米空軍がRBS-FGE計画で3社と契約
http://www.aviationweek.com/aw/generic/story.jsp?id=news/awst/2011/12/12/AW_12_12_2011_p32-403128.xml&channel=defense
http://www.flightglobal.com/news/articles/air-force-awards-reusable-booster-contracts-365835/
reusable booster system flight and ground experiments (RBS-FGE)の位置付けとしては、アトラスVおよびタイタンIV(EELV)の後継開発に繋がるもの。垂直離陸/水平着陸型で再使用可能な打ち上げシステムを目指す。二段式で、一段目はLO2を使う複合サイクルエンジンのブースタ、二段目は使い捨てから再使用型への発展も視野に入れる。だいたい既存技術で実現可能なものになるはず。
契約した3社は、アンドリュー・スペース、ボーイング、LM。オハイオ州デイトンのAFRL主導で発注している。金額は最高で2億5000万ドル。限定的な飛行試験は2015年から開始予定となっている。このデモンストレータはRBSパスファインダーと呼ばれ、Xプレーンに相当する。
この段階は、Indefinite Delivery / Indefinite Quantity (IDIQ)という契約形態で、あくまでもデモンストレータを飛ばすまで。最終的には競争入札に移行するようだ。AWの記事では各社200万ドルずつで、2012年後半に設計審査により1社選定、2015~2016年にかけて飛行試験と書いてある。また現用EELVからのコスト削減幅は50%以上と見積もられる。
更新時期は2025年というからだいぶ先の話だ。
記事に出てるのがLMのコンセプト図で、
他にはアンドリュー・スペースのそれらしいのが公式にあった。
http://www.andrews-space.com/content-main.php?subsection=MTA4
ボーイングはAstroxという企業と密接に協力し、X-37を使った試験も行っているとされる。
Astrox公式。
http://www.astrox.com/
設計ツールと概念研究の専門という感じ。複数のコンセプトについて検討しているのは確かのようだ。
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1ヶ月ほど前の記事だが。
DARPAが空中発射型衛星打ち上げに関するBAAをリリース
http://www.flightglobal.com/news/articles/darpa-solicits-air-launch-proposals-364537/
このbroad area announcement (BAA)は、DARPAが小型衛星打ち上げ用の空中発射型プラットフォームの情報を収集するためのもので、計画はairborne launch assist space access (ALASA)と呼ばれている。概念図はボンバルディア風だ。
現状では情報収集の次の段階に移るかどうかも定かではないが、具体的な条件はある程度示されている。ロケット本体重量は5000ポンド程度、軌道投入可能なペイロードが100ポンド程度といったものであり、投入軌道は書いてないものの、規模としては現用のオービタルサイエンスのペガサスシリーズよりも大分控えめな感じ。この種のプランにはMiG-21やMiG-31といった戦闘機から発射するプランから、An-225を使う物までいろいろあった。
ALASAに関しては、低コストで小型衛星を軌道投入するというところを最重視しており、6月のNASAとDARPAの共同報告書では既存航空機の改修が3000ドル程度で可能である、との結論に達している。
ペガサス以外のこの手のシステムがうまく行かなかった理由はいろいろあるが、ペイロードが足りなかったり、固体ブースタを積むことの危険性があったりで、安易に出来そうな割に、実現までのハードルは高かった。一応成功したペガサスにしても、ペイロードなどの打ち上げ能力を確保するために大型化しており、初期にはNB-52、その後はL-1011トライスターが母機で、いずれも多発の大型機を使うから、運用経費も嵩む。
ここら辺の問題については、ある程度、それこそジェット燃料程度には安全性の高いハイブリッドロケットが出てきたり、衛星自体のダウンサイジングが著しく進んだことで、小型の母機で小型衛星(マイクロサットまたはナノサット級)を打ち上げるスタイルでも、そこそこに実用性は高くなった、と考えられているようだ。
確かに母機がリージョナルジェットぐらいまでになれば、運用経費が相当下がりそうではある。
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Stratolaunchシステムについて
http://www.flightglobal.com/news/articles/massive-air-launch-system-unveiled-365958/
Stratolaunchは、MSの創設者の一人であるポール・アレン、こないだスケールド・コンポジットから身を引いたバート・ルータンと、NASAの前長官マイケル・グリフィンという、ある意味オールスターの出資によるプロジェクトで、SpaceShipOne/Twoを拡大したような二段式の打ち上げシステムとなっている。
打ち上げ能力は、LEOまで6200kg、または乗客6名。大型ではあるが、全体としてはSpaceShipOne/Twoと同様の構成となり、母機の形態はWhiteKnight1/2と似た双胴機となっている。ただしジェットエンジン6発の大型機となる。他方、子機はSpaceXのロケットエンジンを搭載し、そのまま低軌道まで到達可能なもので、完全に新規設計。機体の概要は後述するが、2015年に母機の飛行試験、2016年に空中発射を実施する計画とのこと。
バート・ルータンによれば、これは既に予備設計の段階ではなく、詳細設計もかなり進行しており、実機の製造までそう長くかからないと述べている。また地上発射に対する空中発射の利点は僅かで、軌道投入能力で比較すれば5~10%程度の優位性しかないことを認めつつ、工業的にはそれが決して小さいものではないとした。
射点設備とかに制約されないので、運用が柔軟に出来るというのは一つの大きな利点だろう。
母機のサイズはスパン115m、MTOWは50ton超で、ジェットエンジンの6発機。外寸と重量はエアバスA380に匹敵する。モハベで製造されることになっており、子機を抱えて離陸するための滑走路長は3600mのお化け。運用拠点となる空港などについては未公表であるが、プレスリリースにはKSCの名前があるという。
KSCと言えば、スペースシャトル着陸施設が存在することで有名だ。滑走路長は15000ft、つまり4572mあるので、十分に長い。さらにSCAで運ばれてきたシャトルを下ろす施設も付随しているので都合がいい、かもしれない。
打ち上げ能力で言うと、かつてのデルタII、現用だとオービタルのアンタレス(旧名タウルスII)に匹敵するため、中小規模の通信衛星の打ち上げに適するとしており、まずはそちらのメーカーに売り込む方針とのこと。
この辺の詳細は、競争力を保つためまだ明らかにされていないものの、子機のエンジンにはSpaceX自慢のマーリンを使った多段式であることは確定しているようだ。
何か晩年のハワード・ヒューズを思わせる吹かしっぷりだが、この計画に関してはSpaceShipOneの飛行試験が完した2004年10月からスタートし、100名ほどが参加しているそうで、洒落や冗談ではなく本気でやってるのは間違いない。というかスペースシャトルの退役と、スペースシャトル向けの施設流用を実現できるか見ておいて、発表に踏み切ったという感じか。
ポール・アレンはX-Prizeの頃にSpaceShipOneへ出資していたが、SpaceShipTwoになってからはあまり関係していない。その裏にはこういう計画があった、という話になるわけだ。
空中発射式のプラットフォームは、滑走路から飛ばせる分、柔軟な運用が可能…というのは一般論であるが、これほどのサイズになるとジェット旅客機が発着可能なクラスの施設が必要になる。最低でも12000ft級滑走路。
まあアメリカなら何とでもなるか。