Cintiq Companion Hybrid買った

(以下CCHと表記)

いちばん安い16GB版だ。久々の面白デバイスであり、なかなかよい。
しかしながらこの製品、価格もさることながら、直販限定で触れる機会が少ないというのが、購入の敷居を大きく引き上げている感がある。ネット上ですら有益な情報が少なく、実際のところどうなっているか伝わり難いところがあるので、ちょっと詳しくメモ。

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ウェブ広告で見た16GBが3万円引きとなるキャンペーンに、駆け込みで買ったつもりだったのだが、1月31日を過ぎた今も、価格表示は3万円下がったまんま。現状は価格改定?みたいになっている。ということは、今やってるCintiq Companion(以下CCと表記)のキャンペーンも…という予想が成り立つものの、こっちは別に買う気なし。CCは普通のタブレットPCなので、モバイルで使い倒す用途に向くというより、Intuosシリーズ同等のペンタブレットがモバイル環境で使える唯一無二の存在であるが、それ以外の用途ではCCHの方が色々使える。あと、CCはいずれHaswell版へモデルチェンジしそうな気がする。

CCHは周辺機器としての性格が強いので、PCと繋いで使う限りは普通の液晶ペンタブレットとなり、スペックや拡張性不足に悩む必要がない。
しかし、一旦切り離すとAndroid端末のため、CCのようにWindows環境とはならない。ここが一見して中途半端と評された主な要因であるが、実は現時点でもAndroidは、OSレベルで筆圧ペンに対応しており、この一点ではiOSより有利であったりもする。使えるアプリは確かに少なめだが、ペンの走りがWindowsでIntuos使ってるのと大差なくて驚愕するレベルなので、今後の発展に期待したい。
(ただしMac使ってて、iOSの方がいい、とかいう場合はまた別の話)

ハードウェアの面では、まず核となるSoCのTegra 4は、i5より低消費電力かつ低発熱のため、CCHの筐体はファンレスで済む。バッテリ容量分軽量(100g程度軽い)でも、稼働時間は同等レベルを確保。このシリーズは散々デカ重いと言われているが、メリットもちゃんとあるんです。

とは言うものの次期製品以降、どこかPCメーカーと協業してもっと軽く薄く、というのはアリじゃないでしょうか。数が見込める製品ではないから難しいと思うけど、同クラスのUltrabookで1.3kg切る製品もあることですし。

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次、デメリットと製品の位置づけについて。

主なものは、13HDから引き継いだボタンの少なさ、ドットピッチの狭さからくる従来のWindowsアプリケーションでの視認性低下。これはCCもCCHも13HDも同じはずだが、手元に来て触ってみると、やはり据置の上位機種とは別のカテゴリに属する製品だなあと思わされた。
補足するなら、このタイプを据置で使うのが全く無理ってわけじゃない。それでも13インチのメリットは膝置き使用やモバイルでこそ生きるもので、そうした用途を無視していいなら上位機種の方が向いている。

ボタンの少なさは、相当工夫しないとキーボードショートカットの呪縛から逃れられぬほどになっている。小型筐体だけに余計なもん置かずにすっきり使いたいところであるが…CCやCCHならある程度タッチで補えるか?
13HD発売時にずいぶんボタン減ったなあと思ったけど、CCHを手にしてみると詰まってる感触があり、少なくともこの筐体ではこんなもんか、とは思えるようになった。

視認性については、具体的にはアイコンが大分小さくなっちゃうのと、ツールボックス類を画面端に置いたらアイコンが使えない領域にかかって押せなくなったりする問題を指す。またタッチパネルがあると、作業領域内のツールボックスに大量のアイコンを並べるような従来型のUIでは、誤操作を招く恐れもあるため、配置の見直しが必要なケースも多いかと思う。この辺って、気にする人は気にするからなあ。
CC買う人はデスクトップと全く同じ環境を持ち出せるというのに期待するだろうから、注意が必要。最悪タッチ切って使うとかになるかもしれんし。

おそらくは、作業時はツール類がすべて隠れて全画面フルに使えるタブレット向けUIが、このサイズには向いている。ただしタブレット向けのシンプルUIは、機能もどちらかと言えばシンプルになる傾向があるから、多機能型のアプリケーションとは棲み分けることになるのかも。
ここら辺はたぶん、iOS向けの方がかなり先行している。Procreateとか普通のペイントツール並の代物になっているし、iOS8以降のどこかでiPadがアクティブスタイラスにネイティブ対応したら、もはやそれが決定版になるレベル。

話は逸れるが、iOSはフル機能のアプリケーションが出てきてるのが強味で、ペイントツールも例外ではない。対してWin8は、デスクトップを残したがためにタイルUIへの移行が阻害された感あり。既に投入から1年以上が経過しており、もはや今後の方向性…とか悠長に言ってる段階も過ぎつつあると思うのだが、どうすんかね。
Androidについては、触ってみてはいるものの、Googleのサービスを離れたところに来たらどうにもピンとこない感じだ。それとアプリ開発がパフォーマンス低い方に引きずられてる印象も受ける。LPDDR3の1GBと4コアの32bitプロセッサならもっとできるはずなんである。従ってここはメーカーが頑張るべき。NVでもワコムでも東芝でもいいからTegra 4専用でなんか凄いの出してYO! ゲーム以外でな!

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C/Pについて。

CCHの16GB版、3万円引き128000円についてもう少し詳しく書くと、Cintiq 13HDの定価+3万円に相当する金額だ。これでタッチパネルがついた13HD Touch相当、かつTegra 4のAndroidプラットフォームでもあり、更にキャンペーン期間中はペンが一本付いたのだからC/Pとしてはまあ妥当。というか、これ以上下がりそうにはないとこまで下がった感じ。

なお、同じく2万円引きになったCCHの32GB版は、相変わらず割高ではあるが、半日程度の稼働時間で足りないならこっちを選ぶしかない。CCの稼働時間も半日がいいとこだ。Haswellになったらもうちょっと延びそうなんだけど、アナウンスはない。多分CCの在庫がなくなるまでは出ない。

個人的なところで言うなら、実はWin8のモバイルモニタとして使う運用をメインにし、タブレット端末で何か描いてみたいという欲求と結びついたのが購入動機ということになる。つまり自分にとっては妙に値が張るモバイルタッチパネルモニタであり、Androidタブレットであり、液晶ペンタブレットは最後に来るのであった。
しかしこれも別々に買うと、例えばモバイルタッチパネルモニタ、iPad Air、BT接続のアクティブスタイラスで10万は超えてしまうので、全てを1台でこなすものと見ればC/Pは、まあ凄くイイってわけじゃないがまあまあイイ。OSの違いは仕方ないとして、画面サイズやペンタブレットとしての性能など、CCHのが優れてる部分もある。
モバイルモニタとしてはレノボのLT1423pを買おうかと思ってたのに、いざ日本上陸したら349ドルが45000円になって、一気に買う気ゼロになったのも記憶に新しい。

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使い道と感想。

*届いてまだ1週間ちょっと。しかも別に仕事とかで使うアレでもないので注意。

基本的には、家の中でWin8.1のサブPCにとったり付けたりして遊んでいる。繋げば疑似Win8タブレットになり、外せばAndroidというのは存外に面白い。やっぱりタイルは中途半端だなあとかいろいろ思うところはあるが、それはおいといて。

これとは別に、メインPCの方は現在Win7で動作しており、モニタがすでに2台繋がってて3台目が出力できない環境になっている。だからこっちに繋ぐとなると、Windowsのアップデート(例の1200円のWin8ライセンスを確保してある)に始まり、モニタの配置まで見直さねばならないから、常用するプランは当初からなかった。
それでも一応動作確認ということで、15pinアナログVGA出力からのサブ液晶をOFF、HDMI出力をONで画面を出してみたのだが、タッチとペンのマッピングが別画面になったり、Painter12.2でテールスイッチの消しゴムが効かなくなったり、同じくタッチの回転はできても異様に重かったりで挙動が実に怪しかったため、早々にあきらめた。
1画面に留めるか2画面目をクローンで使うのが、まあ無難と言えば無難かも。

また前述したように、Androidでの操作感が良好なため、そっちで使うことも多くなりそうだ。なので、HDMI/USBケーブルはPCに差しっ放しにし、ACアダプタとは分離した。これならケーブル繋いでもAndroidで動作可能になる。いろいろ試した結果、メインはSketchbook Proにした。パームリジェクションっつうんですか、タッチの誤認識についてわずかに問題も残るが、全体的には十分に使えるものだ。PCとのデータのやりとりはSky Drive改めOne Drive経由。

Androidプラットフォームとしての性能は、当面は必要十分なレベルと思われるが、許し難いのは付属アプリの方。特にCreative Canvasは、いきなり起動したら買って失敗したか?と思われるレベルであり、セルフネガキャンそのものであり体験イベントの不評の元凶であり、地獄の業火に投げ込以下略。
アップデートでまともにするのも困難そうなので、A社に土下座してでもSketchbook系とかを入れるべき。

稼働時間については、ACアダプタは普段外して使い、AndroidでもPC接続でもだいたい2~3時間で50%ぐらい。ほぼ公称値に近い印象を受けた。体感的にはどちらのモードでもあまり差がないように感じるが、AndroidではAndroid端末のSoCが動作して時々WLAN通信を行い、液晶のバックライトが可変設定かつ1分で消灯、PC接続ではAndroid端末のSoCが停止し、液晶のバックライトが最大固定で常時点灯、という違いがある。
こうしてみると、PCの方の設定を見直す余地はあろう。連続稼働という意味では、5時間動けば十分な気もするけどなあ。
モバイルとは名ばかりで屋内で部屋を移動しながら使いつつ、2~3時間ごとに休憩し、ちょっと充電して再開、みたいな使い方なら特に問題はない。

あ、でもAndroidのスリープ復帰時にタッチパネルがサボるときがあるな。
現象を見るに、4+1コアの+1に相当するコンパニオンコアとの切替が問題なのかもしれないが、そもそもタッチパネル制御がどのように行われているかわからんので、推測の域を出ない。

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ArtPad2以来のワコム製品ユーザとしては、必要かどうかはともかく、液晶ペンタブレットは高嶺の花であるだけでなく、製品として一つの究極形でもあった。CCHの素になった13HDはラインナップ上のローエンド相当とは言え、それまでと違って上位機種同等の筆圧感知、ノートPCの部材を流用したそこそこまともな液晶、コンパクトな筐体を備えて10万を切ったのは画期的だった。…のは承知していたものの、ぶっちゃけ必要性が薄かったので買わずに来たわけである。

でまあ、成り行きで使ってみた感じなのは否めぬが、結論から言えば思ったより良かった。当たり前か。

ただし、その使用感は紙に鉛筆と同じではなくて、どっちかというとペンの動きをそのまま目で確認できて、脳内補正が必要なくなるって感じ。その他もっと単純に、手のポジションがずれてミスることが減る、という効果も確認できたので、いずれにしても紙に鉛筆並の速度で描けるのは間違いない。直線ツールもあんまり要らなくなる。
板のタブレットを使ってない人だったら、また別の感想になるのだろう。

にしても13HDは定価で10万を切り、一時は実売8万も切ってたわけで、いきなりここからペンタブレット歴がスタートする人がいても不思議ではないのだなあ、と思うと感慨深いものがある。

実際の使用では、PC接続時もAndroid時も線と下塗りまでが中心になりそう。本塗り工程は板でも不便を感じていないし、色の確認も必要なので、メインPCに戻してPainter使うと思う。まだやってないけども。
今のところPCで線を引くときはAzPainter2を使っている。これはペン有効にすると自動的にタッチが切れるっぽく、誤操作の問題はまだ経験していない。なかなかの優れものなのであった。

そんなわけで配置は膝置きが中心だ。机に置くとしてもあまり立てたくないので、付属でないスタンド、というよりは浅い角度の台、みたいなのがイイかもしらん。アルミ板とかで自作するかな。

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今後の展望と要望

まあ要望はメーカーに出すもんだけど。

でかいところは、何度でも書くが付属アプリっていうか一番基本的なツールのはずのCreative Canvasをちゃんとしてほしいっていう一点に尽きる。ボタンの数はまあ妥協の範囲じゃろか。初めからわかっていたし。
とにかくTegra 4ならもっとできるはずなので、ソフト面を充実させてほしい。だが所詮ワコム、期待は禁物なのであった。

その他の不満点は細かいところばっかりだ。ケーブル周りとか(改良されているらしいが)、HDMIが繋がると強制的にAndroidがスリープするのとか。その程度。

あとスタンドもやや微妙か。見た目よりごつくて頑丈だけども角度がなー。

その他、液晶面に保護シートが貼れないっぽい(タッチが死ぬと言われている)のも人によっては我慢ならんかもしれぬし、モバイルを意識して滑らないラバーを使ったのはいいが、埃が付きやすく指紋べたべたになるのも我慢ならんかもしれぬ。
個人的にはAndroidのソフトキーのところに跡が付きそうなのは気に入らぬが、モバイルは汚して何ぼみたいなところも理解できるので大きな問題ではない。

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結論。

これをCCHを買おうか迷っている人が読むかどうかは知らないが、全ての機能を使い切るのであれば迷わず買いだろう。ここまで書いてきたような使い方でなら、できそうに見えて実はできなかった、というような事はなかった。13HDの筐体という限界はあるものの、そこさえ理解しておけば、無駄にはならないのではないかと。逆に液晶ペンタブレットとしての性能がネックになるなら、迷わずでかい方を買うべき。24HDは物理的に置き場所困るかもだが22HDなら10万円台後半。CC買うのと大差ない。