USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出/TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表/ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく/ACTUVの活躍(イメージCG)/GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

USSOCOMが亜音速弾の事前調査に関するRfPを発出

http://www.gizmag.com/us-special-forces-subsonic-ammunition/25172/

SOCOMが用いている制式ライフル弾の初速は、弾種によって異なるがおおよそ音速の2~3倍とされている。
これを大きく下げて静粛性を高め、市街戦(殊に隠密作戦、個人あるいは少人数グループへの襲撃など)に使用したい、というのが主な動機となっている。が、大口径の亜音速弾には精度や信頼性の問題がつきまとうので、簡単な話ではない。

SOCOMは本格開発の前段として、SBIRに基づくRfPを発出した。
この手の計画は過去にも存在したが、開発は言うまでもなくうまくいってない。が、材料技術、製造技術の進歩によって実現できれば大成功、みたいな。

確実に機能する亜音速弾は、現在知られている限り小口径のピストル弾が存在するのみで、ライフル弾としては例がない。初速を遅くしつつ、精度を保ち、信頼性の高いライフル弾となると、技術的なハードルは高い。
装薬を減らすことになるから、有効射程距離が著しく縮むのは仕方ないとして、比較的大きなカートリッジに少量の装薬という組合せでは、燃焼が不安定となり、薬室内のガス圧を低下させ、不発や停弾を招く危険性が高くなる。薬室からのガス漏れが起これば、現代的なライフルのガス圧作動式の機構が満足に動かない可能性もある。

これらを解決する具体的な手法としては、新しい形式のカートリッジが必要になる見通しで、高分子系の材料で抜弾抗力を下げたり、ガス漏れ防止用のサボを入れるなどの案が示されてる。

実現の見通しが立てば原型試作、デモンストレーションと進むことになり、最終的には法執行機関向けにも(どっちにしても特殊部隊だろうけど)供給されるそうだ。

*

TrackingPoint社が精密狙撃システムを発表

http://www.gizmag.com/trackingpoint-precision-guided-firearms-scopes-digital/25264/

TrackingPointの社長は、特殊作戦の経験豊富な元海兵隊大尉(イラクでの作戦行動を通してブロンズスター、シルバースターを受勲している)で、除隊後レミントンの副社長を勤めた後、現在に至る。

で、ここに紹介されているのはTriggerPointという精密狙撃システムであり、.338ラプアマグナム弾を使うXS1と、.300ウィンチェスタマグナムのXS2およびXS3という製品を準備している。

拡大映像で目標点をマーキングした後、空気抵抗、風向きなどの補正を加えて正確な弾着ができる方向を指示、その方向に向くまで引き金が引けないよう抑止する、といった動作をするようだが、移動目標に使えるのかとか詳細はよくわからず。
具体的には映像の方を参照。

*

ラインメタルの試作レーザ兵器が実用型に近づく

http://www.rheinmetall-defence.com/en/rheinmetall_defence/public_relations/news/latest_news/details_2368.php

http://www.gizmag.com/rheinmetall-laser-test/25504/pictures

2011年に実施した5kW×2門の10kWタイプによるデモンストレーションに続くもので、レーザの出力を向上し30kW×1門+20kW×1門の50kWタイプの試射を実施している。場所は前回同様、同社保有のスイスのOchsenboden試験場。

11月には、3種類の目標への試射が試みられた。
1つ目は1000m先の15mm厚の鋼板、2つ目は3000m先から毎秒50m程度の速度で飛行するターゲットドローン、3つ目は迫撃砲弾をシミュレートした毎秒50mで移動する直径82mmの鋼球で、それぞれ悪天候下でも十分迅速に破壊できたと発表されている。

なお、同社は複数のレーザを束ねて使用する技術はBeam Superimposing Technology
(BST) と呼んでいる。つまり32bitプロセッサ2つで64bit級みたいな(違う)。
写真のうち、2門の方が今回の50kWタイプかな。

実用型では合計100kWを目指すが、2013年は60kWのレーザを試験するとのこと。
これはレーザ出力を(30kWの)2倍にすると書いてあるので、つまり実用型は60+20+20=100という解釈でよいのだろうか。

*

ACTUVの活躍(イメージCG)

http://www.gizmag.com/darpa-saic-actuv-drone/25607/

SAICが受注したACTUVのイメージCG映像が公開されている。ACTUVはASW作戦を主要任務とするが、モジュール変更によってISRから小規模な補給まで可能ということだから、多目的USVとした方が適切な気がする。

形態は受注の時のイメージと大体同じで、長期間のディーゼル潜水艦追尾の例を説明している。映像では非武装で、長期間にわたって目標を追尾し、情報を収集して終わる。SAICは60~90日間の作戦行動が可能としているが、あくまで最大ということか、そこまでは長くない。というか相手がディーゼル潜の例だしな。
興味深いのは、搭載した人工知能で目標の欺瞞行動に対応可能というくだりで、民間船舶を利用して追尾を混乱させるといった潜水艦の戦術機動にも対処できるという。つまり目標の位置を推定し、民間船舶などを避けつつ追尾を続けられることになっている。オペレータによる訂正ももちろん可能だが、勝手に動いてくれた方が労力が少なくて済むのは言うまでもなし。
水中の長距離センサは磁気(total field magnetometer array)、短距離センサは高周波アクティブソナー×2基。目標を識別するのはソナーの方になる。

total field magnetometer arrayというのはよくわからんが、ここにはMADのローコスト版みたいな事が書いてある。

http://www.psicorp.com/news_events/display_news.html?id=1217

こんなにうまくいくのかなあというのはおいといて、通して見た感じ、P-8と連携するだけでなく、CVNに積んでたASW機の役割も一部担うように見えるな。でP-8を水上はBAMS、水中はACTUVが補うと。

*

GPSと電波望遠鏡(VLA)を用いた地下核実験の検出方法について

http://www.gizmag.com/gps-radio-telescope-underground-nuclear-test-detection/25434/

米オハイオ州立大の研究チームは、GPSの信号記録または電波望遠鏡VLAの観測記録によって、秘密の地下核実験(記事中ではunderground
nuclear explosions、UNEと称している)を検出できることを発見した。

従来、地下核実験を検出する最も確実な方法とされているのは地震計のデータ解析であるが、核分裂反応の規模が小さいと通常爆薬などとの区別が難しくなる。例えば北朝鮮の2006年、2009年の核実験のうち、2006年の時は1キロトン未満と推定されたため、おそらくは失敗と見られたものの地震計のデータだけ判断するのは困難だったという。

オハイオ州立大でGPSを専門に扱うグループは、2009年の核実験の直後、朝鮮半島上空にあったGPS衛星の信号が、訂正によりごく短時間だけ遅延し、その程度がGPS衛星の位置によって異なることに気がついた。核実験に伴う電離層の乱れ(traveling ionospheric disturbance (TID))が、GPS信号に影響を与えることは以前から知られていたが、GPS衛星の位置と訂正の関係についての研究はされていなかった。
核爆発の爆心地から単純にTIDの状態が波のように一定速度で拡がっていったと仮定すると、2009年のデータでは高度300kmあたりを870km/hで移動した計算になる。
その後、2006年のケースと、1992年のネバダ州での核実験のケース、2011年の東日本大震災におけるTIDをGPS信号の記録から確認したところ、核実験と地震によるTIDの発生パターンが異なることや、核爆発の規模でTIDの伝搬速度が異なることがわかった。後者については、1992年の20キロトンの核爆発が、2009年のUNEで起こったTIDの3倍の速度だった、とある。

VLAの方だが、こちらもGPSと同じくTIDに対する訂正を連続的に行うため、基本的には同じ考え方でデータを分析すればよく、VLAの技術者と連携して実際に同様のデータが残っているのを確認できたとのこと。

うまく捉えられるかはGPS衛星の位置関係にもよるし、核拡散の問題をどうこうする技術というわけではもちろんないが、新しい手段を得たのは悪い話ではない。
情報提供者を危険に晒す必要も少なくなるし。

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約/ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定/ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約/ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

ATKがSLS能力向上のためのエンジン開発で契約

http://www.space-travel.com/reports/ATK_Awarded_50_Million_Contract_for_NASAs_Advanced_Concept_Booster_Development_for_SLS_999.html

ATKの発表によると、SLS能力向上に関わるAdvanced Concept Booster Developmentの一部にあたる、エンジニアリング開発とリスク低減試験についてNASAと契約を結んだとのこと。金額は5000万ドル。

この計画では、TVCノズルの電動化(リチウムイオン電池を利用する)、高性能推進剤、軽量複合材製のケース、新型ノズルが開発され、試験用エンジンを製作、静止運転試験までが含まれる。
全体としてはコストを下げつつ、性能と信頼性の向上につなげるものとなっている。

宇宙機では枯れた技術が使われる、とはよく言われる話であるが、材料や電池の分野は今でも日進月歩で発達し、かなりの速度でコモディティ化が進んでいる。様々な形で民生部品を使うのも一般的になりつつあるし、新しめの複合材やリチウムイオン電池もそろそろいいだろう、という感じではある。

*

ガリレオ航法衛星システムの3、4号機打ち上げが決定

http://www.spacedaily.com/reports/Key_flight_for_Europes_GPS_is_cleared_for_launch_999.html

10月5日、ESAはガリレオ航法衛星2機打ち上げが承認されたと発表した。
打ち上げ場所はクールー。使用されるロケットはソユーズST-B(上段がFregat-MT)で、既に組立棟に搬入済みとのこと。打ち上げ予定日は10月12日、1815GMTとなっている。
これらは2011年10月21日の1、2号機に続くもので、軌道投入に成功すれば稼動衛星の数は4基となり、測位システム(緯・経度、高度、時間の情報を取得し、地球上の航法を支援する)の最小単位を構成できるようになる。

計画では2015年までに18機を運用、商業利用が可能となり、2020年には全衛星30機体制となって、システムが完結する。これは米国のGPS衛星より6機多く、より高精度な(GPSの誤差3~8mに対して誤差1m程度の)測位が可能。
また、5月の欧州委員会への報告では、2015年までにかかる費用が50億ユーロとされている。

なお、クールーでのソユーズ打ち上げは3回目。アリアン5とヴェガの間を埋める打ち上げシステムとして活躍し始めている。

*

ESAが恒星間航法にパルサーを利用する基礎研究で英国NPLなどと契約

http://www.gizmag.com/pulsar-navigation/24498/

恒星間航法において、パルサー観測を用いるというアイディアはSFでよくあったような気がするが(終わりなき戦いとか)、パイオニア10号の有名な図版でも地球の位置情報(と地球を出発した時期)を示す図形として描かれたこともある。ESAはそれを真面目に実用に耐えるものにできるか研究しましょうという趣旨で、英国立物理研究所NRL及びレスター大学と契約した。

宇宙船が地球から遠ざかるほど、航法支援は困難になる。電波の速度による時間差も生じるし、光の速度で数週間、数ヶ月の距離ともなれば、送信設備の出力も膨大なものとしなければならない。
理屈では人工的なビーコンを設置することも可能だが、同じ理由で現実的ではない。そこで天然のビーコンと言えるパルサーの観測で何とかしようという話。
科学的にその辺の利点を述べると、パルサーはそれぞれが固有の周期で電磁波を発するので、非常に見つけやすい。そしてパルサーのX線を観測することができれば、地球上でGPS衛星を利用するのと同じように扱うことができる。
レスター大学のチームは、この目的のためのX線観測装置の可能性を、NPLは観測データから測位情報を得るためのアルゴリズム開発などをそれぞれ担当する。

*

ボーイングがガスを利用した衛星(デブリ)処分方法について特許申請

http://www.gizmag.com/boeing-ballistic-gas/24403/

使用されなくなった人工衛星など、いわゆるスペースデブリの問題は年々深刻さを増している。代表的な事例としては、2009年2月10日に起こったイリジウム33とコスモス2251の、高度789kmでの衝突があった。

ボーイングで特許申請の形で提案しているのは、デブリの進行方向にガスを撒くことで、その軌道周回速度を第一宇宙速度以下まで減速させるという方法。わずかでも第一宇宙速度を割りさえすれば、後は地球の重力井戸に真っ逆さまというわけだ。これまでに幾つか提案されたような、ソーラーセール等を用いて物理的に回収したり、つついたりする方法に比べても、最小のエネルギーで対処可能なアイディアと言えるだろう。更に言えば、回収のための衛星が何かと衝突することすら有り得る。

発案者はMichael Dunnという人で、ガス発生器を搭載した小型衛星を使用する。このガスについては、低温のキセノンまたはクリプトンのタンク、あるいは重金属を気化する装置か、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられている。原理的には何でもよく、デブリの進路上、逆向きのベクトルを与えてガスを撒き、運動量を削げばよい。

この方法の利点としては、システムがかなり単純で済むだけでなく、デブリに余計なダメージを与えて更に細かい破片が分離するといった可能性がほとんどないこと、精密に狙いを定める必要がないこと等がある。大型の衛星や軌道高度が高い場合は、単に数回に分けてやれば良い。
また1個の衛星で、異なる複数の軌道を周回するデブリに対して使えるのも利点とされる。
大気圏で燃え尽きそうにないとか有害物質入りとか原子炉搭載とかだとちょっと困るが、基本的には何にでも使える。

言うなれば宇宙フマキラー的な?
米国でスプレー式殺虫剤の代表的なものとはなんだろうか。

NASAがL2点に宇宙ステーション設置を検討/SLSの補助固体ブースタ製造が進む/SpaceXがVTVLの実験機を初飛行させる/ドラゴン宇宙機が初のISS補給ミッション、CRS-1を実施中/2012年の100YSSにおけるFTL航法のまとめ

NASAがL2点に宇宙ステーション設置を検討

http://www.gizmag.com/nasa-space-station-beyond-moon/24265/

米国の地方紙オーランド・センチネルが報じたところでは、NASAがオリオンMPCVを使う深宇宙探査の拠点として、L2点(EML-2 = Earth-Moon Lagrange 2)への宇宙ステーション設置を検討、9月初めにNASA長官からホワイトハウスへ文書として提出されたとのこと。
L2は大雑把に言って月(裏側)から61000km、地球からだと446000kmぐらい離れた位置にある。

建造にあたっては、ISSを構成するモジュールの流用が検討されており、記事中では、ロシア及びイタリアのモジュールを含む可能性にも触れられている。
この構想では、2017年、SLSにより各モジュールを打ち上げ、オリオンMPCVで人員と物資を輸送、2019年にL2へ配置するといったスケジュールとなるらしい。

この宇宙ステーションは2022年まで、無人探査機による月面サンプルリターン及び小惑星探査、有人火星探査の拠点となる。また深宇宙探査のための経験を積み、リスクを低減するという意味でも重要な役割を果たすとされている。

金額などの詳細は不明。NASAも記事の時点ではコメントを出していない。

GizmagではInternational Space Exploration Coordination Group (ISECG)の将来構想、2011 Global Exploration Roadmapとの関連を指摘している。このロードマップでは2020年以降までISSの耐用年数を延長し、次の25年に可能となるであろうミッションについて記述していた。

http://www.nasa.gov/pdf/591067main_GER_2011_small_single.pdf

L2点へステーションを設置する際の技術的なポイントとしては、ステーション本体に地球の低軌道よりも強固な放射線防護が必要である点(ヴァン・アレン帯の外なので)、オリオンMPCVは惑星間空間からの再突入に近い条件(NASAとしてはアポロ以来)で運用される点などが挙げられている。
このほか、ステーションへの補給もISSほど簡単ではなくなるから、低温流体の保管・管理のための技術が求められるし、常駐する人員がいないか、少数である前提なら、より高度な自動化が必要となる。いずれも人類が惑星間空間に出て行く上で、欠かせない技術であるのは確かだろう。

*

SLSの補助固体ブースタ製造が進む

http://www.gizmag.com/sls-largest-solid-rocket/24408/

SLSの補助固体ブースタは、計画では固体ロケットとして史上最大級の推力を発生することになっている。
ATKスペースシステムズが開発を担当し、スペースシャトルのSRBを元に5セグメント化、推力は12000kNから16000kNと33%増しになる予定。

写真に出ているのはQualification Motor-1と呼ばれる実証用のエンジンで、実際には飛行せず、設計と製造についての評価を行うためのものとなる。2013年に運転試験を実施予定。
製造面では、組立工程を合理化して、ノズルの超音波検査をX線検査に変更する(別の検査室に送らず、組立工場内でできるようになったのが大きいみたい)などの改善が試みられ、コストを46%も削減したとのこと。
ある組立工程では47の作業があったのを、7まで減らした、という例が挙げられている。作業手順を単純化することが、品質的にも有利となるのは言うまでもない。ましてSRBはチャレンジャーの事故の主因ともなっているため、このあたりには特に慎重になるところだろう。

が、それ以前にスペースシャトルで何十年も合理化してなかったんか、という気はしないでもない。SRBは半端に再利用とか変なことになってたとはいえ、とても公共事業っぽくはある。
コメント欄にSpaceX信奉者が散見されるのもわからんでもないが、その辺はもう少し実績が増えないと何とも言えないかな。
今回のCRS-1打ち上げでも、1段目のエンジン1基がフェイルしたという話も出てるし。

*

SpaceXがVTVLの実験機を初飛行させる

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-first-commercial-launch/24413/

実験機はGrasshopperと名付けられている。マーリン1Dエンジンに4本脚を付けた格好のもので、9月21日に初の飛行実験を成功させた。6ftほどジャンプした程度に留まったので、飛行と言えるかは微妙か。
実験は数ヶ月続く予定で、最終的には100ft上空でホバリングして降下するのを目指している。

*

ドラゴン宇宙機が初のISS補給ミッション、CRS-1を実施中

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-first-commercial-launch/24413/

5月のISSドッキング実験に続いて、Commercial Resupply Services (CRS)契約に含まれる。12回の補給ミッションのうち、最初のミッションORS-1が行われている。CRS契約の金額は16億ドル。
ロンチコンプレックス40から東部時間10月8日、午後8時35分に打ち上げられた。ISSとのドッキングから3週間ほど経過した後、再突入して海上にて回収される見込み(有人では動力着陸が予定されている)。ペイロードとして積載した物資は905kgほどで、同量の実験サンプルなどを積載して戻ることになっている。
現在ISSにはエクスペディション33のクルーとして、星出宇宙飛行士が滞在しており、ドッキング用のアーム制御を担当する。

*

2012年の100YSSにおけるFTL航法のまとめ

http://www.gizmag.com/warp-drive-bubble-nasa-interstellar/24392/

原文がなかなか良い記事なのでそっち読むのがオススメ。

光の速度を超えることに関しては、最近の研究でも宇宙開闢からインフレーションの間に少なくとも光速の3京倍の速度で膨張した、というのが既定の事実になりかけている程度で、基本的な概念のレベルでは、Miguel Alcubierreが1994年、時空の歪みを利用してFTL航法を実現可能という研究結果を発表した時とあんまり変わってない。つまり、平坦な時空の内部で光速を超えることはできなくても、時空そのものが変形したり膨張するのであれば、その限りではないという理屈だ。以下、時空の歪みをワープ効果と呼ぶ。

FTL航法を考えると、宇宙船の前方に時空間を歪めるワープ効果を発生させ、宇宙船の存在する時空では拡張(復元)して平坦にする必要がある。この状況を時空の歪みに囲まれた泡に例えてワープ・バブルと呼ぶ。この手の研究では、移動速度を光速の10倍と想定していることが多いらしいが、理論上の限界は今のところ無い。
時空間を海、時空間の歪みを波に置き換えた説明では、波の進行速度は海水の進行速度よりもずっと速い。というわけで、FTL航法はサーフィンのようなものとも表現されている。

問題はワープ・バブルをどうやって形成するかというところで、ワープ・バブル形成のためには膨大な負のエネルギーを投入する必要があり、古典物理学は役に立たないし、量子力学で論じられるようなものとも桁が違う。しかし、最近の研究では、当初Miguel Alcubierreが計算したような、小型宇宙船を包み込む程度のワープ・バブルを形成するのに宇宙全体の質量でもまだ足りない、といったレベルではなくなってきたらしい。現在のモデルでは、数百kg程度の質量で済むそうだ。

SFだと最終的に、エキゾチック物質とかダークエネルギーとかに頼るわけであるが、ここではわけのわからなさが多少少ない?後者のダークエネルギーについて述べている。
宇宙全体に広がったダークエネルギーの密度は極めて小さく、地球磁場の5万分の1程度の強さしかないとされるものの、磁力の場合は希土類磁石が恒星間空間の磁場の1億倍の強度を発してたりするから、決め付けるのはまだ早い。

とまあそんな感じで、どうにかしてワープ・バブル形成に成功したとすると、どうやって制御するか、止めるときはどうするかという問題が出てくる。ここら辺はモデルが複雑になりすぎて手がつけられない、というのが実情みたいだ。
で、分析が不足していることも棚上げして話を進めると、対称なバブルが形成されたら向きはどうやって決めるのかとか、バブル内部から外部の状況がわかるのかとか、ワープ効果が現れた時点でホーキング輻射が起こってバブル内外の物質が蒸発するんじゃないのかとか、まあわからんことだらけなので、単なる思考実験の域を出ない感じになっていく。

さてこれだけだと単なるおもしろいおはなしで終わるところだが、そこはさすがにNASAなので、ワープ効果を実証するための実験装置を提案している。White-Juday Warp Field Interferometer (WFI)と呼ばれるこの装置は、要は極めて高精度な干渉計であり、1nm単位の経路長の変化を検出可能となる。これで微細な時空の歪みを観測しようという試み。

小さいことからコツコツと。

カタールがMH-60R/Sを22機導入/A400Mの公式愛称がアトラスに決まる/オランダ議会でJSF計画撤退論が拡大/F-35の弾道ミサイル探知/追尾能力についてデモンストレーションが行われる

カタールがMH-60R/Sを22機導入

http://www.flightglobal.com/news/articles/qatar-requests-seahawk-helicopter-purchase-373730/

DSCAはカタール向けのMH-60R/Sについて、6月26日に議会へ通知した。内訳はMH-60S×12機と武装キット、MH-60R×10機となる。金額は25億ドル。オプションは武装型MH-60S×6機。

これらはカタールのウェストランド・シーキングを代替する物となる。
2週間前には、同じく米国のFMSでUH-60M×12機の購入を要請している。こちらの金額は11億ドルだった。

*

A400Mの公式愛称がアトラスに決まる

http://www.flightglobal.com/news/articles/riat-a400m-reborn-as-atlas-373861/

RIATにおいて、RAFのSir Stephen Dalton元帥が命名者となった模様。
ということは、少なくともRAFではアトラスC1とかそんな呼称になるわけか。

A400Mは、MSN6のTP400エンジンの1基から金属片が発見されるというトラブルがあり、今年のRIAT、ファーンボロでも地上展示に留まる。
このエンジン自体は既に交換されているが、個体差によるものか設計などの不備によるものかはまだわかっていない。MSN6は信頼性試験のうち160飛行時間を消化しており、エンジンの点検結果如何では、160時間分をやり直しにする必要が生じる可能性がある。

来年3月の引き渡しは契約で確定しているが、既にエンジンの問題で1回延期を使っており、今年後半の引き渡し予定から期限ギリギリに先送りしているので、条件は厳しい。

6月7日に飛行試験機5機がトゥールーズに集められたときの画像(空撮あり)が出てる。

http://www.flightglobal.com/news/articles/pictures-five-grizzlies-go-wild-in-toulouse-372747/

このうちMSN2は、タンカー型を想定した付属物をランプ下に追加されている。

*

オランダ議会でJSF計画撤退論が拡大

http://www.dutchnews.nl/news/archives/2012/07/parliament_reaches_a_majority.php

オランダでは財政緊縮を巡る5月の政変で連立与党がほぼ崩壊した。元々労働党中心の少数与党でやっていたので、議会勢力としては劣勢になり、総選挙も近いと言われていた。
野党側もかねてより反対姿勢を明確にしていたため、今更意外というほどでもない。

なお現状、キャンセルすると10億ユーロぐらいをドブに捨てる結果となるらしい。今後の展開は総選挙の結果次第であるが、ここを決断するのは中々難しいだろう。
戦闘機の保有数も減らす勢いでないと決められないんではないかと思うが‥

*

F-35の弾道ミサイル探知/追尾能力についてデモンストレーションが行われる

http://www.irconnect.com/noc/press/pages/news_releases.html?d=260297

http://www.youtube.com/watch?v=qF29GBSpRF4

地上から5回連続して発射された模擬弾道ミサイルを、AN/AAQ-37 DASとAN/APG-81によって追尾するデモンストレーションであるが、実はNASAのAnomalous Transport Rocket Experiment (ATREX)を利用したもの。

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/atrex.html

ATREXは気象観測用ロケットを80秒間隔で打ち上げ、高度60~65マイルのジェット気流を観測するという実験だった。人工的に雲を発生させ、どのように吹き流されるかを観測して電離層のモデル化に役立てる。5基のうち2基には気圧計と温度計が搭載された。場所はバージニア州みたい。
いずれも低軌道までは到達しないから、中距離以下の弾道ミサイルに比較的近い挙動を示すと言える。
使用されたのはテリアとその改修型で、全て2段式。

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/terrier-improvedMalemute.html

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/terrier-improvedOrion.html

http://www.nasa.gov/mission_pages/sunearth/missions/terrier-improvedOriole.html

 

ノースロップグラマンではATREXにBAC1-11 CATバードを持ち込んだ。弾道ミサイル追尾のための軽微な改修を施したソフトウェアが組み込まれていたとのこと。

結果、5基全てを別々に探知、追尾することに成功。DACの視野は広いので、パイロットはセンサの向きを気にせず活動できるとしている。
探知距離などのデータは公表されていない。

Liberty Space Launch Vehiucle/ペガサスXLによりNuSTARが打ち上げられる/ボイジャー1号が恒星間空間へ脱出中?

Liberty Space Launch Vehiucle

http://www.libertyspace.us/

Liberty Space Launch Vehiucle(以下LV)は、ATKエアロスペースとEAD傘下の北米アストリウムが共同で提案しているスペースシャトル後継の有人ロケット。2011年2月にSpace Act Agreementに提案するも却下、しかし同年9月、CCDev-2に無資金ながら採択という逆転劇を演じる。

LVは、Ares-1の2段目をJ-2XからアリアンVの1段目で使われるヴァルカン2に変更したもので、一歩引いてみると欧州からの支援を得る形で再出発した、と言える。NASAとしては、一度没にしたコンステレーション計画に、また税金で支援するのは無理だが、自主開発で実用機まで完成させる分には使ってやらんこともない的な立場か。
LMもオリオン繋がりで深く関与してる。

1段目はAres-1とまんま同じで、スペースシャトルのRSRMを5セグメント化し、燃焼時間を180秒あるいは150秒に延長したものと言われている。スペースシャトルでは120秒間作動して高度約45kmで切り離すというものだった。
5セグメント化による強化は、スペースシャトル時代にも検討されたプランだが、推力などの詳細は伝わってきていない。

J-2Xと同じくヴァルカン2も液酸液水であり、2段目は1段目のRSRMより太い。つまりトップヘビーで、Ares-1の時に指摘されたの同様、進行方向に対して空力中心と重心の関係が逆になっている。この辺は実験打ち上げで払拭されたんかしら。
ヴァルカン2に関しては、アリアンVの9年間48連続打ち上げ成功(継続中)という実績があり、信頼性は世界で最も高いレベルにある。低コストと言われるがまだ燃焼試験とかやってるJ-2Xよりは、余程堅い。

有人部分については、各社の有人カプセルなどどれでも搭載可能なのが売りとしていたが、自前でもオリオンの有人カプセルを元に開発を進めることになった(後述)。

試験機は、2014年に無人試験打ち上げ、2015年に有人試験打ち上げ、それぞれ2機ずつ。2016年から実運用予定とされていたが、新しいところでは初打ち上げが2015年になるとも書かれてる。

・ヴァルカン2の極低温試験が完了

http://atk.mediaroom.com/2012-06-28-Liberty-second-stage-one-step-closer-to-production

2段目に関するプレスリリース。試験機用の構造試験に加え、極低温試験が完了して、製造準備が整いつつある。

LVの2段目はアリアンVの1段目と基本的に同様だが、タンクの外殻が厚肉化(数倍とある)されているとのこと。ギリギリで設計されるロケットとしては大きな設計変更となり、機械加工にしろ溶接にしろ製造上の難易度が高くなるのは言うまでもないが、製造技術的に問題は生じなかったとしている。

・有人カプセルの開発と詳細

http://www.flightglobal.com/news/articles/atk-announces-capsule-for-liberty-launch-vehicle-371644/

http://atk.mediaroom.com/2012-07-03-ATK-Unveils-Unique-Liberty-Capability

2009年にNASAへテストベッドが引き渡されていたもの。commercial crew integrated capability (CCiCap)を狙う開発のスタートは、5月に決まった。
外殻をATKが、中身のシステム設計とインテグレーションはLMが担当する。ミッションアボートシステムなども含め、オリオンMPCVの派生型に近い。同じサービスモジュール使えたりするのかは不明。

LVの専用有人カプセルは、最大7名が搭乗可能なcomposite crew moduleとLiberty Logistics Module (LLM)からなる。前者はLMが手がけたオリオンの有人カプセルの技術が投入され、後者は他にない貨物輸送能力を特徴としている。

LLMの直径は15ftで、NASAのMulti-Purpose Logistic Module設計規格に準拠する。つまりISSの科学ラックなどをそのまま収める事が可能で、最大4基が積載できる。またこれを与圧区画とした場合は最大ペイロード5100ポンドとなる。
有人カプセルに加えて、これだけのペイロードを同時に輸送可能なものは他に例がない。他社だと2回の打ち上げを要するケースでも1回の打ち上げで済む‥というのがATKの主張。再使用回数は10回。
カプセルの下、エンジンと挟まれた円筒形の空間に貨物区画が収まり、だるま落とし的な造りになってるのがわかる。

打ち上げ機の規模としてはデルタIVヘビー相当(LEOへ22ton、Ares-1より若干小さい)なので、これぐらいできて当然と言われればそれまでであるが、再使用できる点は違う。

*

ペガサスXLによりNuSTARが打ち上げられる

http://www.orbital.com/NewsInfo/release.asp?prid=815

http://www.space-travel.com/reports/Orbital_Launches_Company_Built_NuSTAR_Satellite_Aboard_Pegasus_Rocket_for_NASA_999.html

6月13日にNuSTARが打ち上げられた。打ち上げに使用されたのはペガサスXLで、NASAからオービタル所有のトライスター(Stargazer)に搭載されて準備中の写真が公開されている。

http://www.nasa.gov/mission_pages/nustar/multimedia/pia15633.html

NuSTARは、NASAのSmall Explorer (SMEX)シリーズに属する衛星の一つで、X線望遠鏡を積んでいる。小型低コストで効率の良いミッションをこなせるように考えられており、管制はゴダード宇宙センター。NuSTARについてはカリフォルニア工科大などが主体で開発している。

http://www.astroarts.co.jp/news/2012/06/14nustar/index-j.shtml

1990年以来のペガサスの打ち上げ実績にはNASAの科学ミッションが数多く含まれ、小型の打ち上げ機としては唯一、Payload Risk Category 3(最も低リスクという分類)に認定されている。
打ち上げにStargazerが使われるようになったのは1994年から。この頃はX-34の試験にも使う予定だった。

http://www.orbital.com/NewsInfo/Publications/L1011.pdf

*

空中発射型の打ち上げシステムは、ペガサス以外に継続して使われてるものは存在しないと思うが、近年は小型衛星や超小型衛星クラスでもできることが増えたことを背景として、ペガサスよりも小規模なシステムの開発を目指す動きがある。

DARPAのAirborne Launch Assist Space Access (ALASA)は、2011年11月に公表され、ボーイングの受注が決まった。

http://www.space-travel.com/reports/Boeing_Receives_DARPA_Airborne_Satellite_Launch_Study_Contract_999.html

https://www.fbo.gov/index?s=opportunity&mode=form&id=0ad6397acb2e17d4666acfe227d1b82b&tab=core&_cview=1

要求はされている打ち上げ能力は、重量100ポンドクラスとマイクロサット級。

*

ボイジャー1号が恒星間空間へ脱出中?

http://www.nasa.gov/mission_pages/voyager/voyager20120614.html

続報ないのでとりあえずメモ。

6月14日、ボイジャー1号周辺の銀河系からの荷電粒子(宇宙線)の量が、これまでに比べて急激に増加しているとの発表。
2009年1月から2012年1月までの増加率は25%に留まっていたが、5月7日からの1週間で5%増加し、1ヶ月では若干緩やかになって9%の増加が確認されている。
太陽系最外縁部の直接観測データなどは前例がないため、全て予想にしかならないが、この傾向が続くならヘリオスフィアの外に出つつあることを示していると考えられる。

荷電粒子以外に大きな指標となり得るのは、磁力線の方向(黄道面を基準にすると「東西」から「南北」に変わる)であるが、こちらはデータの分析に数ヶ月単位の時間を要するため、結論はまだ先のことになる。

http://www.nasa.gov/multimedia/videogallery/index.html?collection_id=57911&media_id=146960051

NROが余剰の偵察衛星2基をNASAに移管する/Kinectを人工衛星に搭載する試み/X-37B OTV-2の着陸予定が発表される

NROが余剰の偵察衛星2基をNASAに移管する

http://www.gizmag.com/spysatellite/22813/

NROは、余剰となった偵察衛星2基をNASAに移管した。これはニューヨーク州ロチェスターにて保管されているもので、宇宙に向ければ光学観測に用いることができ、HSTよりも新しく、高性能な機材を搭載可能となる。ただしNASAではHSTの代替として使うわけではなく、超新星観測、太陽系外惑星の探査や、ダークエネルギー関連の研究といった用途での運用を考えている。HST後継は依然としてJWST計画が進行中だが、計画はHSTと同じく難航、遅延を重ねて現在に至る。

2つの衛星は、機密指定が解かれたとは言え、国防総省とNROが軍事を含む情報収集用途で製造・保管していたものである為、偵察衛星としての能力や運用はもちろん、元々搭載されていた機材や、その材料についての情報も明らかにされていない。公式情報に基づく推測として、KH-11(1975年運用開始)かその派生型、おそらくは1990年代かもう少し新しい時期に製造された可能性が挙げられている。

宇宙望遠鏡としての衛星の外見は、NASA広報の説明を引用すると「短くて太いHST」といったもので、本体重量は1700kg。主鏡直径94インチはHSTと同じだが、焦点距離は短く、その分全長も短い。これはHSTよりもずっと広い画角を有することを意味する。また、HSTにはない補助鏡によって焦点操作が容易になっていたり、後部の機器設置スペースが広くとられている等の特徴がある。
その他の仕様はスライドの内容を参照。

http://www.gizmag.com/spysatellite/22813/pictures#2

NASAに移管された当初は、望遠鏡部分以外の部分、太陽電池パネルから姿勢制御システムに至る人工衛星として必須の部品の大半が取外された状態。おまけに移管は文書による通知のみ、輸送費用も移管後の保管費用(2基で年間100万ドル)もNASA持ちで、取扱いに苦慮した時期があったようだ。

改修案を強く後押ししているのは、ゴダード宇宙センター主導のWFIRST(Wide Field Infrared Survey Telescope)計画の宇宙望遠鏡に流用するというアイディアだった。WFIRSTでは、観測機材の目玉として新造の宇宙望遠鏡(主に近赤外線観測用)を計画していたものの、打ち上げ時期は早くとも2024年(当初2020年から変更。L2点に投入する都合でランチウィンドウの制約もある)、コストは15億ドルまで膨れ上がり、計画自体が危ぶまれる状況になっていた。NASA内部では航空機搭載の望遠鏡で代替できないかという検討もなされたが、能力不足との結論に至る。
この状況に対して偵察衛星改修案では、2億5000万ドルの経費節減が可能となる。打ち上げ時期も2020年まで前倒しできるということで、一石二鳥の妙案になった。これには静止軌道での運用に変更されることも関係しているが、予備機も手に入るし悪い話ではない。
WFIRSTより不細工だけど。

http://wfirst.gsfc.nasa.gov/

*

Kinectを人工衛星に搭載する試み

http://www.sstl.co.uk/news-and-events?story=2025

http://www.flightglobal.com/news/articles/surrey-satellite-turns-to-xbox-for-latest-technology-372661/

http://www.gizmag.com/strand2/22752/

Surrey Satellite Technology Limited (SSTL)は英国のサリー大学との産学協同研究を行っている民間企業で、Kinectを搭載した小型の人工衛星2機の打ち上げと試験を計画している。Kinectを衛星同士のドッキング制御などに応用する目的なので、2機は一対で打ち上げる必要がある。

大型衛星のドッキング技術はある程度確立しているが、能力の限られる小型衛星同士が自律的に結合できるようになると、各々の人工衛星という独立した装置から、より大きなシステムを構成することが容易になり、メンテナンスの面でも大きなメリットがある、というのが研究の題目。実用化されれば、例えば故障部分を分離して入れ替えたり、能力を向上するといったイメージであって、マイクロサット以下の規模の衛星からなるモジュール化衛星のようなものに発展する可能性にも期待している。また人工衛星とデブリとの衝突・損傷の危険性は日々増大しているが、小型衛星の集合体の方が、単体の大型衛星よりも損傷などのトラブルへ対処しやすい。

SSTLではSTRaNdという一連のナノサットを開発。中身にスマートフォンを流用したSTRaNd-1は、10cm×10cm×30cmの直方体で、10cm×30cmの4面に太陽電池セルが貼り付けられている。制御系などには、スマートフォンのカメラ、通信装置、モーションセンサが利用され、積極的に使い道が無いのはタッチスクリーンぐらいであるが、これも宇宙放射線の検出に使えるかもしれないというから恐れ入る。打ち上げ時期はピギーバックペイロードの空席次第となり、うまくいけば今年後半とされている。

STRaNd-2は-1と同様の外装を持ち、Kinectの中身のカメラとIRセンサを組み込む。前述のように2機一組が製作される予定で、このセンサを利用して自律的なドッキング操作を行わせる計画。
Kinectの空間認識を自律飛行などに応用する試みは、既にMITがクワッドローターのマイクロUAVで行っており、それがヒントになったとの事。こうした機械では、ハードウェアと同等以上に画像解析アルゴリズムも重要であるが、その開発費用も全部込みでのあの価格、産業機械や航空宇宙向けとは桁の違う量産体制だからこそできたというのが実感できる。

*

X-37B OTV-2の着陸予定が発表される

http://www.flightglobal.com/news/articles/vandenberg-afb-readies-for-x-37b-landing-372490/

現在軌道周回中のX-37B OTV-2は、2011年3月に打ち上げられている。今回の発表では、6月中旬までに(天候その他の条件がクリアされれば)ヴァンデンバーグAFBへ着陸するとのことなので、軌道を周回した期間は15ヶ月ちょっとということになる。OTV-1による1回目が2010年4月から10月までだったが、今回は設計当初の仕様と言われた270日間を大きく上回った。
3回目の打ち上げとなる次回は、X-37B OTV-1が再度使用される計画で、時期は今のところ秋頃と言われている。ミッション内容が機密指定になってるのは変わらず、はっきりしたことは当事者以外判らない。なおOTV-1は1回目のフライトを終えた後、ヴァンデンバーグAFBに留まっていた。再使用のためのリファービッシュ作業のほか、搭載機材のチェックなどが行われたと推測されている。

100 Year Starship Initiative/Dragon打ち上げ成功、ISSとドッキングを果たす/Dream Chaserの飛行試験が始まる

100 Year Starship Initiative

http://100yss.org/

http://www.gizmag.com/darpa-funds-100-year-starship/22662/

100YSSと略称される、DARPAの新しい無駄金プロジェクト。来る22世紀、恒星間航行を実現すべく動き始めた。
50万ドルの資金はドロシー・ジェミスン財団というところに提供されることが決まっている。この財団で100YSSへの提案を作成した中心人物は元NASAの宇宙飛行士、メイ・ジェミスン博士で、恒星間航行に関する民間レベルでのイニシアティブを構築する事になる。
初年度の主要な目標は、まず投資を募り、メンバーを揃え、関連する一般の研究プロジェクトに対する助成を通じて、恒星間探査の構想を発展させる。一般の研究と簡単に書いたが、これは理数系と工学系に留まらず、恒星間航行を実現する上で検討対象となるであろう哲学、社会文化、経済など広範囲にわたる。そのあたりは公開のシンポジウムを開催して取りまとめる計画となっており、今年は9月13日から16日まで、ヒューストンで催される。

また100YSSの中では長期的な理論研究、技術開発を担う研究所も設立する予定。

DARPAの無駄予算獲得能力が半端なさすぎて最早笑えない。いやむしろNASAの政治力が衰弱しすぎてヤバイという感じか。

この手の計画としてはレーザ核融合のダイダロス計画、原子力ロケットのオリオン計画が有名だったが、もはや若い人は知らないのではないかというレベルの古さになってしまった。
オリオン計画の方では、ダイソン博士が恒星間航行までを想定した有人宇宙船を検討している。40年以上前のことだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Project_Orion_(nuclear_propulsion)

初期の検討では船体は直径20kmの半球状で、最大0.00003g加速を100年間持続し、巡航速度は光速の0.33%、1330年かけてアルファケンタウリまで到達するといったものだったが、後には直径100mで最大1g加速を10日間持続し、巡航速度は光速の3.3%、アルファケンタウリまで133年と効率を100倍ぐらい改善したプランになった。
現存する技術で実現可能ということになっている。

ダイダロス計画の方は、今でもやや微妙かなあ。レーザ核融合の進歩がないわけではないが。

世代型恒星間宇宙船にせよ、冷凍睡眠にせよ、有人だといろいろ厄介なことも多い。
投資を集めるっつーのも、相当無茶と言えば無茶だよな。観測データを売り買いするにも、100年200年の契約になるだろうし。SFではさらっと流されたりルール変更で対応されがちな経済的な側面は興味深いが、現実は厳しい。まして世界恐慌一歩手前が延々続きそうな現状では、どんなもんなのか。

*

http://www.gizmag.com/engineer-proposes-uss-enterprise/22532/

ついでだからぶっちゃけネタとしか思えんエンタープライズ建造構想も。

匿名の技術者BTE-Danは、1兆ドル以下の予算と20年の建造期間でスタートレックに出てきたUSSエンタープライズみたいな惑星間宇宙船を造れると主張している。BTE-Dan氏がGen1 Enterpriseと呼ぶこの宇宙船は、主推進機が1.5GWのイオンエンジンで、地球から月まで3日、火星まで90日で到達可能という。

円盤状のブロック人工重力区画とし、トラクタービームは無理なんで艀みたいな着陸機を積む。

http://www.buildtheenterprise.org/

公開したら鯖がパンクして増強したとか何とか。
確かに労作ではある。一見の価値はあるがしかし、現状に痺れを切らしたトレッキーがマジギレしてやっちゃった感が凄い。火星有人探査ですらあと最低でも四半世紀は無理っぽいからな。

*

Dragon打ち上げ成功、ISSとドッキングを果たす

http://www.gizmag.com/spacex-dragon-reaches-iss/22685/

最後の最後でちょっと延期が入ったものの、5月22日の東部時間3時44分、Dragonは無事に打ち上げられた。3日後の5月25日、東部時間9時56分、エクスペディション31のクルーが操るISSのロボットアームにより捕捉され、ドッキングに成功している。何度も報じられている通り、民間開発の宇宙船としては初の快挙となった。

 

Falcon 9 Heavyを使った打ち上げで、最初の顧客としてIntelsatとの契約が締結されたり、Space Xの勢いは凄い。

http://www.flightglobal.com/news/articles/spacex-signs-intelsat-as-first-falcon-9-heavy-customer-372429/

Space Xに関しては既存技術の活用でコスト削減で云々~という報道があちこちで見られたが、その既存技術がどこから来たか、技術基盤が固まるまでの膨大な投資を支えたのが何なのかは、あまり触れられてなかった。公開論文だけで現物作れれば世話ねーよみたいな。

今更であるがFalcon 9 Heavyは、1段目のFalcon 9の1段目と同様の増設ブースタを2基追加した形態となる。今のところ専用の射点はヴァンデンバーグAFBに建設中で2013年半ばに完成予定。将来はFalcon 9と同様にKSCでも打ち上げたいとしている。ヴァンデンバーグは極軌道投入に適した射点となる。

打ち上げ時期と射点は未定。インテルサットの発表ではヴァンデンバーグは使わないとされているので、そこから推測すると打ち上げ時期は2013年よりも後で、SpaceXが建設中のブラウンズヴィルの新打ち上げ施設かKSCということになる可能性が大。

まだ詳細は交渉中のようだ。

*

Dream Chaserの飛行試験が始まる

http://www.flightglobal.com/news/articles/corrected-sierra-nevadas-dream-chaser-begins-flight-testing-372483/

シエラネバダ・コーポレーションが開発中のリフティングボディ型宇宙機Dream Chaserは、先頃飛行試験を開始、CCDevの4つのマイルストーンを通過したと発表。これには落下試験による着陸脚の確認、分離装置の試験が含まれる。
飛行試験はごく初期の段階で、コロラド州デンバー近郊のブルームフィールド飛行場から、S-64に吊り下げられてのキャプティブ・キャリー試験を実施した模様。次の段階ではエドワーズAFBに移動し、今年後半にも滑空・着陸試験が行われる予定。approach and landing test (ALT)と書いてある。

http://www.flightglobal.com/news/articles/sierra-nevada-completes-dream-chaser-preliminary-design-review-372702/

PDRも着々と進んでいるようだ。

 

SpaceShipTwoの飛行試験が6月か7月に再開予定/Dragonの打ち上げが5月19日へ再々延期/SpaceXとBigelowが商用宇宙ステーション市場開拓で協力/Dragon開発が7つ目のマイルストンを通過/オービタルサイエンスのアンタレス開発費用が増大

SpaceShipTwoの飛行試験が6月か7月に再開予定

http://www.flightglobal.com/news/articles/spaceshiptwo-to-resume-flight-tests-as-early-as-june-371741/

ヴァージン・ギャラクティックの発表によると、SpaceShipTwoの飛行試験が7月、早ければ6月にも再開されるとの見通し。

同機の飛行試験は、2011年9月、16回目の滑空試験の後、中断されていた。このときの試験では、母機WhiteKnight2から分離した直後に尾翼失速状態に陥ってしまった。降下中にコントロールを回復したため、機体、乗員に損害はなかったものの、何らかの対策をとる必要が生じた。
試験再開後、対策の検証などのための投下試験が計画されている。

シエラネバダ・コーポレーションが提供するのエンジン(RocketMotorTwo)を搭載しての動力飛行はこの年末にかけて行われる計画。うまくいけば、(2~3分の無重量状態体験を含む)弾道飛行による商用運航は、2013年内開始予定としている。
まだエンジンは搭載してないが、配管などの作業は進行しているとのこと。

今のところ、SS2のフライトに予約金を支払った人数は、約515人だそうだ。最近、南アフリカにも代理店を出したという。

*

Dragonの打ち上げが5月19日へ再々延期

http://www.flightglobal.com/news/articles/spacex-aims-for-19-may-launch-371500/

よくわからんがまだ打ち上げられてなかったみたい。最初の年度変わる前の予定を入れたら再々再延期?
延期理由はソフトウェア関係とのことなので、事情はこれまでの延期と同じ。修正して証明通すプロセスに時間がとられている。

原則、ISSとのランデブーを狙える打ち上げ日は3日おきであり、ソユーズの日程(5月14日)は外すので、5月19日と予備日22日となった模様。

COTSでの次の打ち上げは、8月のオービタルサイエンスの打ち上げとなる予定。

*

SpaceXとBigelowが商用宇宙ステーション市場開拓で協力

http://www.flightglobal.com/news/articles/spacex-and-bigelow-to-jointly-market-private-space-station-flights-371688/

Bigelowはモジュール型の宇宙ステーションに関連する技術を有しており、その打ち上げに関しては既に数社と話し合いを持っていた。特にボーイングのカプセル型有人宇宙機CST-100とも互換性がある点は注目に値する。

今回、2台の試験用モジュール(居住目的ではない)を、2015年にFalcon9で打ち上げることで契約を締結したとのこと。

Bigelowのモジュールは、自前で宇宙ステーションの技術を持たない国からも注目をされている。この記事では、英国、スウェーデン、シンガポールなどの国名が挙がっている。

*

Dragon開発が7つ目のマイルストンを通過

http://www.flightglobal.com/news/articles/spacex-completes-dragon-layout-concept-trials-371584/

これはNASAのCCDev IIとしての資金拠出に関わるマイルストンで、居住設備の概念設計とトライアル日程についての評価が含まれている。つまり最大7人乗りという設計で通ったということになる。

CCDev IIに続く次の段階はCCiCap、commercial crew integrated capabilityとなり、2012年後半に入札が実施される計画となっている。

*

オービタルサイエンスのアンタレス開発費用が増大

http://www.flightglobal.com/news/articles/orbital-sciences-development-costs-increase-371291/

米国SECの文書によると、オービタルサイエンスがCOTSで開発しているアンタレス・ロケットについて、その開発費用が4億7200万ドルに達する事が明らかになった。この金額は、2011年Q4の4億5800万ドルよりも高騰している。

アンタレスは既存コンポーネントを組み合わせたロケットで、アビオニクスとかの中身はともかく、固体のトーラスなどとはほとんど関係ない。1段目はウクライナのNK-33をエアロジェットが回収したAJ26で、2段目はピースキーパーの1段目から派生したCastor 30。
高騰したと言っても1割以下だし、デルタIIに匹敵する新規開発ロケットとしては、破格の低予算で開発されてるのは確かだ。

COTSに含まれるペイロード部分はシグナスと呼ばれるが、最初の打ち上げでは質量だけ調整したダミーが使用される予定。

http://www.orbital.com/CargoResupplyServices/

打ち上げはヴァージニア州Wallop島の射点から実施予定。ここはOSCがミノタウロスなどの打ち上げにも使う場所となっている。

http://www.flightglobal.com/news/articles/us-air-force-orders-minotaur-1-launch-for-ors-3-370829/

ORS-3の打ち上げを受注した際の記事。

ロシア関連

MAKS 2011で展示されたブランのレストア具合が酷い

ある意味衝撃画像。

http://englishrussia.com/2011/09/04/the-greatest-failure-of-maks-2011/

野ざらしでほぼ残骸と化していた機体を急に展示することが決まったとかで、ノーズシールド/スラスタは外れたまんまだわ、テールは行方不明だわ、窓は目張りして潰してあるわ、トドメに耐熱パネルの上からペンキぶっかけただけだわ(しかも左半分のみ)でロシア人として恥ずかしい、みたいな話。

博物館にあるやつ。

http://englishrussia.com/2011/11/08/russian-buran-abroad/

問題の展示機はOK – 2.01という機体のようだ。計画中止が決まった時点で30~50%完成状態だったとある。

http://www.buran-energia.com/bourane-buran/bourane-modele-201.php

*

懐かしのスターウォーズ構想

http://englishrussia.com/2010/02/11/star-wars/

特に目新しいものではないが、ミールとかプロトンとかエネルギアとかブランがこんな風に使われなくてマジで良かったと思う。というかどう考えてもカネがもたん気も。

*

VVA-14の細部写真

http://englishrussia.com/2010/09/06/a-weird-soviet-plane-vva-14/

http://englishrussia.com/2010/09/07/a-weird-soviet-plane-vva-14-part-ii/

残骸になってからのだけど。内部も。

*

MiG-29の製作現場

http://englishrussia.com/2009/03/25/the-mig-factory/

Strizhiの機体を作ってるところみたい。違うのもある。

*

Khotilovo基地のMiG-31など

http://englishrussia.com/2011/04/16/secret-airbase-in-khotilovo/

まともに稼働してる基地と防空部隊の様子。これは結構珍しいような。
やはりMiG-31はでかかった。

*

RS-24 Yarsの運用部隊。

http://englishrussia.com/2011/12/01/missile-complex-yars-in-operation/

*

ピル・ボックスの内部も大公開。

http://englishrussia.com/2011/12/29/military-legacy-of-the-ussr/

2年ぐらい前に動画でちょっと話題になったけど、最近の内部の写真とかは無かったと思う。

*

2011年のロシア防衛技術トップ10

http://englishrussia.com/2011/12/22/top-10-russian-defense-technologies-of-the-year/

RS-24 Yars、T-50、S-500、ヤーセン型SSN、T-90AM、9K720 Iskander、Ka-52、ORSIS-500狙撃ライフル、コルベットSoobrazitelnyy、RPG-32。
どういう基準なのかよくわからない…

SpaceXのDragon宇宙機が4月30日の打ち上げを準備/MT AerospaceがIXV再突入体の製造で下請契約/サウスウエスト研究所(SwRI)がXCORと契約/嫦娥3号以降の嫦娥計画について/ROSCOSMOSが2030年までの宇宙計画の草案提出

SpaceXのDragon宇宙機が4月30日の打ち上げを準備

http://www.space-travel.com/reports/SpaceX_NASA_readies_for_April_30_launch_to_ISS_999.html

3月20日、NASAのISSマネージャであるMike Suffredini氏は、Dragonの打ち上げ準備が、4月30日を目標として進行中と述べた。当初は2月の打ち上げで計画していたが、技術的問題の為に延期された経緯がある。

もう一方の当事者、SpaceXの広報は正式な打ち上げ日について、最終承認が4月16日のFlight Readiness Reviewの後になると言っている。

このフライトの目的は、ISSへのフライバイ(距離2マイル程度)を含む軌道周回と、ISSのロボットアームを使用した係留など。試験や検証のスケジュールを消化して再突入した後はフロリダに着水、回収される段取りとなる。
NASAが推進する民間開発の有人宇宙機としては、これが最先端を走ってる状況に変わりは無い。

*

MT AerospaceがIXV再突入体の製造で下請契約

http://www.space-travel.com/reports/MT_Aerospace_to_manufacture_flight_hardware_for_IXV_reentry_vehicle_999.html

IXVはESAの計画の一つで、大気圏再突入の実験を含んでいる。主契約はタレス・アレニア・スペース・イタリアで、今回ドイツのアウグスブルクにあるMT Aerospaceが下請で実験機の製造を行うことで契約締結された。

IXYの再突入体はセラミック製の全長0.8m、重量37kgと小型軽量な機体で、リフティングボディの後端にフラップが付いている。
MT Aerospaceの技術は熱防護システムの方で、特許取得済みの耐熱性繊維強化セラミックが使用される予定。

飛行計画としては、ヴェガで打ち上げられた後、高度450km付近から再突入して最大速度は7.5km/s程度、最高温度1900℃になり、最大gは5.7と計算されている。
今のところ2013年後半までに製作され、2014年に実験がおこなわれる見込み。

静止軌道付近まで上がるので、かつて日本で計画されたDASH(H-IIの打ち上げ失敗で終了)に近い感じだ。

*

サウスウエスト研究所(SwRI)がXCORと契約

http://www.space-travel.com/reports/SwRI_and_XCOR_agree_to_pioneering_research_test_flight_missions_999.html

2011年、SwRIとXCORは、6回のLynxを使用した弾道飛行ミッション(オプション契約で3回追加)を行う協定に合意した。明けて2012年、1または2回のミッションについて正式契約が締結されたとのこと。
これにより、通常の商業ミッションよりもSwRIの科学ミッションが先に実施される公算となった。

SwRIからはアラン・スターン博士をリーダーとして3名が参加する。2010年から0g飛行や遠心分離機タイプの高g訓練、F-104への搭乗といった準備を続けてきたそうだ。
弾道飛行による微小重力実験は、これまで全く不可能だったというわけではないものの、コストの割に微小重力状態の継続時間が長いというのも大きなメリット。
加えて、研究者が直に操作できるというのは大きいみたい。単に実験装置を航空機に積んで飛んでもらうよりも、大きな成果が期待できる。

この発表は2月末のNext Generation Suborbital Researchers Conference (NSRC) 2012というので行われたみたいで、XCOR関係ではペイロードインテグレーターの新規参入も報じられている。

http://www.space-travel.com/reports/XCOR_Announces_New_Lynx_Vehicle_Payload_Integrators_999.html

ペイロードインテグレーターは、Lynx用の実験装置などを開発・標準化して、切り売りする担当。新たにスペインのEMXYS、テキサスA&Mの宇宙工学研究センター、惑星科学協会といった名前が挙がる。これまでSwRIなど学術系を中心に7つほどの組織が関わるものになっており、地道に営業活動を結実させつつあるようだ。

XCORはペイロードインテグレーターを統括して、会議を通じて情報を共有したり、各種の調整、とりまとめを行う。

*

嫦娥3号以降の嫦娥計画について

http://www.spacedaily.com/reports/Chinas_Lunar_Docking_999.html

中国の月探査関連は嫦娥計画と名付けられており、嫦娥2号までの周回探査機は一応の成功に終わっている。
これに続くのは表面探査ということで、嫦娥3号の準備が進行中。

嫦娥3号は2013年に打ち上げ、月面探査車の投入を含む月面着陸を目指す。その2年後、2015年には嫦娥4号。これは3号と同様のミッションが計画されており、事が計画通りに進むなら、さらに2年後、2017年の嫦娥5号で、サンプルリターン計画を遂行することとなっている。

着陸機に関しては発表当初、旧ソ連が1960年代と1970年代を通じて月面探査に投入した、ルナー探査機の影響が指摘された。月面車ルノホートが投入可能である点や、ルノホートの代わりにサンプルリターン用の機材と小型ロケットが搭載可能である点も同じであったりした。

が、嫦娥5号のサンプルリターン計画は、後に変更されたようで、現在は月軌道を周回する宇宙機(輸送機)と、サンプルリターンのための着陸機を別々にする形をとる、小規模なアポロ計画のような方針になっているという。

どのようなハードウェアになるのかはまだはっきりしていないが、想像図を見た感じでは、輸送機と着陸機を別々に打ち上げ、地球軌道上でドッキングして月に向かうような感じではある。

変更されたとすれば、単により大きな成果を求めたというよりも、嫦娥5号を将来の月面有人探査へのステップとして位置付けた、という可能性が高い。神舟8号などのランデブー実験を、その前段階と捉えることもできるだろう。

*

ROSCOSMOSが2030年までの宇宙計画の草案提出

http://www.space-travel.com/reports/Russia_Drafts_New_Space_Exploration_Strategy_999.html

3月13日のコメルサント・ビジネス紙が報じたところによると、ロシア宇宙機関ROSCOSMOSは、2030年までの宇宙関連戦略についての草案を、政府へ提出したという。

この草案によると、目標とするのはロシアの宇宙産業が、将来にわたって世界トップ3のレベルを維持し、それを確実なものとすること。
また、2011年の宇宙市場におけるロシアのシェア(?)が0.5%に留まったのを受け、2030年までは10%まで引き上げる方針を示した。衛星含めた金額ベースの事かしら。

衛星関連の具体的な目標としては、2020年までに人工衛星の完全国産化(特に電子機器を指す)を達成し、2030年までには軍民合わせたロシア国内需要の95%を満たすとする。

探査関連では、月への有人飛行、金星探査と木星探査を挙げ、火星への恒久観測ステーション建設計画は、国際共同で行う予定としている。

その他、軌道上のゴミ掃除とか、いわゆるNEO対策にも注力するとのこと。

とりあえず思いついたこと全部書きましたという感じではあるが、同紙は大統領直下に調整のための独立機関が設けられる可能性を指摘している。

この10年は前進するどころか失敗が続いちゃってるからなあ。辛うじてGLONASSは面目を保ったが、Kliperはどっかいっちゃったし…