MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備/バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続/ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告/EADSとBAEシステムズの合併交渉

MBDAドイツがレーザ兵器の実射試験を準備

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-mbda-germany-to-test-defensive-laser-weapon-376474/

MBDAドイツは、ドイツと欧州国防省から一部の資金を受けつつ、対IEDおよび砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃用の、レーザ兵器開発とデモンストレーションを行ってきた。
最初の試験は2008年に行われた。複数の発振器を束ねる設計が特徴で、5kWレーザ発振器を2基使った2011年の初期の試験では、有効射程2.3km以上を達成した。

現在試験されているのは、より実用型に近い10kWレーザを4基束ねたシステムで、2012年初頭に最初の試射を行った。この時の結果は、迫撃砲弾の弾殻と鋼板を2~3秒で貫通しており、レーザ光の性質が良好で、個々のビームの損失の低さを実証できたとされている。
これに続いて10月には、砲弾を模した飛行物体を連続的に迎撃する試験を実施予定。

計画では、IEDを100m程度の距離から破壊するシステムを3年以内に、対砲/ロケット/迫撃砲弾迎撃システムは24ヶ月で実用化することになっている。後者は20kWレーザ×5基のシステムとなり、有効射程は最大3km。

その後の発達型としては、UAV迎撃および野戦滑走路の防衛システム(航空機の離着陸時を狙うMANPADSに対処する)というのが挙げられている。
基本的に地上設置型のシステムとして考えられており、航空機搭載については研究もされてないとのこと。

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バラクーダUCAVのデモンストレーションは更に継続

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-cassidian-plans-further-tests-with-barracuda-uav-376416/

バラクーダUCAVデモンストレータは、そのまま実用型に発達する可能性があんまり無くなっているものの、UAV技術の開発には重宝されてる模様で、今年は6月から7月にかけ、カナダのグースベイにおいて飛行実験を行った。有人機のセンサとなって連携するといった内容が伝えられており、バラクーダの活動はここで一区切りとなった。

Cassidianでは次の2~3年についての議論を行っているところで、より多くの航空機と連携し、複雑な任務へ対応させるための計画に期待しており、それに沿って実際にバラクーダを飛ばすのは、2014年頃と予想される。実現すれば、一連の飛行実験としては4度目。
APARの搭載により、移動目標の探知と追跡が可能になれば、更に多くの実験・実証が可能になる。

欧州のUAV実験機は、1990年代から2000年代にかけて各国で同時多発的に現れたものの、開発リソースが集中せずにその後の開発が滞り、立ち消えとなったものが多い。バラクーダもそうした世代に属する一機種だが、技術開発や装備の評価のために、もうしばらく生き残ることになるのかもしれない。

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ドイツ空軍のレッドフラッグ演習への参加報告

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-air-force-details-success-during-red-flag-exercise-376410/

ILAにてレッドフラッグ演習について報告する講演があり、数字が幾つか出ている。

JG74からの派遣人員は約150名でパイロットは10名(ユーロファイターは8機)。

ドイツ空軍の指揮したある防空任務では、友軍全体として38:1というスコアを挙げた。これはレッドフラッグ演習の成績としては記録的な数字である。

ユーロファイターの模擬ミサイル発射は18回で、命中と判定されたのは16回だった。この中には少なくとも1回のF-22撃墜が含まれる。

ドイツ空軍のソーティ数は、212回計画されたうち、208回が実施された。

2014年のレッドフラッグにも参加予定となっている。

 

やや関連で、ドイツとユーロファイターの関わりについての記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-luftwaffe-advances-eurofighter-experience-376247/

ILAにはJG31所属の2機が参加し、1機はCassidianのテストパイロットによるデモンストレーションフライトを実施したそうだ。
ドイツ国内では、Cassidianにて直接ユーロファイターに関わる人数は約3000名、間接的に関わる人数は、22000名ほどになるという。合計すると25000名で、これは欧州全体でユーロファイターに関わる人数(100000名)の、約1/4に相当。ドイツの税収にも大きく貢献する内容と言える。

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EADSとBAEシステムズの合併交渉

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-systems-eads-in-merger-talks-to-create-100bn-turnover-business-376423/

話がでかすぎて先が読みにくいが、EADSとBAEシステムズの合併交渉が持ち上がっているらしい。9月12日にロンドン証券取引所のプレスリリースで、BAEシステムズ側から明らかにされた。
単純に2011年実績の2社の年間取引高を足すと、958億ドル。うち、航空宇宙分野に限っても740億ドルと、ボーイングのそれ(2011年実績は687億ドル)を凌ぐ。

BAEシステムズは2000年代から米国向けの事業に軸足を移しており、合併相手のEADSとしては、米国進出の強力な基盤を手に入れることになる。

欧州と英国の防衛産業は近付いたり離れたりを繰り返してきた印象があり、BAEシステムズは、ユーロファイターやMBDAとの事業で長期的な協力関係にあって、欧州企業との合併を模索しつつも、EADSが成立した2000年以降は英国内の事業で競合することになったし、2006年にはエアバス株を手放したこともあった。
合併が成立すれば、長年の確執も解消することにはなる。

BAEシステムズが40%、EADSが60%の株式を保有する計画(英仏独の各国家が保有する分は別の処理が必要らしい)で、両社が存続する二元上場会社になるとのこと。見かけ上は比較的緩いグループ企業化といった感じだがよくわからん。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%85%83%E4%B8%8A%E5%A0%B4%E4%BC%9A%E7%A4%BE

英国のM&Aは、テイクオーバー・パネルという民間機関が取り仕切っており、このケースでは10月10日までに当事者の両方または一方が意図を公表するよう求めた。EADS側の結論が出なければ、BAE側から期限延長を申し出るとしている。

野村資本市場研究所による説明。

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2008/2008aut20.html

エアバスがEADSの完全子会社であることなどから、背景はかなり複雑。株主の反応は総じて冷たく、翌13日の株価はEADSは9%、BAEシステムズが8%下げたと報じられている

http://www.flightglobal.com/news/articles/lukewarm-response-from-markets-to-eads-bae-merger-plans-376478/

BAEシステムズ側の問題として挙げられているのが、米国の事業部門を分離しなければM&Aが認められない、となった場合、大きな収益源を手放すことになってしまう上、米国市場への進出どころじゃなくなる、というもの。
米国内に資産が存在する以上は、外国投資委員会CFIUSが審査することになる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-eads-merger-could-face-us-regulatory-hurdles-376431/

この記事では米国で合併したサンダーズとユナイテッド・ディフェンスという2社についてクローズアップしている。
特に前者は、電子戦機器での大きな成功(F-35のALR-94を含む)に繋がっている。合併した2000年当時、欧州の企業はその分野で締め出されていた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/eads-bae-tie-up-unlikely-to-affect-airbus-business-376429/

合併後の従業員数は220000人。BAEシステムズはEADS以前、欧州の企業との合併を模索した時期があった。1998年にDASAとの合併交渉も行っている。
EADSの意図として、エアバスへの依存を減らし、防衛産業の方を強化したい節があるため、エアバスの事業にはあまり影響がないとの見方もある。

そして、もし合併が成立したら、という考察記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/weighing-the-defence-implications-of-bae-eads-consolidation-376455/

BAEシステムズがEADSと一体化するとなれば、英国を含む欧州の防衛産業がいよいよ一つのものになることを意味する。ダッソーの株式も46.32%はEADSが保有してたりするし、全体的には一つ穴の狢といった情勢だからだ。唯一の例外となるのは電子機器系で、イタリアのSELEXガリレオが残る。

合併後、戦闘機に関しては2機種が競合することになるので、企業戦略として難しい選択になるものの、どちらかが選定されれば勝ちという見方も可能だ。
また、JSF計画への関与はBAEシステムズ単独のまま推移すると予想される。ユーロファイターなどに関しても、現状維持のまま事業継続される可能性が高い。

現世代の製品はこのまま行くとして、長期的に利点となり得るのは次世代戦闘機の開発ということになる。
無人機にせよ何にせよ、開発リソースを1機種に集中させることができ、EADSのUAVデモンストレータで得られた技術も使える。取引高がそのまんま技術力に比例するわけじゃないが、ボーイング等に匹敵する可能性は出てくるだろう。

時速100mphを目指す自転車Beastie/スケートボードのダウンヒル速度記録/ワールド・ウイングスーツ・リーグ第一戦

時速100mphを目指す自転車Beastie

http://www.gizmag.com/graeme-obree-100mph-bicycle/24073/

1990年代、英国のトラック競技を席巻しつつも不遇の日々を送ったサイクリストが再び記録に挑むという話。

グレアム・オブリー氏は1993年、1時間に32.06マイルという記録(いわゆるアワーレコード)を樹立した。記録走行に用いたのは自作の自転車オールド・フェイスフルで、子供用の自転車のフレームを使ったり、ベアリングを洗濯機から流用したなどの逸話が残る。特徴として、ハンドル位置がサドルに近く、そこに体重を預ける極端な姿勢で漕ぐものになっていた。このスタイルは通常のライディングポジションに比べて前面投影面積を減らすことに成功し、これを武器に1993年からトラック競技で多数のタイトルを獲得、フライング・スコッツマンという二つ名でも呼ばれるようになった。
一個人が風洞実験だの数値計算だのを抜きで成し遂げた成果としては、尋常ならざるものがある。

しかしその革新性は、保守的な競技主催者の不興を買うことになってしまい、オブリー氏の考案したライディングポジションは2度禁止され、1997年、競技生活には終止符が打たれた。このあたりの事情には、チームとドーピングがらみで揉めた話も出てくるが、精神的に相当参ってしまい、引退後は躁鬱に悩まされる事となる。その後はトレーニングについての書籍を執筆したりもしているようだ。

そして2012年、オブリー氏は47歳となり、100mphの速度記録を目指す挑戦の途上にある。
Beastieと名付けたこの自転車は、うつ伏せ姿勢で乗車する形態。Beastieもまた自ら製作したものであるが、透明なカウルはグラスゴー芸術学校に製作を依頼したという。透明なのは、自らが外を見るためというより、外から乗り手が見えるようにするためだそうだ。

http://www.obree.com/ihpva.php

車体そのものはほぼ完成していて、シュープレートと肘のプロテクターなどの調整だけ残っているとのこと。
メインのスプロケットは前方(胸の下あたり)にあるが、これはリンク機構を介し、足漕ぎの直線運動で回す。この形式では機械損失は増えるが、前後の直線運動にすることで、前面投影面積は更に減らせる。
空気抵抗を減らしていく方向を突き詰めると、最後にたどり着くのはこの形だろうなあ、というのはわかる。わかるが、フロントフォークにグリップが付いてたりして、もはや正気とは思えん代物になっているのも確かだ。車輪は16か18か。

当初、この自転車を用いた記録挑戦は、ネバダ州バトルマウンテンにて開催のWorld Human Powered Speed Challenge(今年は9月10日~15日で、オブリー氏の誕生日もこの期間に入っている)となる予定だったが、準備が間に合わず断念。

http://ihpva.org/home/

http://www.recumbents.com/wisil/whpsc2012/speedchallenge.htm

ここでは2009年の記録で、82.819mphというのが出てる。見た感じ、フルカウルのリカンベントが主流のようだ。
人力走行の絶対速度記録とはまた別の話になるが、もし100mphに達することができれば、空前の記録になるのは間違いない。

現在は英国内で代替地を探しているとの事。2マイルほどの舗装滑走路を使用する方向で調整中だが、これはバトルマウンテンの記録用コース(ウィキペではハイウェイ305の直線区間と書いてある)よりも条件は良くない。バトルマウンテンは標高が5000ftほどあるので空気抵抗が減るし、勾配もついている。工学系の学会誌?によるとその結果、エネルギー的には平地に対して156W程の得があるとされているそうだ。また舗装が記録向けであれば走行抵抗は更に減るだろうともコメントしている。

バトルマウンテンより不利になるにも関わらず、オブリー氏は英国内での記録挑戦について、むしろポジティブに捉えている。英国人が英国で作った自転車で記録に挑む場所は、やはり英国がふさわしい、ということだ。
普通に考えると、年齢的な面でも相当厳しい挑戦になることは明らかだが、常識が通用する人ではなさそうだ。

なお、現在のアワーレコードは仰向けのリカンベントで達成されており、記録は91km台と100kmに迫りつつある。素人がガレージで作って何とかなる時代ではなくなった。

http://www.gizmag.com/new-world-record-in-one-hour-cycling/19497/

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スケートボードのダウンヒル速度記録

http://www.gizmag.com/skateboard-world-speed-record/23043/

6月18日、カナダ、ケベック州のLes Éboulementsにおいて、スケートボードのダウンヒル速度記録が更新された。記録は80.74mph(129.94km/h)とある。Mischo Erbanという人で、チェコで生まれてオーストラリアに渡り、両親は共産政権が倒れてからチェコに戻ったけど本人はカナダに移住した、という経歴を持つ。
これの前の記録は2007年、ブラジルにおいてダグラス・ダ・シルバという人が達成した70.21mph(113km/h)だった。

更新幅は10mphと大きい。この記録を支えたのはRecon社の試作HUD…と書いてあるけど、一般的にはHMDの一種かなこれは。単眼タイプで、速度、時間、ナビゲーション情報をリアルタイムで表示可能なものとなっている。
スピードメーターの有無みたいなもんなので、あるとないとではルールが全然違う。記録は記録だが。

Recon社は情報表示可能なスキー用のゴーグルも開発している。これもHUDというか、HMDだ。

http://www.gizmag.com/recon-next-gen-in-goggle-display-technology-revealed/17582/

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もう一つ生身系の。

ワールド・ウイングスーツ・リーグ第一戦

http://www.gizmag.com/the-evolution-of-a-new-sport-the-world-wingsuit-league-begins/24043/

生身一つで滑空することを可能にしたウイングスーツ、その歴史は精々10年といったところ。超軽量機やハンググライダーに比べるとまたまだエクストリームスポーツの香りがする。

さて、ウイングスーツの競技団体であるワールド・ウイングスーツ・リーグの創設により、記念すべき第一回グランプリが開催予定となっている。エントリーしたのは16名で、うち2名は女性という。場所は中国湖南省、Tianmen Mountain (天門山)で、10月13日から14日にかけて開催予定。
ここでは昨年、Jeb Corliss氏がエキシビションフライトを行った。張家界天門山国家森林公園内に位置し、カルスト地形の物凄い岩山が立ち並ぶ。世界遺産にも指定されている。また天門山はアバターのロケ地としても有名で、ロープウェーで登れるみたい。
レッドブル的にも、エアロバティックスの飛行機で天門洞を通過するというチャレンジをやった縁があるところだ。
当時のピーター・ベゼネイのオンボード映像があった。もうずいぶんと昔の話になった。

http://www.youtube.com/watch?v=0h0O5AvGAo8

レースは、飛び出し台を設けた天門山の頂上からスタートし、レッドブルの熱気球(パイロン)で区切った1.2kmほどのコースを飛ぶ。標高差は2600ft。2ラウンド制で、各ラウンドは2回のフライトが含まれ、タイムを競う。1ラウンド終了時に8名が決勝に進む形式。
ゴールドメダルの賞金は米ドルで20000ドル、シルバーは10000ドル、ブロンズは5000ドル。これと別に最速タイムに対してもメダルが授与されるという。
この模様は世界にTV中継されることになっている。そもそも観客席とか無さそうね。

Jeb Corliss氏はこの道では最も有名な一人で、経験も豊富だ。有名なウイングスーツの映像にはほとんど出てると思う。

http://jebcorliss.net/

前も書いたような気がするが、ウイングスーツは地上で不細工なのが、難点といえば難点である。さながらカーテンに包まった子供のごとし。

ボンバルディアCSeries関係/MRJとスカイウェスト

ボンバルディアCSeries関係

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http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-bombardier-confident-on-cseries-sales-373976/

景気が悪いと安いほうが売れる原則はボンバルディアのCSeriesにもプラスに働いており、ファーンボロ直前の7月8日には15機の受注を加え、総数を153機とした。
この時点で12社から受注し、なお多数の潜在顧客と交渉中との発表。受注目標としては、2013年就航までに20~30社、300機という数字を掲げる。ここからも判る通り、大口の契約を狙いに行くのではなくて、少数ずつたくさんのカスタマーへ売り込むという地道な販売戦略をとっている。そのため、セールスをかける地域が極めて広いというのも特徴的。

開発状況については、試験用のシステムが揃ってきているところで、Liebherr Aerospaceの供給する着陸脚が7月初めに完成、最後に残っていたフライトコントロールと高揚力装置の試験装置も中旬には完成することになっている。
やや予定が押しているのはFBW周りで、Parker Hannifin(とその下請けに入るBAEシステムズ)との緊密な協力のもと、作業を進めているとのこと。就航までのスケジュールに比べれば、初飛行の日程などは(多少遅れても)さほど問題でないと言い切っているボンバルディアではあるが、その分システム試験機の完成度は相当に高めなればならない。

ファーンボロ期間中の記事では、

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-airbaltic-set-for-2015-delivery-for-first-cs300-374139/

ラトビアのエアライン、Airbalticが130席タイプのCS300を10機(オプション10機)、2015年Q4から2017年までの引渡しで合意。ボンバルディアによると、10機で7億6400万ドルと発表している。
一部を110席タイプに変更する選択権があり、その場合はB.737-300/-500を更新することになる。FlightGlobal調べではそれぞれ9機、6機が現役だそうだ。
AirBalticはCS300などの導入後も、需要を睨みつつ機材の更新を続ける方針で、B.737-800や、ボンバルディアからはQ400を検討しているとのこと。シミュレータについても導入を考えているようだ。

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-airasia-boss-confirms-talks-for-100-cseries-cs300-374312/

LCCのAirAsiaは予備的な交渉の段階ながら、最大100機の導入を検討する。
AirAsiaはA320を主力としており、A320neoを200機ほど発注して2016年から更新する計画であるが、これと別にCS300も2016年から就航させる計画。これにより、小型機でないと降りられない空港へ対応できるようになる。
この交渉の上で未定の事項になっているのが「CS300の160席タイプが可能かどうか」という点。今回持ち込まれたモックアップのシート配置は、28インチ間隔の150席程度とされていた。

 

イリューシンファイナンスもCS100(30機)の導入を交渉中とある。

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-ilyushin-finance-nears-superjet-cseries-deals-373571/

ロシアのイリューシンファイナンスが、外国の機材、それもロンチ直前のSSJと競合する機種を選定するというのは、やや意外にも思える。これについては、同社はUAC傘下ではあるものの、UACの株式の保有率は49%と半数に満たず、その立場はメーカー寄りというより銀行寄りであって、エアライン側にも安心感があり、また外国製の機体を入れたり、ロシア以外の地域への展開にも積極的になれる。

 

製造面では、中央胴体を瀋陽航空機製造に委託していたが、初期の段階ではリスク緩和策として別の外注先も使うことを発表した。

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-bombardier-dual-sources-early-cseries-centre-fuselage-barrels-373932/

ここで名前の挙がったスペインの企業Aernnovaは、以前からのボンバルディアの製造パートナーの一社で、CRJ700/900のスタビレータ(垂直・水平とも)を製造している。CSeriesにおいても最初の40機分の中央ウイングボックス構造を作る(最終組立は瀋陽)ことになっており、胴体の製造についても十分に把握しているようだ。
瀋陽では2009年8月に試験用の胴体構造をボンバルディアに納めており、2010年3月には敷地面積21000平米の新工場を起工しているが、供給不足となればスペインのこっちも使うことになるのかな。

また、ファーンボロではP&Wがエンジン技術面の特長をひとつ披露した。

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-cseries-gtf-to-feature-variable-area-fan-nozzle-373956/

CSreriesの搭載するPW1500Gは、民間向けエンジンとしては初めて可変ノズルを備える。
基本的には、離陸時には拡張してバイパス流量を増やし、燃焼効率を高めて騒音を低減するためのもので、副次的な効果としてファンのフラッターや共振の防止を期待できる。

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MRJとスカイウェスト

今年4月25日に開発スケジュール見直しを発表、2015年後半からの初号機引渡しとされたが、

http://www.mrj-japan.com/j/news/news_120425.html

ファーンボロでは米国のスカイウェストから100機の基本合意。確定すれば現時点で受注数170機。

http://www.mrj-japan.com/j/news/news_120712.html

なおスカイウェストではこれと別に、70または90席クラスの76機を6ヶ月以内に発注予定としている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/skywest-expects-more-deals-to-follow-mrj-order-within-six-months-374416/

スカイウェストが保有する725機の内、約500機は今となっては効率の悪くなった50席クラスのリージョナルジェット機で、これらに代わる機体を求めている。つまりMRJ引渡しの2017年より前に就航させたい分、ということになる。
ボンバルディアとエムブラエルが、それぞれの76席タイプ(CRJ900とERJ175)を提案しているが、スカイウェスト自身が低成長に苦しんでいることもあって、なかなかコスト面の折り合いがつかないといった状況のようだ。

同社は、MRJとの契約を発表したのはこちらの交渉材料にするのを意図したわけではないとしているが、実際には当面の新規発注を取り止め、50席タイプのリース契約を2015年あるいは2016年まで延長することもできる。そこまで来たらMRJのオプションを追加という選択肢も視野に入ってくるため、メーカー側は意識しないわけにもいかない、といったところ。

50席リージョナル機を減らしたいというのが北米のパイロットの労働協約と関連しているというのは前に書いた気がするが、デルタ航空などは50席RJ×343機中218機、76席RJ×70機に代えて、ボーイングキャピタルとサウスウェスト航空からB717-200×88機の大量リースで対応だとか、妙な事になってきている。
これらのRJは外注の数社が運行しており、その中にはスカイウェスト/エクスプレスジェットも含まれる。大型RJ特需があるのかないのか、よくわからなくなってきた。

http://www.flightglobal.com/news/articles/delta-to-replace-majority-of-its-50-seat-regional-jets-372795/

http://www.flightglobal.com/news/articles/delta-to-introduce-boeing-717-in-2013-374054/

B717-200はDC-9系の最終型で、機体としてはMD-95と大体同じ。製造は2006年で終了。
このクラスの需要が無くなった訳ではないので、ボーイングに売る気があれば(もしくはMDが健在なら)まだまだ続いたと思われるが、そうなればCSeriesも存在しなかったかもしれない。

一般的には大型RJの隆盛に押されてフェードアウト、という見方をされるが、ここでは謎の逆転現象が発生しているわけである。

DHC-5バッファローの改修型がリロンチ/カナダでの代替ジェット燃料への取り組みと着氷シミュレーションの成果/イリューシン・ファイナンスがチェコのL-410 UVP-E20導入でMoU締結

ファーンボロ関係その他民間。

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DHC-5バッファローの改修型がリロンチ

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-viking-evaluates-market-for-dhc-5-buffalo-relaunch-374237/

Viking Airという会社が、6月からDHC-5バッファローを現代の水準に合わせて改修した新型機について市場調査を開始しており、その実現可能性を評価した。
現在DHC-5の型式証明や製造の権利は、ここが保有している。
計画自体はもっと以前からあったが、不景気の今こそ売れるという判断か?

DHC-5バッファローは1964年初飛行。GE CT64-820-4ターボプロップ双発で、1988年までに120機以上が製造された。現在も世界で29機が現役とされている。運用者は、民間(E型)では、DAC Aviation InternationalとArtic Sunwest Charters、Sky Reliefの3社、各国政府(D型)では、ブラジル、カナダ、エジプト、エチオピアとケニヤなど。

Viking Airの新型機はDHC-5NGと呼称され、エンジンはPW150、6枚プロペラと、現代的なコクピットなどをはじめとして、多数の改良を施す。
2009年1月の同社資料。古いので、内容は変更されてるかもしれない。C-27Jと比較するのは結構辛いものの、C-27Jの原型のG222も設計時期は似たようなもんなので、基本設計が古くてもまだまだいけるという主張は可能か。

http://www.vikingair.com/uploadedFiles/News/News_Item/DHC-5NG%20versus%20C27J%20January%202009.pdf

STOL性能の高さが特長となっている。カナダのCC-115(DHC-5A)をそのまま更新する提案もしていたようだ。
現状、試作に進むかどうかも定かではないが、民間及び政府機関から、ある程度の関心を集めることには成功している模様。

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カナダでの代替ジェット燃料への取り組みと着氷シミュレーションの成果

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-canada-advances-biofuel-testing-with-vintage-t-33-trainer-373890/

カナダ政府の研究機関National Research Council (NRC)は、2012年5月から6月にかけ、バイオ燃料とジェット燃料の混合物による飛行実験を行った。バイオ燃料はカナダ独自開発、アブラナ系のbrassica carinataを主体としたもので、ジェット燃料はJET A1。ASTMでは混合比として50:50を推奨しているが、NRCではバイオ燃料を多くした60:40でも実験した。

まだ予備的な報告しか出ていないが、黒鉛や硫酸塩といった微粒子の排出量は「かなり少なく」、実験に用いた航空機の性能などにも特に変化は感じられなかったとされる。
使用機種はダッソー・ファルコン20とT-33だった。空中でのエンジン再始動なども試みられている。

バイオ燃料の開発と製造はAgrisoma Bioscienceという企業が請け負っている。今回使用されたものは、2011年にサスカチュワン州で栽培された原料から作られたが、商用ベースでの大規模栽培のためにカナダ西部の土地を確保。食糧生産に不適当な地域での栽培を行う方針としている。

NRCが発表したもう一つの題目は、3Dモデルを用いた着氷の数値シミュレーションについてで、この技術は現在Newmerical Technologiesという企業がライセンスを保有している。
水滴が航空機の構造物の上を移動しながら凍結と融解を繰り返す状況の再現に力点が置かれており、例えば着氷防止装置から流出する水滴が、気流や機体の表面とどう相互作用するかというような解析に用いられる。何といっても3Dモデルなので、氷の密度や表面の状態を得ることができるのが特長。

着氷に関してはNRCとボーイングの共同研究で、エンジンコア部への着氷について風洞実験などが行われた。1990年以降、高高度でのエンジン推力喪失事例は46件が報告されており、風洞実験で再現したところ、低圧圧縮機への着氷が起こり得るとの結果が得られた。
水が液体のままで存在できるのは高度23000ft(7000m)付近とされるが、この種のインシデント(推力低下、フレームアウト、ストールなど)が発生したのはもっと高い高度で、熱帯の雷雲の付近で発生している。実験では、吸い込まれた氷晶が気流の変化などの温度変化要因によって部分的に融解し、ダクト内部などで再凍結する可能性があることが証明されたとのこと。
北米と欧州の航空当局にとっても有益な分析であるとしている。

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イリューシン・ファイナンスがチェコのL-410 UVP-E20導入でMoU締結

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-ilyushin-finance-signs-mou-to-take-czech-regional-turboprops-374069/

L-410 UVP-E20は双発ターボプロップの多用途リージョナル機で、最大定員19名、未整備の滑走路に着陸でき、キャビン構成は人員輸送、貨物輸送、VIP向け、救急搬送などに変更可能。
イリューシン・ファイナンスでは10機を発注し、2013~2014年に引渡し予定。オプションは3機で、こちらは2015年引渡し見込み。

イリューシン・ファイナンスではこの機種について、運航経費、メンテナンスコストとも低く、社会的には重要な地方航空路線にとって重要な特徴を備える、としている。

L-410は1960年代、チェコのLet Kunovice(元はスコダ財閥系)がAn-2の代替機として開発したものだが、旧ソ連にも多く導入されたので、ある意味ではAn-2正統後継機の1つと言えるもの。

UVP-E20は、量産型としては最も新しいもので、チェコの国産エンジンM601Eを搭載し、プロペラはアビア製の5枚ブレードになって、翼端タンクが追加された。EASAの型式証明を受けたタイプでもあるが、FAAの型式証明ではエンジン型式がM601Fに変更されており、呼称もL-420となったらしい。IFR可能でILS CAT I対応。

これまでは旧ソ連崩壊の余波で、製造は停止していた模様。An-24後継機として、似たような構成の大型化した双発ターボフロップ機L-610というのを開発していたが、こちらは完全に中止されている。

会社の方は、チェコのPAMCO傘下となった際、LETから単にAircraft Industryという名前に変わった。2006年からはロシアのUral Mining and Metallurgical Company (UMMC)が株式の51%を保有。その後(2009年頃)UACが興味を示したとの報道もあったようだ。
なお、公式サイトの方ではLETという文字がそのまんま残ってたりする。

http://www.let.cz/

スーパージェット計画の現状/ボンバルディアはQ400のストレッチ型を当面見送り/ボーイングがロックウェルコリンズと共同で757と767のコクピットアップグレードを提案/A320neoが詳細設計段階に移行

これもファーンボロ関係。

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スーパージェット計画の現状

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-how-sukhoi-is-transforming-superjet-programme-373680/

アルメニアの航空会社Armaviaが、エレバン-モスクワ間の最初の商業運行をスタートしたのは15ヶ月前の2011年4月21日。
次に商業運航を開始したのはアエロフロートで、2011年6月に1機目が引き渡され、現在までに7機が就航。これは30機体制とする計画になっている。
今年5月末時点での商業運行のフライト数は、2社合わせて4400以上、飛行時間にして8700時間に達するという。

就航後にはソフトウェアの問題とSaM146エンジンの修正などが生じたほか、スペアパーツの配送に遅延を生じたケースもあった。
6月中旬、スホーイ(SCAC)とスーパージェットインターナショナル(SCAC/アレニアアエロマッキのJV)がモスクワで関連する20社(ハミルトンスタンダード、ハネウェル、Leibherr、タレス、ゾディアックとパワージェット(NPOサトゥルンとスネクマのJV))をモスクワに召集し、対策会議を開く。ここでは品質改善と製造効率の向上、コスト面での協力などについての話し合いが持たれている。

以下、ファーンボロの直前にFlightGlobalが本部を取材した内容で、今年の製造目標は年間20機で、カスタマーサービスの水準を西側メーカー並に引き上げるなどとある。
製造施設に関しては、同時に4機を最終組立できるよう、アビアスターSP(UAC傘下)のウリヤノフスク工場を改修する。

今のところ、確定受注数は約170機。6月下旬には、ロシアのTransaeroが6機(オプション10機)で契約している。2012年の引渡しは4機で全てアエロフロート向け。アエロフロートへの今年の引渡し予定は10機で、ファーンボロの期間中にはさらに2機が引き渡される見通し。
スーパージェットファミリー全体では最終的に800~1000機の製造を見込み、MS-21とともに旧ソ連時代の旅客機(1000~1200機)を更新することとなっている。大事故も増えてきているので、更新が急がれるところではある。

ストレッチ型の計画については115~120席タイプが検討されており、これはもうすぐ開発段階に移行する可能性が高い。運用者側の要望として、リース会社のイリューシンファイナンスが110席タイプ×20機程度の導入に関心を示しているとのことで、SCACは2~3年でこれに応じられるとの見解。

今年2012年は、2月のEASA型式証明取得が追い風となって、イタリアのBlue Panorama、メキシコのInterJetとの商談が動いたりするが、5月にはアジアツアー中のデモンストレーション機が墜落と浮き沈みが激しい印象。

http://en.ria.ru/business/20120518/173535446.html

墜落事故に関しては、UACによると予備的なボイスレコーダ解析の段階ながら、機体側の問題に関する徴候は認められなかったとした。一方インドネシアNTSCから、デモンストレーション飛行についての安全勧告が出たのは以前に報じられたとおり。

結びは、(墜落事故の影響をはさておき)製造ペースを引き上げてコストを下げ、カスタマーサポートが磐石になれば成功を収めるであろう的な結論。

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ボンバルディアはQ400のストレッチ型を当面見送り

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-bombardier-happy-to-wait-to-launch-stretched-q400-374045/

90席のストレッチ型は、Q400Xなどと呼ばれていた頃から随分経った。ATRとの競合や市場環境の変化で、段々とトーンダウンしてきた経緯がある。性能で勝ってるはずなのに、ATRの小さくて遅いほうが売れちゃったりといった見込み違いもあった。

ボンバルディアの製品戦略・民間航空機計画担当重役Sam Cherry氏によると、90席タイプに対する顧客の関心は依然として高いものの、性能に対する要求も厳しく、現行型よりも性能が下がるのは好まないとのことで、単純なストレッチ型では対応が難しいと結論したようだ。胴体を12ft延長するプランなら、36ヶ月以内に製造できるとのこと。
また、同級の次世代機を計画しているATRに対しては、降着装置(車輪の位置関係)の設計で苦労するだろうとの見通しも示している。今のQ400(78席)でも大分細長いもんな。

早い話がエンジンの性能不足ということであるが、これについてはP&Wカナダ製品以外の選択肢も考慮していると述べるに留まった。検討は進めているようだ。
そろそろプロップファンになったりしないのだろうか。2020年代ならありか?

このほかエムブラエルのEシリーズ、リエンジン型について、20億ドルも投じたら改修のためにCSeriesの開発費の2/3を費やしたことになると指摘し、それに要した時間はCSeriesの開発を利するとも言っている。エムブラエルはリエンジンだけでなく主翼の新設計もやり、新たなサプライチェーンを構築しているので、改修がかなり大規模になっているのは確か。

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ボーイングがロックウェルコリンズと共同で757と767のコクピットアップグレードを提案

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-rockwell-boeing-to-offer-757767-cockpit-upgrade-373880/

この提案は、757/767のコクピットを787に準じた内容にアップグレードするというもので、2014年中盤からの提供を予定している。
現用のコクピットは6台のCRTを備える前世代のグラスコクピットであるが、ダイヤル式のアナログ計器も残っている。これらを3台の15.1型アクティブマトリクスLCDに置き換え、オプションでロックウェルコリンズHGS-6700(いわゆるHUDで合成映像や必要な情報が表示される)も追加できる。

ロンチカスタマーは未発表だが、時期的には2015~2019年に引き渡し予定のFedExの767-300F×19機などと予想されている。
767-300Fと兄弟機にあたるKC-46Aでも、フライトデッキは同じロックウェルコリンズが供給する。ただし多少の関連はあるが、そちらにそのままレトロフィットする計画は今の所ないそうだ。

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A320neoが詳細設計段階に移行

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-first-a320neo-parts-tested-as-detailed-design-phase-begins-373958/

エアバスは、A320neoの最終仕様をまとめ、詳細設計段階へ移行したと発表。まもなく構造材の準備を始めるが、詳細設計にあたって検証が必要な部分は試作と試験が実施済みとのこと。具体的には大きく重くなるエンジンを吊り下げるためのパイロンで、これはウイングボックス中央部よりも重視され、試験用パイロンが製作されている。
パイロンの後方フェアリングは、A380テストベッドで飛行試験を実施された。

この概念設計の段階にはA319neoも含まれるが、A321neoについては別途補完的な作業が必要とされている。

計画に携わる人数はエアバスのトゥールーズ、ハンブルグ、フィルトンとヘタフェの各施設で約1200名、エンジンとナセルに関わる別会社の人員を含めると5000名にのぼるとのこと。

ニュージーランド海軍のSH-2について

ニュージーランド海軍のSH-2について

・HMNZSオタゴにて艦上トライアル

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-new-zealand-operates-sh-2g-from-patrol-vessel-372351/

HMNZSオタゴは2006年進水のOPVで、この艦名としては2代目。先代はフリゲート(1960~1983年まで就役)だった。

http://www.navy.mil.nz/know-your-navy/official-documents/navy-today/nt10webformat/nt154/new-otago.htm

http://www.strategypage.com/military_photos/military_photos_20100322231225.aspx

主要な任務は、対テロ、監視及び偵察、臨検、護衛とSARといったもので、EEZの哨戒などが想定されている。
同型艦にHMNZSウェリントンがあり、計画名をとってプロテクター級、または1番艦の名前からオタゴ級と呼ばれる。
排水量1900tonと、ヘリコプター運用艦としては小型。格納庫があるようだが、シャッター小さく見えるな。

SH-2GとHMNZSオタコによる艦上トライアルは5月に実施され、ハウラキ湾とベイ・オブ・プレンティにて、日中と夜間、様々なシーステートの環境で飛行試験が行われた。発着艦回数は161回にのぼったとのこと。
従来、王立ニュージーランド海軍のSH-2Gは、Anzac級フリゲートで運用されていたので、このクラスでヘリコプターを運用した前例は無い。

・SH-2Gの後継としてSH-2G (I)を検討

http://www.flightglobal.com/news/articles/new-zealand-in-negotiations-for-new-seasprite-helicopters-373288/

NZ政府の交渉先であるカマン側から発表されたもので、米国務省から交渉の正式承認が下りたとしている。取引の内容はSH-2G (I)×11機とフルモーションシミュレータ、スペアパーツその他を含む。去年から非公式な話し合いが持たれていたようだ。
現用のSH-2G×5機の老朽化はかなり深刻であり、2011年8月には、飛行時間が減少傾向になっている事が報告された。FY2009/2010においては目標1240~1370時間に対して882時間に留まったという。2001年に導入しているが、艦載機の寿命は一般に短い。

金額については未公表。しかし2億3000万NZドルという予想額が出ている。

http://www.stuff.co.nz/national/7179929/NZ-Navy-bargaining-for-unsafe-helicopters

王立オーストラリア海軍も、SH-2GをAnzac級で運用することを目的として導入。しかし、耐空性の問題で任務が制限されるなど評価は芳しくなかった。またこちらでも(I)仕様へのアップグレード計画が存在したが、政権交代の影響を受けてキャンセルとなる。この時は性能に関する問題と、安全性に関する問題が取り沙汰され、21世紀の耐空性基準を満たさないとまで言われた。
その辺の経緯から、記事でも地雷扱いになっている。にもかかわらず、NZ国防相は「当時の問題は解決されており、また機種転換すると訓練などで多大なコストがかかるので、他の選択肢は考えてない」といったことを述べたそうだ。

SH-2Gの最新カタログ。

http://www.kaman.com/files/file/PDFs/Helicopter%20PDFs/Seasprite.pdf

艦載多目的ヘリコプターといった位置付けで売り込まれている。現状ではH-70系やNH90などより小型であることが、ほぼ唯一の利点になっていると言っても過言ではない。オーストラリア海軍においても、当初はOPVへの搭載計画があった。
他国では、艦載機としてはポーランドが4機をO.H.ペリー級に搭載して運用。エジプトの10機は対潜型。こちらはペリー級やノックス級を保有している。

C919のエンジンナセル実証試験が完了/インドネシアNTSCがデモンストレーション飛行時の高度規定などを勧告/MS-21の初飛行は2015年か/CSeriesの初飛行と市場予測について

C919のエンジンナセル実証試験が完了

http://www.flightglobal.com/news/articles/nexcelle-completes-key-c919-nacelle-test-373337/

C919には、CFM Leap-1Cの搭載が予定されており、5月、米国で先進技術ナセルの実証試験が行われた。
請負はNexcelleで、エンジンにはCFM56-5C、GEアビエーションのオハイオ州ピーブルズの工場を使っての地上燃焼試験となる。この試験はpylon and nacelle advanced configuration for high efficiency (Panache)と呼称された。
Nexcellによると、このナセルは燃料消費を2%減らす効果があるとしている。

また試験項目にはelectrical thrust reverser actuation system (ETRAS)という電動スラストリバーサと、複合材製で一体構造のOダクトも含まれる。Oダクトはスラストリバーサ作動時に後退し、バイパスの気流を逆転させるもの。従来の2ピース構造のDドアの代わりとなるものだが、これは長年の整備上の難点でもあった。利点としてはメンテナンス性の向上のほか、気流の向きを変える際の損失を低減することで、逆噴射効率を10%向上できるという。
詳細は分解図と動画で。

システムの開発状況は、5月にPDRを完了し、年末までにCDR完了予定。C919がこのナセルにLeap-1Cを搭載して飛行するのは2014年半ばとなる。就航はそれから更に2年後の見込み。

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インドネシアNTSCがデモンストレーション飛行時の高度規定などを勧告

http://www.flightglobal.com/news/articles/indonesias-safety-committee-makes-first-recommendations-after-sukhoi-crash-373351/

インドネシアNTSCは、5月のスーパージェット100墜落に続く一連の事故調査後、初めてデモンストレーション飛行時の安全確保について、即時勧告を行った。

その内容は、まず安全とされる最低高度以上を維持すること、特に山岳地帯を飛行する際は追加的なパイロットの訓練を実施することに加え、搭乗員と乗客の名簿を地上でも保管することについて述べられている。最後のくだりは、今回の事故においてクルーの一人が名簿を持ったまま搭乗し、墜落事故に遭ってしまったが、そのコピーなどが存在しなかったことから追加されたようだ。確かに当初の報道では、人数が混乱していた(最終的には45名とされている)。

ボイスレコーダとフライトレコーダは回収され、NTSCとロシア当局間では調査協力の合意がなされている。

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MS-21の初飛行は2015年か

http://www.flightglobal.com/news/articles/pw-reveals-new-slip-for-ms-21-first-flight-372640/

イルクートが開発中の旅客機MS-21は、当初2016年就航とされたものの、後に1年先送りの2017年就航となった。また2月のシンガポールエアショーにおいては、イルクートの社長が2014年後半の初飛行を計画していると発言。
しかしその裏では、エンジンに関する交渉が難航していたようだ。同社は2年前、2010年にGTFのPW1400Gの採用を決定したが、正式合意して調印までこぎつけたのは今年6月5日。今回の情報はP&Wのプレスリリースから出たもので、ここでは2015年初飛行というのが明記されてしまっている。交渉遅れが工程に影響を及ぼさないはずはなく、飛行機はエンジンが無ければ飛ばないので、多分このまんまの話と思われる。

P&Wのプレスリリースでは、MS-21向けエンジンの概要も公表された。PW1400Gの標準仕様ではMS-21-200(150席タイプ)に推力125kN、MS-21-300(181席タイプ)に138kNがそれぞれ対応するが、MS-21向けは110kNから142kNの間という表現になっており、若干仕様が標準と異なる模様。
また、エンジンナセルがボンバルディアの子会社のショート・ブラザーズ社が供給するとも書かれている。ここはIAE V2500とGE CF34のナセルを供給した実績はあるが、GTFの実績は無い。なお親会社のボンバルディアはCSeries向けのGTF、PW1200のナセルについて、ショートではなくグッドリッチを選定した経緯あり。

MS-21は、1月1日以前に最終設計段階を完了する予定になっていたようだ。実際にはエンジン抜きの話になっていたわけであるが。
2010年代後半から新しいナローボディ旅客機の競合機種がやたらと多くなる事は確実(737MAX、A320neoの対決にCSeries、C919が加わる)だが、イルクートは1200機ほどの製造を見積もっている。うち1/3程度は、ロシアとCIS諸国の需要を見込む。

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CSeriesの初飛行とボンバルディアの市場予測について

http://www.flightglobal.com/news/articles/bombardier-adds-caveats-to-cseries-first-flight-timeline-373175/

6月19日、ボンバルディアの本部で開催された記者会見において、CSeriesの初飛行に関する質問が相次いだが、ボンバルディア経営陣は、初飛行よりもサービス・マイルストンの方が大事であるとの説明に終始した。CS100のロンチカスタマー(社名は非公開)への引渡しは2013年後半とされ、現時点から数えて、最大18ヶ月先。初飛行は遅くとも今年Q3末までに実施という形になっている。

飛ばないシステム試験機、complete integrated aircraft systems test area (CIASTA)のAircraft 0によるシステム統合試験は今月末までに完了予定で、今のところ大きな問題は出していないとのこと。
飛行試験機の状況については、機首、前部・中央部・後部胴体、尾部、主翼、垂直尾翼の各コンポーネントの完成状態の写真が示された。最終組立するには水平尾翼が足りないが、これはアレニアに外注されてるそうだ。それ程遅延する要素は無さそうに思える。

もう少し詳しい記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/cseries-assembly-compressed-to-meet-first-flight-target-373200/

ボンバルディアは初飛行をQ3としているが、最終期限として2013年1月1日、つまり2012年内という予定を明らかにしている。
現在、飛行試験1号機FTV-1の最終組立にかかる期間を、通常の5ヶ月から4ヶ月に圧縮する方向で考えているとのこと。

飛行試験計画の完遂には12ヶ月、飛行時間にして2400時間ほどを要するので、初飛行からすぐに取り掛かってノートラブルでも、就航はその1年後となる。
単純に見ると、18ヶ月で片付けるには厳しいスケジュールだが、飛ばないシステム試験機、いわゆるアイアンバード、Aircraft 0によるシミュレーションがボンバルディアの奥の手。これは実際に飛行する以外の機能、フライトコントロールとアビオニクス一式、油圧系、電装系、車輪などを備え、操縦翼面には油圧で実際に荷重をかけた状態をシミュレート可能となっている。
当局とは、型式証明のプロセスをこちらも使って実施する方向で調整した。既に20000時間以上のシミュレーションをもって認証を受けることとして原則同意に至っており、細部の交渉を残すのみとなっているそうだ。ここで飛行試験時間を減らせれば、型式証明プロセスが捗るという見通し。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bombardier-forecasts-20-year-jump-for-turboprop-deliveries-but-regional-jet-demand-declines-373159/

6月19日に示された市場予測について。

ボンバルディアは今後20年の市場予測について、昨年までの予測を下方修正した。世界的な景気の悪化により全体で縮小傾向としつつ、100席以下のターボプロップ機は増加するという見通し。
2012~2031年の150席以下のクラスは、ジェット機とターボプロップ機あわせて12800機、6300億ドル規模。内訳は、20~59席クラスは300機で昨年の予測からの変更は無し。60~99席クラスの下方修正が最も大きく、昨年の予測から200機減の5600機とした。また100~149席クラス(CSeriesと110を含む)は、同じく100機減の6900機。割合にすると2.3%の下方修正となる。その理由については、世界のGDPの低落傾向が挙げられてる。

また、USEIAの平均原油価格予測が、1バレル107ドルから127ドルまで上昇したことを根拠に、ターボプロップ機の需要が増大すると予測し、次の20年で2832機という販売目標を立てた。昨年の2500機という予測を300機ちょっと上乗せした数字であり、このクラスは60~99席クラスに含まれる。つまり今年の予測に当てはめると、シェア48%を目指す、と言い換えることができる。更に言うと、ターボプロップが上方修正された分、リージョナルジェットが下方修正された形となる。

ノースロップグラマンがカナダにRQ-4B Block 30を提案/カナダ空軍がホーク練習機の後継機を検討か/LMがHarvest HAWKの輸出版Vigilant Watchキットを提案/RAAFがWedgstail AEW&Cの最終号機を受領/C-295の小改良について

ノースロップグラマンがカナダにRQ-4B Block 30を提案

http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-grumman-pitches-global-hawk-variant-for-canada-372485/

ノースロップグラマンは、カナダ向けにRQ-4B Block 30を提案した。Polar Hawkと称する通り、北極圏にかかるカナダ領の哨戒機としての提案となり、L-3 MASと共同して売り込みを図る。
極地での運用となると、MQ-4C BAMSの方が要求に近い仕様の機体になる(USAF向けのRQ-4B Block30は天候に関しては弱い)が、BAMSは元が高価かつ納期が10年先になるとかで今回は提案しておらず、RQ-4B Block30の主翼とエンジンに凍結防止装置を搭載して、衛星通信網が不備な環境に適合させる改修が行われる予定。

コスト面はノースロップグラマンとしても配慮しているようで、センサへの変更は最小限に留めるよう勧めている。もちろん要求通りにも出来るが、高価に付くし、試験にも時間を要するから、というのがその理由。カナダ国内の哨戒が主なら、SIGINTペイロードも不要。コストもかかる。
哨戒に特化して能力を限定したタイプというより、できるだけ基本型のまんまで済ましましょうよ安上がりだし、というご提案。

ノースロップグラマンの試算では、最低3機編成の1部隊でカナダ北部の哨戒任務を遂行できるとしている。これは夏季なら1機の1ソーティで、西北ルートを3~5回横断できるという仮定に基づいているが、冬季は若干減じる可能性があり、5機が最適であろうとの結論を示した。また1機のRQ-4は、大雑把に6機のMALE-UAVに匹敵するとも述べている。

平時の任務以外においては、例えばカナダの東海岸からアフリカ西部までの進出が可能であり、海外派兵に先立つ戦略偵察が可能。

コストについては、1機あたり3000~5000万ドルを提示した。ただしこれは地上管制ステーションなどの付随する装置は含んでいない、エアフレーム単体価格に近い数字。
なお、USAF向けの参考価格は、全部込みで1機あたり2億1500万ドル。小規模の導入でもあるし、支援設備はもうちょい安いか?

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カナダ空軍がホーク練習機の後継機を検討か

www.flightglobal.com/news/articles/canada-may-launch-programme-to-replace-ct-155-hawk-trainer-fleet-372579/

カナダのホークは、CT-155という識別番号が与えられている。業界筋の情報では、これらの後継機導入が検討されているとの噂。
カナダではF-35A導入(現計画では65機)が既定路線なので、自前で訓練を行うには、高度なシミュレータおよび練習機からなる訓練システムを一新する必要があると見られる。

ただし新型練習機を導入するほかにもホークの近代化改修を実施するという選択肢もある。シミュレータで訓練する範囲も広がっているので、限定的な改修+高度なシミュレータでも十分かもしれない、とする見方もある。

現状では文書化されるところまでは行ってないとされるが、5月31日、オタワで催されたCANSEC防衛装備ショーにおいては、アレニアとBAEシステムズがそれぞれM.346とホーク128の模型を持ち込んだことが確認されており、カナダ国防省側と話し合いが持たれたとの情報もある。この他に提案されそうなのはT-50あたりと考えられている。
話が進めば比較的早期にRfIが出るかもしれない。

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LMがHarvest HAWKの輸出版Vigilant Watchキットを提案

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-hopes-to-make-vigilant-watch-sale-within-15-months-372616/

LMはCANSEC防衛装備ショーにおいて、KC-130J向けの武装化/ISRプラットフォーム化キット、Harvest HAWKの輸出版で、輸送型C-130Jに対応してISR専用となるVigilant Watchキットを提案し、これに複数のNATO加盟国が関心を示したと発表した。15ヶ月以内に最初の受注が確定する見込みとしている。

Harvest HAWKは元々、USMCのKC-130J向けに採用されており、最初のバッチで3セット、先月は第2バッチでさらに3セットが追加発注された。LMとしてはFY2013から2014にかけてもう3セットの追加を期待しているところ。米国向けとしては、DIA向けのShadow Harvestというのも進行中みたい。

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-marines-order-additional-kc-130j-harvest-hawk-kits-372024/

NAVAIRの発表では、改修、アップデートなどの能力維持まで含めた単価は900万ドル程度とのこと。既にアフガニスタンで実戦投入され、改修も施されているようだ。
火器管制コンソールは貨物質に置かれる。右舷パイロンの給油ポッドはAN/AAQ-30 IR/EOセンサを取付る改修が行われ、左舷パイロンは通常の給油ポッドか、それに代えてAGM-114が搭載できる(4発)。またカーゴランプからのAGM-175またはGBU-44B発射も可能となる。

米国向け仕様との能力の差は基本的に無いとされているが、顧客要望に沿ってセンサを変更することが可能で、SIGINTペイロードなんかも可能としている。またセンサの機能はおそらくHarvest HAWKより高いとも述べた。
パイロン配線が無い普通のC-130Jでも、無線で制御するシステムとすればインテグレーションは可能、ただし改修には多少お時間を頂くという寸法。

Vigilant Watch搭載機には武装化への発展余地ができるみたいだが、それはまだ将来計画に留まっている。

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RAAFがWedgstail AEW&Cの最終号機を受領

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-raaf-receives-final-wedgetail-aewc-aircraft-372622/

RAAFでは737改修のWedgetail AEW&Cを6機導入する計画で、この度最終の6号機がRAAFに引き渡されたとのこと。
現在Wedgetail AEW&Cは、RAAFウィリアムタウン所属の2Sqnに配備されており、2012年内にIOCを獲得する予定。

今後については、先月報じられたとおり、ボーイングが主契約でEW関係の改修が実施されることになる。

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C-295の小改良について

http://www.flightglobal.com/news/articles/winglets-and-anti-ship-missile-top-latest-additions-to-c295-372474/

エアバスミリタリーでは、中型輸送機に属するC-295の派生型を模索しているが、AEW化などに付随した機体の改修として、ウイングレットの付与とASMの搭載などを計画している。
映像増強システムと連動したHUDや、OBIGSSの搭載についても同様、今後12ヶ月間の日程で試験が行われる。ASMはMBDA Marteで、8月までには模擬弾での飛行試験を予定しているとのこと。翼下パイロンに兵装を搭載した場合の空力的な影響を調べることになっている。基本的にはチリ空軍向けに装備されたMk.46魚雷用と同型のパイロンだそうだ。OBIGSSは2012年Q4、ウイングレットは2013年前半。このうちウイングレットについては既存機へのレトロフィットも可能とされる。

画像は風洞実験のもの。AEW型にウイングレットがついている。

カナダの専門家がF-35の導入に関する問題を説明/オーストラリア政府はF-35の調達計画とストップギャップについての判断を保留する/イラク、オマーン、タイ向けのAPG-68(v)9の契約/超党派の米上院議員グループがアフガニスタン向けMi-17調達を批判

カナダの専門家がF-35の導入に関する問題を説明

http://www.flightglobal.com/news/articles/canada-raises-the-spectre-of-abandoning-lockheeds-f-35-369577/

カナダ政府は、価格高騰の可能性が高いF-35Aの調達計画について、見直しを示唆しつつも現時点では65機程度、約90億ドルの調達を堅持している。

この記事で取り上げられているのは、同国の専門家筋によるコメント。
最初はブリティッシュコロンビア大に属して北部の主権問題を専門とする、マイケル・バイヤーズ教授の見解。

教授がまず指摘しているのは、広大なカナダ北部の哨戒飛行を実施するのにF-35は適さない可能性がある、という点。日本でも似たような事が言われるが、単発機で広大な領域をカバーするのは、CSARなどバックアップ体制の面も含めて無理があるという話。世界第二位の国土面積を有するカナダの場合、ユーコン、ノースウエスト、ヌナブトの各準州だけでも、全部合わせた面積はオーストラリア大陸の半分以上で、インド亜大陸よりも広い。またF-35Aのステルス性がどういった状況で有効かと考えたとき、最も威力を発揮するのは開戦初期の第一撃であるが、カナダがそういう段階で軍事行動に及んだケースは皆無とも述べている。
まとめると、「航続距離は必要だがステルス性は(おそらく)要らない」という主張だ。

次にSalt Spring Forumというシンクタンクのスチュワート・ウェッブ氏は、F-35Aのステルス性の維持に関して、これもカナダ北部での運用を念頭におき、極端な低温環境下(-50度以下)の運用ではどうなるのか、という疑問を提示している。
また、カナダ国防省(DND)が競争入札を行わずにF-35を選定した点にも異議を唱えた。日本と同様、競合する機種を評価する必要があったとしている。
他には哨戒用の無人機を国内で開発することも検討すべきだったとか言ってるけど、これは業界団体の代弁だろか。

これらを受け、JSF計画及びLM側の立場でコメント出してるのは、レキシントン研究所のローレン・トンプソン氏。
カナダがJSF計画から離脱するようなことがあれば、もちろん大きな痛手となるだろうが、同時にカナダ軍にとっても大きな痛手であろうと述べている。その根拠は極めて単純。20年後には、第5世代戦闘機でなければ生残性が保てない、という予測に基づく。ステルス性に関しても、2世代以上にわたって運用するならば、米国のようにパワープロジェクションでF-35を駆り出すかは別としても、あらゆる任務に備えられる機体であるべきだ、と述べている。

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オーストラリア政府はF-35の調達計画とストップギャップについての判断を保留する

http://www.flightglobal.com/news/articles/canberra-keeps-options-open-on-f-35-capability-gap-plans-369747/

オーストラリアのスティーブン・スミス国防相は、同国のF-35の調達に関連し、日本がF-35を選定しつつ価格への懸念を表明したことや、カナダでJSF計画についての議論が繰り広げられていることが、どのように影響するかという質問を受けた。
その回答は「オーストラリアに関する限り特になし」というものだったが、オーストラリアの基本方針についての言及(というか再確認)があった。それは空対空作戦能力のギャップを作らないようにするというもので、ここ半年以上は同じ話をしている。

この前提条件に立てば、F-35の遅れを埋める必要が生じた際には、F/A-18E/Fの追加調達という可能性が高い。USAFがF-16にAESA搭載改修を施すのと同様の意味合いとされる。
今のところ、オーストラリアが予定したF-35調達数100機以上のうち、確定は14機。2機は2014年に米国内で引き渡されて搭乗員と地上要員の訓練に充てられるが、残りの引き渡しは見えてない状況にある。
結論は年内に出る予定のようだ。

なお地元報道では、ストップギャップとしてのF/A-18E/Fの追加調達機数は12~24機の間で、一部をEA-18Gとするとも報じられている。

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イラク、オマーン、タイ向けのAPG-68(v)9の契約

http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-receives-f-16-radar-contract-369542/

ノースロップグラマンは、F-16用の新型レーダーAPG-68(v)9を、イラクに22台、オマーンに15台、タイに6台<
合計43台を輸出する契約を確定した。米国防総省が発表したもので、2015年3月31日までに完了予定となっている。
APG-68(v)9はAPG-66をそのまま取り換えられるように設計されており、AESAではないが軽量化され、空対空の探知距離が33%増大し、整備コストが低減されている。取付に要する時間はおよそ2日。

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超党派の米上院議員グループがアフガニスタン向けMi-17調達を批判

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-senators-criticise-mi-17-acquisition-369546/

3月12日付で、超党派の米国上院議員グループは、パネッタ国防長官に宛てた抗議文を提出した。
その内容は、ロシアからのMi-17の調達を批判するもので、Rosoboronexportとの取引をボイコットするよう要求している。建前はシリア関連のロシアの動き(シリアへの兵器輸出の件もある)を牽制し、あくまで強い態度で臨むべきだとする主張であるが、このグループを構成しているのは、米国内でも回転翼機とエンジンのメーカーの工場が集まってる州の選出議員が大半なので、色々とお察し。

ともあれこの文書によると、Mi-17の調達については、2016年までに21機、3億7500万ドル相当で、オプションは5億5000万ドル相当を含むという。
米国のメーカーが不満なのは確かだろうけど、UH-60とかで1機当たり2000万ドルを切る価格というのは難しそうだ。
運用インフラとサプライチェーンの問題もある。

VR6 Horex Roadster/二輪車ライダー用エアバッグコンセプトSafety Sphere/ベルトーネ・ヌッチオ・コンセプトカー/キャンピングカーの容積を倍増するDoubleBack Sliding Pod

VR6 Horex Roadster

http://www.horex.com/startseite.html

http://www.gizmag.com/horex-v6-set-for-production/21423/

VR6はドイツで完全受注生産(1台に職人1人が付き、最後まで組立調整)される二輪車で、最大の特徴は15度の狭角V6エンジン。排気量1.218リットルで過給付、最大出力は200bhpを発生する。価格は低率生産で2万ユーロから。
今のところドイツ、オーストリア、スイスでしか入手不可だが、2013年にはフランスとベネルクス三国、イタリアでも発売予定となっている。

この手の多気筒エンジンとしては、大手メーカーだとドカティのV8とかBMWの直6がある。

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二輪車ライダー用エアバッグコンセプトSafety Sphere

http://www.gizmag.com/safety-sphere-motorcycle-airbag/21354/

カナダ在住の発明家Rejean Neronさんが考案したコンセプトで、ライダースーツ全体が風船のように膨らむという斬新な代物。同様のエアバッグ技術応用という括りでは、主に上半身、背骨や首や肩までを守るスーツであったり、自動車のエアバッグと同じくハンドル中央に組み込むもの(ホンダが大型スクーター向けで開発)が存在したが、全身防護というものは発表も実現もされてこなかった。

二層構造で、外側はパラシュートの材質に似た硬い素材、内側は柔らかい素材で作られる予定。車体とライダーを接続するコードが切断されると作動する、電気的な仕掛けになるようだ。作動すると内部にセットされたニトロセルロースが発火し、0.05秒で完全に展開する。

ツッコミどころは満載であるが、ビジュアルのインパクトが半端でない。なんとなくトニーたけざき風。
というか作るだけなら技術的には特に問題なく実現できちゃいそうなところが恐ろしい。

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ベルトーネ・ヌッチオ・コンセプトカー
http://www.gizmag.com/bertone-nuccio-concept-car/21421/

1970年、ヌッチオ・ベルトーネがデザインしたストラトスHF Zeroは、トリノ・モーターショーで初めて公開され、その時代を代表する一作となった。生産車としてのストラトスはもっと普通の形になっている…と言っていいのかは微妙な気もするが、少なくともここまで低くて(全高は僅か33インチという)楔形にはなってない。このデザインは40年経ってもあんまり色褪せず、2011年にはRMオークションにおいて76万1600ユーロで落札された。

今年は、ベルトーネ創立100周年を記念するコンセプトカー、ヌッチオがジュネーブモーターショーに合わせて準備されているとのことで、先行してデザインスケッチが公開されている。その姿はHF Zeroを再解釈したものである…という話。

正面は似せられている感じだが、後ろは別物っぽいな。
ジュネーブモーターショーは3/5から開催予定。

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キャンピングカーの容積を倍増するDoubleBack Sliding Pod

http://www.doubleback.co.uk/

http://www.gizmag.com/vw-transporter-doubleback-sliding-pod/21404/

DoubleBackは、フォルクスワーゲンT5トランスポーター(2.o TDIのロングホイールベース)を改造したキャンピングカーで、停車時には車内スペースを引き出すような形で室内長を2倍ぐらいに延ばす事が可能。天井だけ跳ね上げる「ポップ・トップ」は、VWが30年以上前に採り入れたのが最初だそうだが、改造を行ってる英国のウェルシュ・カンパニーとしては、それを後ろに延ばしたようなものと言いたいらしい。また、特許を取得している。

2007年の日産NV200コンセプトカーを思い出す人もいそうだが、

http://www.nissan-global.com/JP/DESIGN/CONCEPTCAR/2007/NV200/index.html

結局のところ、製品化には至っていない。

DoubleBackは電動で展開でき、45秒で出し入れが可能。また引き出した状態では部屋が車軸後方に2mばかり出っ張る格好だから、付属する折り畳み式の2本脚で支える構造となる。600kgほどの荷重に耐えるこの脚は、不整地にも対応可能。
価格は54995英ポンド。

スペースが倍増するのが画期的にことは間違いないのだが、移動することも考慮すると荷物の収納が難しそうだ。いや、テント張るようなもんだと思えばいいのか。