iPad Pro

http://www.apple.com/jp/ipad-pro/

やはりこれには触れておかねばなるまいということで。

12.9型タッチスクリーンの縦横比は「約」3:2。ピクセル数はAirの縦解像度を意識したために、すっごい中途半端な数字になっている。割り切れない。
この画面サイズといい、価格設定といい、名称といい(カバーと一体で専用I/Fのキーボードもかな?)、Surface Pro 3と直接比較されるのも致し方なしという感じであるが、AppleとしてはMacとiOSデバイスの中間的な位置付けにしたいらしい。価格的にも799ドルからとMac Miniを上回り、MBAの安いやつとかに匹敵するので、プライスリスト的にはそのように設定されている。無駄にでかくて高いという感想に敢えて反論するならば、A9Xプロセッサの性能に着目したい。A9Xは64bitのARMv8採用後の3世代目にあたり、x86で言えばCore Mに近いパフォーマンスを発揮する可能性がある。具体的な根拠を1点挙げるなら、どちらも4kにネイティブ対応を謳っているところ、かなあ。4k対応は、同時に発表されたiPhone 6との組み合わせで威力を発揮するとかなんとか。そっちの業界はよくわかんねえけど、iPhone 6でも撮ってiPad Proで編集するみたいな使い方だろう。そうなるとメモリは1GBはたぶんあり得ない。
ついでに言うとCore M搭載のハードウェアは多くの場合、可搬性重視のフォームファクタと組み合わせられる都合で割高な製品になる傾向がある。平たく言ってしまうと、価格帯がiPad Proとだいたいおんなじトコ。4kとの親和性はWindowsが負けそう。
しかしながら性能を持ち上げたところで結局はUプロセッサにぶっちぎられる運命であるため、筐体をギリギリまで切り詰めながら上位のプロセッサを積んだSurface Pro 3最強って事になってしまうのだった。チョー珍って難しい。

この形の大型タブレットは、Surface Pro 3以前にはいち早くサムスンがGalaxy Note Pro 12.2というのを世に送り出しているものの、国内では売られなかった。尼では並行輸入もんのローエンドモデル(Wifi、ストレージ32GB)が8万弱、米国直販は100ドル値下げして649.99ドルで売ってた。

http://www.samsung.com/us/mobile/galaxy-tab/SM-P9000ZKVXAR

Appleさんはそろそろ16GBモデルを地平線の彼方に投げ捨てるべきではないでしょうか。それはそれとしてこの製品、iPad Proと比べると画面は12.2ワイドと若干小さいのに50gほど重く、メインプロセッサは32bitのExynos 5 Octaでハード的にはやや見劣りするも、画面分割はしっかり取り入れてたりSペンであったり3GBのRAMであったりと諸々の事情を勘案しても頑張った痕跡は見える。やはりSペンはベンダ側が薄く軽くと言い出したら不利だ。

 

液晶ペンタブレット的にどうなのかという点については、まあ触ってみなくちゃわかんねえ事が多すぎる。と片付けるのもつまんないので今わかってることを少しまとめておくと、まずペンはワイヤレスでバッテリ入り。N-trigなどと類似したアクティブスタイラス系のものだ。電池は不細工な単6いっぽんとかじゃなくて本体のLightning端子からケーブルを介して充電できる何かがついている。よかったよかった。この部分で唯一欠点と言えるのは、ペンがワコム以上のボッ(略)であるところだ。99ドルとか言ってる。本体同時購入したら最低でも12万ぐらいになっちゃう。
キャパシタだから充電は一瞬!とかだとさらにイイけど多分違う。プリンストンのあれはアクティブスタイラスの電源問題に対する最良の回答の一つだったと思うんだけど、何か不都合があったんじゃろか。製造中止になってるし。

競合製品は、厳密には違うと思うけどWindows系のCC2やVAIO CANVAS。だがこれらは10万円台の選択肢はあっても後半からが勝負みたいな感じであり、さらに可搬性の点では比較にもなり得ず、直接競合するという感じじゃない。ここもやっぱりSurface Pro 3って事になるのだろうか。
ペン性能の単純比較ならiPad Proの方に分がありつつ、Windows機としての汎用性も備えるSurface。これも何やら比較にならなそうな予感が。Macで写真屋とか動画編集やってる人なら迷わずiPad Proを選びそう。そういう人のためのハードと思えばわかりやすい。まさにプロ向け。富士通あたりのWindows系の大型タブレットはペンありの防水だったりして、別の意味のプロ向けっていうか法人向けなのが興味深いところだ。

http://www.fmworld.net/biz/tablet/q775k/

その他の違いとして、ワコム系に対してはハードウェアキーを欠く、というのがある。個人的には、タッチの誤操作防止機能(ペン/タッチの切り替えタイムラグがゼロに近くなるとかパームリジェクションとか)が完璧になって、片手でペン、反対の手でタッチ操作というのが滞りなくなるまでは、ハードウェアキーは必要だと思う。もしくはペンより指の方が使える状況になるとか。後者に関しては静電容量+感圧のタッチパネルをうまく使えばできそうな気もするけど、前者はおそらく難しい。
ショートカット押すだけのためにキーボードつけるのも、ちょっと。ゲームパッドみたいのがさっくり使えたら面白いけどiOSよくわかりません。
iPad Proがシンプルな形態を保ったのは、何もジョブズ先生がiPad初代発表当時、ペンとかすぐ無くすし時代遅れだしーと宣ったからというばかりではないだろう。ペンでもメチャクチャ譲歩した感じなのに、iPadにハードウェアキーとか付けようもんなら今度こそ御大が墓から飛び出して来かねない。

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やっと3Dトランジスタの時代へ突入

半導体の先端プロセスがモバイル中心に回りだして久しいが、最近ようやく3Dトランジスタが軌道に乗り始めたっぽい。

A9/A9Xについての後藤記事

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/20150915_721217.html

…なんですけど移行が遅れに遅れたためネタが陳腐化というか繰り返しになっている感は否めない。A9の記事は1年前に一回やってるし。大変だなあ。でもまあロードマップを見直しておくのもよいかと思う。去年の段階じゃ20nmでTSMCとサムスンが分担となっていた。この辺の名称のねじれについては上記事の方で触れられている通り、20nmの配線ピッチのままでFinFETの3Dトランジスタになったら14とか16と呼ぶようになったということで、全くの間違いというわけでもない。ただしIntel除く。と実にややこしい。
一応去年の。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/20140918_667216.html

TSMCに関しては20nmがコケ気味で、割を食ったのがQualcommのSnapdragon 810。今年からのハイエンド製品は評判が大変よろしくない。結果としてサムスン/GFに食い込まれるという展開もあったようだ。なおQualcommが失ったシェアは、日本などでは安物専業と見られがちのMediaTEKに切り取られつつある。

http://eetimes.jp/ee/articles/1507/15/news104.html

Snapdragon 810の後、ローパワーコアのCortex-A53だけの8コアが発表されたりして何事かと思って調べてみたら、どうもA57自体がイマイチ?みたいな?
サムスン以外は鯖向け(Opteron Aシリーズ)やコンソール(Tegra X1)で、モバイルほど電源に厳しくないから何とかやっていけてるように見える。ひょっとしてAMDのSkybridgeがアレしたのも…というのは考えすぎか。でも第一世代がろくなもんじゃないのはかなり普通の話だしな。

http://eetimes.jp/ee/articles/1503/24/news081.html

この記事だとA9系の製造自体はTSMCの方が多いけど、20nmは今年の失点が響いて早々に店じまいする方向、てな論調。

Qualcommの次世代はA72の820で、その次がKrait以来の独自コアKyroとなる見込み。

プロセッサ系の話がよくわかんない事になってるのと比べると、NANDフラッシュメモリの話は大分わかりやすい。容量基準で論じるから製品もイメージしやすいしな。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/20150910_720358.html

2010年から製造技術の行き詰まりが目に見えるようになってきたため、次世代不揮発性メモリとかいうちょいうさんくさワードで括られる発表が相次ぎ…という展開はちょっと興味深い。確かにそんな時期もあった。

記事の内容を大雑把にまとめると、2014年頃から3D NANDの量産が視野に入り、2015年にプレーナを上回る容量を実現可能になった。このシングルダイ容量は256bit、1個のモジュールが2個のダイから構成されるなら計512bit=64GB、1個のパッケージにこれを16個載せたら1TBになる、という勘定。その先は積層数が48から64、更には96と増えていくので、容量としては2倍にできる。ここまでの計算は微細化を考慮していないから、仮に0.7倍に微細化されるとしたらシングルダイ容量にして4倍の1Tbitも実現可能、更に将来的なコストとの兼ね合いを押さえていくと、2.5TBあたりまではHDDより安くなってストレージ/メモリ分野の勢力分布が大きく変わる。というような予測。
ビット数が簡単に増やせたら微細化とかじゃなくても一気に行けるが、何とも言えんな。

NANDフラッシュをDDR4互換のDIMMに挿して使う製品は既に登場している。カナダのベンチャー企業Diablo Technologiesが開発したMemory 1がそれ。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/20150819_716850.html

容量単価の安さが売りで不揮発性じゃないNANDフラッシュという代物であるが、常時リフレッシュしなくてもいいため待機電力はずっと低い。読み出しは速いけど書き込みの遅さと寿命については専用のソフト制御で補う必要がある。というかDRAMも残さないといかんらしい。こんなんで大丈夫なのかよくわからん。同業他社がどう動くか次第かな。違いはソフトで吸収しますとかいうのはどうもねえ…

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