カナダとデンマークでのF-35A導入見直しのその後/F135エンジンのタービンブレードのクラック発生による飛行停止と解除/F-35AとF-35Cを統合する可能性について前海軍作戦部長が言及/結局F-35の飛行性能はどの程度なのか/その他

カナダとデンマークでのF-35A導入見直しのその後

http://www.flightglobal.com/news/articles/canada-releases-industry-questionnaire-on-cf-18-hornet-replacement-383007/

カナダのNational Fighter Procurement Secretariat (NFPS、訳すと国家戦闘機調達事務局)は3月3日、戦闘機製造メーカー4社に対し、アンケート形式で詳細な技術的情報を提供するよう要請した。NFPSを監督する立場にある政府機関Public Works and Government Services Canada (PWGSC)も参加している。宛先はボーイング、ダッソー、ユーロファイター、LM。回答期限は6週間なので、今週で締め切られたはずだ。同種のアンケート草案は1月25日に提示され、5社から回答を得たとのこと。

この動きは2012年の会計監査で、F-35導入に厳しい批判が出て、年末には正式に調達中止となったことを受けてのものであり、遅ればせながら導入プロセスに競争原理を取り入れる形。

http://www.flightglobal.com/news/articles/four-rivals-to-enter-danish-dogfight-383554/

またデンマークでは、F-16AM/BM後継機の選定を正式に決めた。2013~2017年の防衛計画枠組み合意にて採択されている。
LMは、2010年代末までに引き渡す計画としていた。

これに対し、ボーイングがF/A-18E/F、サーブがグリペンE、ユーロファイターがタイフーンをそれぞれ提案し、F-35も含めて4機種からの選定という流れになっている。カナダと同じく競争原理を取り入れる方向となったわけだが、これでF-35の調達条件が若干でも良くなるのかどうかは謎。

今のところ、JSFパートナー国じゃない方でニーズが高まってる感じ。イスラエルといい日本といい。韓国はどうしたいのかよくわからんが。

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F135エンジンのタービンブレードのクラック発生による飛行停止と解除

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-35s-cleared-to-resume-flight-operations-382909/

http://www.flightglobal.com/news/articles/engine-crack-that-grounded-f-35-traced-to-thermal-creep-383136/

2月19日、F-35Aの搭載エンジンの1基で、低圧タービン3段目のタービンブレードにクラックが確認され、全てのタイプの全機が飛行停止となる。その後の調査で3月1日にB型、3月5日にA型の飛行が再開された。

クラックの大きさは1/6インチ程度だったとのこと。予防的な飛行停止措置に留まった形で、設計変更などは行われない。
P&Wの見方としては、低高度での超音速飛行試験など、通常の任務よりも過酷な状況で使用された結果とされている。これらの試験飛行では、通常の運用に比べて4倍ほど負荷が大きく、また4回ほどはメーカーの想定した基準を超えて運転されたとのこと。

が、タービンブレードに起因する飛行停止措置が最近でも2度ほどあり、頻度が多いのも事実。
飛行停止が重なると、以後の飛行スケジュールが詰まって運転条件も厳しくなるという流れ。

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F-35AとF-35Cを統合する可能性について前海軍作戦部長が言及

http://www.flightglobal.com/news/articles/former-usn-chief-suggests-dod-should-cancel-f-35a-in-favour-of-c-model-383969/

国防省のCost Assessment and Program Evaluation (CAPE)内部で、A型を廃止してC型に統合する案が存在した。らしい。同一機種とは言え、3種類も並行で開発するのに無理があるので、CTOL型を1種類にすると幸せになれる、という論理展開。

USAFはC型の(A型を下回る)飛行性能を受け入れないとも言われているし、個人的なアイディアに留まってる感じではある。

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F-35関連で3月から4月にかけての話題いくつか。

・オランダ空軍向けF-35A(AN-2)ロールアウト

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-second-rnlaf-f-35-rolled-out-383230/

3月5日付。

・53rd TEGに評価機材としてF-35A×4機が到着

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-testers-prepare-for-f-35-operational-evaluation-383309/

F-35Aの運用評価を行う53rd TEG、その指揮下にある2個飛行隊(エドワーズAFB所属の31st TESとネリスAFB所属の422nd TES)では、年内に合計12機を受領する予定。
正式なOT&Eはまだ先になるが、その前段階として、USAFの人員のみでF-35Aを運用する経験を持つのが目的となっている。実戦に近い環境での運用を行うところまで持ってこなければならないので、先はまだ長い。

・RAFのパイロットがエグリンAFBにてF-35Bの訓練飛行を始める

http://www.flightglobal.com/news/articles/rafs-first-operational-f-35-pilot-flies-first-training-sortie-383642/

3月20日付。RAFの飛行隊長格のパイロットが飛行訓練を開始したとある。
英軍のF-35のパイロットは、12名がVMFAT-501に派遣された形になっており、RAFとRNのパイロットが半数ずつで構成されている。OTが2015~2016年(こちらの要員は2名)で、2018年に17Sqnとして部隊編成する計画。
4月には3機目が引き渡し予定だが、これはソフトウェアがBlock2Aになる。

・F-35B夜間のSTOVLを実施

http://www.flightglobal.com/news/articles/f-35b-completes-first-night-short-take-off-and-vertical-landing-384282/

4月2日、NASパタクセントリバーにてVision Systemsの新型ナイトビジョンカメラISIE-11をHMDに組み込んで実施とある。

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結局F-35の飛行性能はどの程度なのか

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-lockheed-claims-f-35-kinematics-better-than-or-equal-to-typhoon-or-super-hornet-382078/

もう10年近く前からいろんな人がいろんな主張を展開している問題なので、今更感はあるが、ここにきてメーカーの主張やパイロットの証言が出てきてるようだ。F-35Aの調達見直しの話題が目立つようになったのと無関係ではないだろう。

以下長いので要旨のみ。

LMはJSFのどのタイプでも、現存するあらゆる積載状態の第4世代戦闘機と同等がそれ以上の運動性能があると主張。比較対象には音速付近での加速性能で空対空兵装のタイフーン、高AOA時のF/A-18E/Fなどが挙げられた。フライトエンベローブ拡大についての責任者という肩書きのLMのテストパイロットが述べている。

これに対する、ベテランテストパイロットなどのわりと一般的な反論として、ステルス製を重視した面積の小さい操縦翼面では、操作性で劣るのではないかというのが紹介されている。

加速性能については、性能要件が低い方に緩和されたのを、どう解釈するかという感じの話。

http://www.flightglobal.com/news/articles/reduced-f-35-performance-specifications-may-have-significant-operational-impact-381683/

運動性については、実機でのenergy-maneuverability (E-M) diagramが見えてない状態で論じても意味ない、というコメントで終了。

結論は特にないんだけど、第4世代でクリーン状態になってるというのは任務を放棄した状態に等しいので、そこで勝負する話を始めたら負けを認めたようなもんでは?(超訳)というLMの指摘が全てか。

 

BAEシステムズ/ノースロップグラマンがGCVコンセプトを公開/LEMVがキャンセルされる/Upward Falling Payloads project/英陸軍がアフガニスタンで超小型VTUAVを配備

WP3.5にしたら、何か自動リンクが効かなくて適当なプラグインで対応したりとか。

gizmagの軍事関係から遡って拾っておく。

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BAEシステムズ/ノースロップグラマンがGCVコンセプトを公開

http://www.gizmag.com/bae-gcv-hybrid-tank/25113/

2012年11月の記事。GCVは米陸軍のM2ブラッドレーを更新する次世代の歩兵戦闘車として構想されており、2020年代には配備されることになっている。

http://www.army-technology.com/projects/ground-combat-vehicle-gcv/

BAEシステムズ/ノースロップグラマンのほかにGDランドシステムが主契約。GDの方は情報がほとんどないが、LMやデトロイトディーゼル、レイセオンが参加している。またKMW/ラインメタル(米国メーカーとしてはボーイングが参加)からプーマをベースにした車両なども提案されたが、契約には至らなかった。

かつてFCSの中で有人戦闘車両ファミリとしてXM1202 MCSが構想されたが、これもBAEシステムズとノースロップグラマンのチームが設計を担当していた。
腰高な感じは多少似ているものの、GCV案はディーゼルと電気モータのハイブリッド動力に最大の特徴がある。また現用のM2が、設計当初は想定外だった脅威に対処する過程で、徐々に重装甲化していった経緯を踏まえ、RG-33 MRAP以上の装甲防御が求められたため、モジュラー装甲を最初から取り入れている。がその結果、戦闘重量63.5tonと恐ろしい重さになった。この数字は普通のM2の2倍を超えてM1と同等。いくら機動性を確保し、モジュラー装甲が取り外しできて、RfPにおいても(C-130などでは空輸しないから)最大重量は規定してない、といってもやり過ぎ感は漂う。C-17でも1両しか載らん。またこの重量は、走破性にも影響する。

QinetiQが開発したTDSは総合出力1100kW級、駆動系全体が小型軽量で、構造も簡単になる反面、電池は重くかさばるはずであり、ハイブリッド動力による燃料消費率の改善は2割程度と微妙。しかし静粛性が必要な場合にはモータ駆動が有利であったり、走行状態よりもむしろアイドリング時の燃料消費を抑えられるのが大きいとされている。実際の作戦行動の中で、どれだけの時間待機しているかというのを考えれば、決して無視できない利点と言える。
なんかバランス的にシャーマンみたいな感じにも見えるけど、でかい砲塔は無人。

あとネックになりそうなのは値段。M2は最終的に平均単価316万ドル程度に落ち着くところ、こちらは1300万ドル。調達数が多いだけに、ここは問題視されそうだ。

ここまでくると、メルカバみたいなMBT兼兵員輸送車でいいような気もする。またMCSみたく水子になっても致し方あるまい。
というかプーマ改修が一番安上がりでリスクも低い気が。

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LEMVがキャンセルされる

http://www.gizmag.com/lemv-airship-canceled/26274/

初飛行以来、再び巨大飛行船の時代が!とごく一部の期待を集めたLEMVであるが2月14日、米陸軍宇宙・MDコマンドは正式に計画キャンセルを発表した。

計画では、高度20000ftで21日間滞空し、ISRミッションを遂行することになっていた。キャンセルの理由は時間切れ。元々、2012年春にはアフガニスタンで運用されてるはずだったから、まあこれはしょうがない。アフガニスタン撤退も目前に迫ったこの時期まで来ると、存在意義は薄れる。納期は大事ですよね。

http://www.popsci.com/technology/article/2013-02/army-cancels-airship

なお、試験機での滞空時間は6日程度に留まり、2年間に費やされた金額は、3億6500万ドルにのぼったそうだ。
また予算の問題に目処が付くとしたら、国境監視の方で復活する可能性はあるとも予想されている。

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Upward Falling Payloads project

http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2013/01/11.aspx

近年のISR任務においては、UAVとセンサの発達が著しいが、それらをどのように前方展開するかという点に関しては、陸上基地から飛ばすか艦艇に搭載して進出させる以外になく、極端な話をするとDASHの頃からあんまり進歩がないとも言える。

ここでは、無人のシステムを深海底に沈めておいて、必要なときに活動させるという構想が打ち出されている。これにはUAVだけでなく、ASWのためのセンサ、囮、分散系ネットワークを構成するノードとしての機能も考えられており、その内容は多岐にわたる。
隠密性の観点からも深海底の利用は優れた解の一つであるが、現場に急行するのではなくて初めから備えておくという発想の転換と見る方が重要なのかもしれない。実現性は謎。

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LCS-5ミルウォーキーに新型の軸流ウォータージェットが搭載される見込み

http://www.gizmag.com/lcs-water-jets/26114/

このウォータージェットはRRとONR、NSWCが共同で開発していたもので、軸流ウォータージェットMk-1と呼称されている。
これまでのLCSでは商用の機関が流用されており、キャビテーション(プロペラ/タービンの設計が不十分だったためと書いてある)に起因する艦体の腐食が発生するなどの問題があったという。この辺の話はあんまり報じられてなかった気がする。見てなかっただけかもしらんけど。

Mk-1は従来よりも高性能であり、LCS-5ミルウォーキーから搭載されるとのこと。なお、1隻につき4基が搭載され、エンジン自体の寿命を延ばし維持費も節約できることになっている。
性能が向上する反面、ノイズが増大するとの指摘もあるようだが、元々ウォータージェットだからなぁ…静粛性なにそれおいしいの状態だと思うが。

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英陸軍がアフガニスタンで超小型VTUAVを配備

https://www.gov.uk/government/news/miniature-surveillance-helicopters-help-protect-front-line-troops

http://www.gizmag.com/black-hornet-nano-uav/26118/

その辺で売ってる室内用ヘリコプターラジコンより小型の、ナノUAVとも呼ばれるクラスで、名称はブラックホーネット。長さ10cm、高さ2cm程度。遠隔操作の有効距離は800m。完全充電で30分ほど飛べて、最高速度は35km/hという。GPS誘導と直接操作の両方に対応し、静止画と動画をリアルタイムで送れる。

ノルウェーの企業が開発したPD-100から、さらに一回り小型化した機体のようだ。

http://www.proxdynamics.com/products/pd_100_prs/

こちらは全長20cm。

コメント欄では価格についての議論が熱い。160セットで2000万ポンドなら、単純な割り算で1機あたり12万5000ポンドだが、PD-100という原型があったとしても、そこから全長を半分にするまで小型化しているわけだし、開発費も相応にかかってそうではある。

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3銃身のリボルバーの記事

http://www.gizmag.com/triple-barrel-revolver-surfaces/22523/

から情報元の骨董ピストルのところに行ったら数時間経っていた。

http://www.horstheld.com/default.htm

19世紀頃までの試行錯誤の歴史はたいへん興味深いものであるが、日本では現物見れるとこほとんど無いよな。

RAFのプーマHC2引き渡しと訓練について/チヌークHC4がアフガニスタン向けの運用訓練を開始/英陸軍のアパッチAH1改修について

RAFのプーマHC2引き渡しと訓練について

http://www.flightglobal.com/news/articles/raf-to-launch-puma-hc2-training-in-mid-2013-379134/

英MoDは、ユーロコプターで改修された3機のプーマHc2を9月に受領した。これは2009年の契約の最初の分に当たる。ユーロコプターの社内検査が7月6日に完了したあと2ヶ月経っている。
RAFはQinetiQ運営下のボスコムダウンにてこれを受領し、飛行試験を実施中。

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-mod-receives-first-upgraded-puma-hc2-376448/

HC1からHC2へのアップグレード改修は全部で24機、金額3億ポンドで、エンジン、アビオニクスとコクピットの変更と2025年までの運用寿命延長が含まれる。
あと21機の改修が残っているが、4機をフランス、残りをルーマニアの子会社ブラショフにて実施する。

MoDの発表では、HC2の訓練は2013年中頃からスタートする予定で、2年かけて運用を拡大する計画。ただしスケジュールは若干遅れ気味だそうだ。

プーマHC2は、チヌークHC4/HC6とともにRAFの次世代輸送ヘリコプターとして位置付けられる。AW101もあったが、これは海軍へ移管される事となった。

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チヌークHC4がアフガニスタン向けの運用訓練を開始

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-readies-upgraded-chinooks-for-afghanistan-debut-379136/

英MoD(DE&S)によると、RAFのチヌークHC4が、アフガニスタン向けの運用訓練を米国で開始したとのこと。現状のHC4は、6月にIOCを獲得した後、7機が引き渡され、12機が改修中とされている。

これらRAFのHC4は、HC2/2Aの46機からアップグレード改修される予定で、新造のHC6も14機を発注した。改修計画はジュリアスと呼ばれている。改修内容はエンジンの強化、アビオニクスとコクピット改修など。

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英陸軍のアパッチAH1改修について

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-weighing-options-for-apache-attack-helicopter-upgrade-379558/

英陸軍航空隊AACはアパッチAH1を67機導入し、2004年10月にIOC獲得を宣言したが、AH1の仕様は米陸軍のAH-64D Block I相当だった。米陸軍のAH-64Dは今後Block III(ディジグネーションはAH-64Eに変わるみたい)仕様に切り替えられ、Block Iは2017年で第一線から離れる事が決まっている。つまりBlock I仕様のままでは運用・維持が困難になっていくことが予想される。
同様の話はイスラエルのAH-64にもあった。

これに対し、AACとしてはcapability sustainment programme (AH CSP)によって2040年までの運用を目指すとしており、アップグレード改修内容の技術的詳細は詰めの段階に入っている。最小限の改修に留めたい意向で、2014年初頭に仕様を確定、予算も同年中に判断する予定とされる。
一応、代替の攻撃ヘリコプターを導入する選択肢も残されているようだが、予算的に可能なのかはよくわからない。E型の導入を指してるのかも。直近でチヌークの時、改修+新造機発注という形になった前例はある。

アパッチの実働部隊は、SDSRの結果、5個SQから4個SQ(2個連隊に分割)への削減が決まり、2014年末のアフガニスタンからの撤退後は減勢とする姿勢がはっきりしている。アフガニスタンにおけるAH1の戦歴は、2006年5月のヘリック作戦以来で、飛行時間は累計10万時間に上る。2011年にはHMSオーシャンからリビアでの作戦にも参加した。

CSPには、次期ARHのリンクス・ワイルドキャットとの連携による、アフガニスタン戦以降の戦術コンセプト開発も含まれており、AHの役割は更に広範なものになるとも言われている。

なお公式なアパッチAH1の現有機数は、2008年に着陸失敗した機体が退役したため、1機減って66機。

A330MRTTの給油ブーム脱落事故について/A400Mの飛行試験で、トランザールC160との空中給油試験が進行中/ラファールのMereor BVRAAM分離試験/BAEシステムズとEADSの合併交渉断念およびその背景/BAEシステムズの海外事業

A330MRTTの給油ブーム脱落事故について

http://www.flightglobal.com/news/articles/airbus-military-explains-cause-of-a330-boom-detachment-377845/

9月10日、UAE向けの3機のA330MRTTのうち最初の機体が、顧客受入前飛行中に給油ブームを落下させるインシデントが発生した。場所はスペイン領空内で、高度27000ftを飛行中に分離、落下した。幸運にも人的被害を含め、地上には被害らしい被害が生じなかったとされている。

この機体の給油ブームには、顧客要望による独自の仕様として、予備のブーム巻き上げ用ホイストが設置されており、これがインシデントの原因になったと結論されている。また通常の使用条件では起こり得ないとし、既に問題点は修正されたとのこと。

インシデント発生直後から、他のA330MRTTでもブーム操作に制限が加えられている事態となっていたが、スペインの耐空性証明当局INTAは調査結果と対策を確認した後、これを解除した。前述のように、現用のA330MRTT、英国、オーストラリア、サウジアラビアの機体には、もともと予備のホイストは設置されていない。

ということで、深刻な影響を受けるのはUAE向けの分のみということになった。5月時点では9月と12月に1機ずつの納入を予定されていたが、この日程は変更される方向で協議中。
UAE向けは、今年前半の段階でF-16へのブームからの給油、ミラージュ2000へのドローグからの給油についてOT&Eが完了していた。本当に引き渡し直前の出来事だったのね。

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A400Mの飛行試験で、トランザールC160との空中給油試験が進行中

http://www.flightglobal.com/news/articles/a400m-advances-refuelling-trials-with-french-transall-377753/

エアバスミリタリーは、A400Mの飛行試験のうち、フランス空軍のトランザールC160からの給油試験を実施中となっている。写真は、12分間のドライコンタクトを行った際のもの。まだ燃料を流すところまで行っていない。

受油側はグリズリー1/F-WWMTで、実際の給油を含む試験は来年になる予定。

A400Mの空中給油に関する飛行試験は、以前RAFのVC-10との組み合わせでも実施された。ただしVC-10は2012年度いっぱい、2013年3月31日をもって退役することが決まっているので、RAF向けは間に合わずという結果に。C160もA400M配備とともに退役の見通し。

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ラファールのMereor BVRAAM分離試験

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-rafale-clears-meteor-safe-separation-test-377798/

フランスのDGAは、CEV飛行試験センターにおいて、ラファールからのMeteor BVRAAM分離試験を2度実施している。発表によると、Cazaux空軍基地を中心に10月4日と10日に試験が行われた。機体は複座のB301号機だった。

フランスでは2010年12月、MBDAに200発を発注した。空軍と海軍のラファールに装備する計画で、2018年からの配備を計画している。
ユーロファイター、グリペンでも運用可能となるから、あとはF-35へのインテグレーションが実現すれば、2020年代まで西欧の標準AAMの地位を確固たるものにできるだろう。

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BAEシステムズとEADSの合併交渉断念およびその背景

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-bae-eads-merger-a-test-of-national-resolve-to-change-377578/

9月12日から、欧州の2大軍需メーカーの合併交渉として注目を集めたこの一件であるが、10月10日、双方の株主多数の反対により、断念との公式発表で一旦幕となった。
どちらも株式の多くは政府機関が保有する格好なので、単純な民間会社の合併とは様相が異なった。が、米国の防衛産業への影響どうこうという以前にあっさり頓挫したのは、意外と言えば意外。当事者がどう予想していたかはともかく、それだけ抵抗が強かったということになるか。

ランド研究所によると、どのような見地から分析しても欧州の固定翼軍用機(特に戦闘機)製造設備は過剰であるとのことで、3機種が存在する状態は、仮に防衛予算が上昇傾向だったとしても効率が悪い。現実には、予算は急激に削減されるか横ばいであるために発注数は削られ、次世代(早ければ2030年代と考えられる)の概念研究に影響が及ぶのは避けられない状況となっている。

この部分に補足すると、2020年代あたりまでは無人機と現用機の併用として、問題はその次、第6世代相当の話となるが、欧州ではまだあまり話が出てこない。今のうちに再編して、地域レベルで合理化・一本化するのが得策と言いたいみたい。各国とも次世代戦闘機に着手する初期段階なので、タイミングとしても悪くない。でもそう考えると、合併だけが唯一の選択肢、というわけでもなさそう。どっちかというと外交や経済政策の問題が大きい。

この設備過剰という見解は、欧州だけでなく米国でも支持されていたようだ。当初はBAEシステムズとEADSの合併に対し、米政府が反対するのではとも言われたものの、そこまで行くはるか以前、英独仏各国政府間の話し合いの段階で終了してしまったので、本当のところはよくわからない。
BAEシステムズは合併という手段で米国市場へ進出し、過去10年で米国向けの取引が収益の半分を占めるまでになった。これとEADSの合併ということになれば、米国内における競争力が強まることが予想されたわけであるが、業界はともかくとして、国防総省当局は、実はそれを望んでいた節もあるという。国防省内で、米国のメーカーがコスト意識を強めることが必要、と一般的に考えられているとしたら、その可能性も確かに高い。KC-Xの時も、一度はEADSの提案したKC-45を選定したわけだし、国内政治が関わらなければ展開は変わる。
その国内政治にしても、米国内の雇用が確保されれば切り崩す余地が生じるので、BAEシステムズの築いた米国部門が効いてくる。かもしれない。

ともあれ英国-欧州側の政治的なハードルが高かったのは間違いの無いところだが、最終的に引導を渡す形になったのは、両社に直接関係する投資グループの対立だった。BAEシステムズの筆頭株主(13.3%)であるInvescoは、公式発表において、合併はBAEシステムズの米国部門にとって損失であろうと述べている。筆頭株主が反対する合併交渉って…
なお、欧州におけるこの種の合併の成功例としては、MBDAのケースがある。

いろいろ書いてあるけど、次世代の前に何とかしたいというのが各メーカーの本音で、とにかく共倒れでみんな失業、という事態は避けたい。共倒れなら、目先の合理化で雇用が脅かされるよりも、はるかに重大な結果となる。

民間部門と重なって成長できるところ(大型機と回転翼機)は集約が進んだ。対して軍用機以外の技術には直接繋がり難い戦闘機は、ハードルが高いということでいいのかな。
無人機はよくわからん。民間転用が本格的になれば、ある程度は勝手に集約されていきそうだが、機体規模と性質によっては戦闘機並のインフラが必要になるし。
あとは各国の政策の問題になるだろう。今度こそ共同開発で何とか…は、無理か?

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BAEシステムズの海外事業

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-bae-targets-international-business-after-dropping-merger-plans-377557/

FGなので、英国側の話に詳しい。
BAEシステムズは、米国への進出を果たしはしたものの、今後は予断を許さない状況になる。例の10年で米国防予算5000億ドル一律カットの措置が現実になると、影響は免れない。一方、地元の英国防予算は、2010年のSDSR以来、横ばいで推移していて成長は望み薄。
必然的に海外へ目を向けることとなる。

最近の大成功事例が、8月の韓国のF-16アビオニクスアップグレードで、約130機、10億ドルの契約で元請になった。この種の事業も将来性が見込まれる分野であるが、長期的な協力関係も同様に重要視している。古くからの顧客で、いわばホームとも言えるのがサウジアラビア。
ここのタイフーン×72機の輸出が最大のもので、今年は練習機での契約が続いた。ホーク165×22機とPC-21×55機を含む金額は、16億英ポンドに達する。設備の方でも整備とアップグレードを実施可能な施設の建設について交渉中。タイフーンについての契約金額は明らかでないものの、70億英ポンドを超えるという。

が、タイフーンに関しては今のところ、それ以上の輸出には繋がっていない。オマーン向け12機(トランシェ3になる)の交渉は、現在進行中となっている。ラファールを差し戻して再交渉に至ったUAEには触れられていないが、やはり当て馬扱いなのか。

英国内でニムロッド早期退役の余震が続く/英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集/RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする/RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

英国内でニムロッド早期退役の余震が続く

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-uk-left-exposed-by-nimrod-cancellation-report-says-376998/

SDSRの結果、ニムロッドMR.2は2010年3月に退役。MRA.4のキャンセルとともに、RAFの長距離海洋哨戒能力は、事実上消滅した。ことにMRA.4に関しては、開発が長期に及び、40億英ポンドという巨費を投じて、翌年には戦力化というところまで進んだ状態からのキャンセルだったため、様々な論議を呼んだ。
後に、あるMoDの官僚は、哨戒機に関する部分は、SDSRの判断の中でも最も難しい決定だったと述べたそうだが、この決定を巡っては今も議論が続いている。

9月19日、英国の下院軍事委員会は、長距離哨戒能力の欠如したままでやっていけるかどうかを評価し、Future Maritime Surveillance reportという文書にまとめた。この中には哨戒能力を再整備する選択肢の一つとして、MR.2の現役復帰に関する2011年の研究評価も織り込まれていたという。

英政府の公式見解としては、短~中期的にはASWおよびMPAの不在によるリスクは、許容できる範囲であり、それらが必要とされるような(軍事的な)圧力も受けていないというものだった。
下院軍事委員会は、MoDの主張を引用する形で、この結論に対して疑問を呈した。リスクが突発的に増大した場合の対応や、哨戒能力の欠如あるいは不足によって、中期的に状況が悪化する可能性を取り上げている。英国が横腹を晒すことにならないよう、より注意深く継続的にレビューを続けるべきであるとした。

2011年の研究においては、UAV、監視衛星、C295 MPAもしくはP-8Aのような有人機による代替手段を検討していたが、これらはSDSRに含まれず、次の10年における調達計画に入っていない。ということで、2015年の次のSDSRまで棚上げ、ということになっているのが現状。
最終的には哨戒機は不要としながら、それらの欠如に対するリスクも認めているのは具合が悪いというのが結論で、SDSRを進めた連立政権にとっては、あまりうれしくない内容となっている。

この他に出てるのが、ニムロッドの搭乗員の技量維持に関するコストとその後の代替手段の話。
技量維持の計画は、Speedcornと呼ばれており、2012年にはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国へ、合計33名の人員を派遣した。これにかかるコストは年間320万英ポンドで、同計画では2019年まで実施することが定められている。しかしこれが役に立つ(ニムロッドを現役復帰させる)可能性があるのは、現実的にはあと5年程度のため、委員会とエアバスミリタリーは、その間に次のMPAを導入すべきであるとの勧告を出している。

一口に代替手段と言ってもニムロッドに匹敵するような多目的プラットフォームと、単なるMPAとでは意味合いが異なり、前者であれば簡単には準備できない(事実上、替えが効かないと言いたいっぽい)が、後者であれば出来合の機体で間に合わせることができる、と述べたのは、統合/航空作戦能力/トランスフォーメーション担当の空軍少将。

有人のMPAとしては、まずP-8Aが挙げられるが、これは1機1億7000万ドルほどで非常に高価である。この金額はC295 MPA、4機分に相当する(もちろん能力は劣るが現実的)。
これ以外には、センチネルR.1Aの転用、RAFの保有するA400Mもしくはボイジャーにセンサを追加する案、またサーブ2000MPAソードフィッシュなど。いずれにせよ、次のSDSRでは検討する必要がある。

最後に登場しているのはスコットランド国民党のアンガス・ロバートソン議員。ニムロッドが長らく活動拠点としてきたRAFキンロスに関わりの深い人物で、MRA.4の退役について強く批判。アドミラル・クズネツォフが領海付近を航行した一件を取り上げ、英国政府がこの(哨戒機不在の)状況を放置するなら、海洋国家として横腹を晒し続けるのは認められぬ故スコットランド政府が防衛政策としてやるべきだとまで言っている。
実際に可能かどうかは知らないが、制度上は一応アリみたい?
ロシアでいくつかの市が原潜のスポンサーになった話を思い出した。

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英国MoDがケニアでのCasevac活動を支援する民間企業を募集

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-mod-seeks-casevac-service-provider-for-kenyan-exercises-377310/

10月4日、英国MoDはケニア国内でのcasualty evacuation (Casevac)活動を支援する民間企業の募集について説明を行った。これはNanyuki基地に駐留する英陸軍訓練部隊、British Army Training Unit in Kenya (BATUK)を支援するための航空機と人員を投入するためのもので、予算は25ヶ月間で900万英ポンドを上限としている。

Casevacは読んで字のごとく、負傷者を迅速に搬送するための活動を指しており、緊急事態に際しては、10分から4時間で対応することが求められる。機体の要求としては、少なくともストレッチャー1名分と医療担当1名を乗せて、300kmほど輸送でき、活動する地域は標高8200ft以下、天候と時刻を問わず、飛行場のない不整地でも離着陸できることとある。また2つの分離した演習地域を同時にカバーできることも求められる。

Nanyuki基地では、1年間に6回程度、英陸軍の大規模な演習が行われており、駐留する人員は300~1700名と変動がある。1回の演習は概ね6週間続く。これらの演習は、アフガニスタンへの派遣に備えた内容となっている。写真はケニアでのプーマHC.1。

Casevac以外の副次的な任務としては、実弾演習後の後始末や写真撮影、演習そのものの支援といったものが含まれ、また、すべての活動はケニアの民間航空当局の定めた枠内で行われることになっている

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RAFがMQ-9操縦要員の訓練状況を明らかにする

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-reveals-pilot-levels-on-reaper-uav-unit-377263/

英国議会においてMQ-9の配備状況に関する質問が出て、これに回答する形で人員数などが明らかにされている。これによるとRAFでは31名がMQ-9の操縦資格を有しており、2012年10月から2012年9月までに16名が訓練を受けるという。

RAFのMQ-9は39Aqnに所属し、カンダハルに展開中。これらは2007年10月以来、米国のネバダ州クリーチAFBからRAFからの派遣人員によって遠隔操作されている。1機の操作には、パイロット、センサオペレータ、ミッションコーディネータ兼映像解析要員の3名がつく。この他に機体を取り扱うごく少数が現地のカンダハルに展開している。

今後は、リンカンシャーのRAFウォディントンに新たな地上管制局を設置し、機体を10機まで増強する計画がある。

活動状況については、6月19日までの3年間で176回の攻撃を実施した。標準的な装備は500ポンドのぺイヴウェイII×2とAGM-114×4。
偵察任務では、1週間あたり平均250時間ほどの映像を伝送してくるとのこと。

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RAF向けのRC-135W Airseeker改修状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/uks-first-airseeker-on-track-for-2013-delivery-says-mod-376813/

微妙にニムロッド退役と関連。
RAFではSIGINT機として、51SqnがニムロッドR.1を運用していたが、これは2011年をもって退役となった。その後継機として選ばれたのが、USAFで余剰となったKC-135を改修、RC-135Wリベットジョイント相当仕様にするという案で、L-3コミュニケーションズが受注して3機の改修作業が進行中となっている。
改修作業はUSAF側でも支援し、テキサス州グリーンヴィルにて2011年1月からスタートした。

耐用年数を延ばすために機体外皮を交換したほか、給油ブームを撤去し、逆に空中給油を受けられるようにするためのリセクタプルを追加する。またグラスコクピット化と、後部客席部に機器ラック追加、電線の全交換などが実施される。
2013年早々から地上試験、飛行試験が開始予定で、引き渡しは同年内を目指す。

L-3コミュニケーションズってNZ向けのP-3でやらかしてたが大丈夫か。

RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか/タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ/オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み/RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

基本的に遡らないようにしてるのだけども、メモだけして貼ってなかった記事が出てきたので。

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RAFのトーネードGR.4退役スケジュールほか

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-tornado-fleet-to-retire-in-2019-says-bae-375014/

8月2日付。

BAEシステムズの上半期中間発表において、RAFのトーネードGR.4が2019年3月に退役するとの記述があった。これはMoDの決定事項として確認済みのようだ。

現用のトーネードGR.4は、124機が存在する(FlightGlobal調べ)。これらの機体はRAFロシーマスとRAFマーハムにそれぞれ配置されており、アフガニスタンのカンダハルにも分遣隊が送られている。

F-35Bの配備について、最終的な決定には至っていないものの、現在の予定では2018年からRAFマーハムで運用がスタートすることになっている。これによってハリアー以来のS/VTOL攻撃機部隊が復活し、GR.4の一部と交代できるようになる見込み。

これとは別にサウジアラビア向けトーネードIDSのアップグレード、Tornado Sustainment Programmeにおける73機の改修が、2012年前半の12機の引渡しをもって一応完了している。今後はインテグレーションされた新兵器の引渡しが活発になるとのこと。

2007年の改修試作の時期の記事。

http://www.flightglobal.com/news/articles/saudi-arabia-reveals-progress-of-tornado-upgrade-216775/

ストームシャドウやブリムストン、ダモクレス・ターゲティングポッドなどが使用可能になる。

一方、ドイツではトーネードIDSを2025年まで運用する計画としている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-german-tornado-upgrade-on-track-as-laser-jdam-tests-near-376386/

F-4Fなどもそうだったが、ドイツは物持ちが良い。ドイツ軍は1990年代後半に至るまで海外展開しなかったから、エアフレームも長持ちしている、というのも理由の一つだろう。
RAFの機体などは、多国籍軍の中核として長年酷使されてきた。ハリアー退役後を支えたのもトーネードだったわけだし。

ASSTA 3.0仕様の近代化改修機は、6月下旬に3機が引渡し済み。Büchel空軍基地のJBG33に配備されている。写真の機体はそのうちの1機ということらしい。
ASSTAでの改修計画は、2018年までに85機予定となっており、1ヶ月に1機のペースで進行している。
ASSTA 3.1仕様は2015年以降で、MIDSの完全なインテグレーションのほかに、後席の表示装置を交換、チャフ/フレアディスペンサの一新するなどの予定がある。

GBU-54 レーザJDAM(LJDAM、500ポンド)のインテグレーションはOT&Eの段階にあり、10月からスウェーデンの射爆場で試験を実施予定。これには4機が使用され、実弾5発を用いることになっている。

以前書いたのと重複するが、ASSTAの内容ではMIDS/Link 16データリンクへの対応が最も大きなもので、その他に機体前部へ追加したサーブ製のRWRや、デジタルデータ/ビデオレコーダ、通信機と、タイフーンに採用されたのと同系のデジタルムービングマップ等が追加・更新される。

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タイフーン トランシェ3A仕様の1機目が最終組立へ

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-first-tranche-3-eurofighter-takes-shape-375776/

8月24日付。

トランシェ3A仕様の1機目はRAF向けの、機体番号BS116となる。8月下旬にSamlesbury工場で機体構造が作られ、ウォートン工場での最終組立に移行する。
BAEシステムズによると、トランシェ3Aの胴体部品には、350以上の設計変更が加えられているとのこと。AESA搭載に伴って電力供給量を増加し、冷却システムを強化したのが大きく影響した。

2009年に発注されたトランシェ3Aは、RAFの導入予定数が40機で、独31機、伊21機、西20機まで合計すると、112機となる。

また、9月下旬にはアレニアが製造する左主翼と後部胴体が出荷されている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-alenia-delivers-sections-for-first-tranche-3-eurofighter-376899/

この機体、BS116の初飛行は2013年に予定されている。

次の段階はトランシェ3Bとなるが、こちらはまだ未確定という状態。2013年12月までに関係各国が合意してゴーサインが出なければ、2017年後半で生産完了となる。これについては、製造ペースを落として期限を先送りにした経緯がある。

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オマーン、UAE、インドへのタイフーン売り込み

http://www.flightglobal.com/news/articles/bae-edges-towards-eurofighter-contract-with-oman-375018/

これもBAEシステムズの上半期の中間報告から。

オマーンでは2012年1月に戦闘機入札のRfQ(request for quotation、要するに見積依頼)を発出、BAEシステムズはタイフーン×12機の提案で応じており、今年後半にかけての契約を目指し、交渉を行っているという。BAEシステムズとしては、2008年中頃に初めてオマーンを潜在顧客として挙げていた。

UAE向けには、タイフーンはラファール選定の当て馬扱い風で、あまり情報が出ていない。F-16E/Fの追加発注という線も似たような扱いか?
インドMMRCA向けもまだ諦めてない模様だが、これ以上の逆転はさすがに…あるのかなあ?でもインドだし。

このほか、タイフーンの製造状況についても触れられている。2012年前半に、EADSとBAEシステムズから各国に引き渡された機体は21機で、トランシェ2仕様としては合わせて144機に達した。発注数236機の半分は超している勘定。

ILAの時のユーロファイター首脳へのインタビューもついでに。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurofighter-chief-casolini-outlines-priorities-376246/

ここではMMRCAについて、まだフランスとインドの間で何の契約も交わされてないことを強調しており、2月のエアロインディアに出展する予定も明らかにした。

現在進行中の商談は、上で挙がったオマーンのほか、ブルガリア、クウェート、マレーシア、カタール、ルーマニア、韓国、UAEといった国々が挙げられている。

最後の方では、今後20年間の次世代戦闘機市場予測についても触れられている。ワールドワイドでは800機規模の市場と予想しており、ユーロファイターとしてのシェアは25%程度を狙っていく。

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RAF 1Sqnがタイフーン装備で再編成される

http://www.flightglobal.com/news/articles/rafs-1-sqn-reforms-with-eurofighter-typhoon-376556/

RAFで最も長い歴史を持つ実戦部隊、1Sqnは1912年に編成された。その後、2010年にハリアーGR.9の早期退役に伴って一時解隊となるも、今年9月15日、タイフーン装備の第4の前線部隊として再編成を終えた。RAFルーカーズにて、6Sqnとともに配備されることになる。

RAFルーカーズの2個Sqnは、いずれも北方空域のQRA任務を主体とするが、マルチロール任務を発達させる役割も持つ。

なお、残りの2個Sqnは、RAFコニングスビーの3Sqnと11Sqnで、ここではタイフーンに機種転換中の29Sqn、評価部隊の17Sqnも所属しており、タイフーンの大所帯となっている。

29Sqnが機種転換を完了した時点で、タイフーン装備の前線部隊は5個Sqn体制となり、編成が完結する。

Type 26 Global Combat Shipの概要が公式発表/ACTUV フェーズ2でDARPAが一社と契約/CAAT水陸両用車

Type 26 Global Combat Shipの概要が公式発表

http://www.royalnavy.mod.uk/News-and-Events/Latest-News/2012/August/20/120820-Future-Type-26

http://www.mod.uk/DefenceInternet/DefenceNews/EquipmentAndLogistics/DesignUnveiledOfRoyalNavysFutureWarships.htm

英海軍の計画としては、2020年以降のType22/23の後継艦種ということになっているフネ。英国防省とBAEシステムズが共同で検討を進めていた。
今度のコンセプト図では、Type45の小型版の様な初期案よりも更に小排水量の中央船楼型となっており、米国のLCSに影響を受けた感じになった。ただしあれほどの高速艦ではなく、速度は28kt超、航続距離11000kmとされる(CODOGかな?)。モジュラー化設計も取り入れられるものの、任務に応じたモジュール換装まではできなそうだ。中身のコンセプト的にはMEKOに近いのかもしれない。
基準排水量は、当初案の6850tonから5400tonになり、全長は141mから148mになった。この案自体は、SDSRからコスト削減圧力が強まった2010年5月が初出のようだ。
この時、1隻あたり5億ポンドから、2億5千万~3億5千万ポンドに下げなければならなかったというから、えらい安物にされた感は否めず。

以前のは、どことなくType 23にも似ていたと思う。

http://www.defenseindustrydaily.com/Britains-Future-Frigates-06268/

建造開始まではまだ時間があり(造船所の方でも揉めてるみたい)、詳細仕様はこれから詰めるとのこと。特殊作戦や無人兵器運用への対応、シーセプターSAM、Type 23から引き継ぐ曳航ソナー、リンクスワイルドキャットとマーリンの搭載というあたりまでは確定としても、砲は中口径となってるから、BAEシステムズの新型127mm砲から76mm砲とかに変更されそう。

現在のType42とType22/23の世代は、防空艦の開発に失敗が続いて汎用艦との区切りがおかしくなってたので、今後のType45とType26である程度まとめられることにはなる。
ただし、これらの主力艦艇が十分な数だけ揃えられるかはまだ不透明だ。無理に下げても造ってみたら余計な出費が必要になっちゃったとかよくある話だし、既にType45はコスト高騰で隻数減らされてる。

詳しくは来月か10の《再来月》世艦で。

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ACTUV フェーズ2でDARPAが一社と契約

http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2012/08/16.aspx

http://www.gizmag.com/robot-sub-hunter/23759/

Anti-Submarine Warfare (ASW) Continuous Trail Unmanned Vessel (ACTUV) は、対潜作戦を実施可能なUSVとして計画されている。2011年4月に無料ゲームを配布して、そのアルゴリズムに関するデータ収集を行ったのが話題になった。
最初の段階にあたるフェーズ1には大手を含む数社が関係していたようだが、このほどDARPAが契約を締結したのはそのうちの1社、Science Applications International Corporation (SAIC) という企業。契約はフェーズ2から4までに該当し、設計から建造、デモンストレーションまでが含まれる。海上でのトライアルは2015年中頃を予定。

ACTUVの運用構想について、DARPAでは長距離(数千km単位)かつ長期間(数ヶ月単位)に及ぶディーゼル潜水艦の探知と追尾を第一に挙げている。
海事法に沿ってというから、必然的に相手国沿岸から遠く離れた距離から浅海域のディーゼル潜水艦を追跡する形になると思われる。浅海域でのASWについては、重視され始めたのが比較的最近だし、フネのハードウェアとしても、ある程度の速度と高度な自律制御を必要とするので、ハードルは高い。
それでもDARPAの見積では建造及び運用コストは普通に対潜艦艇を整備する金額の1/10程度で済むとしている。これは無人であるために、スタビライザの類や予備浮力を必要としないこと、さらに有人では危険と見なされる状況にも対応可能なことも加味されてるようだ。

あまりあてにならない想像図はアウトリガの張り出した3胴船となっており、底面に独立したソナーのポッドを有している。
寸法は不明だが、トップの航海用レーダーの長さからすると、少なくとも全長20~30mぐらいはありそうな感じ。いやもっとでかいか?

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CAAT水陸両用車

http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2012/06/26.aspx

http://www.gizmag.com/caat-disaster-relief-darpa/23828/

DARPAが開発中のCaptive Air Amphibious Transporter (CAAT)試作原型の映像が出ている。これはTactically Expandable Maritime Platform (TEMP)という軍事目的っぽい計画の一部に含まれるものではあるが、一応、(特に空輸と陸路、港湾すら使用できない状況でも)海上の船から陸への迅速な展開を可能とする人道支援目的のものということになっている。そのため、モジュラー化設計を取り入れ、負傷者などの輸送から物資の陸揚げなど多様なミッションに対応できる上、自航可能だからクレーンつきの普通のコンテナ船からも運用可能となる。
もちろん、そのような性能が水陸両用作戦においても有用であることは言うまでもない。

この試作車輌は20%スケールなのだが、全長は10m以上、重さは4tonあり、下手な重機よりごつい。足回りはキャタピラにフロートを取り付けたような構造となっており、水上では浮力を確保しながら水をかくことができる。映像を見たところ接地圧はかなり低く、旧陸軍の湿地車の末裔のように見えないこともない。喫水線が低く見えるものの、シュノーケルを備えているというから、波をかぶる程度なら支障なく行動できるだろう。

実用車輌となると全長50m超、重さ450tonとなり、ペイロードは数百ton単位。これ自体に貨物を積載することもできるし、状況が許せば筏の曳き船としても使う事ができる。
こうなるとLCACよりはるかに大きく、さすがに小回り利かなくないかと思わないでもないが、浮き桟橋がそのまま自走してくるようなもんだと思えば使い勝手は…いいのかなあ?

 

フランスはウォッチキーパーUAVの評価を継続する/英国防省が回転翼UAVのデモンストレータを計画/レーザによる電力供給でStalker SUASの滞空時間を飛躍的に延長

フランスはウォッチキーパーUAVの評価を継続する

http://www.flightglobal.com/news/articles/france-committed-to-watchkeeper-uav-trials-le-drian-says-374719/

英仏の軍事面での協力が具体化したのは、フランス大統領選前のこととあって、ホランド大統領の新政権下で進展が見られるかどうか、懐疑的な声もあった。
相互防衛条約に両国首脳(当時はサルコジ大統領)が署名したのは今年初めのことで、それには無人機の開発や運用を共同で行うといった内容も含まれていた。

これに答える形で7月25日、両国の国防長官が会談した後、ウォッチキーパーに関しては協力を続ける意向が示されている。ウォッチキーパー戦術UAV(WK450)は、エルビットのヘルメス450をベースにしているが、計画主体はタレス。
具体的には、2012年から2013年にかけての運用評価と試験にフランスが参加するとのことで、2月の発表では2013年はフランス国内でも試験を実施する、という計画が明らかにされていた。評価の結果次第では2013年後半にも契約することになる。

機体の供給はエルビットとタレスのJV、UTacSが担当となっており、2011年12月から2012年1月にかけて、機体と地上管制局を含む最初のバッチを英国に引き渡した。しかし型式証明が、軍民ともなかなか下りず、アフガニスタンへの展開が延期されている。
英国での試験と評価は、QinetiQが運営するボスコムダウンのテストセンターで行われ、第32砲兵連隊が担当。自動離着陸、タレス製のバイパーSAR/GMTIペイロードなどを評価し、2つの地上管制局間での飛行中のハンドオーバーなどが行われる。

http://webarchive.nationalarchives.gov.uk/+/http://www.army.mod.uk/artillery/units/32_regt_ra/default.aspx

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英国防省が回転翼UAVのデモンストレータを計画

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-to-trial-rotary-wing-uas-for-navy-applications-374665/

英国防省は、2020年代以降の配備を前提とした海軍向けの回転翼UAV開発についての入札を行うと発表。まずは2015年3月までにデモンストレータ、capability concept demonstrator (CCD)を完成させるとの予定を明らかにした。
7月24日の契約に付随する説明によると、このUAVは多機能rotary-wing unmanned air system (RWUAS) と呼ばれており、機雷戦、水路測量と気象観測、攻撃的水上戦闘、周辺状況認識といった項目が重点とされている。

CCDの段階においては、デモンストレーションと分析が行われるが、これには実機の運用デモンストレーションだけでなく、シミュレーションと組み合わせた合成環境下での実証などの一式も含まれている。

英国防省で直接担当するのはDefence Equipment & Support (DE&S) organisation。求められているのは機体と地上管制局、通信リンク等であり、条件としては、予定外の整備などで計画が遅延する可能性が少ない(つまり信頼性が高く、ある程度実証が進められた)システム、という注文が付けられている。
計画のプロセス自体についても、RWUASの戦力化を前提としたラインを守るよう、プラットフォームインテグレーションの問題を評価すべしと随分慎重な文言だ。

入札に対するメーカー提案は、1ヶ月後の8月24日に締切られる。10月12日に候補を発表し、メーカー側は11月末までに回答、契約締結は2013年1月25日予定。金額は450万英ポンドとの予想。

DE&Sは以前、この前段にあたる調査(scoping study = 検討範囲を絞り込むこと)を指示しており、これを受けたDefence Science and Technology Laboratory (Dstl)は、海洋向けの回転翼UAVを小型(100~1000kg)と中型(1000~3000kg)に分類した。

RWUASへのメーカー側の対応では2011年、QinetiQとノースロップグラマンが共同でユーロコプター(SA342)・ガゼルを無人機化する案を明らかにしている。中身はMQ-8Bファイアスカウトから流用するため、開発リスクは比較的低い。MQ-8C Fire-Xの兄弟機みたいな関係になるはず。

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レーザによる電力供給でStalker SUASの滞空時間を飛躍的に延長

http://www.gizmag.com/laser-powered-stalker-uas/23283/

http://lasermotive.com/

昨年DARPAは、LMの小型UAS(以下Small UAS=SUAS)、Stalkerに燃料電池(SOFC)を搭載する実験を行った。この時は通常の滞空時間(2時間程度)から4倍の8時間滞空が可能になるという成果を上げている。
今回の実験は、屋内の風洞施設で行われた。地上のレーザ発振器と機体側の光電池を組み合わせた電力供給系を適用、外部からのエネルギー供給によって、滞空時間は標準型に対して2400%、48時間を達成したとのこと。それも当初から決められた時間で実験を切り上げただけで、理論上は半永久的に飛行可能であるとしている。
このシステムはLaserMotiveという企業の技術に基づくもので、飛行中に充電しながら長時間滞空するといった運用が可能となるという。実際の屋外環境においては大気中の塵や乱流の影響によるパワーロスが避けられないものの、できるだけ垂直に照射すると、損失は小さくなる。その理屈でいくと、もっと巨大なシステムなら衛星軌道はおろか、月にまでエネルギーを伝達可能というのがこの企業の言い分。
つまりサテライトキャノンまで後一歩ということだ。

インドが中型輸送機の調達を決定/LMがイラク向けF-16C/Dの供給で契約/LMはF-16のアップグレードについて純正オプションを強くお奨めする/F-35 BK-1の動向

インドが中型輸送機の調達を決定

http://www.flightglobal.com/news/articles/india-sets-stage-for-24bn-transport-aircraft-contest-374661/

インド政府の防衛調達部門であるDACは7月23日、空軍のHAL 748の後継機となる中型輸送機の調達を承認した。機数は56機、金額24億ドル。RfP時期は未定だが、2012年末までに発出されるというのが業界筋の見方。

3月末のDefexpoで言われていたもので、2010年のRfIに続く動きとなる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/alenia-airbus-military-brace-for-india-transport-duel-370209/

Defexpoでは、エアバスミリタリーがC295、アレニアがC-27Jの模型を展示している。
この時の情報では、契約から24ヶ月以内に最初の機体を引渡し、次の24ヶ月で15機、それから1年置いてインドでの現地生産がスタートし、年間8機ペースで40機、といった計画が伝えられた。また、HAL以外のメーカーが担当することも決まっているようだ。インドの航空産業の裾野が広がりつつあるから、というのが理由のようだが、HALが何でもかんでもやっててさすがに追いつかなくなったのかという気もする。

C295はセールスの好調さをアピールする一方、C-27Jは既にインドが採用したC-130Jとの共通性の高さを売りにしている。

このほか、C-17×10機は米国に次ぐ機数になるし、An-32×105機のアップグレード、更にはMTAも控えている。

なおHAL 748は、一部の機体で貨物室ドアなどの変更があるものの、基本はホーカーシドレーHS748のインド国産化版で、更に遡ればアヴロ748に辿りつく。1960年代、DC-3の次ぐらいの世代にあたり、RRダートエンジン双発はYS-11と同じだ。
1980年代の終わり頃、BAeの時代にATPという発達型がデビューするも、ダッシュ8、ATR42/72という同時代のライバルには及ばなかった。

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LMがイラク向けF-16C/Dの供給で契約

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-awarded-contract-to-supply-iraq-with-18-f-16s-374750/

イラク向けのFMS契約は、F-16C/D Block52×18機(C型×12機、D型×6機)と各種機材などで、金額は1億9900万ドルとなっている。昨年取り交わしたLOAに沿った内容となっており、2014年5月から2016年1月にかけて引き渡し予定。イラク政府は全土をカバーするだけの機数、最大5個sq体制まで増勢することを希望しており、さしあたり18機の追加で米国と交渉中だ。

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LMはF-16のアップグレードについて純正オプションを強くお奨めする

http://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-f-16-oem-experience-brings-technical-certainty-to-upgrade-customers-373657/

ボーイングがQF-16の開発経験からF-16の改修ができるようになったと公言したり、BAEシステムズがF-16のアビオニクス改修を提案したりといった最近の状況に対する、LMの反応。
ファーンボロ前の記事で、当然のことながら純正オプションがお奨めですという結論。

LMはF-16については40年以上の経験があり、全ての情報を保有しているだけでなく、現在も専門の研究部署を置いている。40年というのはGDの頃も足しているはずだが、えらく長寿な製品になったものだ。
最も決定的な違いは、あらゆる面における情報量であり、それは逆の立場、例えばLMが他社製品(F-15やF/A-18)の改修を行うようなケースに対しても同様に言える。
情報が足りなければ技術上の不確実さが増し、特定のリスクにまで繋がっていく…というのがLMの主張。
このほか、他社が少数機の改修を行った場合、その後のアップグレードなどに支障を来たす可能性が高いとも主張している。これは部品の安定供給やら運用経費やらにも影響を及ぼすところだろう。

一方、LMが打ち出したF-16Vというのは、多様なオプションを設定する形でアップグレード提案するものであり、固定した仕様は存在しないという。よく話題に上る2社のAESAについても、メーカーとしてどちらかに決める事はない。
仕様を固定しなければ、少数機の異なる仕様を認めることになるので、メーカーとしても管理の手間が膨大なものになるが、そこは企業努力で何とかする所存である(it will be “nirvana” for customersの超訳)とかなんとか。

F-16Vの最大のカスタマーは米国で、現時点で300機の改修が見込まれている。これに先立って11月から行われる構造試験で、F-35と完全に交代するまで、どれだけ飛行時間が残っているかを調べることになる。米軍はF-16などの第4世代の新造機追加を見送り、既存機改修する事を決めているから、ここはちゃんとした見積が必要になるところだ。
次のカスタマーとして予想されているのは台湾。最終的には500~600機分のF-16V改修キットの需要があると見られている。

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F-35 BK-1の動向

7月19日にフォートワースにて、英国への引渡しが行われた。これは最初のJSFパートナー国への引渡しであり、公式に輸出と認められる最初の例になった。

http://www.flightglobal.com/news/articles/panetta-first-uk-f-35-delivery-marks-milestone-in-bilateral-security-relationship-374511/

その日にハモンド英国防長官は、来年F-35の4機目を発注する計画と述べる。途中で変更したC型をB型に戻したので、B型4機になるはず。

http://www.flightglobal.com/news/articles/uk-to-order-fourth-f-35b-next-year-hammond-says-374552/

7月23日、RAFの主席テストパイロット、Jim Schofield少佐が初めて搭乗し、フォートワースからエグリンAFBまでのフェリーフライトを行った。時間は90分ぐらい。

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-uk-transfers-first-f-35b-to-florida-base-374654/

BF-1の登録記号はZM135。当分はエグリンAFBにてIOT&Eの活動に加わる見込み。
現在、最初に配備される可能性が高いのはRAFマーハムで、時期は2018年頃。艦上機として展開するのは2020年頃というのが現在のスケジュール。

調達機数は、当初138機とされたものの、SDSRによる見直しが明言されている。決定は次のSDSRで、2015年の予定。

ホークの販売数が1000機目前に達する/インド向けP-8Iの2号機が初飛行/C295の対艦ミサイル搭載試験

ホークの販売数が1000機目前に達する

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-bae-close-to-selling-1000th-hawk-trainer-374394/

画像はRAFのホークT2。4Sqn(1912年創設)の100周年記念塗装を施されている。

BAEシステムズは、ホークAJTの販売数が990機に達したと発表。6月調印のサウジアラビア向けホーク165×22機が最新だが、インドの飛行展示チーム、スルヤ・キラン向けの20機が数週間内に確定する見込みとしている。現用はインド国産のHAL HJT-16 キランMk.2。

http://indianairforce.nic.in/show_gallery.php?cat_id=17&pg_id=3

本来の後継機は同じくインド国産のHJT-36 Sitaraであるはずだが、初飛行から10年近く経った今も調達は進んでないみたいなので、まだ開発中に近い状況と思われる。

http://www.airforce-technology.com/projects/hjttrainer/

それはともかくとして、この交渉がまとまればホークの累計は1010機になる勘定だ。
なおホーク165の仕様は、RAF向けのホークT2と同一であり、EWなどを含む戦闘訓練用のシミュレータを組み込んであるのが特徴。これにより、レーダーや武装を実際に搭載しなくても訓練が行える。

将来型として2015年以降のOC4+という仕様がアナウンスされているが、これは米国のT-X向け提案と関連したものということしかわからない。ソフトウェアを指してるようだが。

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インド向けP-8Iの2号機が初飛行

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-indias-second-p-8i-makes-flight-debut-as-testing-advances-374442/

P-8Iの2号機は、インド海軍機としての登録番号IN321をつけた機体となる。
7月12日、ボーイングのテストパイロットの操縦で、レントンからシアトルまで2時間14分間飛行した。飛行中にはシステムチェックが実施され、最大高度は41000ftだったとのこと。
この5日前には、1号機にあたるIN320が飛行試験を開始。今のところ計画通りに進行しており、2013年に引き渡し予定とされる。

今後は、ワシントン北西のニア湾(東日本震災の漂着物で話題になったとこ)と、カナダと米国の共有するジョージア海峡(ブリティッシュコロンビア州とバンクーバー島の間)のテストレンジにて、数ヶ月間の試験日程が組まれている。これにはミッションシステムと翼下パイロンに模擬弾を搭載しての試験などが含まれる。

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C295の対艦ミサイル搭載試験

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-c295-makes-first-test-flight-with-anti-ship-missile-374391/

C295のMPA型開発の一部として、対艦ミサイルを搭載しての飛行試験が行われている。
翼下パイロンに搭載されているのは、MBDAのMarte Mk.2/Sで、重量は310kg。Mk.46魚雷の搭載試験は2010年に実施済みで、インテグレーションまで完了している。

比較的好調なセールスを記録するC295であるが、チェコでは自己防御システムの能力不足が指摘されたりもした。

http://www.spacewar.com/reports/Czech_armys_CASA_planes_fail_anti-missile_tests_999.html

チェコでは、An-26の後継機としてC295Mを4機導入している。海外展開に備えて対ミサイル装備DASの試験を行ったところ、17箇所のうち7箇所が作動しなかったとか何とか。機体設置のセンサの話?
当局はメーカーに対応を依頼済みだが、この話はこれだけで終わることではなかった。同機種が2010年以来、数度の飛行停止を経ているのが問題を大きくしているようだ。
アビオニクスと通信装置の不具合は修正され、平時の輸送任務と訓練には問題ないとされたが、海外展開などには安全性が不足しているとの判定になった。

さらに調達価格が高すぎるとの指摘から、ありがちな汚職疑惑に繋がっており結構グダグダ。
問題の人物は、2007年1月から2009年5月まで国防大臣を務めたVlasta Parkanová議員で、警察当局から内閣に対して、刑事訴追のためとして免責特権の停止要求が出てる。既に相当クロに近い感じだ。

この手のトラブルは慣れない機材のためという側面もあるはずだが(この場合は旧ソ製→スペインだし)、