米空軍の緊縮予算に影響を受ける装備計画について
http://www.flightglobal.com/articles/2011/09/22/362360/trainers-and-helicopters-stuck-in-usaf-budget-limbo.html
軍事予算の縮小に関しては空軍に限った話ではなく、米国の財政問題が根底にあるのは言うまでもないところだが、近年の米空軍においては、自爆気味の選定失敗例や開発難航例が現在進行形で存在するため、厳しく見られるのも当然という部分がある。
9月19日、空軍の航空宇宙カンファレンスで、空軍長官が基調講演に立った。この時、厳しい財政状況の中で、将来にわたり空軍の優位性を維持するために不可欠である、として挙げたのが、F-35とKC-46A、それに偵察衛星だったとのこと。偵察衛星についてもある意味F-35以上の大失敗をやらかしてるのだが、ここでは触れない。
じゃあ名前が挙がらなかった計画はどうなるの?というのがこの記事の趣旨で、T-X、CVLSP、CSARと軽攻撃/航空支援/練習機の4つを取り上げている。
この中で、業界的にも一番大きいのはT-38C×約450機の後継機となるT-X。LMがT-50、北米アレニアがM.346/T-100、BAEシステムズ/ノースロップグラマンのホークのほか、ボーイングはV字尾翼の新型機構想(Advanced Training Concepts)を明らかにしている。
http://www.flightglobal.com/blogs/the-dewline/2011/09/photos-fighter-bomber-trainer.html
2020年前後のT-38C更新を想定しているようだ。F/A-18似というか若干ノースロップくさい。
アレニアは米国でのパートナーが未定。でかいとこは別個に提案してるので、やや苦しいか。
T-38Cは飛行停止に繋がる墜落事故、CVLSPはUH-1の能力不足が言われており、どちらもあまり時間は残されてない。CVLSPの方はストップギャップのH-70系でごまかされそうな気もするが。CSARの来年度予算は未定、CVLSPはドラフト版RfPのまま止まってる。
さらに一番切られそうなのは軽攻撃機。今のところ、EMB-314スーパーツカノの米軍向けA-29とビーチクラフト/LMのAT-6が提案済みではあるものの、全くの新規導入になるし、両院議会でも中止の話が出てるとか。
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台湾のF-16A/Bアップグレードが米政府により承認される
http://www.flightglobal.com/news/articles/usa-approves-53bn-upgrade-for-taiwans-f-16s-362406/
AESAの輸出も認められるようで、金額は53億ドルにのぼる。
内訳としては、AESAレーダー×176、ALQ-213×176、JHMCS×128で、新兵装はAIM-9Xとその他の対地兵装、アビオニクス更新など。F100-PW-220から-229へのエンジンアップグレードはメーカー調査中となっている。
なお現在、台湾が保有するF-16A/Bの総数は152機。
主契約はLM。AESAは2種類存在するが、台湾のイベントに出展した方ならノースロップグラマンのSABRとなるだろう。
Block 15 OCU相当ながら、空対空作戦能力はBlock50並に向上すると思われる。
これと別のスペアパーツと兵站支援についてはF-5やC-130H、経国を対象とする5200万ドル分の取引となる。
パイロット訓練の5億ドル分には、アリゾナ州ルークAFBへのパイロット派遣なども含む。
追加66機の方は10月1日に、米国務省の結論が議会に上がることになっているものの、却下される可能性が高いと考えられている。
関連して9月14日の台湾の報道では、
http://www.sinodaily.com/reports/Taiwan_crash_sparks_calls_for_US_jets_sale_999.html
台湾空軍のF-5FとRF-5が墜落し、搭乗員3名が死亡するという事故があった。
2機は9月13日19時52分に台湾東部の花蓮空軍基地から離陸し、その13分後にレーダーから消失。山腹に衝突する形で墜落したようだ。霧で視界は悪かった模様。
原因調査のため、同型機の飛行は一時停止された。夜間飛行で霧という状況からすると、パイロットエラーの可能性が高いか。老朽化が直接の原因でなくても、就役から35年以上経過した機体と、最新の航法装置を備えた機体とでは、安全性が全然違うのは確かだ。
というか元々F-5に全天候作戦能力は無い。
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米陸軍がCH-47の更なる派生型を研究
http://www.flightglobal.com/news/articles/us-army-moves-to-set-up-possible-growth-variant-of-ch-47-chinook-362408/
CH-47Hは2020年代の就役を見込んだ派生型となる。9月初めには、米陸軍のレッドストーン兵器廠内に近代化プログラムオフィスが設置されているとのこと。
H型が実現すると第4世代チヌーク(A~Cが最初、Dが2番目、FとMH-47Gが3番目?)になるが、まだ先の話でもあるためか、詳細はまだ検討中らしい。
これまでボーイングが提示したアップグレード案では、ローターハブ、トランスミッションの改良で揚力が1ton程度増加できるほか、金はかかるがリエンジンによる能力向上も可能としていたようだ。具体的には、F型のハネウェルT55(4870shp)を7500shp級のエンジンに換装した場合、輸送能力は29500kgまで向上できるとした。
さらに最大離陸重量を34000kgまで引き上げることも不可能ではないとするが、C-17Aで輸送不可能になって陸軍のポリシーから外れてしまい、現実的ではない。
2020年代以降というのは、CH-47F/Gの製造が2019年までの契約になってるかららしい。5年間の複数年契約、155機調達という計画に続き、FY2013で次の複数年契約が交渉中とのこと。しかし予算(略)
CSAR-Xで失敗した派生型のHH-47では、エンジンの大幅パワーアップなどは含んでなかった。
対してH型は普通の能力向上型と言える。さらなる高出力エンジンが搭載されるようなら、D型以来の大きなアップデートになるだろう。
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LM/ノースロップグラマンがNGM開発継続を表明
http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-stays-in-competition-to-replace-amraam-harm-with-new-missile-362403/
次世代の航空機用ミサイルは、対空と対地の両方に使えるNGMとして研究されているもの。かつてはJDRADMという名前だった。
これに関しては、LM/ノースロップグラマン/ATKとボーイング/レイセオンが、DARPAとのデモンストレーション契約triple target terminator (T3) 計画の受注を競う形となっていたが、昨年ボーイング/レイセオンの勝ちに終わる。負けた方からはATKが脱落したものの、LM/ノースロップグラマンのチームは残って開発を続けている。
現用のAIM-120とAGM-88はいずれもレイセオン製なので、そっちが有利と言えば有利だ。
LMのブースにNGMとして展示されたものの画像が出ているが、その正体は明らかでない。
どのような計画にしても、AIM-120Dと似たようなサイズ・形状に納めないとF-22やF-35のウェポンベイには収まらないので、あまり外観に意味はないかもしれない。弾頭、信管、シーカの方がより重要。
NGMの本格的なプロトタイプ製作とデモンストレーションは、2012年からスタートする予定となっている。
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CHAMPの最初の飛行試験実施
http://www.spacedaily.com/reports/Boeing_CHAMP_Missile_Completes_First_Flight_Test_999.html
CHAMPはCounter-electronics High-powered Microwave Advanced Missile Projectのアノニム。物理的に目標を破壊する代わりに、高エネルギーのマイクロ波を放出し、電子機器を無力化するミサイルということになる。ボーイングがAFRLと開発しているもの。またマイクロ波発振部はKtechという企業が担当している。契約期間は2009年4月から3年間。