欧州製電動スクーターいろいろ(コンセプト含む)/Cycon Circleboard/ONDA Cycle/EV設計のオープンソース化にクラウド出資を募集

欧州製のフォールディング可能な電動スクーターが幾つか出ているので羅列。

米国のプロトタイプは全部むきだしというのが多いが欧州はそうでもない。販売開始されてるものもある。

・Scuddy

http://www.gizmag.com/scuddy-folding-electric-scooter/26317/

ドイツで製造されている電動折り畳みスクーター。モータは2馬力で、4時間充電(急速充電で1時間)して40km走る。
小さいがリーンマシンの構造を有しており、3輪セグウェイみたいな感じ。前輪は12.5インチ、後輪は10インチ。ブレーキは前がディスクで後ろがドラム。
スポーツモデルの最大速度は35km/hに達するが、シティモデルでは20km/hに制限される。
2月から販売が始まっており、価格はそれぞれ3499ユーロと2999ユーロ。

重量は30kg弱か。

http://www.scuddy.de/index.php/technik.html

・SSIKE e-Scooter

http://www.gizmag.com/ssike-e-scooter/26201/

SSIKEはスペインで設計されたもの。補助輪の付いた一輪車といった風情であるが、後輪操舵は特許を取得したらしい。再生ブレーキあり。
こちらも最大速度20km/h、航続距離40km。自重は軽く、12.4kgに収まる。ただし完全な立ち乗りタイプとなり、前傾姿勢で急制動した際に危険ではと指摘されてる。

・JAC <

http://www.gizmag.com/jac-electric-scooter/25928/

オランダのLEEV Mobilityという会社が、自社のコンパクトゴルフカートから発展させたもので、構造的には自走キックボード。自重20kg以下で、最大速度24km/h、航続距離20km。
特徴的なのは200V電源だけでなく自動車の12Vからも充電可能なこと。遠くの駐車場から数キロの移動といった使用にも対応できるとする。
1月時点のこの記事ではキックスターターで集金中となっているが、やや残念な結果に。

非対称のハンドル基部とか、細かいところが面白い構造になっている。

・MOVEO

http://www.gizmag.com/moveo-folding-electric-scooter/26126/

折り畳み、または可搬性の高い電動スクーターは、簡易な構造になるのが常であるが、このMOVEOは伝統的な腰掛けサドルを備えたスクーターになっている。ハンガリーのNPO、アントログループという集団が手掛けた。

最大速度は45km/hと普通のスクーターに近く、航続距離は35km。
折り畳みにかかる所要時間は約2分で、スーツケース風に引いて歩ける形になる。カーボン複合材を使ってるので25kgと軽いものの、価格がどうなるかというところ。年間15万台の生産では一台3100ドル、同4000台の生産では4600ドルという試算が出てる。
ネットで予約受付中。原付扱いで日本でも乗れそうだな。高いのはしょうがないけど。

モータやバッテリの詳細仕様が出てないのはやや危険を孕む感じに。

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Cycon Circleboard

http://www.gizmag.com/scooter-cycon-circleboard/26298/

これは無動力。スイスで作られてるもので、フレームからハンドルまでが優美なカーブを描いているのが最大の特徴。ハンドルと車輪が固定されている代わりに、フレームが傾き、カービングのように滑らかに方向を変えるとされている。主構造材が一本の鋼管であるため、この手のキックスクーターにありがちな遊びはほとんど無い。

この製品はドイツの航空技術者が設計し、スイスで手作りされる。クラフトマンシップ溢れる逸品であり、お値段も相応の499ユーロ。

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ONDA Cycle

http://www.gizmag.com/onda-cycle-three-wheel-steering/26234/

一見ホイールベースが短いリカンベントに見えるが、実は後ろの小さいキャスターみたいなのが操舵輪になってて(2011年に特許取得済み)多種多様な変態機動を可能とする…らしい。
仕様の羅列より動画で見た方が面白いので略。なかなか興味深い代物であるが、これ公道走ってたら車から視認できんよなぁ。

これもキックスターターで集金中。3月28日まで。

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EV設計のオープンソース化にクラウド出資を募集中

http://www.gizmag.com/krysztopik-ez-ev-open-source-diy-electric-car-kit/25891/

テキサス州サンアントニオの電気技術者Gary Krysztopikさんは、ここ3年、コツコツとEV製作を進めてきたが、本業?の既存自動車EV化の仕事が忙しくて、自作EVの方はオープンソース化することを決めた。

今ある試作車両はZ Wheelz 2-seat Custom (ZW2C)と名付けられており、鉛蓄電池とACモータを備え、パワートレーン一式まで組み上げられ、航続距離100マイル、最大速度は60mph以上とのこと。新しい設計ではEZ-EVという、これも2シーターで、鋼管フレームに代えてグラスファイバーのハニカム構造を採用、バッテリシステムをリチウム電池に置き換える。

設計のオープンソース化に伴い、部品のリストも提供する予定。これは可能な限り入手性の良い既製部品を使い、モジュール化を意識した設計でボルト止めが主体となるので、キットとしては1人で1週間あれば組み立てられるとしている。なお車体重量は1500ポンドで、最高の性能を求めた場合は航続距離150マイル、最大速度80mph超も可能とされる。多くの州では自動二輪車としての登録が可能だそうだ。

ボディシェルには3Dプリンタを活用することも考えられているものの、まだ先の話。クラウド出資の方はIndiegogoを利用してる。

iRACER/TOYOTA i-ROAD/SRI EV1 e-racer/KTM X-Bow GT/T-REX 16S/Gyro-Xの復元活動

iRACER

http://www.gizmag.com/iracer-kit-electric-race-vehicle-kit-development/26600/

英国のバーミンガム大とウェストフィールドスポーツカーズ社が、世界初の電動レーシングカーのキットを共同開発している。趣味的なものとしてだけでなく、教育用途も兼ねているようだ。仕様はEVカップのスポーツEVクラスに準じており、ロードゴーイングカーとしての用途は完全に捨てた純粋なEVのレーシングカーとなっている。

全長3.6m、全幅1.635m、全備重量は770kg。サイズの割に重いのは、リチウムイオンのバッテリが200kgほどを占めているため。バッテリ容量は23kWhで25分間のレース走行が可能。YASA-750というモータ2基で後輪それぞれを駆動する。モータの最大出力は100kWで重量は25kg。トルクは2000rpmで400N・m、最大750N・m、60mphまで5秒以下。
が、通常はモータ出力を60kWに抑え、最大速度は185km/hに制限される。ブーストボタン使用時にのみ最大出力を発揮する設計で、1回18秒間、1kWhを消費するというから、無駄に使うとバッテリ切れになる。
制約がなければ最大速度は205~220km/hだそうだ。

今のところはバーミンガム市内でテストを行っているところだが、市議会が許せばデモンストレーションを兼ねた公道レースを催したいと考えている模様。
ヒルクライムなどを含む様々なレースで実証できれば次の展開も見えてくるといったところだろう。

現在のところ、iRACERのキットは1台13999英ポンドでの販売を予定しているが、バッテリやパワートレーン抜きの価格になるようで、実際に走れる状態に仕上げるには3~4倍のコストがかかるとのこと。普及には値段が最大のネックか。

最終的な形状がよくわかんないけど、CFDでどうとかじゃなく、わりと古典的なデザインに見えるな。

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TOYOTA i-ROAD

http://www2.toyota.co.jp/jp/news/13/03/nt13_0303.html

この手のリーンマシンは特段珍しくもないが、後輪操舵になってるのが最大のトピックと言える。裏庭で組み立てるレベルでは実現できないだろう。取り回しが向上するだけでなく、前輪を旋回させないということは空力面でも有利になる。

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SRI EV1 e-racer

http://www.gizmag.com/sri-electric-off-road-racer/26242/

カリフォルニア州の非営利団体Strategic Recovery Institute (SRI)が、EVのオフロードレーサーを開発しているという話題。
開発の発端となったのは、2011年に退役米陸軍中将James Pillsbutyが、EVでバハ1000に出走して成績を残せるかという課題を示したことだったらしい。なんでも遠征した米軍の燃料費の請求は、おおよそ1ガロンあたり400ドルに達するとかで、予算が幾らあってもたらんという危機感から、EV技術の更なる発展を促したかったようだ。LCVが同レースに出たのは2010年だったが、言うまでもなく、オフロードレーサーに必要な要件、信頼性、機動性などは軍用車両にも通じる部分が多い。安価でコンパクトで高出力のパワーユニットが実現できれば、あとは走行性能に振るかペイロードに振るか程度の違いでしかないだろう。EVというか電気モータの特性は、ピークパワーよりフラットなトルクの出方の方が優勢だから、その点でもオフロード向けがやや有利っぽい気はする。

SRIと組んでいるのはEV WestとStrategic Racing Designsで、2011年に5-1600クラス優勝した実績がある。EV1開発は2012年のバハ1000の後からスタートした。
バッテリは69セル、400kW、2000Ahで、2つ合わせた容量は82kWh。2モータで、出力は535hp、トルクは750ポンドフィートに達する。片発でも走行可能。高性能の代償として重量はやっぱりでかく、レース時の状態で5250ポンド、うちバッテリパックだけで1950ポンドあるとのこと。
もう一つの問題は、これも言うまでもなく航続距離で、全開走行では今のところ60マイルしか走れない。再充電には240Vの電源と5時間が必要。
充電用のディーゼル発電機を搭載したトレーラーを開発してはいるが、太陽電池もついでに積んだって言うのは単なるポーズにしか見えん…
戦闘車両への発達を考えるとツッコミどころは多いものの、バハバグみたいでかわいいからちょっと許す。

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KTM X-Bow GT

http://www.gizmag.com/ktm-x-bow-gt-details/26551/

装備面はほとんど二輪という超スパルタン仕様だったX-Bowに、ドアとフロントウィンドウと50リットルぐらいの荷室が追加されたモデルで、依然として屋根はない。ワイパー、ヒーターの追加に伴いコンソールのデザインは大きく変更されたようだ。エンジンなどが同一のまま57kgほど重量が増加したため、パフォーマンスは微妙に落ちる。というか、何台売れてるのか謎。

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T-REX 16S

http://www.gizmag.com/campagna-t-rex-16s-reverse-trike/26474/

趣味的逆3輪マシンとして存在を確立した感のあるT-REXに、1.6Lエンジンのモデルが追加されている。これまでのモデルのうち、V13RはハーレーダビッドソンのVツイン、14RRは川崎の1.4Lだったのに対し、16SはBMW製の直6となった。

BMWとの長期的戦略合意によって実現したものであり、チェーン駆動、6速シーケンシャルのドライブトレーンなどにBMWの技術が入ることになったようだ。とは言え外観は14R/RRとあんまり変わらず。

また、T-REXは北米の大部分と日本を含む世界で公道走行可能になっているものの、欧州では未だに許されてない状況だそうだ。
16Sは6月から限定モデル発売となり、その後も従来モデルは併売される。

せめて値段が半分なら。それでも安くはないが。

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Gyro-Xの復元活動

http://www.gizmag.com/gyro-x-gyroscopic-car-restoration/26427/

今、日本でジャイロXというと、普通にホンダの3輪を指すわけだが、1967年の米国、カリフォルニア州でも同名のジャイロ搭載自立二輪マシンが製作されていた。自動車風の操縦席を有する長細い二輪車だが、文字通り内蔵した巨大なジャイロでバランスをとって自立するという代物で、製作数はわずかにプロトタイプが1台。この車両はGyro-Xと呼称された。開発したのはGyro Transport Systemsという会社。

設計したのは自動車産業黎明期に生まれた工業デザイナー、Alex Tremulis(1914~1991)という人で、コード、デューセンバーグ、GM、タッカー、そしてフォードといったメーカーで働いた。フォードでは先進設計部門を率いた経歴がある。

1967年9月のサイエンス&メカニクス誌の記事によると、この車両は自立して40度バンクのコーナーをクリアすることができ、最高速度は125mphに達したという。その他の諸元は重量1850ポンド、全高と全幅はそれぞれ42インチ、全長15フィート5インチで、エンジン出力は80hp。タイヤは15インチだった。
自立の肝となるジャイロは、直径20インチ、油圧で駆動され、最大回転数6000rpmで1300フィート・ポンドのトルクを発生した。このジャイロによってバランスを保つ仕組みであったが、逆に言えばジャイロが効くまで、およそ3分間は乗れないという弱点にもなっていた。

Gyro Transport Systemsが消滅した後、この車両の行方は長らく不明なままだったが、2008年にネバダ州に住むジョン・ウィンザーという人がYoutubeに実車の動画を投稿した。

なお1967年当時の本来の姿は、記事中に貼られてる動画を参照。

http://www.youtube.com/watch?v=3nhLcmLVOb8

この後、テキサス州在住のマーク・ブリンカー氏が買い取り、ナッシュビルのレーン自動車博物館に転売、現在に至る。
長い歳月の間にオリジナルのジャイロは失われてしまっており、後輪は仮設の2輪に取り替えられ、中身はスカスカになっている。

リストアの話が持ち上がったのは、Tremulis氏の生誕100年を記念するという題目が付いてるが、現代において同様のプロダクトを開発しているThrustcycle社が協力することで、初めて可能になったとも言える。車体後半部分は事実上の作り直しになる予定。

Hanebrink Hustler X5/Voltitude V1/Electric Motion EM 5.7

Hanebrink Hustler X5

http://www.gizmag.com/hanebrink-hustler-x5-elecrtic-bike/24774/

2012年秋の記事になるが、Hanebrinkの新型電動二輪(自転)車で名称はハスラーX5。以前のはペダル付きでストリート向けというより山登り等の特殊用途系、二輪ATVみたいのだったから、方向性は全く違う。

http://www.gizmag.com/hanebrink-all-terrain-electric-bike-rear-suspension/22415/

以前のよりもうちょっと一般的な小型二輪サイズで、都市部だけでなくハイウェイ走行も可能ということになっている。しかしカウルの下にはしっかりペダルがついてて機構的にはそれを踏襲してる模様。
よく見ると大きさはミニバイクぐらいかな。白人男性が乗るとかなり小さく感じる。
ちなみにHanebrinkは創業者の名前そのまんま。
主要構造材に航空用アルミニウム(6061-T6)を用いており、モノコックの自重は120ポンド。シート下の防水ボックス構造部分にAllCellの液冷バッテリ(リチウムイオンで、正極はNi、Mn、Coの三元系)を4個搭載する。走行性能としては「コンペティションモード」で走行距離200マイル以上、最高速度80mph以上とされているが、80mphで何マイル走れるかは定かでない。もう一つのモードがリーガルモードというやつで、公道走行に対応するとされる。
が、ここは顧客のオーダー次第ということなので、一番高くていい奴をくれ、と言ったら最高性能がこれになる感じ。
AllCellは、この手の電動二輪への供給実績が結構ある。

http://www.allcelltech.com/products/electric-bike

モータはCrystalyte 5303 Mid Motorとあり、14段変速。
価格は16940ドルから。実用的には高価なオモチャの域を脱してない感が強い。

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Voltitude V1

http://www.gizmag.com/volitude-v1-fold-up-electric-bike/25502/
スイスの企業が開発している折り畳み電動二輪で、こちらもペダル付き。
アーミーナイフをデザインモチーフとしたコンセプトは2011年に初出。
http://www.gizmag.com/swiss-voltitude-folding-pedelec-bike-developed/18111/
EUの規制に対応して最大速度は25km/h止まり。モータ出力250W、36Vバッテリで40km走る。自重25kgでバッテリ含むと27.5kg。
国内の折り畳み電動アシスト自転車を軽く調べてみたら、パナソニックのが20kgだった。
http://cycle.panasonic.jp/products/electric/enws/
これに対し、Voltitudeはタイヤを転がして運べるから、まあまあ便利なはず。
1秒で折り畳み/展開できる機構が売りであるほか、リサイクルを意識した材料が選定されている。車体はABS、フレームなどはアルミニウム。
一応カーボンを使ってフロントサスを追加したタイプも存在するが、重量の低減は2kg程度に留まる。
2013年3月発売予定で、予価は4990スイスフラン(5465米ドル)、カーボンのが7990スイスフラン(8760米ドル)。
あと、日本で買える電動アシスト折り畳みではこんなのもあった。

http://store.shopping.yahoo.co.jp/diana/pr-313f.html

5万円台半ばと異様な安さ。
中国製とかの原付扱いの電動モノが一時大量に輸入されていたが、あれらもいずれ国内基準に対応させてくるだろうなあと思ってたら、もう出てるのね。
でも品質(特に付属品関係)は相変わらずっぽいな…
Voltitudeのデザインはかっこいいが、価格差10倍は厳しいところだろう。

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Electric Motion EM 5.7

http://www.gizmag.com/electric-motion-competition-and-leisure-trials-bike/25579/

フランスの競技用二輪車メーカーScorpaを退職した元CEOが、Electric Motionという企業を立ち上げ、競技用(オフロード)の電動二輪車を製造している。
純然たる競技用ではあるが、多少電力を節約して2~2.5時間ほど走れるモードも用意され、EM 5.7の2012年モデルは総重量70kg。
価格は税抜き5200ユーロ程度だそうだ。この手の製品が出始めて数年になるが、未だにあんまりお安くならない。まだ出たばかりとも言えるが、バッテリの限界がある限り、ガソリンエンジンとの性能差は埋めがたいからなあ。
記事中で言及されている、1980年代英国で放映されたKick Startなる番組は、二輪の障害物競走みたいなのだったみたい。

https://www.youtube.com/watch?v=pja9Y7JIJBg

1982年放映分。最後の自動車二台乗り越えは難しそうだ。
子供対象のJunior Kickstartというのもあったようで、世代的にどストライクの人も多いのだろうか(結構いい年のはずだが)。
そちらは関連動画参照。

MRJの製造ライン増強を検討/ボンバルディアCSeriesの状況/ATRが新型の90席ターボプロップ旅客機の検討を終える/ダイヤモンドエアクラフトがDA42でFBWの試験を行う

MRJの製造ライン増強を検討

http://www.mrj-japan.com/j/news/news_121213.html

http://www.flightglobal.com/news/articles/skywest-firms-deal-for-100-mrj90s-380176/

12月13日、スカイウェストのMRJ導入で調印の後、製造ライン増設を検討という発言が出ている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/mitsubishi-aims-to-ramp-up-mrjs-planned-production-rate-380278/

広報部長代理の桜井氏によると、このクラスの需要が予想より高まっていると見ており、現計画の月産5機から10機まで引き上げることが検討されているとのこと。
製造ラインを増設するとして、小牧南工場とは別の場所、あるいは米国などの外国も考えられている模様。ただしそれを具体化するのは2015年Q4の型式証明取得後となるので、最終的な判断はまだ先の話となる。小牧南工場のラインについても、試験機の部品製造は進められているものの、まだ完全な状態ではないので、初飛行の頃(2013年Q4)には円滑な稼働体制に持っていく予定とされている。
なお試験機の最終組立は間近だそうだ。

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CSeriesの状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/supplier-issues-delay-cseries-first-flight-to-2013-378644/

ボンバルディアCS100(110席タイプ)の初飛行は、結局2012年内は断念されている。11月に入った段階で「サプライヤーの問題」により、2013年6月末までの初飛行延期が発表された。
詳細は明らかにされていないが、これまでにはParker Hannifin AerospaceのFBWシステムと、瀋陽が製造するのウイングボックス/中央胴体部分で問題が出た経緯あり。

今のところCSeries全体としての受注状況が芳しくないため、多少の遅れも影響はさほど無い、と見られている。

CS300は130席タイプで計画されているが、AirAsiaの受注競争で160席のA320neoに負けた例もある。

http://www.flightglobal.com/news/articles/bombardier-moves-cs300-into-detailed-design-with-high-density-variant-included-379612/

CS300の詳細設計が開始となっており、座席数を増やした160席タイプも視野に入れているようだ。これは基本的には単純に座席を増やすだけで済まし、設計変更としては、耐空性証明で要求される後部のドア増設などに留まる見込み。派生型なので、CS100よりも早く設計が完了すると予想されている。
160席になると、2強の旅客機と正面から競合することも可能になる。が、相手が悪いのは確かなので、事業としてどうなんかなあという気がしないでもない。

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ATRが新型の90席ターボプロップ旅客機の検討を終える

http://www.flightglobal.com/news/articles/atr-awaits-shareholders-go-ahead-for-90-seat-turboprop-project-380273/

ATRは、顧客からの強い要望を元に90席のターボプロップ旅客機開発を検討しており、開発前の作業を概ね完了、親会社のEADS及びアレニア・アエロマッキのゴーサインを待つばかりとなっている。
新型機は、従来の機体とは設計思想を共有するものの、別物の新規設計であり、全ての構成要素が一回り大きいとされる。またATRでは、開発の承認が得られれば5年で型式証明取得が可能と予想している。

ただしEADS傘下のエアバスがA320neoやA350に取り組んでいることもあるので、FGでは開発がすぐに承認される可能性は高くないと見ているようだ。

90席のターボプロップに興味を持っているキャリアとして、Lion Airのコメントが出てる。他にはマレーシア航空など。この辺がロンチカスタマーになる可能性はある。
ターボプロップの競合他社であるボンバルディアの出方次第という面も強い。こちらもQ400の派生型開発により、90席クラスで対抗する計画だけはある。

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ダイヤモンドエアクラフトがDA42でFBWの試験を行う

http://www.flightglobal.com/news/articles/diamond-tests-fly-by-wire-on-da42-380035/

EU出資のプロジェクト、small aircraft future avionics architecture (SAFAR)の一部として進行しているものだそうで、4重デジタルFBWをDA42に適用して試験を行っているとのこと。

パイロットの操作によって機体構造に過剰な負荷がかかったり、空気力学的な無理が生じないように制御するシステムであり、離着陸および飛行の自動化を目指す上での重要なステップとなっている。

一般の固定翼民間機、つまりGA分野ではFBWを実用化した機体は存在しない。近年では、回転翼機でロシアの一部機種、ベル525がFBWを備え、エムブラエルもレガシー500でFBWを採用している。欧州においてはエアバスが1980年代に実用化したのはよく知られている通り。

ボーイング777Xの就航は2020年代にずれ込む?/A350飛行試験機MSN1の尾翼とその他の製造状況/A321のシャークレット装備型が初飛行する

ボーイング777Xの就航は2020年代にずれ込む?

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-extends-777x-timeline-range-to-early-2020s-378115/

ボーイングでは当初、777Xのロンチ判断を2012年末、その場合の就航を2019年としていたのだが、6月の社長交代の後、この日程は不確実になってきた。
背景には787の開発と生産体制整備を優先させるだとか、顧客となる航空会社の動きやA350の開発との関係もあり、事情は複雑。

10月24日の電話取材では、年内のロンチという発言は引っ込められ、最終的な仕様について、更に顧客との打合せを進めるという方針が示されている。

現在B.777のカスタマーであるエミレーツ航空とカタール航空は、一旦A350-1000を発注したものの、2011年ファーンボロで発表された仕様変更の後で態度を保留、777Xの方に興味を示している。が、777Xへの期待がある一方でキャセイ航空がA350-1000をに変更するといった「離反」も起こっているようだ。

http://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-upholds-777x-end-decade-service-entry-376096/

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A350飛行試験機MSN1の尾翼とその他の製造状況

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-airbus-unveils-a350-tail-fin-377907/

尾翼の製造を担当したのはドイツのシュターゼ工場で、塗装はトゥールーズだった。高さは10mぐらい。

http://www.flightglobal.com/news/articles/airbus-advances-towards-first-flight-of-a350-twinjet-377959/

英国のブロートン工場では主翼が製造されているが、穿孔装置の最適化不足によるトラブルで、最初の2セットは穿孔作業を人の手で行わざるを得なかったらしい。現在この問題は解決済との事で、MSN3の主翼はほぼ完了しつつある。トゥールーズに送られた際に最終組立ラインの落成式典が行われる予定だそうだ。

肝心の初飛行については、2013年予定を崩していない。飛行試験機のMSN1を含めた試験機数は5機で、MSN2と5はシステム試験機となっている。これらはキャビンの艤装なしで飛ばされることになる。

RRはトレントXWBの開発エンジン10基に続いて飛行試験機用エンジンの製造を開始しており、開発エンジンの累計運転時間は地上試験が208時間、A380を用いた1基の空中試験が144時間に達したという。
トレントXWBに関しては、A350-1000用のエンジンで重量過大と推力不足が指摘された経緯があるが、これも修正済みで推力97000ポンドを達成している。修正内容に関しては、コアとホットセクションの高温対策とだけしかわからん。

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A350を巡っては、2005年のWTO提訴の判決がまた火種になりそうな感じになっている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-boeing-insists-illegal-a350-launch-aid-still-flowing-to-airbus-376856/

西川先生の2005年の記事では、2010年就航予定だった。

http://www2g.biglobe.ne.jp/aviation/a350d.html

就航した時点で時代遅れになる、と揶揄されるのも致し方ないという感じはあるが、ここまでの仕様変更とかの経緯を見るに、特に政治的な障害が無くてもすんなり行かなかった可能性が高いかも。

あ、オスプレイ記事。NHKに出演されてたときの記事だ。

http://members2.jcom.home.ne.jp/nishikawaw/osprey120929.html

最後のほう、真面目に考えたくないという空気が漂ってるが、真面目に考えたらやってられん気分というのは物凄くよくわかる。

って、表紙に戻ってみたら癌!?
マジですか…

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A321のシャークレット装備型が初飛行する

http://www.flightglobal.com/news/articles/picture-airbus-flies-first-sharklet-equipped-a321-377965/

10月23日、新開発のウイングレットであるシャークレットを翼端に装備したA321が、ハンブルグからトゥールーズへのフェリーフライトを実施した。シャークレットを装備したA321としては初飛行になっている。

A321はA320ファミリで最も大型であるが、A320(CFM56装備)の飛行試験は既に完了しており、EASA型式証明が11月予定。V2500装備型は12月予定となる。A321は2013年中頃、A319は2013年後半の型式証明を目指している。

A320においては、長距離路線で最大3.5%の燃料消費率改善に繋がるというのが公式な発表となっている。今年のファーンボロではデモフライトも実施していた。
A320neoのまでの繋ぎのようなものではあるが、既存機にレトロフィット可能ということでそこそこ重視されているようだ。顧客の反応は不明。

http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-airbus-rolls-out-new-sharklet-wing-tips-on-a320-374191/

http://videos.airbus.com/video/f7fa897a712s.html

A320の試験機、F-WWBAにはシャークマウスが描かれてたりする。

ホンダジェットHA-420とその後の展開について/Unusual Attitude Training/Aerionが超音速自然層流翼のフェーズ2試験を開始/ガルフストリームがソニックブーム低減技術の実現に「極めて近付いている」と発表

ホンダジェットHA-420とその後の展開について

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-honda-aircraft-describes-plans-for-ha-420-follow-on-378253/

NBAA2012においてホンダエアクラフトの藤野社長から、いわゆるホンダジェット、HA-420の型式証明完了を待って、新型機の開発に着手する旨の発言が出ている。
現時点では、HA-420のFAAの型式証明取得は来年後半予定なので、本格的に開発が始まるのは2014年以降になりそう。

詳細についてはコメントを避けているが、Phenom 100/300に近いクラスであるということは認めた。HA-420は5座のVLJであり、クラス的にはPhenom 100に相当するので、仮に大型化する方向性なら、もう少し大きい7座のPhenom 300をターゲットにして開発することになるだろう。
性能で言うと、HA-420は、Phenom 100に対しては最大巡航速度で30ktas速く、300に対しては43ktas遅い。なお100はHA-420同様の直線翼だが、300は後退翼を採用している。

ホンダエアクラフトの基本的な方針としては、パフォーマンス重視で進めたいとしている。つまり単純にストレッチ型を作るといった話ではなく、パフォーマンス面での得失によっては、別の設計を選択することもあり得る。
もし新規設計となれば金も時間もかかるけど、この事業を将来にわたって継続するつもりなら、もっとノウハウを蓄積したいというのはありそうだ。実績はまだ1機種だけだし、後退翼だったりしたら、全く新しいチャレンジとなる。

若干興味深いのは、ホンダが長年自動車メーカーでやってきた経験から、デザインアイコンの重要性について触れてる下り。一目見てホンダの飛行機と認識してもらえるよう、一部のデザイン、主翼上面のエンジンや膨らんだ曲面構成の風防ガラスなどは、HA-420から引き継がれるだろうとしている。

かつて航空機のデザインでは、実験や設計者の経験からうまくいった形を踏襲するなど、メーカー毎のカラーが出るケースもあった。しかし現在は、設計レベルではCAD/CAMと数値解析の普及、製品レベルではエンジンメーカーの淘汰と寡占化によって、一つの正解(今は「効率」がキーワードだが)に近付けようとする傾向が強い。このため、デザインも同クラスなら似たような感じになるパターンが増えた。
もっと言えば、材料技術の進歩などでデザインの自由度そのものは上がってるはずだけど、定石を外したデザインでは売れるもんも売れない、と見られてる節も、業界内にはあるように思える。ホンダは異業種からの参入で、そこに一石を投じた形。

型式証明プロセスの状況については、HF120の認証待ち状態だそうで、2013年5月まで続く見通し。ただし飛行試験自体はそれより早く開始することになっていて、型式証明取得までの累計飛行時間は、試験機5機で1500時間程度を見込んでいる。

記事の最後では、新型機のエンジンについても軽く触れられている。GEとのJV、GEホンダエアロエンジン社は、HF120のコアを拡大、高出力化したタイプを検討しているものの、これが使われるかどうかは不明。もし採用されなければ、必然的に他社から調達することになるだろうが、ここも明言は避けられた模様。まだまだそういう段階ではなさそうな感じだ。
無理矢理HF120の3発とかになったら面白いが、エンジン数は増やさないだろうなあ。

なお、HA-420と同じくHF120を搭載予定の機種としては、Spectrum Aeronautical社のフリーダムS40というのがある。

http://www.spectrum.aero/the-freedom-s-40

独自技術によるCFRP製(エポキシ系)の機体が売りで、アルミ合金に比べて重量は2/3程度、同級で最も大きなキャビンを持つ。このため予定性能は、HA-420を含めた競合機すべてを大きく上回る。ことになっている。HA-420と同エンジンながら、性能が1クラス上になる予定。

S40の前段階として開発されているのがインデペンデンスS33で、S40よりもちょっと小振りな機体にエンジンはFJ33の双発。性能はVLJとしてはやっぱり高い。ことになっている。

http://www.spectrum.aero/images/stories/downloads/brochures/Independence_S33_Competitive_Advantages.pdf

S40の開発状況は不明。

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Unusual Attitude Training

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-stallion-51-introduces-unusual-attitude-training-378254/

STALLION 51というフロリダ州に拠点を置く企業が、Unusual Attitude Trainingと称する訓練プログラムを立ち上げようとしている。
同社は民間向けの、特にビジネス機クラスのパイロット訓練を、練習機とセットで提供するサービスをメインの業務とする。記事中、有視界飛行訓練にTF-51、計器飛行及び有視界飛行訓練にL-39を運用するとあり、公式の方を見てみると、このほかにもT-6(IIじゃなく元祖の方)も訓練機として保有しているみたい。

http://www.stallion51.com/

Unusual Attitude Trainingというのは、文字通り、飛行中の異常姿勢から回復する訓練を行う目的で考えられている。同社CEOによれば、従来こうした訓練は、軍用機(一部の法執行機関とかも含む?)のパイロット向けに限られていたため、民間航空の世界では浸透せず、パイロットが経験することも少なかった。

訓練は特殊な電子機器を搭載したL-39で行い、高高度からスタートして回復操作をシミュレートできる。また自社の医学部門であるAVMED51が航空生理学の座学を担当し、空間識失調、バーディゴなどについて学べるそうだ。

ちなみに、P-51の整備や売買を行う部門もある。何この趣味と実益を兼ねて最強に見える会社。

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Aerionが超音速自然層流翼のフェーズ2試験を開始

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-aerion-details-second-phase-of-supersonic-wing-tests-378159/

AerionはSSBJの開発でNASA(DFRC)と協力しており、フェーズ2としてF-15Bを使った超音速自然層流翼の試験を実施することになっている。試験用の構造物は大きさ80インチ×40インチ。元々は2011年後半に計画されたが、機材手配の関係で遅れた。
2年前のフェーズ1では、比較対照としてただの板をF-15に取り付けて飛ばすところまでやった。それからCFDで検討を重ねて形状を変更したりといった過程があった模様。

試験では、高度40000ft、Mach 2での飛行を行い、IRカメラでもって亜音速、遷音速、超音速それぞれの遷移時の気流の状態を調べ、計画通りの効果が発揮されるかどうか、また製造上の問題点を洗い出すためのデータ取りも兼ねる。超音速自然層流翼は、Aerionの独自技術の核心部分と言っていいものであり、かなり重要だ。

試験期間は1ヶ月から2ヶ月。6~10回の飛行が見込まれており、1回の超音速飛行は30~40分程度とされる。まあこんなんじゃ、機材繰りが無理だからって別をあたるわけにもいかんわな。

とは言うものの、2008年からこっちはSSBJを取り巻く状況が劇的に改善することがなかった上、予定したエンジン、JT8D-200シリーズの-219が早期に終了する可能性も出てきた。これはJSTARSなどのリエンジンがお蔵入りしそうな流れになったためで、防衛予算削減のあおりを受けた格好になる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-aerion-talks-up-transonic-options-as-f-15-tests-resume-378162/

メーカーの状況は回復しつつあるとは言うものの、すぐにどうこうという話にもなってないのが実情。
そんなこんなで、民間の潜在顧客の要望に応えるべく、自社の技術を用いて遷音速程度での性能改善を提案することも考えてるみたいだ。自社の技術はスケーラビリティに富んでいるから、どんな機体にも適用できる、というのが同社の主張。
Aerionが挙げたのは、ビジネスジェット機のうちサイテーションXとガルフストリームG650で、これらの最大速度をMach 0.99まで引き上げる事が可能としている。

本命のSSBJ(Aerionの呼び方ではSBJ、Sがひとつ少ない)の方は、JT8Dの双発でMach 1.6、乗客8~12席といった仕様だった。製造はメーカーに委託するので、いわばファブレス。テクノロジー・プロバイダーと称している。

JT8D-219が無理なら、当然別のエンジンが必要となる。同社は代替案を検討中というが、どのみち低バイパス比で使うのだし、内容的には戦闘機用のエンジンをそのまま使うのが簡単っぽい。JT8Dと同級というだけならCFM56系あるけど。

http://www.as.northropgrumman.com/products/e8cjointstars/assets/PW_me_jt8d-219_product_card.pdf

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ガルフストリームがソニックブーム低減技術の実現に「極めて近付いている」と発表

http://www.flightglobal.com/news/articles/nbaa-gulfstream-very-close-to-supersonic-business-jet-design-378243/

SSBJだけに限った話ではないが、超音速飛行時に発生するソニックブームは航空機の高速化にとって、大きな障害となっていた。

ガルフストリームのソニックブーム研究は、2000年代に入ってからNASAとの協力関係に発展、2008年のNBAAではX-54というディジグネーションを与えられた実験機の存在も明らかにされた。が、X-54の姿は一向に明らかにならぬまま。しかしここに来て、quiet boom技術を適用した機体設計がほぼ完了したとの発表に至る。X-54が公表されてちょうど4年になった。

でもやっぱり具体的な形はわからずじまい。F-104似とも言われるが…

ヒントというか、エンジンが在来のガルフストリーム機に用いられたもので足りる、ということには言及されている。つまりG450のRRテイ、G650のRR B725のいずれか。ただし超音速巡航時に燃焼温度が高くなることは避けられないので、通常運転時の燃焼温度自体を引き上げる何らかの対策は必要であろう、とのこと。

Sunseeker Duo/C-17によるvortex surfingの飛行実験が行われる/AeroVeloの人力ヘリコプターAtlus/北アメリカ類人猿あるいは原人の探索に無人飛行船/JA2012のレポート記事

Sunseeker Duo

http://www.gizmag.com/sunseeker-duo-solar-airplane/24700/

Kickstarterで資金集めを試みようとしているもので、太陽電池を主動力源とする二人乗りモーターグライダー。
Sunseeker I、IIに続く機体らしい。

http://solar-flight.com/sunseeker/index.html

http://de.wikipedia.org/wiki/Musculair

Eric Scott Raymond氏(エリックレイモンドだがオープンソースの人ではない)の構想は80年代まで遡る。人力飛行機Musclair IIのパイロットに呼ばれたのが縁で具体化した。ということで、このサイトにも同機の設計者であるGünther Rochelt博士への謝辞が述べられてる。

Sunseeker I、IIはMusclair IIの機体レイアウトを踏襲したものだったが、Sunseeker Duoは、ドイツで1980年代に開発されたStemme S10という機種が原型となっている。この機種はノーズコーンに引き込み式のプロペラを収納するのが特徴だったのだけども、プロペラ位置は垂直尾翼上端に移されたのであんまり関係なかった。尾翼周辺は、T尾翼は踏襲するもプロペラの基部が取り付けられるなどしたため、形状が大きく変更されている。

http://www.kickstarter.com/projects/sunseeker/sunseeker-duo?ref=category

軽量化により、空虚重量は原型の645kgから270kgとなる。スパン23mの主翼はそのままで、尾翼とともに太陽電池パネルを敷き詰め、モータ出力は20kW。リチウムポリマー電池72セルの満充電状態で20分間の全力運転で高度をとれる。雲上であれば、太陽電池と直結で数時間の巡航が可能という触れ込み。

現在は開発の途上にあり、資金が集まれば米大陸一周を皮切りに世界周回飛行を計画しているとの事。これは撮影クルーを連れて実施し、書籍化も考えてるらしい。

一人乗りのソーラーインパルスよりも機体規模が小さく、相当チャレンジングな印象を受けるが、この原型となったStemme S10は、アコンカグア峰を飛び越すのも含めた長距離飛行記録を幾つか持っており、高高度・長距離飛行に関するそれなりの実績を持つ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Stemme_S10

プロペラのみならず、サイドバイサイドの複座、引込脚などの特徴を持つユニークな機体。現行機種のS10 VTはプロペラが可変ピッチになった。

しかし、軽量化すると強度も不安になるし、そもそもパワーがかなり落ちているから、如何に揚抗比が高いといえども動力飛行に制約が生じるのは不可避だろう。
実現するとしても、かなりギリギリの飛行になるのでは。レイモンド氏の操縦技量は相当高いようだけど。

ちなみに同機種はAETCが2機導入したことがあり、TG-11Aというディジグネーションが与えられている。

http://www.aetc.af.mil/library/factsheets/factsheet.asp?id=7220

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C-17によるvortex surfingの飛行実験が行われる

http://www.af.mil/news/story.asp?id=123321609

最近、飛行を効率化する試みとして、編隊飛行の効果が言われるようになっているが、USAFではAMCとAFRLの共同研究として取り扱っており、9月6日と10月2日の2回、412th TWのC-17を実際に編隊飛行させる実験を行った。
単純に言うと、後方を飛ぶ機体が、前方を飛ぶ機体の後流の渦に入ると抗力が減少して燃料消費量が減る。渡り鳥の飛行からヒントを得たもので、この概念はSurfing Aircraft Vortices for Energyもしくは$AVEと呼ばれている。2011年のEnergy Horizon研究から出てきた言葉だ。

AMCのチーフサイエンティストによると、初期の分析において燃料消費率の改善効果は最大10%との試算を得たという。これを現在のAMCの運用状況(燃料消費量はUSAF全体の20%を占め、年間約80000フライトを実施する)に当てはめると、年間数百万ドル規模の経費節減に繋がる。
AMCの活動は大量の燃料を消費するだけに、搭載燃料を減らしたり、飛行ルーチンを最適化したり、細かな効率化の試みはずいぶん行われているようだ。

C-17が使われたのは、AMCの燃料消費削減が重要視されているからというだけでなく、大型機の後流は規模が大きくなるから、緊密な編隊を組まなくてもその恩恵を受けることができる、という利点もある。

実験飛行においては、基本的にプログラムを変更したオートパイロットによって、編隊飛行を維持させており、実現可能性の高い設定になっていた。

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AeroVeloの人力ヘリコプターAtlus

http://www.gizmag.com/aerovelos-atlas-joins-sikorsky-race-for-human-powered-helicopter-flight/24561/

メリーランド大のGamera IIが65秒間のホバリング飛行を達成した日に、AeroVeroは同様の構成の人力ヘリコプター、Atlusを初めて飛行させた。時間は4秒程度。
注意しておきたいのは、ここではいずれも飛行としているけども、実際は地面効果の及ぶ高度の範囲でしか上昇できてない点。シコルスキー賞では、高度を3m以上としている。

AeroVeloは、トロント大の人力乗り物研究チームを中心に構成されたグループで、2006年から活動しており、自転車の公認速度記録(大学の)を2011年に打ち立てたり、人力オーニソプターを作ろうとしたり、他も色々やっている。

http://www.aerovelo.com/

どっちもシコルスキー賞にはあんまり近くない感じなのだが(3m浮かすだけで死にそう…)、Gamera IIにライバルが出現したというのは確かなようだ。

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北アメリカ類人猿あるいは原人の探索に無人飛行船

http://www.gizmag.com/falcon-project-bigfoot-airship/24537/

http://the-falconproject.com/main_site/?p=492

今から15年前、ユタ州に住むウィリアム・A・バーンズさんはカリフォルニア北部の荒野にて砂金を掘っていた。ある晩、バーンズさんが宿営地のテントで休んでいると、峡谷の上の方で岩のぶつかる音が聞こえてきた。不審に思ったバーンズさんが外の様子を伺うと、何かが重い足取りで下ってくるではないか。
そして、それがテントから3フィートほどのところまで近付いてきたところで、ちょうど月明かりに照らされて見えたその姿はまさにビッグフット…いやサスカッチ…いや北アメリカ類人猿あるいは原人(*)に相違ないのであった。

(*)真面目な研究者の呼称に従ってみた。

その日を境にバーンズさんの人生は変わった。動物の研究にうちこみビッグ…じゃなくて北アメリカ類人猿の探求に取り憑かれていったのである。

というわけで、バーンズさんの最新の試みが、このファルコンプロジェクトと呼ばれるものになる。カナダの遠隔操作飛行船メーカー、RATS Incに特注した、捜索用の無人飛行船を使おうというわけだ。

オーロラと名付けられたこの飛行船は、2つに分かれたヘリウム気嚢を有する双胴型で、全長は45ft。気嚢に挟まれる形で、中央に推進システムとセンサを搭載する。
双胴にすることで、安定を増し、全体がロールするのを防ぐことができる。カメラはジャイロで安定させており、ケーシングはカーボンファイバ製。
特徴は推進システムで、4基のダクテッドファンを任意の方向へ指向することにより操作される。普通のプロペラよりも操作性が良くなり、垂直方向の移動も簡単なので、地上でのハンドリングが容易になる。
近年のトレンドに従って、固定翼航空機と軽航空機の利点を併せ持つタイプの飛行船となっている。

最大速度は45mph程度、3~4時間の飛行が可能とあるが、推進システム全開の持続時間かなこれは。カメラは熱映像、IR、可視光のHD映像を取得できる。この他に大型哺乳類の呼気を捉えるCO2センサと、超低周波音の録音装置が載る。最後のは何のことかというと、彼らが超低周波音を発してコミュニケーションを図るという説があるためだそうだ。

このセンサプラットフォームを、地上管制(改造したモーターホーム)から半径5マイル程度の範囲で活動させる計画。飛行させるのに必要な準備時間は1時間未満とのこと。メーカーによると、来年の早春にも納入予定とされている。
また、捜索は自動操縦で行える。捜索範囲内を升目を切って順番に探索していく方式だが、grid searchをグリッド捜索とか言っちゃっていいのだろうか。

映像はインターネット中継で世界にお届けするが、それが映ったら中継は停止される予定。

この計画には、まともな研究者?も関与している。記事中で紹介されているアイダホ州立大のジェフ・メルドラム博士は、17年にわたって知られざる北米の霊長類についての研究を続けてきた人物だ。
計画についての権威付けの上でも意味を持つが、実は科学的プロジェクトに認定されると飛行高度制限が大幅に緩和されるという事情もある。一般の飛行高度が400ft止まりのところ、7500ftまで許されるというから、実利的な面でも劣らず重要と言えるだろう。

*

JA2012の記事があった。CAR Watchなのに、と思ったが車も関係ないわけではない。

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121029_569330.html

F-35Aの公式模型展示。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/88.jpg.html

ネ20からXF5-1まで。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/74.jpg.html

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/70.jpg.html

ホンダジェット関係これだけ?

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/11.jpg.html

当日は747-400LCFが2機いたらしい。

http://car.watch.impress.co.jp/img/car/docs/569/330/html/plane14.jpg.html

メディアの黙殺っぷりに反して来場者は16万人と、目標の9万人を大きく上回ったそうだ。
MRJのキャビン実大模型は見たかったな。

記事の最後で展示会場と飛行場が離れてる問題が指摘されているが、トヨタあたりがまともに航空機に参入してればあるいは、というレベルでしか解決の見込みは無さそう。
セントレアまで1時間以上か。ちょっと遠いかもなあ。

http://www.nipc.city.nagoya.jp/pmn/access/public.html

BicympleとFliz/Xfire Bike Lane Safety Light/キャノンデールCERVコンセプト/サイドカー付き電動二輪車の速度記録が内燃エンジン車の記録に迫る/ゼロ・モーターサイクルの2013年モデルが発表される

BicympleとFliz

http://www.gizmag.com/bicymple-bicycle-simplified/24447/

Bicympleは米国ワシントン州の、Scalyfish Designsというところでデザインされたもの。
二輪でハンドルがあってサドルがあって人力で走る、という構成要素は自転車だが、車輪とペダルが直結しており、一輪車を2台結合したようにも見える奇怪な代物となっている。読んで字のごとく、機構をどんどん単純化(省略)していったらこうなった、と言いたいらしい。

利点としては軽量コンパクトぶあることとメンテナンスの容易さを挙げている。新しい形の提案という触れ込みではあるが、ネタ分が多過ぎて何ともかんとも。後輪も旋回するので横にも走れる、と言われてもなあ。
車輪サイズは29インチ。ホイールベースは短いし、後輪ぐらついたらまともに走らなくないか?
実質的には補助輪が付いた一輪車のような。と思ったらそういうコメント書いてる人もいたわ。

もう一つ、似たようなの。

Fliz

http://www.gizmag.com/fliz-bike-walking-cycling/23882/

説明不要。もはや自転車じゃねえ感じに。

全然違うが、いずれも真面目に取り合わないほうが賢明、という点では共通していると言えよう。

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Xfire  Bike Lane Safety Light

http://www.gizmag.com/xfire-bike-lane-safety-light/24282/

自転車の車幅をレーザ光で示すというアイテム。夜間、車道を走る自転車の安全性を高めようという試みであるが、街灯やヘッドライトのある状態での視認性がどんなもんなのか、現物を見てみたいところだ。

赤色レーザはそれぞれ5mWの出力で、単4電池×2本を使用。またLEDが5つ組み込まれており、テールライトとしても機能する。
特許申請中とあるが、この手の装置は過去にも存在しており、初めての試みというわけではないらしい。公式通販では39.99ドルで発売中。

http://thexfire.com/products-page/lighting-system/bike-lane-safety-light

5mWなら、輝度は相応に高いだろうか。でも日本だと消費生活用製品安全法に引っかかるなこれ(1mW未満までしか売れない)。

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キャノンデールCERVコンセプト

http://www.gizmag.com/cerv-bike-concept/24084/

Continuously Ergonomic Race Vehicle (CERV)コンセプトバイクは、8月末のEurobikeにて展示されたもので、走行中、地形(傾斜)の変化に応じてハンドルとシートの位置が可変する、というのが最大の特徴となっている。このため、シートポストからハンドルバーがのびたような独特の三角フレームを有し、片持ちのフロントフォークの中にロッドを通して操舵する構造を採用した。後ろもフレーム内側を通るシャフトドライブとなっている。
これにより、シートが上下に100mm、ハンドルが前後に80mm可動、登りでは高い姿勢を、降りでは低い姿勢を保つように変化する。
原型車を製作したのはオハイオ州のPriority Designsという会社で、普通のロードバイクを大改造して実証を行ったようだ。

真面目に検討してて凄いのは凄いが、やや奇をてらいすぎな感も否めず。

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サイドカー付き電動二輪車の速度記録が内燃エンジン車の記録に迫る

http://www.gizmag.com/killajoule-tops-216-mph/24141/

9月、ボンネビル塩湖で開催のBUB Motorcycle Speed Trialsにおいて、サイドカー付き電動二輪車の速度記録が更新された。216.504mphという記録は、内燃エンジン車の219mphにあと3mphと迫るものとなっている。
ただしこの記録は1回の走行のトップスピードであり、AMA公認となる2回の平均速度では、191.488mph。これでも依然としてサイドカー付き電動二輪の記録では最高となる。

KillaJouleと名付けられたこのマシンは全長18ft。ぱっと見わかりにくいが3つ目の車輪が付いていて、サイドカーとみなされる。記録走行の状態では、バッテリーとして電動工具用の375Vのものを214ポンド分積み、250馬力相当のACモータで走った。

デンバー工大の大学院生エバ・ハッカンソンという女性が夫ビル・デュペとともに製作したもの。この二人はKillaCycleという電動二輪のドラッグレーサーを製作するなど、その筋では名の知れた夫婦だそうだ。
エバ・ハッカンソンはKillaJouleの大部分を自ら作り上げ、以前から記録挑戦のハンドルも握っているという一種の女傑である。

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ゼロ・モーターサイクルの2013年モデルが発表される

http://www.gizmag.com/zero-motorcycles-2013-model-lineup/24394/

2012年は、大手の電動二輪参入などで危ないのでは?とも囁かれたゼロ・モータースポーツであるが、2013年モデルもちゃんと発表されている。
ラインナップ上は、Zero Xが廃止されてZero FXが投入され、全モデルでパワーパックが一新される。新しいZ-Forceモータは、前モデル比125%の出力を発生するそうだ。バッテリパックの選択肢も広がり、Zero S/DSは容量8.5kWhか11.4kWhが、Zero MX/XU/FXは2.8kWhか5.7kWhが選べる。iOS/Android対応のスマートフォン連携機能あり。

バッテリパックの容量が拡大することで、航続距離も長くなる。Zero Sで11.4kWhのバッテリを積んだ場合、市街地で220km(2012年モデルで183km)、ハイウェイで113km(同101km)、複合で150km(同125km)だそうだ。

新モデルのFXは、同社製品中でも最高のトルク95N-mを誇り、加速性能に優れる。
XUの交換可能なバッテリパックは今年も引き継がれる。

価格は、2.8kWhバッテリのXU、7995ドルから、11.4kWhバッテリのS/DS、15995ドルまで。1月中に発売予定となっている。

BLOODHOUND SSCの推進システムが試験される/メルセデスベンツがエアロダイナミック・トレーラー/トラックを公開

BLOODHOUND SSCの推進システムが試験される

http://www.bloodhoundssc.com/

http://www.gizmag.com/bloodhound-engine-test/24347/

http://www.gizmag.com/bloodhound-test-successful/24398/

BLOODHOUND SSCは最新の地上速度記録挑戦車で、目標速度を1000mph、1600km/h、Mach 1.4としている。
利用する推進システムはEJ200ターボジェットエンジンとロケットモータの組合せとなるが、ここで話題になっているのはロケットモータの試験。

このロケットモータはFalcon(まぎらわしい)と名付けられた独自開発のもので、分類としてはハイブリッドロケット。独学で学んだという28歳の技術者が設計している。

英MoDが公式サポートし、REMEから5名のロケット技術者が派遣されることも決まった。

本体の諸元は、全長4m、直径45.7cm、重量450kgで、最大推力122kNを発生し、噴射炎は8mに達する。軸馬力換算すると60000kWで、大雑把にF1マシン95台分。
固体ロケットを車(ほかにもいろいろやったが)に使った草分けといえば、1920年代のフリッツ・フォン・オペルだが、スロットル調整ができない以外は、この種の目的には理想的な推進システムと言えた。

Falconの燃料はHTPB(末端水酸基ポリブタジエン)、酸化剤は高濃度の過酸化水素水で、燃焼温度はセ氏3000度。
酸化剤の調節によってスロットル制御が可能となる理屈であるが、酸化剤の投入量は20秒未満で963kgといったレベルであり、ロケットエンジンのターボポンプが流用された。これはアヴロ・ブルースティール(スタンドオフ型の核ミサイルで、エンジンはアームストロング・シドレー製の液体ロケットだった)から取ってきたもので、

http://www.youtube.com/watch?v=FwMnEoC0gVg

さらにこのポンプを動かすのはコスワースのわりと新しいF1用V8エンジン、CA2010となっている。

これにEJ200を加え、動力源は3系統となる。補機が800bhpという。
計画では、EJ200で350mphまで加速(最大2.5g)する。写真の軍人さんはRAFのアンディ・グリーン空軍中佐で、BLOODHOUND SSCの搭乗者となることが決まっている。

挑戦を行う場所は南アフリカのHakskeen Pan。

http://www.bloodhoundssc.com/project/adventure/desert-race-track/hakskeen-pan

2009年に選定。当初は、マルコム・キャンベル卿が1929年に速度記録挑戦のためのコースを設営したこともあるVerneuk Panを調査した。ここは平坦ではあるが頁岩が散らばる地形となっており、幅120ftのコースを整備するのに3ヶ月を要したとされている。BLOODHOUNDを走らせるためには、全長18km×幅1500mのコースを設営しなければならない。
調査の結果、表土の下にばらばらの頁岩の地層があって無理ということになり断念。

Hakskeen Panは、幹線道路があるために候補から外されていたが、1年前、新たに別ルートを通る舗装道路が開通したため、候補として再浮上した。現在は未舗装の旧道が残る形なので、これを利用してコースの設営を実施する。
既にノーザンケープ州政府からの支援を取り付けていたため、ロケーションの変更は簡単だった模様。

10月3日のロケットモータ試験では、ベンチ上にて出力22370kW(30000bhp)で、10秒間の運転が行われた。
今後、14回の運転試験が予定されており、安全性が確認されれば車両への搭載、低速走行試験と続く見通し。

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メルセデスベンツがエアロダイナミック・トレーラー/トラックを公開

http://www.gizmag.com/mercedes-benz-aerodynamic-truck-trailer/24262/

コンセプト公開から約1年、国際商用車ショーにて実車両の登場となった。
外観からも判る通り、空力面の改良を突き詰めたトレーラーで、トレーラーとトラクターの隙間をいい感じに埋め、13.6m長の標準的なサイズでありつつ、車輪が完全にカバーされるなどの変更箇所が目に付く。
側面だけでなく下面もパネルで覆われ、気流はボートテール状となった後端のディフューザから抜けるようになっている。これらの変更により、通常のトレーラーとしての日常の取り扱いには影響なしに、抵抗を18%低減する事に成功した。
具体的には年間2000リットルの燃料(金額にして約3000ユーロ、CO2排出量にして5ton)を節約できるとされる。

なお組み合わせられているトラクターは既に販売されているモデルで、メルセデスベンツ曰く、公道上で最も高効率な大型トラクターだそうだ。
側面の延長パネルはオプションらしい。

エアロダイナミック・トラックの方は、同様の手法に基づいて設計されており、抵抗を12%低減している。具体的には、年間350リットルの燃料(金額にして約500ユーロ、CO2排出量にして1ton)を節約できるとされる。

これらは国際商用車ショーに展示された後も試験が続けられる見込みであるが、EUにおいてはボートテールとしての500mmの延長部分が法的に引っかかる。この問題については、メルセデスベンツでは来春にも解決すると見ている。

Gizmagで取り上げられた、その他のトラックの燃費改善の試みとしては、

GPSと連動し、起伏に沿ってスロットル制御するといったスマートなクルーズコントロールシステムをVWグループのスカニアが開発。
燃料消費低減効果は3%程度という。熟練ドライバーとかだとあんまり効果ない気もするが、個人の技量に左右されないメリットはあるだろう。

http://www.gizmag.com/scania-active-prediction-system/20870/

同種のシステムは、トラック業界ではダイムラー、その他にも一部の鉄道でも採用されている模様。

さらに発想を自由にしすぎた感じの例がInnotruck。

http://www.gizmag.com/innotruck-diesel-reloaded-ev/22206/

ミュンヘン工科大が製作したデモンストレータというかコンセプトカーというか。ルイジ・コラーニ教授のわけもなくかっこいいデザイン炸裂だ。
だが見た目に反し、情報化とかそっち系の技術が主になってるみたい。太陽電池、風力タービン、回生ブレーキで発生した電力をスマートグリッドに流すとか夢一杯な感じだ。

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ついでにSLS AMGクーペのEVが発表されてるのでこれも。

http://www.gizmag.com/mercedes-benz-sls-amg-coupe-electric-drive/24320/

4モータで、だいたいコンセプト発表時のまんま出てくるようだ。エンジン音も出せる。音だけ。

独DLRが可変式の前縁フラップを開発/ガルフストリームG650がFAA型式証明取得/SBiDir-FWコンセプト

独DLRが可変式の前縁フラップを開発

http://www.dlr.de/dlr/en/desktopdefault.aspx/tabid-10081/151_read-2107/year-all/

http://www.gizmag.com/morphing-leading-edge/24068/

ドイツ政府の航空宇宙開発期間であるDLRが、翼の前縁断面形状を変化させるタイプのフラップ、smart droop noseを開発した。
通常の前縁フラップ、特にスラットの様な隙間ができるやつは、揚力を高めるが抵抗を増し、騒音源ともなる。smart droop noseでは、前縁部分の断面形状そのものを変化させることで、欠点を無くして同様の効果だけを得られるように開発されている。

開発にあたっては、表面を平滑に仕上げつつ、弾力性と強度を両立するのが困難だった(着陸時には機体重量の1/3を支えなければならない)とのことだが、最終的にはGFRPを積層して解決したそうだ。その外皮の内側にアクチュエータが仕込んであって、形を変える仕組み。

風洞実験は、ジューコフスキーにあるTsAGIの大型風洞を利用した。その結果、前縁20度下げ状態までは、全く抵抗の増加が見られなかったとのことで、空力面の検証はひとまず成功している。
次の段階では実機への適用を目指し、バードストライクや落雷に耐え、あるいは凍結防止装置の装備などへ発達させることになっている。

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ガルフストリームG650がFAA型式証明取得

http://www.gulfstream.com/news/releases/2012/gulfstream-g650-receives-type-certificate.htm

ガルフストリームの9月7日付のプレスリリースによると、同社は2008年より開発を続けてきた新機種、G650の型式証明を取得したとのこと。
既に200機ほどのオーダーが入っており、顧客への引渡しは年内にスタートする予定となっている。
ガルフストリームで最大・最速の機体であるだけでなく、価格は6000万ドルからとなっており、名実ともに同社のフラッグシップと言えるだろう。

初飛行は2009年で、それから35ヶ月間に.1181回のフライトで3889飛行時間を記録。以下、セールスポイント等が列記されているが、試験飛行のハイライトについての部分を抜粋。

2010年5月2日のフライトでは初めて最大運航速度Mach 0.95に達し、2010年10月の高速巡航飛行試験では、大西洋上にて5000nmを9時間45分、平均速度Mach0.9で飛んだ。
2011年2月にはカリフォルニア州バーバンクからサバンナまでの1900nmを3時間26分、巡航速度Mach 0.91~0.92で飛び、最高速度Mach 0.925を記録。
2012年5月12日に最初の大西洋横断飛行が実施された。ワシントンDC-ジュネーブ間の3780nmで、飛行時間は6時間55分だった。

2011年4月の悲劇的な墜落事故は記憶に新しいが、再開後は大きなトラブルを出さずに現在に至る。

巡航速度がMach 0.9に達するビジネスジェット機は少ない。G650の他にはサイテーションXぐらいか。

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SBiDir-FWコンセプト

http://www.gizmag.com/rotating-bi-directional-flying-wing-design/23982/

今月初めに、手裏剣みたいな想像図で話題になったアレ。まあ一応。
エンジンマウントした胴体部分に対して翼のある下半分が回転する感じなんかしら。その辺の機構がよくわからぬ。
こんなのに10万ドルぽんと出しちゃうNASAにある意味安心した。最近は景気の悪い話しかなかったので。
でも斜め翼と同じ匂いがしますおわり。

コメント欄でガミラス艦に言及している人を見つけて驚愕(しかもちゃんとSpace Battleship YAMATO (2010年のじゃなくて1974年の)って書いてある)。メリケンオタ侮れじ。