F-22パイロットの酸欠類似症状についてUSAFが一定の結論/SDB IIの実弾試験に成功

F-22パイロットの酸欠類似症状についてUSAFが一定の結論

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-pinpoints-root-cause-of-f-22-raptors-oxygen-woes-374690/

ノートン・シュワルツ参謀長は7月24日、F-22パイロットの一部で見られた酸欠類似症状の原因について、OBOGSの欠陥といったものではなく、パイロットの耐g装備の組み合わせによって起こるものであると述べた。OBOGSは最初に疑われた部分で、combat edgeと耐gスーツを含む耐g装備原因説は、調査の終わり頃になって出てきたものだ。
USAFでは、地上の低圧試験室とcentrifuge(訳語は遠心加速装置でいいんだっけ?)を用いた実験データにより結論を出したとのこと。

今後は機材の設計変更などで対応し、9月からの実地試験が予定されている。全ての措置が完了するまでは、海外展開など一部の例外を除き、高度制限(44000ft以下を飛行すること)と、飛行区域の制限(滑走路から30分以上離れないこと)は継続する。

F-22の開発・評価段階で、この問題が顕在化しなかった理由を問われた参謀長は、高高度におけるF-22の性能が卓越しすぎているために、航空生理学的な見地からのデータが不十分だった、という意味の回答をしている。同時に、高度50000ftで6g旋回が可能な機体が、それまでに存在しただろうか、とも述べた。
とは言え、航空生理学が最も盛んだったのはジェット機の開発初期であり、近年はそれ自体が軽んじられる傾向がある事も否定していない。

ここから得られる教訓は、未知の領域を切り拓くような新型機の開発では、マンマシンインターフェースにより多くの注意が必要である、といったものになる。

この結論が、USAFのマイケル・ドンリー司令長官と参謀長からパネッタ国防長官に報告されたのは7月20日。USAFは今後も、状況を随時報告する義務がある。
なお、飛行制限の例外となるのは嘉手納への展開。太平洋北部を飛行するルートでは各飛行場までの距離が長くなり、場合によっては、飛行時間にして30分から1時間半といった位置を通ることになる。また、問題が起こって高度を下げなければならない場合に備え、タンカーの積載燃料も十分に確保するといった対応をとる。

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しかし現場に近いところからは、検証が不十分などの意見も。

http://www.flightglobal.com/news/articles/in-focus-f-22-pilots-and-engineers-not-convinced-usaf-has-found-root-cause-of-raptors-oxygen-woes-374893/

combat edgeが原因ではないと断言するパイロットもいるが、どれもこれもUSAFが報告書をまだまとめてない、というのが懐疑的な意見の背景にある模様。
以下、その概略。

F-22開発時にUSAFに居て、今回原因とされた生命維持システム周りとフライトスーツの試験を担当したというKevin Divers氏も反発している。開発当時の状況として、コストにも納期にも制約があったことに触れてないのは公平じゃないだとか、Divers氏を含む開発に携わった人々には調査への協力要請とかが無かったみたいで、その辺が大いに不満みたいだ。
この人にとっては、連中がちゃんと仕事しなかったからこうなった、と一方的に言われてるような状況なのは確かだろう。

検証不十分とする意見の中には、飛行制限をかけてインシデントが減ったのは当たり前だから、それ以前の状況に戻すまでわからんのじゃないか、というのもある。飛行制限がかかる前は、日常的に起こっていた加速度無気肺、ラプター咳の症状も緩和されているからだ(USAFはこれとの関連性を認めていない)。

またDivers氏によると、combat edgeのBRAGバルブによって圧力の問題が生じることは、2000年から知られていたという。Diver氏はテキサス州ブルックスAFBの航空生理学者に連絡し、ボーイングの気密服CSU-18/Pと、現用のベストCSU-17/Pで徹底的な試験を実施させ、問題なしとの回答を得ている。少なくとも当時は、深刻な問題とは捉えられていなかったということだ。

更に対策を考える上でめんどくさいのは、combat edgeを取り除くか改修するかした場合に、OBOGSの酸素供給能力が不足する可能性が指摘されている点。
過去にはラプター咳の緩和のためにOBOGSの改修が計画され、2006年には耐空証明のスケジュールが立てられたそうだ。しかしコストがかかるためこれは見送られる。

最後の段では有毒物質混入説が排除し切れてないのではという話が出ている。実際の症例では典型的な酸欠だけでなく、神経毒の徴候も見られるという主張で、USAFの「有害物質の濃度は許容範囲内で、これらの影響によるパイロットの生理的問題ではない」という調査結果と真っ向から対立している。
初期に出ていた説ではブリードエアの混入などと言われていたが、OBOGS以外から有害物質がコクピット内に混入する可能性も多々ある為、その可能性を排除するには検証が足りないのではないかと指摘する。

一つの例として挙げられているのは、常温では毒性が比較的低いリン酸トリクレジル(TCP)という物質。これは潤滑油に含まれる成分のため、航空基地ではありふれたものとなっているのだが、USAFの研究では、熱を加えると強い毒性を示すことが知られている。
地上要員の排気ガス中毒症状とも類似点があるというが、この辺まで来るとよくわからん。

http://www.kasozai.gr.jp/msds/pdf2/100419_TCP.pdf

ちょっとチャレンジャー事故後の一連の流れを思い出した。

この騒動、報告書の内容がまともなら自然と鎮火しそうだが、どのみちOBOGSの対策は必要になるんじゃないかしら。

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SDB IIの実弾試験に成功

http://www.flightglobal.com/news/articles/usaf-and-raytheon-sucessfully-test-new-sdb-variant-374598/

レイセオンの発表によると7月17日、ニューメキシコ州ホワイトサンズ試験場にてGBU-53/B SDB IIの実弾試験が行われ、成功したとのこと。搭載機はF-15Eだった。
SDB IIは、ミリ波、非冷却IRイメージング、SALの3モードシーカを有する精密誘導兵器としては2世代目で、ネットワーク化されたデータリンクと連接し、全天候環境、脅威度の高い環境及び移動目標に対して使用可能となっている。

http://www.raytheon.com/capabilities/products/sdbii/

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