英国でVAWTの原型試作/NASAが凧式風力発電の実験/LMとOPTが波力発電技術で協力/電車の電源系のスマートグリッド化

英国でVAWTの原型試作

http://www.gizmag.com/flat-pack-wind-turbine/23358/

英国のキール大学は、30年にわたって直交軸タイプの風力タービン(Vertical Axis Wind Turbine、VAWTとも表記する)を開発している。この概念をMcCamleyという企業が製品化しようとしており、原型タービンを製作した。
VAWTは、輸送と設置が簡単であることや、弱い風でも作動する利点があると言われ続けているものの、回転数が高いぶんベアリングの磨耗が著しいことや、軽量構造などの課題も多く、主流にはなりきれていない。

McCamleyでも同様の利点を主張しており、ビルの屋上等への設置も提案している。風速1.8m/sから作動するため、低い設置位置でも大丈夫、という理屈。出力は1~24MWと主張している。
ではあるが、騒音(大型風力タービンのブレード先端と比べれば低速なので問題は少なそうだが)やら屋上の強度を抜きにしても、風速の大きさ=変換可能なエネルギーの大きさであることに変わりはないので、地上高が確保できなければ出力も相応で、かつ安定した出力も得がたいのではないか?という話でもある。

コメント欄にあるように、ビルの上に据えて水を汲み上げるぐらいでちょうどいいのかもしれん。

そしてそれ以前に、この手の話で試作タービンの出力とか具体的な諸元が公表されてないというのは、あまりいい徴候じゃないのであった。
吹かし過ぎなのと似たり寄ったりではあるな。

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NASAが凧式風力発電の実験

http://www.gizmag.com/nasa-airborne-wind-power/23200/

空中で風力発電するシステムとしては、気球タイプのもの(NASAでは風船の外周にタービン羽を配置したようなのを研究していた)のほか、LaRCでは凧をそのまま使う発電システムも考えられている。
すなわちスポーツカイトの名手が凧を8の字飛行させるのと同じように飛ばし、その際、凧糸にあたるケーブルの繰り出しと巻き取りの運動を、地上側のタービンに繋いで回そう、という大変分かりやすいアイディアが中心になる。繰り出す時にタービンを回すが、巻き取る時のエネルギー損失は1割程度、つまり有効に取り出せるのは残りの9割とのこと。

気球/飛行船タイプの空中風力タービンは、数社が試作を行っているものの、どれもシステムが複雑で高価なものになり、ほぼ民間機の自動操縦系に匹敵するものとなっている。

この研究はシステムの単純化を目指しており、地上からの映像解析で自律的に凧を制御する方式をとる。3月にはWebカメラとノートPC程度を組み合わせたシステムで試験が行われており、同様のシステムとソフトウェアで実験することになっている。地上から目視できる程度の雲の下までなら、これで済ませられるという考え方だ。

凧の大きさは3m程度だが、もっと大型のものや、地球外惑星などでの利用も検討されているようだ。大気密度が低ければ効率も下がるが、太陽電池などよりは高効率かな。風が吹けばだが。
当面は低高度での実験、将来はウォロップス島の制限空域で2000ft(風力発電に適する高度と言われる)まで揚げて実験する予定。

こうした研究は、民間ベースでは予算や納期の都合があって難しいがNASAでやるから問題ない的なことを書いてあるけど、産業化できず税金の無駄に終わる可能性(すごい自動凧揚げロボットができましたで終わる可能性)も結構高い。実運用となれば上空の飛行制限が必要になったり、揚げ降ろしやケーブルの素材など、問題は色々ありそうだ。

あと、これも具体的な諸元が不明なので以下略。

ヘリウム気球の方はMARSと呼ばれている。2009年の記事。

http://www.gizmag.com/magenn-mars-floating-wind-generator/11109/

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LMとOPTが波力発電技術で協力

http://www.gizmag.com/lockheed-martin-oct-wave-energy-project/23284/

Ocean Power Technologies (OPT)は、PowerBuoyテクノロジという波力発電システムの技術を有する企業で、ニュージャージー沖にて米海軍の海上設置レーダーとその通信系を稼動させる為の発電システムを担当した実績がある。
LMと協力することになったのは、USNの実験とオレゴン州クース・ベイでの大規模波力発電の提案(最大200基設置で100MW規模まで実現可能というものだった)などに続くものとなる。今度はオーストラリア南岸のビクトリア州ポートランド沖合いでの波力発電所プロジェクトで、この種の設備としては世界最大規模となる見通し。

PowerBuoyは、記事の作動イメージ映像に出ている通り、海面高さの上下(うねり)をピストンの往復運動に変換するタイプの発電システムで、海中のサブステーションを通して海底ケーブルにより陸に送電する。
海上と海中に設備を置く事によるメンテナンスの困難さを、どう克服するのかについては触れられていない。塩害に耐える材料はもとより、稼動するピストン部分も実際には偏荷重がかかるケースが多いはずで、機械的には相当厳しい環境だ。

現在の計画では、45基のPowerBuoyと5基のサブステーションを設置し、発電機総出力は19MW。エネルギー省と観光省から6650万オーストラリア・ドルの補助金を受ける。
最大100MWとあるが、単純計算すると200基以上要る。

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電車の電源系のスマートグリッド化

http://www.gizmag.com/smart-grid-electric-trains/23239/

従来の電車は、減速時のエネルギーが単に熱になって失われるだけなので、効率を改善するためには、これを回収して利用したい。しかし電車を動かす電力網である第三軌条の方は、大電圧(交流)に耐えられないため、回生ブレーキでエネルギー回収しても、これを介して単純に戻すというわけにはいかない。

南東フィラデルフィア交通局で検討されているプランでは、第三軌条の電圧をサブステーションから監視し、電圧過大(約800V以上)になるとリチウムイオン電池の方に流して蓄電、下がると第三軌条に放電、という負のフィードバックループを形成する。サブステーションは5~6駅間に1箇所程度の割合で配置し、それぞれが大規模なSaft Batteriesのリチウムイオン電池コンテナを備える。このMAX20 Intensium Maxの容量は、プリウス280台分に相当する500kWhだそうだ。
収支がプラスになった分は地域送電網に売電、ということになってスマートグリッドに繋がる。

X-56A MUTT/ユーロコプターX4について/スカイダイビングの高度記録樹立を狙うレッドブル・ストラトス・プロジェクト

X-56A MUTT

http://www.wpafb.af.mil/news/story.asp?id=123291532]

2月27日、AFRLはMulti-Utility Aeroelastic Demonstration (MAD) programのためのデモンストレータ、Multi-Utility Technology Testbed (MUTT) にX-56Aというディジグネーションを付与すると発表した。
これはXプレーンとしては最新のものとなるようだ。

この実験機はモジュラー化された無人機で、アクティブなフラッター抑制機構や、ガストによって生じる荷重を緩和する機構の研究を行う。大雑把に言えば飛行制御系の実験機で、将来の航空機で一般的に採用される(かもしれない)高アスペクト比の翼についての研究に用いられる。
細長い翼は、薄く柔軟な構造とすれば劇的な軽量化が可能である一方、制御不能の振動に陥りやすく、突発的な荷重にも弱いので、これらを動的に抑制しようという感じのものらしい。

エンジンはJetCat P240ターボジェット双発、スパン28ft、重量480ポンド。
機体の特徴としては、まず主翼を簡単に交換できる構造が挙げられ、様々なパラメータを持った翼の試験が行える。また、機体中心線に沿って強化設置点が設けられており、3基目のエンジンを搭載したり、結合翼の基部構造をくっつけたりもできる。交換用の胴体も作られるみたいだ。

計画自体はAFRLが主導、NASA(DFRC)とLMが共同研究に加わっている。
2012年夏に初飛行予定。夏の終わりまでにAFRLの飛行実験を一通りこなした後、初秋からDFRCでの研究に移行することになっている。DFRCでは将来の低エミッション航空機や軽量構造研究のためのデータがとられる予定。ガルフストリームが関与しているというX-54へ繋がるステップともなる。

http://www.nasa.gov/topics/aeronautics/features/x-56a_mutt.html

全翼にエンジン2基なので、サムネでは一見、X-48 BWBっぽい?とも思えるものの、でかい画像で見ると主翼などはカックカクの直線で構成されており、結合翼の上翼を取っ払ったような形態で、イメージがだいぶ違う。LMらしいというか、無駄にステルス性追求してる感じ。

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ユーロコプターX4について

http://www.aviationweek.com/aw/generic/story.jsp?id=news/awx/2012/02/12/awx_02_12_2012_p0-424261.xml&headline=Eurocopter%20Outlines%20Plans%20For%20X4%20Program&channel=busav

ユーロコプターはX3デモンストレータに続きX4を計画している。これは実用機になり、2017年の就航を目指す。機体規模としては所謂ミディアムツイン、中型双発クラスで、AS365やEC155の後継機に該当するとのこと。機体重量で言えば9000~11000ポンド。
2015年に初飛行させる計画だが、2017年に完成するX4は暫定型で、2020年に本命の改良型が予定される。

2020年の型ではFBWが採用され、より進歩したアビオニクスなどが採用されることになっている。同社CEO曰く、70%の騒音低減と30%の燃費向上を達成する見込みという。

協力する企業はタレスとSagemで、既存の回転翼機とは全く異なる安全対策などが研究されており、その革新っぷりはA320のデジタルFBW+サイドスティックにも匹敵するそうだ。でも初期のA320っていろいろアレだったよね。別にいいけど。

また段階的な発展は、運用者やパイロットの機材転換にも有利であるとしている。

X3の飛行試験については、現在、大掛かりな安全点検を実施中で、2月後半から準備が整うとされ、6月~7月にかけてデモンストレーション飛行を実施するとのこと。シコルスキーX2の達成した速度記録250ktを上回れるかどうかは定かでないが、とりあえず記録よりも経験を積む方が大事と述べている。

普通の回転翼機との設計上の違いの一つは、飛行速度の増加に伴うもので、これは風圧荷重を増し、バードストライクの危険度を増すため、キャノピーの強化が必須となる。少なくとも固定翼機並でないとまずいだろう。

プロペラ付け足して重量も増大するのに、大きな騒音低減と燃費向上を達成できるっていう理屈がよくわからん。胴体と固定翼で揚力発生するからいいのか?

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スカイダイビングの高度記録樹立を狙うレッドブル・ストラトス・プロジェクト

http://www.gizmag.com/red-bull-stratos-sky-diving-record/21791/

スカイダイビングにおける最高高度記録は意外と古く、1960年8月に樹立された102800ft(31300m)というのが、今でも生きている。
この記録は、ジョー・キッティンガー(退役大佐)が樹立したものだが、この人のキャリアはなかなか凄い。気球で大西洋を横断した最初の人間であり、米空軍パイロットとしても勇名を馳せた。ベトナム戦争には3回従軍し、搭乗機が撃墜されて11ヶ月間の捕虜生活を送った後、米国へ帰還。1978年に退役し、最終階級は大佐だった。
彼が気球を使ってスカイダイビングの記録に挑んだのは1959年と1960年の2回。最初の降下は76400ft(23300m)から行われたが、パラシュートのトラブルでフラットスピンに陥って意識を失うというアクシデントに見舞われる。この時四肢には22gもの荷重がかかったとされ、そのまま墜落死してもおかしくなかったものの、自動開傘が働いて辛くも生還した。
最後の降下は102800ft(31300m)からで、これが記録となって残っている。降下速度は実に614mph(988m/s)に達したとのこと。上昇中に右手の与圧が効かなくなったため、右手が2倍ほどに膨れあがった…って、この辺何かで聞いたような、と思ったらBSドキュメンタリーか。

http://ja.wikipedia.org/wiki/プロジェクト・エクセルシオ

キッティンガー氏は今もご健在で、プロジェクトのアドバイザーを務めているそうだ。現役パイロットでもある

今回記録に挑むのは、オーストラリア人のフェリックス・バウムガードナー氏。
チームは5年かけて与圧された生命維持カプセルと、宇宙服を開発した。カプセルの寸法は高さ3.4m×幅2.4m、重量1315kg。ヘリウムの入った高高度気球で打ち上げられる。降下後、カプセルは気球を切り離し、パラシュートで着地することになっている。また宇宙服は、華氏-70度の外気に耐えられるもの。

3月15日、最初の試験飛行がニューメキシコ州の砂漠で実施され、バウムガードナー氏は71580ftからの降下を成功された。パラシュートが7890ftで開傘するまで3分33秒、降下速度はほぼ365mphだったという。
この先、もう一度90000ftからの試験飛行を行い、今年後半に23マイルからの本番が予定されている。

ユージン・アンドレーエフという名前が出てくるが、この人物は高度こそ記録に及んでいないが、こちらはFAI公認の自由落下時間の世界記録を持っている。

http://en.wikipedia.org/wiki/Eugene_Andreev

1962年9月4日、ロシア南部のサラトフ近郊で、83523ftから降下し、高度差80380ftの自由落下を行った。
自由落下ということは、高高度で姿勢安定のためのパラシュートを使う事などをしてないということで、その辺が違う。

Stratolaunchは2ヶ月以内にシステム設計レビュー(SDR)を完了する/TsAGIが超音速ビジネスジェット機のコンセプトを発表

Stratolaunchは2ヶ月以内にシステム設計レビュー(SDR)を完了する

http://www.flightglobal.com/news/articles/stratolaunch-nears-conclusion-of-systems-design-review-368767/

2月末時点の記事なので4月末までということになるか。
Stratolaunchは複雑な2段式の打ち上げシステムとなるため、システム設計レビュー(SDR)と予備設計レビュー(PDR)を経て、正確な仕様を確定させる。これにはMTOWや離陸滑走距離といった重要なパラメータが含まれる。

計画が2011年12月に公開されて以来、モハベの工場では予備的な製造がスタートしている。夏頃の完成を目指して試験用の翼桁やウイングボックスを作り始めた。

スケールドコンポジットでは、ユナイテッド航空を退役した2機のB.747-400を購入済みで、これらから主要コンポーネントを移植する計画としている。つまりP&W 4056エンジン、油圧系統、電気系統、車輪、風防ガラスなどだ。747-400を選択したのは、MTOWがStratolaunch母機に近く、新たに設計しなくても目的に合致しているからだという。
製造数はまず1機だが、成功すればより多くの機数を揃えたい意向。将来の展開はまだ構想の段階に留まる。
また、更に大型化した打ち上げプラットフォームへ発展させることもできるという。運用するための条件は厳しくなるけど、物理的上限はもうちょっと上、ということみたいだ。

Stratolaunchの打ち上げ能力は、LEOまで6100kgといったクラスで、在来型のロケットで言えば、SpaceXのFalcon1、ボーイングのデルタII、オービタルのアンタレスといったものが入ってくる。大雑把に言って小型~中型ロケットまでと競合するものと言える。
このうちFalcon1とデルタIIは、打ち上げ契約が一段落してオプションを残すのみとなり、アンタレスは今年6月の初打ち上げを目指している。
2016年からの就航を目指すが、まだ発表から日が浅いとは言うものの、現時点で顧客を獲得できておらず、KSCの長大な滑走路についても利用許可が下りていない状況で、まず機体が先にできてくるのは確実だろう。
KXCの滑走路を使えば、赤道付近でもあるし、大西洋に向けて飛び立つことで、地球の時点を利用する事もできて便利だ。

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TsAGIが超音速ビジネスジェット機のコンセプトを発表

http://www.flightglobal.com/news/articles/russia-working-on-quiet-supersonic-business-jet-369505/

ロシアのTsAGI、中央流体力学研究所は、スホーイ、NPOサトゥルンほかの数社と協力し、低騒音の超音速ビジネスジェット機(SSBJ)の予備設計開発をスタートさせると述べた。計画の目的は、まだ立ち上がっていない将来のSSBJ市場をロシアの航空宇宙産業がリードする形を作るというもの。

TsAGIの副所長が述べているように、ロシア、というか旧ソ連時代を通じて、このような産業界、研究組織との広範な連携は前例がない。大雑把に言うとTsAGIがいろいろ考えて、設計局が具体化するといったスタイルだった。

低騒音化については、設計目標は亜音速ジェット機程度とあるので、QSTなんかよりは穏当だ。新開発のエンジンが肝になりそう。コンセプト図でも小型エンジン4発機となっている。これは既存の戦闘機用エンジンをそのまま流用するといったものでは不可能ぽい感じ。

他の特徴としては、長い機首、双垂直尾翼、上下反角が怪しい細長いダブルデルタの主翼など。S-21やTu-444との大きな違いは、機体上面のエンジンであり、極めてタイトかつミニマムな円形断面じゃなさそうな胴体に尽きるだろう。
抹茶羊羹に斜めに包丁入れたみたいな胴体後端は気になる。というか何なのかしらこの緑色は。

ツポレフのサイト、Tu-444の頁まだ置いてあった。

http://www.tupolev.ru/english/Show.asp?SectionID=199

名前の通り、Tu-144の小型版のような形態だった。確かエンジンはAL-31FのA/B無し版とかなんとか。実現性はそれなりに高かったと思うけど、もし作ったら騒音が戦闘機並なのは間違いなし。

TsAGIのコンセプト図と機首周りは似てるけど、折れたりするんだろか。

パラグライダー+トライク/水陸両用ボート、イグアナ29/VESTAS Sailrocket 2/Jetmanと編隊飛行

パラグライダー+トライク

http://www.gizmag.com/paragliding-motor-trike-concept/20594/

セルビア人のデザイナー、Zvezdan Nedeljkovic氏によるコンセプトアート。007シリーズの次回作向けにQが製作してそうな、とは記事書いた人の弁。一瞬後ろのプロペラだけで走るのかと思ったが、そんなこともなさそうだ。
というか具体性がなさすぎるので、単に絵として描いただけという感じでもある。

セール自体の大きさはもう少し必要じゃないかなあ。重量次第だけど。

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水陸両用ボート、イグアナ29

http://www.gizmag.com/iguana-29-amphibious-boat/20486/

高速ボートに地上走行系を追加した形の乗り物は、アイディアとしてはそれほど珍しくないが、車輪じゃなくてキャタピラが付いてるところが斬新というか、もはや特撮のプロップみたい。引き込むとV字型ハルの半滑走艇体と完全に一体化するようだ。

水上速度は最高35kt、地上ではあらゆる地形を最高8km/hで走行できる。この艇を大型化して10人乗りにする計画があるとのこと。ちょっとした輸送にも役立ちそうだが、小型モーターボート規模のイグアナ29でも値段は21万5000ユーロ程度する。

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VESTAS Sailrocket 2

http://www.gizmag.com/vestas-sailrocket-2-speed-record-attempt/20564/

VESTAS Sailrocket 2は、帆走による水上速度記録を狙うヨット…というかボート…というか多胴型のハイドロフォイル?
帆と人が乗ってる艇体の向きが違ったりして、かなり特異な形態をしている。風を受ける構造物も、帆というより翼に近い。

「2」と付いてる通り、この艇は第二世代型で、最初のSailrocket 1が製作されたのは2008年だった。場所はナミビアのウォルビス・ベイ。波が穏やかでフラットな海面の上を20kt以上の風が吹くため、この手の試みには好適とされてるようだ。
この艇は、最終的に速度52ktまで達したが、公式記録を残す前に艇体が水面から弾き飛ばされるようにして転覆、壊れてしまう。

http://www.youtube.com/watch?v=XSOJH8Gi_Y8

壊れた後。

http://www.youtube.com/watch?v=2wXDtqb9D4M

一方、もっとシンプルな手段で記録に挑んだのはウインドサーファーの一団だった。現在の世界記録を保持しているのも、こうしたウインドサーファーの一人で、米国人のロブ・ダグラスが2010年10月に達成した、500m区間で55.65ktという記録がある。場所はやはりナミビア、ウォルビス・ベイ。

http://www.youtube.com/watch?v=Y-7HE9OyhHI&NR

これはこれで、コケたらヤバイのは言うまでもない。

VSR2チームの計画は、9年前から速度記録を目標として進められているというから、そのスタートは結構前。記録は当時より9ktほど上昇しているものの、Sailrocket 2の計画最高速度は60kt超なので、その点は問題にならないらしい。60ktというと、もはやキャビテーションが発生する領域に入ってくるが、特殊なフォイルの形状によって空気を送り込み、キャビテーションを抑制するということになってるらしい。これは高速に適合したスクリューでは珍しくないものの、ヨットのハイドロフォイルに応用した例はないそうだ。言われてみればハイスキュードプロペラの翼みたいな格好をしているような…

ナミビアへ出発する前の今年4月、英国のワイト島での初期のトライアルでは速度40kt程度まで確認し、10月19日、ウォルビス・ベイでの最初の500m航走で早くも54ktを達成した。この時の風速は30ktとのこと。
当地での記録挑戦に適した、いい風の吹く時期というのは9月から12月。記録への挑戦は、World Sailing Speed Record Council (WSSRC)の立ち会いのもと、28日間の日程で行われることになっている。

…と書かれたのが11月初め。そろそろ時間切れだなあ。
この設計では60ktは無理なのか。

http://sailrocket.com/

記事中、10月のテストの様子が動画で貼り付けられてるが、確かに前型よりもはるかに安定してるように見える。

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Jetmanと編隊飛行

http://www.gizmag.com/jetman-flies-in-formation-with-jets/20673/

一緒に飛んでるのはブライトリングのL-39が2機。とヘリコプター。ブライトリングがスポンサーだったみたい。

今こんな塗装になってるんだな。

http://www.breitling-jet-team.com/

http://www.youtube.com/watch?v=Ez63f_iVsD8

 

飛行船の高度記録が更新される/e-voloがマルチコプターの有人初飛行を実施

飛行船の高度記録が更新される

http://www.jpaerospace.com/
http://www.gizmag.com/highest-airship-flight-record/20379/

10月22日、JPエアロスペースという気球専門の企業が達成したもので、到達高度は95085ft(28982m)、それまでの記録を6.4kmほど上回ったとのこと。ここの社長は、大手が巨額の投資とともに長年取り組んできたものを、5年間、30000ドルで達成できたことを誇っている。

タンデムと名付けられた通り、1.8mの竜骨(主構造)両端に2個の気球を連結し、推進用のプロペラ2枚とモータを載せた格好をしている。プロペラはそれぞれ独立して動く。無人で、フライトは地上から遠隔制御で行う。
飛行時の重量は気球を含めて80ポンドほど。
高度40000~60000ftの乱流を避けて巡航高度に達するまで、プロペラは回さない。

JPエアロスペースは高高度飛行船を利用するAirship to Orbit計画というのを提案しており、タンデムはその中心となるプラットフォーム。小型ロケットを打ち上げたり、上層大気圏での様々な活動が可能となる。

記録飛行は、気球の一つが破裂して中断された。残る一つは切り離して本体は降下、5つのパラシュートを使って地上に落着したとのこと。

オンボード映像は、竹ひごみたいなトラス構造といい、やけにノスタルジックな雰囲気となっている。

この企業は東芝UKのCMにも制作協力していたらしい。

http://www.youtube.com/watch?v=k6PSbUl_68k

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e-voloがマルチコプターの有人初飛行を実施

http://www.gizmag.com/first-manned-multicopter-flight/20345/

10月21日、ドイツのe-voloという企業が、多数のローターで飛行するタイプの有人回転翼機を初飛行させた。場所はドイツ南西部。電動モーター駆動で1.5分ほど飛行したとのこと。同社では世界初の有人マルチコプターと称している。
マルチコプターというのは、カタカナ的な語感はそんなに悪くないが、今のところは単なる造語に過ぎない。とにかくヘリコプターじゃないというのを強調したいらしい。

この手のアイディアはわりと昔からあって、実際に飛行させるところまで行った人もいたような気がしたが、まともに浮いた=制御された飛行という意味では初めてかもしれない。

ローターの数は16で、ブレード数はそれぞれ2枚。4つずつを一組にして、アームで支え、中央にパイロットが座る形。ローター数とパワーの兼ね合いで言えば、ローター4つ死んでも飛べるそうだ。近年のセンサと制御と小出力無線技術の進歩の賜物で、ローターは独立して制御され、飛行安定を保つ。
民間向け実用型のイメージ図では各ローター周囲をダクト…というかフレームで覆っている。あとアーム自体を前後に傾斜させそうな感じもするが、よくわからない。

よほどの余剰推力が無ければ、水平方向の推力を発生する、サイドスラスタみたいのも結局要るんじゃないかと思うがこれだけでは何とも言えん。

ハイブリッド飛行船ソーラー・シップ/Rotundus GroundBot/C919、MS-21の挑戦

ハイブリッド飛行船ソーラー・シップ

http://www.gizmag.com/solar-ship-hybrid-airship/20263/

ソーラー・シップという名称は企業名そのものでもある。カナダの企業。
名前から想像できるように、太陽電池を一面に貼り付けたハイブリッド飛行船。ただし形状は全翼デルタそのもののように平たい。横倒しのハート形風船にも近いが、断面形状は翼形になっており、前進すると揚力を発生して浮く。
下面にはスタビレータが2枚、後縁には動翼が付いてる。動力装置は太陽電池とバッテリと電動モーターでプロペラを回す。

全体としては、一般的なヘリウム飛行船というより、ヘリウムで機体の荷重を持たせる航空機に近い。つまり、ある程度は離着陸距離が必要になり、滞空時間も犠牲になるが、高速で飛行でき、頑丈に作れて、地上では航空機に準じた取り扱いが可能になる利点がある。
ヘリウムの浮力が少ない分を空気力学的な揚力で補えば、ペイロードと航続距離は確保できるという考え方みたい。

同社は既に全長10mのプロトタイプを製作し、実際に飛行させた。
実用型としてはCaracal、Chui、Nanuqという大きさの異なる3種類のコンセプト機を設計中。輸送やISRミッションが十分に可能なサイズとなっている。ただし滞空時間は日のオーダーじゃない感じなので、長くて普通のMALE-UAV程度かも。
ペイロードは750kg/2500kg/30ton、最大速度は120km/h/100km/h/120km/h、航続距離は2500km/5000km/6000km、離着陸距離はCaracalとChuiが無荷重で50m、積載状態で100m。Nanuqは同100m、200m。

最大でペイロード30tonを6000km、燃料代不要、というのはインパクトがあるが、飛行船の係留設備以上の難物になりかねないサイズだから、やっぱりちょっと厳しいかもしれない。

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Rotundus GroundBot

http://www.gizmag.com/rotundus-groundbot/20259/

球形の自走式カメラというかUGVというかゼロイドのご先祖様みたいな。

Rotundusはスウェーデンの企業で、IRや360度カメラ、マイク、スピーカー、更には放射線量計や火炎、煙、微生物、爆発物探知用の各種センサを搭載でき、外装は密閉構造で、陸地でも雪上でも、さらに水に浮くから水上もいける。

カメラのサイズから想像できるが、直径は60cmと大きめ。サッカーボールの3倍ぐらい。まさにゼロイド。重量25kg。泥沼とか雪原は無理ぽい。埋まる。
航法装置としてはGPS内蔵で、移動速度は最大10km/h、稼働時間はミッションプロファイルによるが8~16時間とのこと。充電は3~4時間。

空港、鉄道、発電所、国境警備からイベント警備までに適する。

あと、人手不足の秘密基地のセキュリティにも最適だと思う。
動画はオレンジ警報みたいだな。

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C919、MS-21の挑戦

http://www.flightglobal.com/news/articles/china-russia-make-inroads-with-narrowbodies-363440/

C919は中国AVIC、MS-21はロシアのイルクート航空機製造と、いずれもバックに国が付いてボーイングとエアバスの牙城に挑戦しようとしている。
2機種とも2014年の初飛行を目指しており、国内を中心に受注数を増やしてロンチにこぎつけた。

C919の方は、パリショーにおいて、大手LCCのライアンエアが200機発注するとかしないとかで話題になったが、同社はボンバルディアとも協力しており、まだ流動的。ただし2012年前半で737の納入が終わるので、次の手を打つタイミングになっているのだけは確か。新型機の納入は2017年以降ということになっている。
1号機のスチールカットは今年12月を予定。2016年に中国で就航し、FAAとEASAの型式証明を取得する計画もある。
またロンチエンジンのLeap-X1Cのほか、AVIC民間航空エンジン部門とMTUの共同開発でCJ-1000Aというエンジンを開発中とのこと。2020年実用化予定。
AVICはARJ21の遅延に直面しているが、これがC919開発にどう影響するかは定かでない。

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0922&f=national_0922_169.shtml

一方、MS-21はイリューシンファイナンスの135機など200機の受注を集めた。2012年末までに最終設計段階に達し、2014年初飛行、2016年型式証明取得、2017年就航を目指す。
基本型MS-21の派生型に続いて、ショートボディの-200と-300を設計、その後大型化した-400の設計に進む。最大で各型合計1200機を製造する計画。
またMS-21では高い国産化率を達成するという目標があり、2025年にグローバルでの売上10%とともに国産化率70%を目指し、国内産業界のパートナーシップ契約が結ばれてる。スーパージェットやTu-204SMなどとも住み分けるようにする。

これらが海外輸出されるときに大きな壁となって立ちはだかるのが、A320neoとB.737MAXということになるわけで、両者ともあまりでかいことは言ってない。イルクートの方はMAKSで、このクラスの市場規模は非常に大きいから、もう一社ぐらい入る余地ができるんじゃないか、みたいな見解を示している。

Hüttlin Kugelmotor/シボレーの次世代型EN-Vをシンガポールで実証試験に/屋内スキーリゾートSkipark 360°/LEVYTATOR/NASAのGreen Flight Challangeの勝者Taurus G4

Hüttlin Kugelmotor

http://www.gizmag.com/huttlin-kugelmotor/19923/

EV最大のネックは電源、電池の性能であるが、それを内燃機関で補うアイディアは数多くある。

Hüttlin Kugelmotorは、ドイツの67歳の工学博士が考案した装置で、内燃機関で電気を供給するレンジエクステンダに分類されるもの。
作動原理としては、4サイクル内燃機関のピストンの往復運動を、直接起電力に変換する。ピストンとシリンダ二組を球状のブロックに押し込めてある。シリンダは円に沿って動く感じ。具体的には動画参照。

これとは全く別に、ディスクジェネレータというのも開発されている。
一種のロータリーエンジンで、本体の回転を利用して燃焼室内に衝撃波を発生させ、混合気に圧縮・点火する。プラグなどは存在しない。

http://www.gizmag.com/wave-disc-generator-combustion-engine/19394/

こちらは出力があまり大きくないようだ。

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シボレーの次世代型EN-Vをシンガポールで実証試験に

http://www.gizmag.com/next-gen-en-v-concept/20157/

EN-V自体はGM開発の、もう何番煎じですかという感じのパーソナル輸送機器だが、同コンセプト次世代型の開発について、中国/シンガポールとGMがMOUを交わした。
シンガポールは中国と協力して、Sino-Singapore Tianjin Eco-City(漢字で書くと、「中新天津生態城」)という環境実験都市のようなものを造成する構想を持っており、都市建設を計画を統括するのがSino-Singapore Tianjin Eco-City Investment and Development Co. Ltd. (SSTEC)という国営企業だか公社だかで、GMが直接契約したのは、このSSTECということになる。

http://www.tianjinecocity.gov.sg/

35万人ぐらい住める規模のようだ。

ゼロから建設する都市なので、この種の輸送機器を試すにはうってつけの場所と言える。

自動車文明に合わせて作った都市に持ち込む役には立たないが、相互コミュニケーションによる連携や航法など、システムを実証するには有用なデータが得られるんじゃないでしょうかよくわかんないけど。

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20111013_483480.html

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屋内スキーリゾートSkipark 360°

http://www.gizmag.com/indoor-ski-resort/19963/

スウェーデンの建設コンサルタント、CFモラーが発表したもので、全長700m、高低差160mのスロープを中心とした通年型屋内ウインタースポーツ総合リゾート建設計画。
ワールドカップも誘致できるというのが売り文句だが、さすがに男子滑降には短いような気がする。

ストックホルムから車で45分ぐらいの森に建設する計画で、周辺施設はリゾートホテルと土産物屋などのほか、クロスカントリースキーのトンネルとかバイアスロンとか各種スケート場とかアイスホッケー場とか、そういうの三昧になるらしい。一応、分解可能なマテリアルで建設され、地熱、太陽光、風力、水力を組み合わせた再生可能エネルギーで運営することになっている。

屋内スキー場は日本でもバブルの頃にやってすぐ潰れたが、スウェーデンはさすがウインタースポーツ大国という感じだ。総工費15~20億クローネ。2013年着工予定。

欧州経済危機って何なの。どうでもいいけど。

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LEVYTATOR

http://www.gizmag.com/the-levytator/20111/

ロンドン大学で研究されている、屈曲可能かつ省エネルギーなエスカレーターといったもので、踏み段の前後を曲面としたのが最大の特徴。曲面にそった範囲で方向を曲げられるという理屈。
スペースの制約は生じるものの、理屈では上りと下りを1本でまとめることもできるので、その場合は従来エスカレーター2本分よりも消費するエネルギーは減らせる。

この手のアイディアって、昔だと摺動摩擦抵抗とか摩耗がネックになってたと思う。

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NASAのGreen Flight Challangeの勝者Taurus G4
http://www.gizmag.com/green-flight-challenge-winner/20060/

優勝チームはペンシルバニア州のPipistrel-USA。Taurus G4は、145kWの電動モータ1基で双胴の…というか翼端を結合した2機のタンデム複座グライダーを推進させる、という機体構成。スパンはおよそ75ft。

トライアルは4人が搭乗した状態で、最低速度100mphを保ちつつ200マイルを飛行(2時間で200マイルの飛行)、1人あたりの燃料消費量(単位は1人当たりmpg)を競うもの。
Taurus G4の記録は、平均速度107mphで1人当たり403mpg、つまりは1人当たり0.58L/100kmというもので、プリウスと比較すれば速度、燃料効率とも2倍となる数値だった。

2番手のeGeniusの方が正攻法な機体だな。普通のモーターグライダーに近い構成をとる。エアバスも関係する、シュツットガルト大のチームだった。

http://www.gizmag.com/electric-powered-egenius-maiden-fligt/18759/

ユーロコプターはハイブリッド動力の採用によりヘリコプターの安全性向上を試みる/Coffee Carが世界記録更新/ESAとフィンランド企業・大学が布製アンテナを共同開発/48Vで作動する電動スーパーチャージャー

ユーロコプターはハイブリッド動力の採用によりヘリコプターの安全性向上を試みる

http://www.flightglobal.com/news/articles/eurocopter-targets-safety-boost-with-hybrid-helicopter-362886/

ここで言うハイブリッドは、シリーズだパラレルだといった全面的な複数動力系の統合ではなくて、エンジンパワーが失われた場合に、電動機である程度代替することはできないか、といったもの。動力系を二重化して冗長性を持たすとかそういう感じの話になっている。

ユーロコプターでは単発タービンエンジンの軽ヘリコプター、AS350を改造してデモンストレータを製作、実際に電源とモータを追加して飛行実験を行った。
詳細不明だが、うまくいったみたい。ただし電池でキャビン潰すとかしない限り、長時間は出力を維持できないだろうし、モータがエンジンよりだいぶ低出力だとすれば、うまいこと不時着できる、という程度のもんかもしれない。

同社では、実験結果を踏まえてどういった形で製品に応用するか研究中とのこと。
重くなりすぎると本末転倒だし、どのみちローター破損とかには対応できないし、一般的な装備とするには落とし所が難しそうだ。支援なしで過酷な環境に晒される、といったミッションなら有効かもしれないが。

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Coffee Carが世界記録更新

http://www.gizmag.com/coffee-car-speed-record/20003/

有機系廃棄物を利用する自動車の速度記録という題目だが、有機系の素材であれば木質のチップから生ごみまで大体OKみたい。ガス化して使うことになるので、早い話が敗戦国ではおなじみの木炭ガス車とかそーゆーアレ。
以前の世界記録は、今年樹立された米国のビーバーXR7で、速度は47mphだった。

Coffee CarはイングランドのTeesdale Conservation Vounteersというチームが開発したもので、燃料はその名の通りコーヒー滓。ベース車は最後のローバーとしても知られるローバーSD1。速度は66.5mphを記録し(2回走行の平均速度)、世界記録更新に成功したとのこと。

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ESAとフィンランド企業・大学が布製アンテナを共同開発

http://www.gizmag.com/fabric-antenna-lost-at-sea/20025/

ESAとフィンランドの企業Patria、タンペレ工科大が共同で開発しているもので、Cospas-Sarsat捜索衛星救助システムに対応する。

http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/gmdss/cospas_sarsat/

柔軟な布でできたアンテナで、ライフジャケットに縫い付けることも容易なほど小さい。ちょっとしたネームタグ大。
実際に海で試験を実施して良好な結果を得たとのこと。

この種の「ウェアラブル」なアンテナは、以前から軍事用途での研究が知られているが、民生用でも役立つものであることは言うまでもない。

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48Vで作動する電動スーパーチャージャー

http://www.gizmag.com/controlled-power-technologies-48v-electric-vtes-supercharger/20037/

http://www.cpowert.com/

先週、ドレスデン工科大で開かれた16th Annual Supercharging conferenceにおいて、Controlled Power Technologies (CPT)という企業が48V電源で作動する電動スーパーチャージャーを発表した。ここは以前、排気ガスのエネルギー回収システムとともに、12V電源で作動するタイプの電動S/Cを開発しており、その高出力型ということになる。
日本でもハイブリッド車の電源系などが高圧化してるが、欧州では最近48V化という流れがあって、それに合わせた展開らしい。

使用する電力は7kW程度で、クランクシャフトに伝達される出力は6~10倍というから42~70kWって事になる。電源はバッテリかキャパシタになるだろうが、比較的低容量で済むはず。
基本的には小排気量の自動車用エンジンに追加し、発進・追い越し時や坂道など、必要に応じて高出力運転できるようにすることが考えられてる。メーカーではシステム全体をVariable Torque Enhancement System (VTES)と呼ぶ。

1/3秒ほどで70000rpmに達するので、ラグはほとんど無い。またS/C自体は空冷。
この心臓部となる電動機は、スイッチドリアクタンスモータ(SRM)というタイプだそうだ。

ネオマグ株式会社の資料。

http://www.neomag.jp/mag_navi/mames/mame_glossary_main.php?title_id=704&PHPSESSID=tmsfdapdqo

高効率で、永久磁石もレアアースも使わないという利点がある。が、実用化困難だったという話も書いてある。

Helineo Mk.1/SpaceX Grasshopper構想/B.737MAX対A320neo

Helineo Mk.1

http://www.flightglobal.com/news/articles/three-blade-light-turbine-first-flight-soon-362665/

Helineo Mk.1はパリショーで出展された新機種で、3枚ローターのタービンエンジン搭載ヘリコプター。タービンエンジン機としては極めて小型であり、2人乗り(+貨物スペース)は世界初としている。
初飛行は10月末から11月にかけて行われる予定。ギアボックス周りの不具合で設計変更を行ったために、若干遅れたとのこと。2013年にはキットの形で販売を予定しており、予価は25万ユーロ。これにはHelineo社からの組立アシスタント派遣料も含む。

エンジンはSolar Turbinesという企業が供給する。FADECらしい。燃料タンク容量は200Lで耐衝撃性を有する。胴体の材質は全てカーボンで2人乗りのキャビンとラゲッジスペースがある。
デモンストレータではテイルブームが金属製だが、次の試作機(フェーズ2)では設計が変更されることになっている。

巡航速度は200km/h程度。ロビンソンR22の2010年代版みたいな感じだ。2013年から売り出されれば、R22の発売からちょうど40年になる。

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SpaceX Grasshopper構想

http://www.flightglobal.com/news/articles/spacex-to-build-reusable-launch-vehicle-362729/

9月29日、SpaceXのイーロン・マスクCEOは、多段式の完全再使用型ロケットであるGrasshopper構想を発表した。
1段目、2段目とも切り離し後、地上に降下して再使用が可能というもの。このうち1段目は垂直に降下して発射台に戻ってくることになっている。

Falconの心臓であるMerlinエンジンは、当初から再使用可能な設計とされており、ロケット全体が完全再使用可能なものを作ることは、論理的にも最終的なゴールの一つと言っていい。しかし、その具体的なことは今まで発表されておらず、今回初めて計画の存在が公式に認められたこととなる。

このCEOは天才の類(火星植民とか真顔で言っちゃう人)ではあるが、完全再利用型宇宙機の実現性についてはかなり正確に把握していると思われる。その上で実現できた場合のメリットを提示した。
Falcon9の打ち上げコストは1回につき5400万ドル。うち、燃料とLOXの占めるコストは20万ドルに過ぎない。これを1000回再使用することができれば、1回あたりの打ち上げコストを約50000ドルに引き下げることが可能となる…という試算だが、かつてNASAがX-33を開発してた頃にも、技術の進歩で再使用可能部分が増えるとペイロードあたりの打ち上げコストの桁が減ってくプレゼン資料があった。

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B.737MAX対A320neo

http://www.flightglobal.com/news/articles/routes-boeing-737-max-takes-on-airbuss-a320neo-362557/

全く同じマーケットセグメントに対して、先行するA320neo(2015年運航開始予定)にB.737MAX(2017年運航開始予定)が食い下がる状況となっているが、まだ現物は無いので受注合戦というか舌戦が展開されている。

両社のロンチ時の説明をまとめると、B.737の現行型に対して、CFM Leap-1Xを搭載したMAXは燃料消費率で10~12%改善。A320neoはA320の現行型に対して、GE PW1000系を搭載して燃料消費率を15%改善。

ボーイング側はさらに、A320neoに対するB.737MAXの優位について、平均運用コストで7%安上がりであるとし、B.737MAX-8とA320neoの比較では、1座席あたりの燃料消費率で、4%有利であると主張する。
これらに対するエアバスの反論はごく簡単で、B.737MAXの性能諸元がまだ確定してない以上、何も証明されたわけではなく、コメントも何もできん、とする。実際にファン直径、推力、MTOW、空虚重量、離陸性能、どれも未公表のままなので、これは正論と言える。

はっきりした性能諸元が決まらない第一の理由は、以前も出ていた通り、ファン直径の増大にどう対処するかという問題が未解決だから。
これに関しては、性能未定とした上でカスタマーの受注を集めてることを、ボーイングも認めている。数週間後には結論が出される見通しとのこと。

HAVの重量物輸送型ハイブリッド飛行船/D-Jetが6ヶ月ぶりに飛行再開/Sabreエンジンの試験が進行中/オートクレーブの時間短縮

HAVの重量物輸送型ハイブリッド飛行船

http://www.flightglobal.com/articles/2011/09/01/361500/hybrid-airship-set-for-cargo-development.html

Hybrid Air Vehicles(HAV)は、ハイブリッド飛行船に関してLEMVとも関連するが、ISRプラットフォームに使うのとは別系統の重量物輸送型ハイブリッド飛行船、Heavy Lift Vehicle(HLV)というのも開発している。

来年早々にペイロード50ton型の建造を開始、2013年後半に初飛行を実施する計画。
50ton型は、同社の公式サイトではHAV366型に該当する。

http://www.hybridairvehicles.com/hav366.aspx

LEMVは同社のHAV304型がベースで、ISRプラットフォームとしての能力が重視されている。すなわち高度20000ftで3週間滞空、ペイロードは監視機材を積むのに十分な程度の1~2tonといった性能だが、HLVに属するHAV366型では、50tonのペイロードを100ktで輸送できるように設計される。最終的には1000tonのペイロードを輸送可能な機体も実現可能という。
基本的な 外見はあんまり変わらず、ベクタードスラストの推進機を持つ事と、中心線で線対称の二重バブル型気嚢を持つ事は共通している。また揚力の60%をヘリウムで、残りを船体の空力から得る。
HLVでは地上に係留する代わりに、2つのホバースカートで地面に吸い付くような仕掛けを考えてるみたいだがよくわからん。

飛行機かヘリコプター並のハンドリングが可能となれば、環境負荷は75%ほど低くでき、使い勝手も良くなる…というのがHAVの主張。なおHAV366型のエンジンは、2400hpのガスタービン×4基で済む。

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D-Jetが6ヶ月ぶりに飛行再開

http://www.flightglobal.com/articles/2011/09/02/361580/d-jet-takes-to-skies-as-diamond-awakens-programme.html

D-Jetを開発しているダイヤモンド・エアクラフトは、深刻な資金不足で6ヶ月間ほど停滞を余儀なくされたが、このたび飛行再開に漕ぎ着けたとのこと。

3月にカナダ政府が開発援助を打ち切った時点で、全従業員213人が一時解雇となった。その後、6月に新たな出資者が現れたとの報道。

http://www.flightglobal.com/articles/2011/06/16/358082/new-financing-lifts-diamond-d-jet.html

資金面の詳細は明らかでないが、型式証明の取得、試作4号機(与圧システムを組み込んだ最初の機体となる)の製作と、2、3号機の飛行試験などが再開される見通しとのこと。

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SABREエンジンの試験が進行中

http://www.flightglobal.com/articles/2011/09/01/361501/spaceplane-engine-tests-under-way.html

英国のリアクション・エンジン社が開発中のSABREエンジンは、SSTO型スペースプレーン、Skylonの心臓部となる物だが、その成否を分ける最大のポイントが熱交換機だ。大気圏内では吸気をLOXになるまで冷やさないといかん。-140度ぐらい。

年内のトライアルで実現可能であることを証明することになっている。何と言ってもこれが実現できなければ始まらないので、潜在的な投資家に対するアピールとしても極めて重要と言える。

首尾良く資金が集まれば、2012年から2014年にかけてエンジンのデモンストレータ製作に移るが、同社ではだいたい2億ポンドぐらいと見積もっている。
それもうまく行ったら、Skylonそのものの開発に移行、2020年の就航を目指す…というのが大まかな筋書きとなる。この段階では75億ポンドぐらい。ESAはあんまり金なさそうだなあ。

HOTOL以来の英国製スペースプレーンが実現するかどうかは、次の数年が山場になる、というのは間違いないだろう。

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オートクレーブの時間短縮

http://www.flightglobal.com/articles/2011/09/06/361497/computer-modelling-cuts-autoclave-time.html

エアバスとAircelle(エンジンナセルの製造を担当)、フレイザー-ナッシュが共同で取り組んでいるもの。コンピュータシミュレーションを通して熱硬化プロセスの最適化を行うことで、オートクレーブの処理時間を最大で1/3程度まで短縮する方法を確立した。
これは特に、大型の複合材構造物をオートクレーブで製作する場合に効果を発揮する。

エアバスにとっては、次世代ナローボディ旅客機において製造効率を高めるのに重要なキーと言える。

フレイザー-ナッシュって車絡みしか知らなかった。いろいろやってんのね。