カナダとデンマークでのF-35A導入見直しのその後/F135エンジンのタービンブレードのクラック発生による飛行停止と解除/F-35AとF-35Cを統合する可能性について前海軍作戦部長が言及/結局F-35の飛行性能はどの程度なのか/その他

カナダとデンマークでのF-35A導入見直しのその後

http://www.flightglobal.com/news/articles/canada-releases-industry-questionnaire-on-cf-18-hornet-replacement-383007/

カナダのNational Fighter Procurement Secretariat (NFPS、訳すと国家戦闘機調達事務局)は3月3日、戦闘機製造メーカー4社に対し、アンケート形式で詳細な技術的情報を提供するよう要請した。NFPSを監督する立場にある政府機関Public Works and Government Services Canada (PWGSC)も参加している。宛先はボーイング、ダッソー、ユーロファイター、LM。回答期限は6週間なので、今週で締め切られたはずだ。同種のアンケート草案は1月25日に提示され、5社から回答を得たとのこと。

この動きは2012年の会計監査で、F-35導入に厳しい批判が出て、年末には正式に調達中止となったことを受けてのものであり、遅ればせながら導入プロセスに競争原理を取り入れる形。

http://www.flightglobal.com/news/articles/four-rivals-to-enter-danish-dogfight-383554/

またデンマークでは、F-16AM/BM後継機の選定を正式に決めた。2013~2017年の防衛計画枠組み合意にて採択されている。
LMは、2010年代末までに引き渡す計画としていた。

これに対し、ボーイングがF/A-18E/F、サーブがグリペンE、ユーロファイターがタイフーンをそれぞれ提案し、F-35も含めて4機種からの選定という流れになっている。カナダと同じく競争原理を取り入れる方向となったわけだが、これでF-35の調達条件が若干でも良くなるのかどうかは謎。

今のところ、JSFパートナー国じゃない方でニーズが高まってる感じ。イスラエルといい日本といい。韓国はどうしたいのかよくわからんが。

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F135エンジンのタービンブレードのクラック発生による飛行停止と解除

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-35s-cleared-to-resume-flight-operations-382909/

http://www.flightglobal.com/news/articles/engine-crack-that-grounded-f-35-traced-to-thermal-creep-383136/

2月19日、F-35Aの搭載エンジンの1基で、低圧タービン3段目のタービンブレードにクラックが確認され、全てのタイプの全機が飛行停止となる。その後の調査で3月1日にB型、3月5日にA型の飛行が再開された。

クラックの大きさは1/6インチ程度だったとのこと。予防的な飛行停止措置に留まった形で、設計変更などは行われない。
P&Wの見方としては、低高度での超音速飛行試験など、通常の任務よりも過酷な状況で使用された結果とされている。これらの試験飛行では、通常の運用に比べて4倍ほど負荷が大きく、また4回ほどはメーカーの想定した基準を超えて運転されたとのこと。

が、タービンブレードに起因する飛行停止措置が最近でも2度ほどあり、頻度が多いのも事実。
飛行停止が重なると、以後の飛行スケジュールが詰まって運転条件も厳しくなるという流れ。

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F-35AとF-35Cを統合する可能性について前海軍作戦部長が言及

http://www.flightglobal.com/news/articles/former-usn-chief-suggests-dod-should-cancel-f-35a-in-favour-of-c-model-383969/

国防省のCost Assessment and Program Evaluation (CAPE)内部で、A型を廃止してC型に統合する案が存在した。らしい。同一機種とは言え、3種類も並行で開発するのに無理があるので、CTOL型を1種類にすると幸せになれる、という論理展開。

USAFはC型の(A型を下回る)飛行性能を受け入れないとも言われているし、個人的なアイディアに留まってる感じではある。

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F-35関連で3月から4月にかけての話題いくつか。

・オランダ空軍向けF-35A(AN-2)ロールアウト

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-second-rnlaf-f-35-rolled-out-383230/

3月5日付。

・53rd TEGに評価機材としてF-35A×4機が到着

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-testers-prepare-for-f-35-operational-evaluation-383309/

F-35Aの運用評価を行う53rd TEG、その指揮下にある2個飛行隊(エドワーズAFB所属の31st TESとネリスAFB所属の422nd TES)では、年内に合計12機を受領する予定。
正式なOT&Eはまだ先になるが、その前段階として、USAFの人員のみでF-35Aを運用する経験を持つのが目的となっている。実戦に近い環境での運用を行うところまで持ってこなければならないので、先はまだ長い。

・RAFのパイロットがエグリンAFBにてF-35Bの訓練飛行を始める

http://www.flightglobal.com/news/articles/rafs-first-operational-f-35-pilot-flies-first-training-sortie-383642/

3月20日付。RAFの飛行隊長格のパイロットが飛行訓練を開始したとある。
英軍のF-35のパイロットは、12名がVMFAT-501に派遣された形になっており、RAFとRNのパイロットが半数ずつで構成されている。OTが2015~2016年(こちらの要員は2名)で、2018年に17Sqnとして部隊編成する計画。
4月には3機目が引き渡し予定だが、これはソフトウェアがBlock2Aになる。

・F-35B夜間のSTOVLを実施

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-35b-completes-first-night-short-take-off-and-vertical-landing-384282/

4月2日、NASパタクセントリバーにてVision Systemsの新型ナイトビジョンカメラISIE-11をHMDに組み込んで実施とある。

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結局F-35の飛行性能はどの程度なのか

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-lockheed-claims-f-35-kinematics-better-than-or-equal-to-typhoon-or-super-hornet-382078/

もう10年近く前からいろんな人がいろんな主張を展開している問題なので、今更感はあるが、ここにきてメーカーの主張やパイロットの証言が出てきてるようだ。F-35Aの調達見直しの話題が目立つようになったのと無関係ではないだろう。

以下長いので要旨のみ。

LMはJSFのどのタイプでも、現存するあらゆる積載状態の第4世代戦闘機と同等がそれ以上の運動性能があると主張。比較対象には音速付近での加速性能で空対空兵装のタイフーン、高AOA時のF/A-18E/Fなどが挙げられた。フライトエンベローブ拡大についての責任者という肩書きのLMのテストパイロットが述べている。

これに対する、ベテランテストパイロットなどのわりと一般的な反論として、ステルス製を重視した面積の小さい操縦翼面では、操作性で劣るのではないかというのが紹介されている。

加速性能については、性能要件が低い方に緩和されたのを、どう解釈するかという感じの話。

http://www.flightglobal.com/news/articles/reduced-f-35-performance-specifications-may-have-significant-operational-impact-381683/

運動性については、実機でのenergy-maneuverability (E-M) diagramが見えてない状態で論じても意味ない、というコメントで終了。

結論は特にないんだけど、第4世代でクリーン状態になってるというのは任務を放棄した状態に等しいので、そこで勝負する話を始めたら負けを認めたようなもんでは?(超訳)というLMの指摘が全てか。

 

F/A-18FにCFTモックアップを装備した実機が公開される/マレーシア向けAEW&Cについて/LIMAでの その他展示/KF-X計画の遅延についてインドネシアが言及/スウェーデンがグリペンE開発完了までの予算を承認

F/A-18FにCFTモックアップを装備した実機が公開される

http://www.flightglobal.com/news/articles/lima-conformal-tanks-add-fuel-to-super-hornet-campaign-383904/

マレーシアで開催の今年のLIMAにて、ボーイングがF/A-18E/FのCFT装備状態を見せている。CFT本体はモックアップとのことで、実際には使用できない。地上展示に入る前に取り付けられたとある。

F?A-18E/FのCFTに関しては、インターナショナルロードマップとして発表されたものの一部であるが、本国USNがこの夏に試験を予定している。同機種はマレーシアのMRCA向け提案にも入っているので、今回の展示となったようだ。
CFTの容量は全部で3500ポンド。

USNで本当に採用する気があるかどうかは、微妙なところだろうか。現時点では可能なオプションの一つとしてテストしておくだけ、といった感じではある。

とは言え、F/A-18E/Fの遷音速までの加速性能の悪さは、主に機体の抗力の大きさに起因するものであることがわかっており、CFTで抗力が低下することはあり得ないので、パワー不足がより深刻になるだけなのではといった否定的な意見もある。F414の増強型EPEはまだ実物が無く、ファンと高圧タービンコアの再設計が必要とされるため、これをもって解決できるかどうかは定かでない。

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-navy-may-add-conformal-fuel-tanks-to-fa-18ef-super-hornet-fleet-383701/

しかしながらF-35Cの開発遅延がさらに深刻化するとF/A-18E/Fの能力向上を本気で考えなければならなくなるので、何でも試しておくに越したことはない、みたいなことをティールグループのアナリストがコメントしてる。
どちらにしても財政の問題は短期的に解決できるもんではないので、装備化までの道程は長い。

今年のLIMAでは、MRCA提案予定の残りの機種、ラファール、グリペン、タイフーンもフライトを実施した。
ここでは18機程度の導入が予想されているものの、正式なRfPはまだ出てない。また早くから整備性の問題が指摘されたMiG-29Nについて、稼働機数が8機程度まで落ち込んでいるとも言われ、こちらの代替としても2015年以降に10機程度は必要という。
またマレーシア向けのF/A-18Dは、8機が1997年に引き渡された。

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マレーシア向けAEW&Cについて

http://www.flightglobal.com/news/articles/lima-northrop-saab-eye-malaysian-aew-requirement-383892/

同じくLIMAにて、サーブとノースロップグラマンがAEW&Cの提案を計画しているとの報道。今年のLIMAではノースロップグラマンが初めてブースを構えてE-2Dのオペレータ席などを展示した。
E-2Dは今のところUSN向け75機を受注し、国際的な売り込みの最中となっている。メーカーの提案としては、マレーシアに配備することを想定した場合、4機あれば持続的な領域監視が可能としている。4機ならCVN1隻分の機数と同じだ。

サーブが提案しようとしているのはEMB-145などにERIEYEを搭載したAEW&C機で、隣国タイ向けではサーブ340+ERIEYEの2機をグリペン12機をセットで売り込むことに成功している。
サーブの売り文句は、50%の価格で80%の性能というもの。E-2DというかノースロップグラマンのAEWレーダーを意識した言い回しと思われる。契約上のその他の強みは、技術移転とかオフセットの部分になる。

業界筋では、同国のAEW&Cへの潜在的な需要は根強いと見られているものの、財政的な問題も指摘されるところらしい。

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LIMAでの その他展示

・インドネシア空軍のCN295

http://www.flightglobal.com/news/articles/lima-indonesia-displays-new-c295-383957/

インドネシア製のC295のうち、インドネシア空軍向けはCN295となっている。2012年2月のシンガポールエアショーにて調達契約された9機のうちの最初のバッチの2機。のうちの1機がLIMAにて展示された。

・マレーシア空軍のEC725

http://www.flightglobal.com/news/articles/lima-malaysian-ec725-makes-show-debut-383955/

展示されたのは2012年12月に引き渡された機体で、2014年1月までに10機が引き渡される予定。
まだIOCは獲得していない。

この他、回転翼機関係では、アグスタウェストランドとAW139×6機およびAW189×2機の調達契約が結ばれている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/lima-weststar-signs-helicopter-deals-with-agustawestland-eurocopter-383934/

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KF-X計画の遅延についてインドネシアが言及

http://www.flightglobal.com/news/articles/indonesia-confirms-18-month-k-fx-delay-383258/

KF-X計画は3段階に分けて進行することになっている。最初のフェーズはtechnology developmentで、これは2012年12月に完了した。韓国内に設置された共同のR&Dセンターには、インドネシアからも37人が派遣されている。
この後、試作機製造を含むengineering and manufacturingを経て、製造・マーケティング段階のjoint production and joint marketingに至る筋書き。

インドネシア国防省の声明によると、engineering and manufacturingのフェーズに関して、未だ韓国の議会が承認していない旨がDAPAを通じて連絡されたとのこと。DAPAは、昨年末の選挙の影響で遅れたと説明しており、またこれまでに費やした巨額の費用を無駄にすることなく、計画を進行させるとも述べている模様。開発計画全体の費用は50億ドル規模で、インドネシアは20%を負担することになっている。

冒頭にある18ヶ月の遅れというのはよくわからんが、単に韓国の現政権があんまり肯定的ではないのかもしれない。

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スウェーデンがグリペンE開発完了までの予算を承認

http://www.flightglobal.com/news/articles/saab-gets-deal-to-complete-gripen-e-development-383850/

スウェーデンでは空軍のグリペンC×60機をグリペンE仕様に改修する計画を承認しており、これを進める上で必要な契約を相次いで締結している。
今年の2月中旬(FY2014まで、金額は25億クローネ)と3月22日の契約(FY2015~2023まで、金額は107億クローネ)により、開発作業に関わる契約は全て締結されたとのことで、各種の試験機材やリグ、シミュレータまで含め、開発の目処が立った形となる。
引き渡しは2018年から2026年までを予定している。

一方、スイス向けの22機は、取引全体で最大472億クローネという金額が示されてる。