USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出/TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表/ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく/ACTUVの活躍(イメージCG)/GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出

http://www.gizmag.com/us-special-forces-subsonic-ammunition/25172/

SOCOMが用いている制式ライフル弾の初速は、弾種によって異なるがおおよそ音速の2~3倍とされている。
これを大きく下げて静粛性を高め、市街戦(殊に隠密作戦、個人あるいは少人数グループへの襲撃など)に使用したい、というのが主な動機となっている。が、大口径の亜音速弾には精度や信頼性の問題がつきまとうので、簡単な話ではない。

SOCOMは本格開発の前段として、SBIRに基づくRfPを発出した。
この手の計画は過去にも存在したが、開発は言うまでもなくうまくいってない。が、材料技術、製造技術の進歩によって実現できれば大成功、みたいな。

確実に機能する亜音速弾は、現在知られている限り小口径のピストル弾が存在するのみで、ライフル弾としては例がない。初速を遅くしつつ、精度を保ち、信頼性の高いライフル弾となると、技術的なハードルは高い。
装薬を減らすことになるから、有効射程距離が著しく縮むのは仕方ないとして、比較的大きなカートリッジに少量の装薬という組合せでは、燃焼が不安定となり、薬室内のガス圧を低下させ、不発や停弾を招く危険性が高くなる。薬室からのガス漏れが起これば、現代的なライフルのガス圧作動式の機構が満足に動かない可能性もある。

これらを解決する具体的な手法としては、新しい形式のカートリッジが必要になる見通しで、高分子系の材料で抜弾抗力を下げたり、ガス漏れ防止用のサボを入れるなどの案が示されてる。

実現の見通しが立てば原型試作、デモンストレーションと進むことになり、最終的には法執行機関向けにも(どっちにしても特殊部隊だろうけど)供給されるそうだ。

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TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表

http://www.gizmag.com/trackingpoint-precision-guided-firearms-scopes-digital/25264/

TrackingPointの社長は、特殊作戦の経験豊富な元海兵隊大尉(イラクでの作戦行動を通してブロンズスター、シルバースターを受勲している)で、除隊後レミントンの副社長を勤めた後、現在に至る。

で、ここに紹介されているのはTriggerPointという精密狙撃システムであり、.338ラプアマグナム弾を使うXS1と、.300ウィンチェスタマグナムのXS2およびXS3という製品を準備している。

拡大映像で目標点をマーキングした後、空気抵抗、風向きなどの補正を加えて正確な弾着ができる方向を指示、その方向に向くまで引き金が引けないよう抑止する、といった動作をするようだが、移動目標に使えるのかとか詳細はよくわからず。
具体的には映像の方を参照。

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ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく

http://www.rheinmetall-defence.com/en/rheinmetall_defence/public_relations/news/latest_news/details_2368.php

http://www.gizmag.com/rheinmetall-laser-test/25504/pictures

2011年に実施した5kW×2門の10kWタイプによるデモンストレーションに続くもので、レーザの出力を向上し30kW×1門+20kW×1門の50kWタイプの試射を実施している。場所は前回同様、同社保有のスイスのOchsenboden試験場。

11月には、3種類の目標への試射が試みられた。
1つ目は1000m先の15mm厚の鋼板、2つ目は3000m先から毎秒50m程度の速度で飛行するターゲットドローン、3つ目は迫撃砲弾をシミュレートした毎秒50mで移動する直径82mmの鋼球で、それぞれ悪天候下でも十分迅速に破壊できたと発表されている。

なお、同社は複数のレーザを束ねて使用する技術はBeam Superimposing Technology
(BST) と呼んでいる。つまり32bitプロセッサ2つで64bit級みたいな(違う)。
写真のうち、2門の方が今回の50kWタイプかな。

実用型では合計100kWを目指すが、2013年は60kWのレーザを試験するとのこと。
これはレーザ出力を(30kWの)2倍にすると書いてあるので、つまり実用型は60+20+20=100という解釈でよいのだろうか。

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ACTUVの活躍(イメージCG)

http://www.gizmag.com/darpa-saic-actuv-drone/25607/

SAICが受注したACTUVのイメージCG映像が公開されている。ACTUVはASW作戦を主要任務とするが、モジュール変更によってISRから小規模な補給まで可能ということだから、多目的USVとした方が適切な気がする。

形態は受注の時のイメージと大体同じで、長期間のディーゼル潜水艦追尾の例を説明している。映像では非武装で、長期間にわたって目標を追尾し、情報を収集して終わる。SAICは60~90日間の作戦行動が可能としているが、あくまで最大ということか、そこまでは長くない。というか相手がディーゼル潜の例だしな。
興味深いのは、搭載した人工知能で目標の欺瞞行動に対応可能というくだりで、民間船舶を利用して追尾を混乱させるといった潜水艦の戦術機動にも対処できるという。つまり目標の位置を推定し、民間船舶などを避けつつ追尾を続けられることになっている。オペレータによる訂正ももちろん可能だが、勝手に動いてくれた方が労力が少なくて済むのは言うまでもなし。
水中の長距離センサは磁気(total field magnetometer array)、短距離センサは高周波アクティブソナー×2基。目標を識別するのはソナーの方になる。

total field magnetometer arrayというのはよくわからんが、ここにはMADのローコスト版みたいな事が書いてある。

http://www.psicorp.com/news_events/display_news.html?id=1217

こんなにうまくいくのかなあというのはおいといて、通して見た感じ、P-8と連携するだけでなく、CVNに積んでたASW機の役割も一部担うように見えるな。でP-8を水上はBAMS、水中はACTUVが補うと。

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GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

http://www.gizmag.com/gps-radio-telescope-underground-nuclear-test-detection/25434/

米オハイオ州立大の研究チームは、GPSの信号記録または電波望遠鏡VLAの観測記録によって、秘密の地下核実験(記事中ではunderground
nuclear explosions、UNEと称している)を検出できることを発見した。

従来、地下核実験を検出する最も確実な方法とされているのは地震計のデータ解析であるが、核分裂反応の規模が小さいと通常爆薬などとの区別が難しくなる。例えば北朝鮮の2006年、2009年の核実験のうち、2006年の時は1キロトン未満と推定されたため、おそらくは失敗と見られたものの地震計のデータだけ判断するのは困難だったという。

オハイオ州立大でGPSを専門に扱うグループは、2009年の核実験の直後、朝鮮半島上空にあったGPS衛星の信号が、訂正によりごく短時間だけ遅延し、その程度がGPS衛星の位置によって異なることに気がついた。核実験に伴う電離層の乱れ(traveling ionospheric disturbance (TID))が、GPS信号に影響を与えることは以前から知られていたが、GPS衛星の位置と訂正の関係についての研究はされていなかった。
核爆発の爆心地から単純にTIDの状態が波のように一定速度で拡がっていったと仮定すると、2009年のデータでは高度300kmあたりを870km/hで移動した計算になる。
その後、2006年のケースと、1992年のネバダ州での核実験のケース、2011年の東日本大震災におけるTIDをGPS信号の記録から確認したところ、核実験と地震によるTIDの発生パターンが異なることや、核爆発の規模でTIDの伝搬速度が異なることがわかった。後者については、1992年の20キロトンの核爆発が、2009年のUNEで起こったTIDの3倍の速度だった、とある。

VLAの方だが、こちらもGPSと同じくTIDに対する訂正を連続的に行うため、基本的には同じ考え方でデータを分析すればよく、VLAの技術者と連携して実際に同様のデータが残っているのを確認できたとのこと。

うまく捉えられるかはGPS衛星の位置関係にもよるし、核拡散の問題をどうこうする技術というわけではもちろんないが、新しい手段を得たのは悪い話ではない。
情報提供者を危険に晒す必要も少なくなるし。

MRJの製造ライン増強を検討/ボンバルディアCSeriesの状況/ATRが新型の90席ターボプロップ旅客機の検討を終える/ダイヤモンドエアクラフトがDA42でFBWの試験を行う

MRJの製造ライン増強を検討

http://www.mrj-japan.com/j/news/news_121213.html

http://www.flightglobal.com/news/articles/skywest-firms-deal-for-100-mrj90s-380176/

12月13日、スカイウェストのMRJ導入で調印の後、製造ライン増設を検討という発言が出ている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/mitsubishi-aims-to-ramp-up-mrjs-planned-production-rate-380278/

広報部長代理の桜井氏によると、このクラスの需要が予想より高まっていると見ており、現計画の月産5機から10機まで引き上げることが検討されているとのこと。
製造ラインを増設するとして、小牧南工場とは別の場所、あるいは米国などの外国も考えられている模様。ただしそれを具体化するのは2015年Q4の型式証明取得後となるので、最終的な判断はまだ先の話となる。小牧南工場のラインについても、試験機の部品製造は進められているものの、まだ完全な状態ではないので、初飛行の頃(2013年Q4)には円滑な稼働体制に持っていく予定とされている。
なお試験機の最終組立は間近だそうだ。

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CSeriesの状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/supplier-issues-delay-cseries-first-flight-to-2013-378644/

ボンバルディアCS100(110席タイプ)の初飛行は、結局2012年内は断念されている。11月に入った段階で「サプライヤーの問題」により、2013年6月末までの初飛行延期が発表された。
詳細は明らかにされていないが、これまでにはParker Hannifin AerospaceのFBWシステムと、瀋陽が製造するのウイングボックス/中央胴体部分で問題が出た経緯あり。

今のところCSeries全体としての受注状況が芳しくないため、多少の遅れも影響はさほど無い、と見られている。

CS300は130席タイプで計画されているが、AirAsiaの受注競争で160席のA320neoに負けた例もある。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bombardier-moves-cs300-into-detailed-design-with-high-density-variant-included-379612/

CS300の詳細設計が開始となっており、座席数を増やした160席タイプも視野に入れているようだ。これは基本的には単純に座席を増やすだけで済まし、設計変更としては、耐空性証明で要求される後部のドア増設などに留まる見込み。派生型なので、CS100よりも早く設計が完了すると予想されている。
160席になると、2強の旅客機と正面から競合することも可能になる。が、相手が悪いのは確かなので、事業としてどうなんかなあという気がしないでもない。

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ATRが新型の90席ターボプロップ旅客機の検討を終える

http://www.flightglobal.com/news/articles/atr-awaits-shareholders-go-ahead-for-90-seat-turboprop-project-380273/

ATRは、顧客からの強い要望を元に90席のターボプロップ旅客機開発を検討しており、開発前の作業を概ね完了、親会社のEADS及びアレニア・アエロマッキのゴーサインを待つばかりとなっている。
新型機は、従来の機体とは設計思想を共有するものの、別物の新規設計であり、全ての構成要素が一回り大きいとされる。またATRでは、開発の承認が得られれば5年で型式証明取得が可能と予想している。

ただしEADS傘下のエアバスがA320neoやA350に取り組んでいることもあるので、FGでは開発がすぐに承認される可能性は高くないと見ているようだ。

90席のターボプロップに興味を持っているキャリアとして、Lion Airのコメントが出てる。他にはマレーシア航空など。この辺がロンチカスタマーになる可能性はある。
ターボプロップの競合他社であるボンバルディアの出方次第という面も強い。こちらもQ400の派生型開発により、90席クラスで対抗する計画だけはある。

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ダイヤモンドエアクラフトがDA42でFBWの試験を行う

http://www.flightglobal.com/news/articles/diamond-tests-fly-by-wire-on-da42-380035/

EU出資のプロジェクト、small aircraft future avionics architecture (SAFAR)の一部として進行しているものだそうで、4重デジタルFBWをDA42に適用して試験を行っているとのこと。

パイロットの操作によって機体構造に過剰な負荷がかかったり、空気力学的な無理が生じないように制御するシステムであり、離着陸および飛行の自動化を目指す上での重要なステップとなっている。

一般の固定翼民間機、つまりGA分野ではFBWを実用化した機体は存在しない。近年では、回転翼機でロシアの一部機種、ベル525がFBWを備え、エムブラエルもレガシー500でFBWを採用している。欧州においてはエアバスが1980年代に実用化したのはよく知られている通り。

デンマークはリンクス後継にMH-60Rを選定/AW169原型3号機、AW149開発状況/バングラディシュ陸軍向けのAS365 N3+ ドーファン/最初の民間向けMi-171がインドネシアに納入される/ユーロコプターX3の今後の展開など

デンマークはリンクス後継にMH-60Rを選定

http://www.flightglobal.com/news/articles/denmark-confirms-mh-60r-selection-to-replace-lynx-helicopters-379331/

11月21日、デンマーク国防省は、現用のリンクスを更新する海上輸送ヘリコプターとしてMH-60Rを選定、金融省の承認を得たと発表。リンクス後継には、ウェストランド系の直接の後継機種であるAW159リンクス・ワイルドキャットも提案されていたが、これは選定されなかった。

今回選定されたMH-60Rは、2016年から2018年にかけてKarup空軍基地にて9機が引き渡され、2017年から現用のリンクス90B(7機が現役)と交代し始める事になっている。

この機種はオーストラリア海軍でも24機が採用され、元々のUSN向けと合わせて170機ほどが配備されている。こちらはS-70Bからの更新という形だったが、リンクスの後継に収まったのはデンマークが多分初。

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AW169原型3号機、AW149開発状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-third-aw169-prototype-takes-to-the-skies-379452/

11月23日、AW169の原型3号機がイタリアのCascina Costaにて初飛行に成功した。飛行時間は35分程度。
メーカーのアグスタウェストランドからは、原型4号機は2013年初めの初飛行を予定し、2014年の型式証明取得と納入というスケジュールに変化はないとの公式発表が出ている。

2010年7月にロンチされたこの機種は、6tonのAW139と10tonのAW189の下の、4.5ton級10人乗りで、ユーロコプターのドーファンまたはEC145に対抗する。エンジンはPW210の双発。

原型1号機は5月、2号機は7月初飛行で、累計飛行時間は100時間超。この原型3号機は折りたたみ式の降着装置を有しており、主に人工気象室での試験に供される。具体的には寒冷地及び高温・高地試験、カテゴリーA性能試験、その他オプションの型式証明などを予定している。

AW149の方は、軍用のAW189の原型機4機のうち、2機が民間向けのAW149に近付けた仕様で製作されており、これらの累計飛行時間は800時間を超えた。2013年中頃の型式証明を目指す。

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バングラディシュ陸軍向けのAS365 N3+ ドーファン

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-bangladesh-army-inducts-two-eurocopter-dauphins-379585/

写真の提供元はユーロコプター南西アジアとなっている。シンガポールに拠点を置き、フルモーションシミュレータを含む地上での訓練は、ここで行われるとのこと。

蛙っぽいカラーリングだな。

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最初の民間向けMi-171がインドネシアに納入される

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-russian-helicopters-delivers-first-civilian-mi-171-to-indonesia-379483/

ロシアンヘリコプターは、Mi-171の民間型をインドネシアの鉱業会社に納入したと発表した。顧客名は明らかにされていない。

写真では機体にAIRFASTという文字が見えるが、これはチャーター会社のエアファスト・インドネシアの塗装とのことで、機体の運用と整備を行う契約を結んでいると考えられる。
鼻先がMi-8から引き継がれたガラス張りで、外見はかなり伝統的なイメージだ。キャビンも丸窓だし。

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ユーロコプターX3の今後の展開など

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurocopter-test-pilots-praise-x3-handling-376412/

9月のILAの記事だが、計画のまとめになっているので遡ってメモ。

X3のテストパイロットを務めたHervé Jammayra氏は、同機がほぼ事前のシミュレータ通りの挙動を示したことと、固定翼機並の加速性能を賞賛している。

7月から8月にかけての北米デモンストレーションツアーを終え、飛行時間は2年間で120時間に達したとのこと。

また飛行中の動力の配分に関して幾つかの情報が出てる。
設計上の目標速度は220kt、時速400kmだったが、これは最大出力の80%ほどで232ktを達成できた。
メインローターとプロペラの動力配分は速度域によって変化する。小翼の発生する揚力は最大で40%を占め、つまりメインローターの揚力は減少するわけだが、今度はプロペラの方で対気速度を維持して揚力を保つためのパワーが増大する。
一方、巡航時のメインローターは出力25%程度で済み、ピッチを減らせるので、振動がかなり抑えられるという。

こうして見ていくとわかる通り、小翼の面積は設計上、かなり重要な要素と考えられた。また小翼の追加はオートローテーション特性の変化(減少)にも繋がるとされている。
これについて、試験を担当したエンジニアのDominique Fournier氏によると、X3のオートローテーション特性は、ドーファンとほぼ同様であることが飛行試験で確認されたとのこと。

http://www.flightglobal.com/news/articles/ila-eurocopter-plans-x3-type-helicopter-during-next-seven-years-376405/

ユーロコプターのCEOは、次の6~7年で実用機に発展させる事を示唆したものの、型式証明に時間を要する可能性があるとも発言している。

どんな機体になるか、という点については、はっきりした回答を出さなかったが、X3のような中型機だけでなく、小型から50人乗りといった大型まで対応できるとする。

とは言えガス・油田向けが最初の目標であることには変わりないようで、原油価格が1バレル80ドル以上といった水準であれば、調査目的での長距離進出に対するニーズが高まると考えている模様。
この他には、高速性能がVIP輸送やSARといったミッションにも適応するとも述べている。

Sunseeker Duo/C-17によるvortex surfingの飛行実験が行われる/AeroVeloの人力ヘリコプターAtlus/北アメリカ類人猿あるいは原人の探索に無人飛行船/JA2012のレポート記事

Sunseeker Duo

http://www.gizmag.com/sunseeker-duo-solar-airplane/24700/

Kickstarterで資金集めを試みようとしているもので、太陽電池を主動力源とする二人乗りモーターグライダー。
Sunseeker I、IIに続く機体らしい。

http://solar-flight.com/sunseeker/index.html

http://de.wikipedia.org/wiki/Musculair

Eric Scott Raymond氏(エリックレイモンドだがオープンソースの人ではない)の構想は80年代まで遡る。人力飛行機Musclair IIのパイロットに呼ばれたのが縁で具体化した。ということで、このサイトにも同機の設計者であるGünther Rochelt博士への謝辞が述べられてる。

Sunseeker I、IIはMusclair IIの機体レイアウトを踏襲したものだったが、Sunseeker Duoは、ドイツで1980年代に開発されたStemme S10という機種が原型となっている。この機種はノーズコーンに引き込み式のプロペラを収納するのが特徴だったのだけども、プロペラ位置は垂直尾翼上端に移されたのであんまり関係なかった。尾翼周辺は、T尾翼は踏襲するもプロペラの基部が取り付けられるなどしたため、形状が大きく変更されている。

http://www.kickstarter.com/projects/sunseeker/sunseeker-duo?ref=category

軽量化により、空虚重量は原型の645kgから270kgとなる。スパン23mの主翼はそのままで、尾翼とともに太陽電池パネルを敷き詰め、モータ出力は20kW。リチウムポリマー電池72セルの満充電状態で20分間の全力運転で高度をとれる。雲上であれば、太陽電池と直結で数時間の巡航が可能という触れ込み。

現在は開発の途上にあり、資金が集まれば米大陸一周を皮切りに世界周回飛行を計画しているとの事。これは撮影クルーを連れて実施し、書籍化も考えてるらしい。

一人乗りのソーラーインパルスよりも機体規模が小さく、相当チャレンジングな印象を受けるが、この原型となったStemme S10は、アコンカグア峰を飛び越すのも含めた長距離飛行記録を幾つか持っており、高高度・長距離飛行に関するそれなりの実績を持つ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Stemme_S10

プロペラのみならず、サイドバイサイドの複座、引込脚などの特徴を持つユニークな機体。現行機種のS10 VTはプロペラが可変ピッチになった。

しかし、軽量化すると強度も不安になるし、そもそもパワーがかなり落ちているから、如何に揚抗比が高いといえども動力飛行に制約が生じるのは不可避だろう。
実現するとしても、かなりギリギリの飛行になるのでは。レイモンド氏の操縦技量は相当高いようだけど。

ちなみに同機種はAETCが2機導入したことがあり、TG-11Aというディジグネーションが与えられている。

http://www.aetc.af.mil/library/factsheets/factsheet.asp?id=7220

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C-17によるvortex surfingの飛行実験が行われる

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123321609

最近、飛行を効率化する試みとして、編隊飛行の効果が言われるようになっているが、USAFではAMCとAFRLの共同研究として取り扱っており、9月6日と10月2日の2回、412th TWのC-17を実際に編隊飛行させる実験を行った。
単純に言うと、後方を飛ぶ機体が、前方を飛ぶ機体の後流の渦に入ると抗力が減少して燃料消費量が減る。渡り鳥の飛行からヒントを得たもので、この概念はSurfing Aircraft Vortices for Energyもしくは$AVEと呼ばれている。2011年のEnergy Horizon研究から出てきた言葉だ。

AMCのチーフサイエンティストによると、初期の分析において燃料消費率の改善効果は最大10%との試算を得たという。これを現在のAMCの運用状況(燃料消費量はUSAF全体の20%を占め、年間約80000フライトを実施する)に当てはめると、年間数百万ドル規模の経費節減に繋がる。
AMCの活動は大量の燃料を消費するだけに、搭載燃料を減らしたり、飛行ルーチンを最適化したり、細かな効率化の試みはずいぶん行われているようだ。

C-17が使われたのは、AMCの燃料消費削減が重要視されているからというだけでなく、大型機の後流は規模が大きくなるから、緊密な編隊を組まなくてもその恩恵を受けることができる、という利点もある。

実験飛行においては、基本的にプログラムを変更したオートパイロットによって、編隊飛行を維持させており、実現可能性の高い設定になっていた。

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AeroVeloの人力ヘリコプターAtlus

http://www.gizmag.com/aerovelos-atlas-joins-sikorsky-race-for-human-powered-helicopter-flight/24561/

メリーランド大のGamera IIが65秒間のホバリング飛行を達成した日に、AeroVeroは同様の構成の人力ヘリコプター、Atlusを初めて飛行させた。時間は4秒程度。
注意しておきたいのは、ここではいずれも飛行としているけども、実際は地面効果の及ぶ高度の範囲でしか上昇できてない点。シコルスキー賞では、高度を3m以上としている。

AeroVeloは、トロント大の人力乗り物研究チームを中心に構成されたグループで、2006年から活動しており、自転車の公認速度記録(大学の)を2011年に打ち立てたり、人力オーニソプターを作ろうとしたり、他も色々やっている。

http://www.aerovelo.com/

どっちもシコルスキー賞にはあんまり近くない感じなのだが(3m浮かすだけで死にそう…)、Gamera IIにライバルが出現したというのは確かなようだ。

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北アメリカ類人猿あるいは原人の探索に無人飛行船

http://www.gizmag.com/falcon-project-bigfoot-airship/24537/

http://the-falconproject.com/main_site/?p=492

今から15年前、ユタ州に住むウィリアム・A・バーンズさんはカリフォルニア北部の荒野にて砂金を掘っていた。ある晩、バーンズさんが宿営地のテントで休んでいると、峡谷の上の方で岩のぶつかる音が聞こえてきた。不審に思ったバーンズさんが外の様子を伺うと、何かが重い足取りで下ってくるではないか。
そして、それがテントから3フィートほどのところまで近付いてきたところで、ちょうど月明かりに照らされて見えたその姿はまさにビッグフット…いやサスカッチ…いや北アメリカ類人猿あるいは原人(*)に相違ないのであった。

(*)真面目な研究者の呼称に従ってみた。

その日を境にバーンズさんの人生は変わった。動物の研究にうちこみビッグ…じゃなくて北アメリカ類人猿の探求に取り憑かれていったのである。

というわけで、バーンズさんの最新の試みが、このファルコンプロジェクトと呼ばれるものになる。カナダの遠隔操作飛行船メーカー、RATS Incに特注した、捜索用の無人飛行船を使おうというわけだ。

オーロラと名付けられたこの飛行船は、2つに分かれたヘリウム気嚢を有する双胴型で、全長は45ft。気嚢に挟まれる形で、中央に推進システムとセンサを搭載する。
双胴にすることで、安定を増し、全体がロールするのを防ぐことができる。カメラはジャイロで安定させており、ケーシングはカーボンファイバ製。
特徴は推進システムで、4基のダクテッドファンを任意の方向へ指向することにより操作される。普通のプロペラよりも操作性が良くなり、垂直方向の移動も簡単なので、地上でのハンドリングが容易になる。
近年のトレンドに従って、固定翼航空機と軽航空機の利点を併せ持つタイプの飛行船となっている。

最大速度は45mph程度、3~4時間の飛行が可能とあるが、推進システム全開の持続時間かなこれは。カメラは熱映像、IR、可視光のHD映像を取得できる。この他に大型哺乳類の呼気を捉えるCO2センサと、超低周波音の録音装置が載る。最後のは何のことかというと、彼らが超低周波音を発してコミュニケーションを図るという説があるためだそうだ。

このセンサプラットフォームを、地上管制(改造したモーターホーム)から半径5マイル程度の範囲で活動させる計画。飛行させるのに必要な準備時間は1時間未満とのこと。メーカーによると、来年の早春にも納入予定とされている。
また、捜索は自動操縦で行える。捜索範囲内を升目を切って順番に探索していく方式だが、grid searchをグリッド捜索とか言っちゃっていいのだろうか。

映像はインターネット中継で世界にお届けするが、それが映ったら中継は停止される予定。

この計画には、まともな研究者?も関与している。記事中で紹介されているアイダホ州立大のジェフ・メルドラム博士は、17年にわたって知られざる北米の霊長類についての研究を続けてきた人物だ。
計画についての権威付けの上でも意味を持つが、実は科学的プロジェクトに認定されると飛行高度制限が大幅に緩和されるという事情もある。一般の飛行高度が400ft止まりのところ、7500ftまで許されるというから、実利的な面でも劣らず重要と言えるだろう。

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JA2012の記事があった。CAR Watchなのに、と思ったが車も関係ないわけではない。

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121029_569330.html

F-35Aの公式模型展示。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/88.jpg.html

ネ20からXF5-1まで。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/74.jpg.html

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/70.jpg.html

ホンダジェット関係これだけ?

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/11.jpg.html

当日は747-400LCFが2機いたらしい。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/plane14.jpg.html

メディアの黙殺っぷりに反して来場者は16万人と、目標の9万人を大きく上回ったそうだ。
MRJのキャビン実大模型は見たかったな。

記事の最後で展示会場と飛行場が離れてる問題が指摘されているが、トヨタあたりがまともに航空機に参入してればあるいは、というレベルでしか解決の見込みは無さそう。
セントレアまで1時間以上か。ちょっと遠いかもなあ。

http://www.nipc.city.nagoya.jp/pmn/access/public.html

Vestas V164の開発進む/V3 Solar Cell

Vestas V164の開発進む

http://www.gizmag.com/vestas-v164-wind-turbine-8mw/24414/

現存する風力タービンの中で最大のものは、スペインのGamesaが製作したG10X原型タービンで、ローター直径が128mに達するが、最大出力は4.5MWに留まる。出力が大きいのはEnercon E-126で、ローター径はG10Xにわずかに及ばない126mながら、最大出力は7.58MW。こちらは2007年以来、世界最大の出力ということになっている。

これらに対抗すべく、デンマークのVestasが開発しているのはV164と呼ばれるタイプ。数字はローター径を示す。つまり直径は164m。同社が主張するところでは、タービン容量を増す方針で開発されたとの事で、設計最大出力は8MWとされる。
現在は、2013年1月からの屋内駆動系試験に備えて試験用ベンチを建設しているところ。実環境に設置されるのはデンマークのOesteridとなるが、2014年内は無理と考えられている。このため、スペインで計画中の10MW級風力タービン(最終的には15MWを目指す)、Azimutに先を越される可能性がある。

http://www.gizmag.com/azimut-project-to-develop-worlds-largest-capacity-wind-turbine/17158/

しかし何と言ってもユーロ危機ど真ん中のスペインがやることなので、予定通りに行くかは微妙な気も。

この種の巨大タービンは沖合風力発電に使われるのが一般的。ここまででかくなったら、下手に近付くと気圧変動でどうにかされそうだ。

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V3 Solar Cell

http://www.gizmag.com/v3solar-spin-cell/24352/

太陽光発電所と言えば平らなパネルが大量に並べられた状況が思い浮かぶが、太陽電池の性能向上に頼るだけでなく、配置を見直すなどして更に集光率を高め、発電能力を向上するというアイディアもたくさん提示されている。
V3 Solarもそんな案の一つで、角錐、多面体または円錐形に太陽電池セルを貼り付けるというスタイルから、さらに一歩推し進めたものになっている。

具体的には、円錐形の表面に小三角形のセルを敷き詰めた形をしており、その上を円錐形のレンズで覆った二重構造の円錐になっている。傾斜角度は56%。またSpin Cellの名前の通り、自ら回転する。これらの特長により、平面パネル状の太陽電池に比べて発電能力は20倍になる、とされる。
二重の円錐のうち、レンズは固定で内側だけが回転し、太陽電池セルが過剰に熱せられるのを防ぐ。この動作のためには回転機構が必要となるが、磁力で浮かせるので抵抗によるエネルギー損失はほとんど無く、ごくわずかな動力で回せるようにできている。ついでに磁石も回転させれば、太陽電池から出力されるDCをACに変換できて一石二鳥。

動画を見るとわかるが、結構な勢いで回転してる。

実証のための試験装置は既に製作されており、第三者機関によって平面パネルに対して20倍の効率を達成していることが確認されたと発表。試験においては、熱、回転速度、出力を計測するデータロガーをワイヤレスで接続してデータを取得したとある。
熱的には、集光倍率を20倍とした場合はセルの表面温度がセ氏35度を超えることはなく、恒久的に稼動できることがわかった。今後は倍率を40、50、75倍と高めて分析を行う予定。

同社では、Nectar Designと共同で、高さ1m×幅1mの実用モジュールの設計を行っている。
商用発電向けとしては、大規模太陽光発電所に設置する80万セット分のライセンス契約を締結したとのこと。

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約/ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定/ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約/ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約

http://www.space-travel.com/reports/ATK_Awarded_50_Million_Contract_for_NASAs_Advanced_Concept_Booster_Development_for_SLS_999.html

ATKの発表によると、SLS能力向上に関わるAdvanced Concept Booster Developmentの一部にあたる、エンジニアリング開発とリスク低減試験についてNASAと契約を結んだとのこと。金額は5000万ドル。

この計画では、TVCノズルの電動化(リチウムイオン電池を利用する)、高性能推進剤、軽量複合材製のケース、新型ノズルが開発され、試験用エンジンを製作、静止運転試験までが含まれる。
全体としてはコストを下げつつ、性能と信頼性の向上につなげるものとなっている。

宇宙機では枯れた技術が使われる、とはよく言われる話であるが、材料や電池の分野は今でも日進月歩で発達し、かなりの速度でコモディティ化が進んでいる。様々な形で民生部品を使うのも一般的になりつつあるし、新しめの複合材やリチウムイオン電池もそろそろいいだろう、という感じではある。

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ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定

http://www.spacedaily.com/reports/Key_flight_for_Europes_GPS_is_cleared_for_launch_999.html

10月5日、ESAはガリレオ航法衛星2機打ち上げが承認されたと発表した。
打ち上げ場所はクールー。使用されるロケットはソユーズST-B(上段がFregat-MT)で、既に組立棟に搬入済みとのこと。打ち上げ予定日は10月12日、1815GMTとなっている。
これらは2011年10月21日の1、2号機に続くもので、軌道投入に成功すれば稼動衛星の数は4基となり、測位システム(緯・経度、高度、時間の情報を取得し、地球上の航法を支援する)の最小単位を構成できるようになる。

計画では2015年までに18機を運用、商業利用が可能となり、2020年には全衛星30機体制となって、システムが完結する。これは米国のGPS衛星より6機多く、より高精度な(GPSの誤差3~8mに対して誤差1m程度の)測位が可能。
また、5月の欧州委員会への報告では、2015年までにかかる費用が50億ユーロとされている。

なお、クールーでのソユーズ打ち上げは3回目。アリアン5とヴェガの間を埋める打ち上げシステムとして活躍し始めている。

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ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約

http://www.gizmag.com/pulsar-navigation/24498/

恒星間航法において、パルサー観測を用いるというアイディアはSFでよくあったような気がするが(終わりなき戦いとか)、パイオニア10号の有名な図版でも地球の位置情報(と地球を出発した時期)を示す図形として描かれたこともある。ESAはそれを真面目に実用に耐えるものにできるか研究しましょうという趣旨で、英国立物理研究所NRL及びレスター大学と契約した。

宇宙船が地球から遠ざかるほど、航法支援は困難になる。電波の速度による時間差も生じるし、光の速度で数週間、数ヶ月の距離ともなれば、送信設備の出力も膨大なものとしなければならない。
理屈では人工的なビーコンを設置することも可能だが、同じ理由で現実的ではない。そこで天然のビーコンと言えるパルサーの観測で何とかしようという話。
科学的にその辺の利点を述べると、パルサーはそれぞれが固有の周期で電磁波を発するので、非常に見つけやすい。そしてパルサーのX線を観測することができれば、地球上でGPS衛星を利用するのと同じように扱うことができる。
レスター大学のチームは、この目的のためのX線観測装置の可能性を、NPLは観測データから測位情報を得るためのアルゴリズム開発などをそれぞれ担当する。

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ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

http://www.gizmag.com/boeing-ballistic-gas/24403/

使用されなくなった人工衛星など、いわゆるスペースデブリの問題は年々深刻さを増している。代表的な事例としては、2009年2月10日に起こったイリジウム33とコスモス2251の、高度789kmでの衝突があった。

ボーイングで特許申請の形で提案しているのは、デブリの進行方向にガスを撒くことで、その軌道周回速度を第一宇宙速度以下まで減速させるという方法。わずかでも第一宇宙速度を割りさえすれば、後は地球の重力井戸に真っ逆さまというわけだ。これまでに幾つか提案されたような、ソーラーセール等を用いて物理的に回収したり、つついたりする方法に比べても、最小のエネルギーで対処可能なアイディアと言えるだろう。更に言えば、回収のための衛星が何かと衝突することすら有り得る。

発案者はMichael Dunnという人で、ガス発生器を搭載した小型衛星を使用する。このガスについては、低温のキセノンまたはクリプトンのタンク、あるいは重金属を気化する装置か、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられている。原理的には何でもよく、デブリの進路上、逆向きのベクトルを与えてガスを撒き、運動量を削げばよい。

この方法の利点としては、システムがかなり単純で済むだけでなく、デブリに余計なダメージを与えて更に細かい破片が分離するといった可能性がほとんどないこと、精密に狙いを定める必要がないこと等がある。大型の衛星や軌道高度が高い場合は、単に数回に分けてやれば良い。
また1個の衛星で、異なる複数の軌道を周回するデブリに対して使えるのも利点とされる。
大気圏で燃え尽きそうにないとか有害物質入りとか原子炉搭載とかだとちょっと困るが、基本的には何にでも使える。

言うなれば宇宙フマキラー的な?
米国でスプレー式殺虫剤の代表的なものとはなんだろうか。

独DLRが可変式の前縁フラップを開発/ガルフストリームG650がFAA型式証明取得/SBiDir-FWコンセプト

独DLRが可変式の前縁フラップを開発

http://www.dlr.de/dlr/en/desktopdefault.aspx/tabid-10081/151_read-2107/year-all/

http://www.gizmag.com/morphing-leading-edge/24068/

ドイツ政府の航空宇宙開発期間であるDLRが、翼の前縁断面形状を変化させるタイプのフラップ、smart droop noseを開発した。
通常の前縁フラップ、特にスラットの様な隙間ができるやつは、揚力を高めるが抵抗を増し、騒音源ともなる。smart droop noseでは、前縁部分の断面形状そのものを変化させることで、欠点を無くして同様の効果だけを得られるように開発されている。

開発にあたっては、表面を平滑に仕上げつつ、弾力性と強度を両立するのが困難だった(着陸時には機体重量の1/3を支えなければならない)とのことだが、最終的にはGFRPを積層して解決したそうだ。その外皮の内側にアクチュエータが仕込んであって、形を変える仕組み。

風洞実験は、ジューコフスキーにあるTsAGIの大型風洞を利用した。その結果、前縁20度下げ状態までは、全く抵抗の増加が見られなかったとのことで、空力面の検証はひとまず成功している。
次の段階では実機への適用を目指し、バードストライクや落雷に耐え、あるいは凍結防止装置の装備などへ発達させることになっている。

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ガルフストリームG650がFAA型式証明取得

http://www.gulfstream.com/news/releases/2012/gulfstream-g650-receives-type-certificate.htm

ガルフストリームの9月7日付のプレスリリースによると、同社は2008年より開発を続けてきた新機種、G650の型式証明を取得したとのこと。
既に200機ほどのオーダーが入っており、顧客への引渡しは年内にスタートする予定となっている。
ガルフストリームで最大・最速の機体であるだけでなく、価格は6000万ドルからとなっており、名実ともに同社のフラッグシップと言えるだろう。

初飛行は2009年で、それから35ヶ月間に.1181回のフライトで3889飛行時間を記録。以下、セールスポイント等が列記されているが、試験飛行のハイライトについての部分を抜粋。

2010年5月2日のフライトでは初めて最大運航速度Mach 0.95に達し、2010年10月の高速巡航飛行試験では、大西洋上にて5000nmを9時間45分、平均速度Mach0.9で飛んだ。
2011年2月にはカリフォルニア州バーバンクからサバンナまでの1900nmを3時間26分、巡航速度Mach 0.91~0.92で飛び、最高速度Mach 0.925を記録。
2012年5月12日に最初の大西洋横断飛行が実施された。ワシントンDC-ジュネーブ間の3780nmで、飛行時間は6時間55分だった。

2011年4月の悲劇的な墜落事故は記憶に新しいが、再開後は大きなトラブルを出さずに現在に至る。

巡航速度がMach 0.9に達するビジネスジェット機は少ない。G650の他にはサイテーションXぐらいか。

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SBiDir-FWコンセプト

http://www.gizmag.com/rotating-bi-directional-flying-wing-design/23982/

今月初めに、手裏剣みたいな想像図で話題になったアレ。まあ一応。
エンジンマウントした胴体部分に対して翼のある下半分が回転する感じなんかしら。その辺の機構がよくわからぬ。
こんなのに10万ドルぽんと出しちゃうNASAにある意味安心した。最近は景気の悪い話しかなかったので。
でも斜め翼と同じ匂いがしますおわり。

コメント欄でガミラス艦に言及している人を見つけて驚愕(しかもちゃんとSpace Battleship YAMATO (2010年のじゃなくて1974年の)って書いてある)。メリケンオタ侮れじ。

エアバスのSmarter Skies構想

http://www.airbus.com/innovation/future-by-airbus/smarter-skies/

以前、2050年の旅客機という想定でやってた分の、応用編というかインフラ編のような感じになっている。

上のURLは前説にあたる部分で、2050年代に実現可能な航空(輸送)の持続的成長を可能とする様々なコンセプトを提示する。
たとえば航空管制が最適化されただけで、世界中のあらゆるフライト時間について、平均13分ほど短縮されるとの試算がある。1年間に世界の累計フライト数をおよそ3000万回とすると、13分の短縮は燃料消費量にして900万ton、CO2排出量にして2800万ton、個々の乗客の時間節約を合計すると5億時間以上になるそうだ。
エアバスとしては、更に航空機のハードウェア(とインフラ)を改善することを提案したい。という話。

ページには各論へのリンクで、5つのセクションに分かれる。
具体的な数字はあまり出てこないが、概念が説明されている。ツッコミは各自でお願いします。

・Eco Climb
http://www.airbus.com/innovation/future-by-airbus/smarter-skies/aircraft-take-off-in-continuous-eco-climb/

航空機が最も大きなパワーを必要とするのは離陸時であるから、外部動力で離陸滑走させ、巡航高度まで持ち上げることができたら余剰のエンジンパワー要らずで騒音もCO2も燃料消費も無くて、とてもお得だ。あとエンジン止めて滑空して着陸すればなおよし(別項)。
インフラ的には滑走路長を短くできる(見積では現在の1/3程度で済むとしている)ため、その分ターミナル施設を大きくしたり、逆に小さい空港が作りやすくなったりする。市街地や大都市に近接して建設する事だって夢ではない。

これを実現するものは、簡単に言えば旅客機用のカタパルトということになる。エアバスが示したのはリニアモーター、EM加速器タイプのもので、加減速などの条件は、今後研究する余地があるとする。

究極的には、台車式の離着陸装置で機体側の降着装置自体をオミットするところまで考えられる。

・Express Skyways
http://www.airbus.com/innovation/future-by-airbus/smarter-skies/aircraft-in-free-flight-and-formation-along-express-skyways/

鳥が編隊飛行するのには理由があり、群れ全体としてエネルギーを大きく節約している、というのは有名な話であるが、それを航空機の運行にも応用しよう、というのがこの概念。航空管制と編隊飛行の2つの話題からなる。

旅客機に関わる言葉で「直行便」というのがあるが、現実には文字通りの、目的地への直線飛行には程遠いことがほとんどである。特に国際線では、天候などの要因がなくても、複雑に入り組んだ各国の管制空域を縫って進むケースが普通。ジグザグに飛んだり回り道をしたりで、効率が悪いことこの上なし。
では管制空域が一本化されるとどうなるか、というところまでは、エアバスが実証飛行を行っている。ブリュッセル-ストックホルム間を渡り鳥のごとくまっすぐ飛んで結ぶと、20分ほど飛行時間が節約できた。これは燃料消費量にして725kg、Co2排出量にして2283kgの削減となったそうだ。

入り組んだ航空路線で編隊飛行するのはさすがに無理だろうが、似たような長い航路を通る例はある。ここでは大西洋横断が挙げられており、欧州から米国の東海岸へ行くのも中部地方に行くのも西海岸に行くのも大体同じところを通るわけで、個々の機体の飛行経路を調整することは可能であろう、というわけだ。
ここで編隊飛行と言っているのは、緊密な編隊飛行ではもちろんない。ウイングレットの後流を利用するというものなので、スパンの20倍程度、約1nmの距離をとればいい(とは言え今の基準4nmよりはだいぶ短い)。
つまり、航空機自体が自己組織化っぽく飛行経路の選定を行って、1nm程度の距離をとったゆるい編隊で飛ぶ、というイメージになる。

鳥の例では、25羽がV字型の編隊を組んだ場合、誘導抗力を最大で65%減らし、群れ全体として7%ほど飛行距離を長くすることができるという。旅客機ではここまでは無理だが、2~3機の編隊飛行によるシミュレーションでは、エミッションを最大25%、燃料消費を最大10~12%節減可能との試算結果を得た。これは2009年エアバス主催の学生向けコンテスト、Airbus Fly Your Ideas challengeにて、スタンフォード大のチームから提案されたものを元に、共同研究した成果だそうだ。

これを実現するためのハードウェアはエアバスが研究しており、cooperative flight scheduling(日本語だと協調飛行行程計画?)と飛行制御について調べている。また、実現するには他の機から生じる後流の状態を検知する必要があるが、このためのセンサについては今後の課題。原理的にはLIDARのような装置とIRカメラを搭載することで何とかできると考えられている。
さらに航空機同士、あるいは地上管制との情報のやり取りは膨大なものとなるので、広帯域の無線通信技術も欠かせない。

・Free-glide Aprroaches and Landings
http://www.airbus.com/innovation/future-by-airbus/smarter-skies/low-noise-free-glide-approaches-and-landings/

カタパルト離陸の対になる概念。着陸速度を極限まで下げて滑空で降りたら騒音問題とか関係なくなります、あと滑走路も短くて済む。
ただし着陸速度を下げると簡単に言っても、空中待機なんてやってたら話にならないわけで、これまた航空管制の最適化という題目に大きく影響される。つまり概念としては航空管制最適化の派生。

・Ground Operation
http://www.airbus.com/innovation/future-by-airbus/smarter-skies/low-emission-ground-operations/

航空機が着陸した後、エンジンをすぐに停止できれば騒音や燃料以下略。地上でのハンドリングを、全自動化した牽引車両が受け持つという概念。この中では比較的現実味があると言えよう。
車両の動力を再生可能エネルギーとすればなおよし。

・Power
http://www.airbus.com/innovation/future-by-airbus/smarter-skies/powering-future-aircraft-and-infrastructure/

ちょっと目先を変えて航空機の動力源について。
現在、航空機からのCO2排出は、人工的に排出されるCO2全体の2%を占めている。このうち80%は1500km以上の航路を運航する旅客機のものであり、事実上、別の輸送手段が存在しないものだ。つまり長距離路線ほど、CO2排出量の削減には効く、という論法。
バイオマス系の代替燃料の場合、ライフサイクル全体でのCO2排出量は、化石燃料に対して50~80%少なくなる。ライフサイクル全体というのが曲者ではあるが、これがエアライン各社こぞってバイオ燃料に突っ込む根拠となるわけだ。現在までにバイオ燃料を用いた商業フライトの数は、1500回以上に上っている。

バイオ燃料を巡っては、穀物価格の急騰やら何やらと問題も多く、持続可能で環境負荷の小さい製造方法は、まだ試行錯誤されてる段階。航空機の場合、代替する動力源が当分は実現できないということもあって、その安定供給は、業界全体として避けて通れない事案となっている。
エアバスの見積では、2030年までに代替燃料が30%ほどを占めるとしているが、その先は明示されてない。

今のところバイオ燃料の使用認可は化石燃料との混合比率50/50に限られるが、究極的にはバイオ燃料のみで認可を得るのが目標。
それには安定供給が必須なので、エアバスとしては世界でバリューチェーンの構築を試みているところだそうだ。現時点ではオーストラリア、ブラジル、中東、ルーマニア、スペインで確立しているという。

また、代替燃料の先には、実用化の時期は予測できないとしつつも、燃料電池が有望と見ている模様。

ただ燃料電池にせよ、かつてエアバスが熱心だった水素エンジンにせよ、水素貯蔵の問題が解決しないことには、どうにも無理っぽい感が否めない。

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想像図はソニッククルーザーな感じなのだが、まさか40年も先送りされるとは夢想だにしなかった。いくらなんでも、という感じ。
個人的な感想だが、旅客機のオペレータの保守性は異常。技術の粋を注ぎ込んで787みたいなのが出てきちゃうこと自体が、冷静に考えるとかなり凄い。
さすがにここまでくると、技術革新とは一体何か、みたいなことも考えるようになった。けどこの項とは関係ないので割愛。

MQ-8Bの連続墜落事故に関して原因が公表される/X-47B AV-2がNASパタクセントリバーで初めて飛行を行う/UCLASSの要求仕様は秋頃確定の見込み/X-48C BWBの飛行試験がスタート/X-51Aの最後の飛行実験が失敗に終わる

MQ-8Bの連続墜落事故に関して原因が公表される

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-navy-details-recent-mq-8b-crashes-374996/

USNのMQ-8Bは今年、2012年の3月30日と4月6日に連続して墜落事故を起こし、一時飛行停止を余儀なくされた。飛行停止は間もなく解除されているが、原因が公表されたのはこれが初めてとなる。
3月30日の事故は、西アフリカの沖合いでUSSシンプソンに着艦できず着水、翌朝になってから回収された件で、自動着艦装置の故障が原因。
4月6日の事故は、アフガニスタン北部での墜落で、こちらは航法システムの故障。高度計が作動しなくなったと見られている。

いずれのケースでも、機体が回収される時点までの飛行停止措置がとられた。その他のMQ-8Bは、2機がアフガニスタンでNATO各国の部隊と共同して活動中、4機がUSS Klakringに搭載されてホーンオブアフリカ沖へ展開、ソマリア及び周辺諸国での特殊部隊の活動を支援している。航海は6ヶ月間の予定。

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X-47B AV-2がNASパタクセントリバーで初めて飛行を行う

http://www.flightglobal.com/news/articles/northrop-grumman-x-47b-flies-at-navy-base-anticipating-2014-shipboard-trials-374994/

7月29日、NASパタクセントリバーにおいてX-47Bの2号機、AV-2が35分間の飛行を行った。エドワーズAFBでのチェックアウト・フライト後、NASパタクセントリバーへ移動して以来初めての飛行となる。US当局からは、今後の飛行試験日程は明言されていない。

今年の7月29日は日曜日だったが、10年前のこの日は関係者が集まってどのように艦載UAVを開発するかを話し合った日とか何とかで、計画の上では節目の日付になってるみたい。10年前のこの日付のあたりではUCAV-Nが進行中で、X-47Aのタキシー試験とかがあったようだ。チャイナレイクで初飛行するのはその更に2年後。

http://www.youtube.com/watch?v=crfLkasFp68

2014年の艦上トライアルの前段として、有人機でのソフトウェア開発はかなりの前進を見ているとのこと。
カタパルト試験はNASレイクハーストでもできるが、VX-23はパタクセントリバーがホームベースなので、こちらが主体になる。

UCLASSに繋がる技術デモンストレータというのが現在の位置付けなので、X-47Bを基礎にした機体が実用化に最も近いとは言え、その開発で得られた情報はUCLASSを提案する各社にも公開されることになっているから、アドバンテージは絶対的なものではない。

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UCLASSの要求仕様は秋頃確定の見込み

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-navy-expects-fall-approval-for-uclass-requirements-375585/

海軍航空システムコマンド(NASC)によると、UCLASSの要求仕様に関し、海軍作戦部長(CNO)の承認がまだ下りていないものの、初秋には承認され、確定するだろうとのこと。
ただし業界筋によれば8月5日の週には要求の草案が配布されたとのことで、空中給油無しでの滞空時間に関する条件が示されていたという。草案なので、承認前の書類ということになる。
何度も出ている通り、UCLASSの有力候補と目されているのは、ゼネラルアトミクスのプレデターC、ボーイングのファントム・レイ、LMのシー・ゴーストとなる。

スケジュールについては、2016年に1機種に絞り、2020年にIOC獲得を目指す。ここで言うIOCは、6機が艦載機として空母に搭載されることを指しているものの、この時点では6ヶ月の航海の全行程に渡って任務に付くことは意味しないとのこと。

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X-48C BWBの飛行試験がスタート

http://www.flightglobal.com/news/articles/blended-wing-body-flight-test-campaign-resumes-at-nasa-dryden-375342/

前のX-48Bによる試験は、2007年から2010年にかけ、92回の飛行を実施した。C型では、エンジン数を3から2に減らして1基あたりの推力を増やし、翼端の垂直尾翼を廃して中心線付近に双垂直尾翼を立て、機体後方を60cmほど延長するといった設計変更が加えられた。
設計はボーイングだが、製作は英国のCranfield Aerospaceという企業になる。
計画された飛行性能としては、最大速度120kt、最大高度10000ftという数字が出ている。スパン6.4m、重量230kgというサイズは、実用機(スパン73mの亜音速機)の8.5%スケールモデル。
ボーイングでは、従来の胴体と翼からなる形態に対してより高効率・低騒音を実現し、重量物輸送、空中給油などの用途で15~20年後の実用化を想定している。

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X-51Aの最後の飛行実験が失敗に終わる

http://www.flightglobal.com/news/articles/x-51a-waverider-test-flight-ends-in-failure-375529/

AFRLは8月15日、X-51Aの3回目の飛行実験が14日に実施され、失敗に終わったと発表した。
母機(B-52)からの分離は成功したが、ロケットブースタ(ペガサス)から分離して15秒後、制御を失って墜落。原因は制御翼の動作不良とされており、スクラムジェットが作動する前に失敗ということになった。
制御翼については、これまでの2回の実験ではスクラムジェット作動中においても正常に機能していたため、全く問題視されていなかったようだ。

X-51Aの実験は3回で終わる計画ではあったが、計画目標が十分に達成されたとは言い難い状況であり、予備機はまだ存在しているので、再実験の可能性は残る。ただしUSAFとしての決定はまだ出ていない。
いずれにしても、失敗の原因を正確に把握する必要があるのは言うまでもない。

英国でVAWTの原型試作/NASAが凧式風力発電の実験/LMとOPTが波力発電技術で協力/電車の電源系のスマートグリッド化

英国でVAWTの原型試作

http://www.gizmag.com/flat-pack-wind-turbine/23358/

英国のキール大学は、30年にわたって直交軸タイプの風力タービン(Vertical Axis Wind Turbine、VAWTとも表記する)を開発している。この概念をMcCamleyという企業が製品化しようとしており、原型タービンを製作した。
VAWTは、輸送と設置が簡単であることや、弱い風でも作動する利点があると言われ続けているものの、回転数が高いぶんベアリングの磨耗が著しいことや、軽量構造などの課題も多く、主流にはなりきれていない。

McCamleyでも同様の利点を主張しており、ビルの屋上等への設置も提案している。風速1.8m/sから作動するため、低い設置位置でも大丈夫、という理屈。出力は1~24MWと主張している。
ではあるが、騒音(大型風力タービンのブレード先端と比べれば低速なので問題は少なそうだが)やら屋上の強度を抜きにしても、風速の大きさ=変換可能なエネルギーの大きさであることに変わりはないので、地上高が確保できなければ出力も相応で、かつ安定した出力も得がたいのではないか?という話でもある。

コメント欄にあるように、ビルの上に据えて水を汲み上げるぐらいでちょうどいいのかもしれん。

そしてそれ以前に、この手の話で試作タービンの出力とか具体的な諸元が公表されてないというのは、あまりいい徴候じゃないのであった。
吹かし過ぎなのと似たり寄ったりではあるな。

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NASAが凧式風力発電の実験

http://www.gizmag.com/nasa-airborne-wind-power/23200/

空中で風力発電するシステムとしては、気球タイプのもの(NASAでは風船の外周にタービン羽を配置したようなのを研究していた)のほか、LaRCでは凧をそのまま使う発電システムも考えられている。
すなわちスポーツカイトの名手が凧を8の字飛行させるのと同じように飛ばし、その際、凧糸にあたるケーブルの繰り出しと巻き取りの運動を、地上側のタービンに繋いで回そう、という大変分かりやすいアイディアが中心になる。繰り出す時にタービンを回すが、巻き取る時のエネルギー損失は1割程度、つまり有効に取り出せるのは残りの9割とのこと。

気球/飛行船タイプの空中風力タービンは、数社が試作を行っているものの、どれもシステムが複雑で高価なものになり、ほぼ民間機の自動操縦系に匹敵するものとなっている。

この研究はシステムの単純化を目指しており、地上からの映像解析で自律的に凧を制御する方式をとる。3月にはWebカメラとノートPC程度を組み合わせたシステムで試験が行われており、同様のシステムとソフトウェアで実験することになっている。地上から目視できる程度の雲の下までなら、これで済ませられるという考え方だ。

凧の大きさは3m程度だが、もっと大型のものや、地球外惑星などでの利用も検討されているようだ。大気密度が低ければ効率も下がるが、太陽電池などよりは高効率かな。風が吹けばだが。
当面は低高度での実験、将来はウォロップス島の制限空域で2000ft(風力発電に適する高度と言われる)まで揚げて実験する予定。

こうした研究は、民間ベースでは予算や納期の都合があって難しいがNASAでやるから問題ない的なことを書いてあるけど、産業化できず税金の無駄に終わる可能性(すごい自動凧揚げロボットができましたで終わる可能性)も結構高い。実運用となれば上空の飛行制限が必要になったり、揚げ降ろしやケーブルの素材など、問題は色々ありそうだ。

あと、これも具体的な諸元が不明なので以下略。

ヘリウム気球の方はMARSと呼ばれている。2009年の記事。

http://www.gizmag.com/magenn-mars-floating-wind-generator/11109/

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LMとOPTが波力発電技術で協力

http://www.gizmag.com/lockheed-martin-oct-wave-energy-project/23284/

Ocean Power Technologies (OPT)は、PowerBuoyテクノロジという波力発電システムの技術を有する企業で、ニュージャージー沖にて米海軍の海上設置レーダーとその通信系を稼動させる為の発電システムを担当した実績がある。
LMと協力することになったのは、USNの実験とオレゴン州クース・ベイでの大規模波力発電の提案(最大200基設置で100MW規模まで実現可能というものだった)などに続くものとなる。今度はオーストラリア南岸のビクトリア州ポートランド沖合いでの波力発電所プロジェクトで、この種の設備としては世界最大規模となる見通し。

PowerBuoyは、記事の作動イメージ映像に出ている通り、海面高さの上下(うねり)をピストンの往復運動に変換するタイプの発電システムで、海中のサブステーションを通して海底ケーブルにより陸に送電する。
海上と海中に設備を置く事によるメンテナンスの困難さを、どう克服するのかについては触れられていない。塩害に耐える材料はもとより、稼動するピストン部分も実際には偏荷重がかかるケースが多いはずで、機械的には相当厳しい環境だ。

現在の計画では、45基のPowerBuoyと5基のサブステーションを設置し、発電機総出力は19MW。エネルギー省と観光省から6650万オーストラリア・ドルの補助金を受ける。
最大100MWとあるが、単純計算すると200基以上要る。

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電車の電源系のスマートグリッド化

http://www.gizmag.com/smart-grid-electric-trains/23239/

従来の電車は、減速時のエネルギーが単に熱になって失われるだけなので、効率を改善するためには、これを回収して利用したい。しかし電車を動かす電力網である第三軌条の方は、大電圧(交流)に耐えられないため、回生ブレーキでエネルギー回収しても、これを介して単純に戻すというわけにはいかない。

南東フィラデルフィア交通局で検討されているプランでは、第三軌条の電圧をサブステーションから監視し、電圧過大(約800V以上)になるとリチウムイオン電池の方に流して蓄電、下がると第三軌条に放電、という負のフィードバックループを形成する。サブステーションは5~6駅間に1箇所程度の割合で配置し、それぞれが大規模なSaft Batteriesのリチウムイオン電池コンテナを備える。このMAX20 Intensium Maxの容量は、プリウス280台分に相当する500kWhだそうだ。
収支がプラスになった分は地域送電網に売電、ということになってスマートグリッドに繋がる。