追加され、拠点としているCiampino空港から長距離を飛行するのに適した装備ともなっている。イタリア国内の検査対象の空港だけでも40カ所ほどある。

ENAVに所属するパイロットは18名、オペレータは8名。ケニアとルーマニアへの展開は今年から始まったものだが、今年初めには、リビア内戦後の民間航空路線を復旧する段でFISの仕事をしている。これは成功裏に終わっており、海外での展開によって収益の3割増を見込む。この目標が達せられるようなら、4機目のP180が導入されるかもしれない。
これらのP180は、年間累計の飛行時間が2000時間程度(1機あたり700時間)で、通常のミッションでは1回に3時間から3時間半、最長6時間かかり、期間は最長3日間。検査する施設の状況などで変わる。

P180の前には、同じ用途に対してセスナ・サイテーションIVが使われていた。2012年夏から段階的に退役する計画。ENAVの責任者によれば、標準的なミッションにおいてP180は毎時400リットルの燃料を消費するが、これはサイテーションIVの半分程度の燃料消費となるそうだ。また搭載機材も新しくなったので、227kgほどと軽い。導入コストも半分程度で済む。

ピアッジョが開発しているというジェット機の件は、設計作業は行われたものの、とりあえず年内のロンチはないと明言された。
新型機は、P180より大型化し、ホーカー400XP、プレミエ IA、エムブラエル・フェノム300などと競合するサイズになるとされている。
将来のP180の派生型は、ここまでに出てきた特殊ミッション向けが中心で、(絶対やらないとは言わないが)個人のVIP向けには積極的でない。長距離型を開発したとしても、そのような顧客にとってP180のキャビンは長距離の飛行には狭すぎ、速度を犠牲にして航続距離を延ばすことも望まないだろうと考えている。

以下、ENAV機の動画と飛行検査の同乗記になっている。
比較的単純な飛行検査のケースとなるが、旅客機の発着が多い大規模な空港だと、当然ながら飛行計画は複雑になる。

FN MAGの銃床がポリマー製に/スイス陸軍が新型自転車を導入/サウジアラビアがレオパルトMBTの導入数を増やすことを検討

FN MAGの銃床がポリマー製に

http://www.spacewar.com/reports/Famous_FN_MAG_Machine_Gun_Goes_Polymer_999.html

FN MAGは、7.62mm NATO弾を使用する多目的機関銃の草分け的存在で、1950年代に登場した。世界90カ国以上で採用実績があり、製造数は20万丁を超える。
主要国だけでもMAG58、GPMG、M240、L7A2…と様々な制式記号番号が与えられ、その用途も、戦闘車両からヘリコプター、小型艇への搭載と多岐にわたり、FN社純正のRWS、deFNder Light/Mediumも提供されている。

メカニカルな部分は、ほぼそのまま製造されているが、従来、銃床は木製だった。現在の生産型では、これがポリマー製に改められているという。当然ながら、既存の銃床を交換することも可能。
変更された理由は、木製ストックは放射能や生物化学汚染を除去するのが困難であり、現在の市場トレンドに合わなくなっている、というもの。重量の問題とかじゃないのね。
下請けの木工場が心配だ。

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スイス陸軍が新型自転車を導入

http://www.spacewar.com/reports/Swiss_army_to_buy_new_bicycles_with_gears_999.html

5月の記事。
スイス陸軍の自転車部隊は、公式には2003年解散となっているが、その装備品である自転車はまだ相当数が残存していたようで、今も基地内の移動や運動のために使われている。

この部隊が装備した軍用自転車はスイス製で、メーカー名のままCondorと呼ばれ、1905年制式化のMO-05、1993年のMO-93がある。これらは基本的なフレームがほぼ同一で、外装変速機の有無、現代的なバーハンドルと前輪キャリア追加などの変更がある。三角フレームの内側にぴったり納まる物入れは、特徴の一つとして受け継がれた。
恐ろしく頑丈そうな見た目のまんま、重量は重かった。ウィキペの記述を信用するなら、初期のMO-05が23.6kg、1946年以降21.8kgと書いてあるから、おそらくMO-93も20kgは超えていると思われる。完全装備の重量は30kg。
ブレーキ、タイヤなどの足回りは、時代に合わせて更新してきたようだが、見た目はあんまり変わっておらず、愛好者もいるらしい。
スイスは国民皆兵の国でもあるし、この自転車はやはり特別な存在のようだ。

地元のNZZ Am Sonntag紙が報じたところでは、スイス陸軍はこの自転車の後継として、アルミフレームの新車を調達する計画とのこと。変速機は8速で、ディスクブレーキを備える。重量は15kgまで軽量化。山岳歩兵が乗り回すわけじゃないから、耐久性は多少犠牲になってそう。
調達数は約2800台で、値段は2500スイスフランだそうだ。日本円にして20万ちょい。安くはないが、官庁価格であるし、こと自転車の値段に関しては日本の安物売りが酷過ぎるという話もあるので、一概には言えない。

幾つか資料を。

http://velosolo.co.uk/swiss-army.html

http://objectbook.com/militaervelo.html

ここには、MO-93が制式化された際にMO-05が大量に民間へ放出され、市場価格1000ドル程度から100~200ドルまで下落したと書いてある。これらの多くはスイス国外のディーラーが買い付けたので、スイスの外で買おうと思ったら結構高くなるみたい。日本でもヤフオクとかで手に入る…のだろうか。
また製造年は1950~1970年と比較的新しく、もっと古いのは別格になる。オリジナルのタイヤなどはもう入手不可能(中国製はあるみたいだが)。

新車導入でMO-93も大量放出されることになりそうなので、欲しい人は今から考えといた方がいいかも。
1世紀前に設計されたフレームこそMO-05と大差ないが、パーツの入手性などはずっとましだろう。

http://www.benvanhelden.nl/Condorclub/Fiets/Switserland/MO93/model93.html

http://www.flickr.com/photos/25831992@N03/2642778614/

 

スイス国防相が試乗したとあるけど、新型ってこれか?

http://gruppe-giardino.ch/?p=4890

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サウジアラビアがレオパルトMBTの導入数を増やすことを検討

http://www.spacewar.com/reports/Saudis_boost_German_tank_buy_to_600-800_999.html

2011年、サウジアラビアはドイツのレオパルト2A7+を270輌導入する意向を示したが、ドイツには武力紛争当事国への兵器輸出を控えるという基本政策があり、サウジアラビアがこれに抵触すると主張する野党と与党の対立を招く結果となる。国内の雇用にも大きく影響する規模だったために、話が大きくなった。最終的にはメルケル首相の決断で輸出が承認されている。ちょうど1年前のことだった。

今回の報道では、サウジアラビアの意向は126億ドル、600~800輌の導入という、ドイツでも前例のない金額に膨れ上がっている。
Bild am Sontag紙は、最初のバッチ300輌分の契約について合意間近と報じた。サウジアラビア側はラマダン前、つまり7月20日までに調印することを望んでいるという。
サウジアラビアの最新MBTはM1A2で、315輌全てのM1A2S規格へのアップグレードが進行中。これは既に115輌が配備された。

http://www.defenseindustrydaily.com/the-2006-saudi-shopping-spree-29b-to-upgrade-m1-abrams-tank-fleet-02481/#saudi-arabia-armor

その他のMBTとしてはAMX-30とM60A1/A3が現役で、両方足したら800輌近くなる…と思う。これらの更新で数を維持するという仮定なら納得のいく数字。金額は色々あほらしくなるような数字だけど。

サウジアラビアなどのGCC諸国は、2011年、ムバラク政権が米国にあっさり見捨てられた事を重視し、装備の欧州シフトを進めているとも言われている。

昨年のもう一つの大きな兵器輸出案件として、イスラエル向けのドルフィン級通常潜3隻がある。この決定も物議を醸したが、ユダヤ人国家への賠償というのが効いた面もあり、今回のサウジアラビアとの取引に影響を及ぼしたかどうかは定かでない。

シュピーゲル誌の論評によれば、現政権の立場は、「近い将来にイランが核武装するなら、それと周辺諸国の軍事力がバランスするのが望ましい」ということになっている。
メルケル首相の判断は別としても、米国が不干渉を貫くなら、域内の軍事力で片をつけなければならない、というのは確かだ。そして欧州は火の粉がかかってくる場所なので以下略と。

韓国F-X III選定においてF-35の評価がシミュレータのみとなる/USMCはVFMA-121をF-35装備部隊に改編する/F-35、LRIP-7の long lead-time itemsについて契約が締結される/レッドフラッグ演習にドイツのユーロファイターが参加

韓国F-X III選定においてF-35の評価がシミュレータのみとなる

http://www.flightglobal.com/news/articles/seoul-to-rely-on-simulators-to-evaluate-f-35-for-f-x-iii-contest-373006/

LMがFlightGlobalのeメールによる取材に対して回答したもので、現状で実機を評価するのは当然ながら難しいようだ。LMによると、現存するF-35の数は未だに36機に留まり、試験、訓練などでスケジュールは完全に埋まってる状況にある。
できることは、飛行前後と整備その他の地上における活動の視察と、テストパイロットとの質疑応答といった程度。
シミュレータ主体となるのは必然であるが、JSF参加各国(とイスラエルと日本)も同様の状況でシミュレータ評価を行ってきたので、実績は十分であるとしている。

そういうわけで、韓国DAPAのF-X III選定プロセスはF-35の評価が最初になって、6月に実施されている。その後は、詳細は不明ながら8月からF-15SE、9月からタイフーンの評価というスケジュールが、業界筋によって明らかにされている。

実機が存在するタイフーンはともかく、F-15SEの評価がどのように行われるかは微妙なところで、ボーイングもノーコメントを通している。F-15SEのデモンストレータはあるものの、基本はF-15Kと大差ないしコクピットも異なるはずなので、こちらもシミュレータが主体になりそうな気配だ。ステルス性にせよFBWにせよ、見ただけじゃわからんし。

F-X IIIの導入予定機数は60機。こうしてみるとすぐ導入できそうなのってタイフーンだけか。

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USMCはVFMA-121をF-35装備部隊に改編する

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-marines-hope-to-stand-up-first-operational-f-35b-squadron-in-november-373070/

USMCは、日本に展開中のVMFA-121が帰国したところでF-35B装備部隊に改編されると発表した。これはUSMCで最初のF-35B装備部隊となる予定で、アリゾナ州ユマで編成されることになっている。
現在VMFA-121はF/A-18Dを装備しており、7月に帰国予定。

最初のF-35Bを受領するのは11月に予定されるものの、これはエグリンAFBにおける訓練体制の確立にも影響される。エグリンでF-35の飛行資格があるUSMCのテストパイロットは、現時点で2名。7月中にこの人数は増加する見込みであるが、120時間の慣熟飛行については遅れがある。10月までには訓練生を受け入れるようにしたいというのが当局の希望。

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F-35、LRIP-7の long lead-time itemsについて契約が締結される

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-awarded-4895-million-contract-for-f-35-long-lead-items-373071/

米国防総省は、LRIP-7のlong lead-time itemsをLMに発注した。金額は4億8900万ドル。
LRIP-7の機数は合計35機で、内訳は米国向けがA型(USAF)×19機、B型(USMC)×6機、C型(USN)×4機、イタリア向けがA型×3機、トルコ向けがA型×2機、英国向けがB型×1機。これに加えてノルウェー向けのドラッグシュート開発も含まれている。
long lead-time itemはLLTIとも呼ばれるが、納期を考慮して先行手配する部材を指す。

ノルウェーのF-35導入議論は、JSMのインテグレーションが認められたことで最終的にゴーサインが出て決着した。

http://www.flightglobal.com/news/articles/norway-orders-f-35as-after-securing-jsm-integration-support-373063/

ノルウェーは、JSMの潜在的な市場価値を200~250億クローネと見積もっている。
同国の調達予定は、訓練のために米国に置かれる分を除くと最大48機。多くは中央部のOrland空軍基地に配備され、一部は北部のEvenes空軍基地でQRAに就く。

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レッドフラッグ演習にドイツのユーロファイターが参加

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-raptors-train-with-eurofighters-at-red-flag-alaska-372957/

今年のレッドフラッグ演習で、ドイツのユーロファイター、JG74所属の8機が初めて参加している。この他ポーランドのF-16C/D Block 52が初参加。ついでに航空自衛隊のF-15Jも参加している。

この演習ではF-22と同じ青軍で参加し、本来の演習目的(仮想敵を模した異機種間の航空戦や防空システムとの交戦をシミュレートする)の他に、第5世代戦闘機との共同作戦について教育するという目的もあったようだ。